「大和。ナンパ行こうぜ!」
「断る」
即断った。
「何でだよ!?」
「この前、行ってやったろ?」
前回、取引に応じて岳人と一緒にナンパしたが散々の結果。しかもそのナンパの仕方が最悪で、正直二度と付き合いたくないとも思っているほどだ。
それにこれ以上恋人である榊原小雪を裏切りたくはなかった。純粋に大和は小雪一筋。
「頼む大和。もう一度だけ俺のナンパに協力してくれ!」
顔の前で拝むように手を合わせる岳人。
「そう言われても………」
脳裏に恋人の小雪の悲しそうなイメージが思い描く。
「いいよー。行ってきても~♪」
予想外の答えが後方から返ってきた。振り向くと小雪がマシュマロ袋を片手に笑顔で立っている。
「……岳人」
前回は大和、今回は小雪に取引を持ちかけてきたらしい。
小雪はマシュマロが大好き。場合によっては大和よりもマシュマロを選ぶこともあるが、さすがにここまでやるかと思わざるおえない。
「頼む大和。もう一度だけ俺のナンパに協力してくれ!」
再度顔の前で拝むように手を合わせる岳人。その顔には涙が。
「ユキ……」
「うん。僕、大和信じているから」
小雪は笑顔でナンパを承諾してくれた。
――――――※※※――――――――※※※――――――――※※※―――――――――※※※――――――――※※※―――――――
休日。イタリア商店街。
「お姉さんっ! 結婚前提でお付き合いしませんか?」
何も変わってなかった。
数時間後。
岳人は泣いていた。結果は惨敗だったからだ。
「岳人。真面目にナンパする気あるか?」
「あるに決まってるだろ!」
そう声をあげるものの、伝わってくるのは情熱ではなく、やはり下心の二文字。端から見ている大和でさえ、あからさまにそれがわかる。
「大和、手本をみせてくれ! もう……俺様は……」
もはやプライドもない岳人は拝むように手を合わせる大和に頼み込む。内面、めんどくさいと思った大和だが、キョロキョロと辺りを見回して目星をつける。
「それじゃ………あの子、に!?」
殺気。
大和の背筋から凍るような冷たさが向けられているような気がした。
「どうした? 大和」
岳人には何も感じてないらしく、大和の様子に疑問を抱く。
「いや、なんでもない。……とにかく」
とにかく自分がナンパしても意味がないよ、と説きあくまでアドバイスだけに留まる大和。
すると殺気はなくなり、携帯にメールがきた。
相手は小雪。
『信じているよ大和♪」
そして気づく。
………後方はるかに小雪が笑っていた。
Tweet |
|
|
5
|
1
|
追加するフォルダを選択
懲りない岳人。