No.393362

IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・

ISさん

第16話『クラス対抗戦』

2012-03-17 22:33:40 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:8900   閲覧ユーザー数:8547

 

 

 

 楯無が俺の部屋に越してきた翌日、生徒玄関の廊下に張り出された紙があった。

 

『クラス対抗戦(リーグマッチ)日程表』

 

 一組(一夏)の最初の対戦相手は、二組(鈴)だった。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 五月、あれから数週間経った。

 同室になってから楯無はある程度自重をしているので(それでも服装は過激なのが多々)なんとか耐えている。いろんな意味で。

 

 それとこの数週間の報告から行こうと思う。

 鈴の機嫌が悪い。それはそれは機嫌が悪い。機嫌が悪いですよオーラを常に纏ってる。

 理由は一夏。原作どおりに鈴の約束を憶えていなかった。……いや、憶えてはいたのだが間違って憶えていたから。

 話は変わるが、クラスの女子が落ち着いてきた。もう俺たちが居ることにある程度なれたんだろうけど、それでもまだ学園内での話題などの中心ではある。

 ……そういえば楯無って、俺の部屋に居ることがなんでばれてないんだろう? 確かに俺の部屋は寮の隅だけど……まあ、気にしたら負けなんだ。

 そして、一夏について。一夏のクラス対抗戦に向けた訓練だが、最近俺は参加してない。というかさせてもらえない。箒とセシリアに。

 で、そんな俺が放課後(今日)何をやっているのかというと

 

 

「ほら、ぼーっとしてないで手を動かして」

 

「何でこんなことになってるんだ…」

 

「それは、お嬢様があなたのことばかりで生徒会の仕事に手を付けていなかったからです」

 

 ちなみに最後のは『布仏虚(のほとけうつほ)』先輩。

 名字で分かるだろうが、『布仏本音』――通称のほほんさん――の姉。学年は楯無よりもさらに上の3年生だ。

 俺の今の状況は、生徒会副会長として書類の処理。

 それにしても何でこんなに書類が溜まってるんだよ、楯無ィ!

 

「それって俺のせいなんですか?」

 

「ええ、一割ほどは」

 

「……なにがその一割なんだ?」

 

「ほら二人とも、口じゃなくて手動かして」

 

 お前のせいだろう!? 何でこんなにアニメみたいに――ここは物語の世界だろうど――書類がタワーになってるんだよ!

 もう愚痴っても仕方が無いので、心の中でぶつぶつ言いながら手を動かす。

 書類に目を通して、備品の要求だったらそれに関する書類を書く。他のもそれぞれ書類を書くなり何なりして処理していく。

 ああ、本音の手でも借りたい……やっぱ却下。アイツは生徒会だけど作業効率を著しく下げてくれる。

 

 

 

 

 ――そして終わんねぇ!

 誰だこの楯無に対するラブレターみたいな封筒を紛れ込まさせたやつ! レズか! 百合なのか! GでLなのか! そして楯無どれだけ人気なんだよ!

 

 それを楯無の頭向けて投げる――捕られた!? こっち向いてないのに!? ((革新者|イノベイター)〉!? いや、知らないけど。

 

 

 あーダメだ。疲れてなんかテンションがおかしい。

 どのくらいおかしいかっていうと、今楯無に迫られたら押し倒しそうなくらい。

 それはダメだ。心を無にしろ、無にして手だけを動かすんだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間経過

 

 

 

 

 

 

 

「よし、これで終わりよ」

 

 

 

 終わったのか…? 楯無、俺はもう……

 

「あれ? 拓神? おーい、どうしたの?」

 

「どうやら、疲れきって寝てしまわれたのかと」

 

「そっか、なら私のキスで―――」

 

 

 ! 俺の何かしらの危機!

 

 周りの確認もしないで、地を蹴ってイスごと後ろに飛ぶ!

 

「あら、惜しい」

 

「なにをしようとした?」

 

「寝ちゃってたから、キスで目を覚ましてあげようと思ってね♪」

 

 危機に面したのは俺の純情だったか。今更な気もしないでもないけど。

 

「またそんなことを……もう終わったんですよね?」

 

「ええ、これで終了ですよ」

 

「楯無、今度からこういうことは無くせよ?」

 

「私の気持ちを受け入れてくれたらいいよ」

 

 しょっぱなからジョーカー使ってきやがった。

 でも、こっちにもそれに匹敵するカードくらいある!

 

「なら添い寝禁止。俺が拒絶する」

 

「え、それは無いよ~」

 

 しくしくと泣いたふりの楯無。

 そして虚先輩! あなたはなに「あらあら、まあまあ」な雰囲気を纏って微笑ましくこの光景を見ているんですか! あなたは楯無の母親かなにかですか!

 

「つか、会長が仕事しないってどうかしてる……ま、とにかく終わったなら帰るぞ楯無」

 

「はーい」

 

 え? 最近俺の楯無に対する態度が軟化してるんじゃないかって? そんなわけないだろ……え、そう見える? マジでか? そんなわけ無い……と信じたい。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 クラス対抗戦当日

 

 

 

 うん、原作だと襲撃がある日だな。

 ということで、俺は―――

 

 

 

「なぜお前がここに居る?」

 

 今のは織斑先生。

 俺の居る場所は、先生とかが居る管制室。

 ここに居る理由? いや、だってここなら扉をロックされた後でも外に出れるからさ。

 

「だってここなら、よく見えるじゃないですか」

 

「……誰も許可を出した憶えはないんだが?」

 

 えっと、それについては。

 

「私が出しました」

 

 そう、楯無生徒会長の力。……つーか、どこまで権限あるんだ生徒会長。

 

「そういうことです」

 

「はぁ。邪魔だけはしてくれるなよ」

 

 それだけ言った織斑先生は、自分の仕事に戻っていった。

 

 

「悪いな、楯無」

 

「いいのよ。どうせ私の副官って扱いで……というか実際、拓神(副会長)は私(会長)のサポート役なんだけれど」

 

「くくっ、確かに……さて、始まるな」

 

「ええ、見させてもらいましょうか。織斑先生の弟の力」

 

「アイツ吸い込みは早くても、まだISに乗って一ヶ月程度だから……代表候補生相手だときついんじゃないか?」 

 

「でも、セシリアちゃんには肉薄したって聞いたわよ?」

 

「情報源は本音か……セシリアの油断が引き起こした奇跡だよ、あれは。本当ならあんなに甘くないからさ」

 

 こんなことを自慢げに喋ってる俺もIS起動時間は一夏と同程度だけどな。

 ……ん、始まったか。

 

 

 

 

 

 

 

 

『それでは両者、試合を開始してください』

 

 ビーーッ!

 

 ブザーが鳴り終わると同時に、一夏と鈴は動き出した。

 

 まず、鈴がその手に大型の青竜刀――双天牙月(そうてんがげつ)――を展開(オープン)、一夏に切りかかる。

 

 ガギィィン!

 

 一夏はそれを瞬時に展開した雪片弐型で受け、金属音をあたりにばら撒く。

 何かを喋っているみたいだけれど、こっちには聞こえてこない。恐らくISのオープンチャンネルで会話をしてる。

 

 そこから、鈴が攻め始めた。

 鈴の双天牙月は、バトンの両端に刀身が付いているような感じだ。それをバトンのように回転させながら、縦・横・斜めと一夏に向かって斬り込んで行く。

 一夏はかろうじてそれをさばくが、状況は変わらない。

 その状況を立て直すために、一夏は距離を取ろうとして―――

 

 

 

 吹き飛ばされた。

 見えたのは、鈴の両肩にある丸っこいアーマーがスライドして開いて、その中心が光っただけ。

 今ので一夏に隙ができると、そのアーマー内の球体がもう一度光る。

 それも直撃したようで(弾が見えないから、どうなのか分からない)一夏は地面に叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

「あれは…」

 

「衝撃砲。空間に直接圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じる衝撃を砲弾として撃ち出す。セシリアちゃんのブルー・ティアーズと同じ第三世代型兵器だね」

 

 楯無、説明ありがとう。

 

「データとしては知ってたけど、あそこまで……」

 

「だね。完成度高いんじゃない? それに砲身の角度とか、制限無いみたいよ」

 

 このISのアニメだと、流石にそんな見えない兵器なんてテレビとして……まあ、あれだから分かるようになってたけど、実際は全く見えないな……

 

「回避、面倒だな」

 

「あら、不可能じゃないんだ」

 

「いざとなったらシールドで防げばいいし。弾道は直線だから。それにお前もだろ?」

 

「まぁね」

 

 ちなみにこんな最中でも、一夏は衝撃砲の回避にいそしんでる。

 やっぱ、リアルと二次元は違うって事だな……たしか、そろそろだったか?

 

 

 

 アリーナのほぼ中央で向き合った二人が、なにやら言葉を交わす。

 鈴が双天牙月を一回転させて構えると、一夏は瞬時加速(イグニッション・ブースト)を発動させた。

 

 

 ――不明機、来るぞ。

 

 ――了解。

 

 

 

 

 

 

 ―――ズドオオオオオンッ!

 

 衝撃がアリーナ全体に走る。ここも少し揺れた。

 アリーナの中央からは砂埃が舞い上がっていて、状況が視認できない。

 

 

 

「……来たか」

 

「何が?」

 

 ボソッとつぶやいたんだけど、隣には流石に聞こえたか。

 

「こっちの話。……織斑先生、状況は?」

 

「最悪だ」

 

 返ってきたのは一言。

 そして山田先生の悲鳴にも近い声。

 

「し、しょ、所属不明のISがアリーナに侵入!」

 

「……それと同時にアリーナのシールドレベルが4に設定、全ての出入り口に強固な電子ロック……山田先生、隔壁の展開を」

 

「りょ、了解!」

 

 アリーナと観客席を隔てる隔壁が閉鎖された。

 

「所属不明機の侵入? 一体どこから……」

 

「楯無、状況の理解は?」

 

「もちろんできたわよ」

 

 そうか、ならいい。

 山田先生は、インカム――通信先は一夏と鈴――に向かって避難の指示を叫ぶように言っているが、一夏たちは食い止めると言っている……行こうか。

 

「織斑先生、あの機体の撃墜許可を」

 

「先も言ったが、アリーナのシールドレベルが4に設定されている。無理だ」

 

「余裕です。いけます」

 

「簡単だと言われると、こちらとしては複雑だな……まあいい、許可する。出来ることなら侵入機の損害は最小限に抑えろ」

 

「了解……行くぞ楯無」

 

「わかったわ」

 

 俺は楯無と一緒に、管制室からアリーナの外まで駆け抜けた。

 


 
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