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二度目の転生はネギまの世界 第九話![]() 翡翠色の法皇さん 2012-03-16 22:17:11 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:6303 閲覧ユーザー数:6060 |
第九話「不死の子猫と契約と」
あの時の
「(何が『格好いいな』だ。
そう、
咒式はこういうときには恐ろしく便利だ。変化に関しては魔法を超える個所がある。
「お、姉ちゃん。何を買っていくんだい?」
「ええと……これとこれを。あら、こっちのは何かしら?」
今
簡単にいえば、魔法は現実に幻想を呼び出すため、解呪されると消失してしまう。だが咒式には、幻想の力で現実を改変し、その結果を扱うものも存在する。
「デーツっていう、ナツメヤシの実さ。甘くておいしい木の実でっせ」
「そう。なら8つちょうだいな」
「8つだな。まいど」
まあつまり、魔法でつけた傷に解呪をかけても意味がないのと理屈は同じなんだがな。だがそれを基本とする咒式での変身術は、本当に他者になってしまう。
骨格を変える。筋肉の付き方を変える。髪の色を変える。髪の長さを変える。眼の色を変える。身長を変える。体重を変える。指紋、掌紋、虹彩を変える。声帯を変える。
ここまでして、完全に他人になってしまう。性別? 年齢? そんなもの、材料さえあればいくらでも変えてしまう。それが生体変化系咒式の達人、変幻士だ。
「ほらよ。おまけにデーツを2つ付けとくぜ」
「あら、ありがとう」
「今後ともごひいきに~」
そんな咒式を用いて、
この発見、実験好きであることが偶然にもピタリとはまった結果でもある。右の眼の色だけを変えて再生させてみたら、オッドアイのままであったのだから。今では『
現在使用している宿に着く。部屋に戻り、簡易の遮音障壁を展開してから声をかける。
「……もういいわよ」
「う~、つかれた~」
文句を言いながらエヴァが影から顔を出す。『疲れた』とは、
「影の中にいるだけなのに、どうして疲れるのかしら?」
「だって、魔法を早く使えるようになりたいから、影の中でも魔法を必死に……」
まだ初心者用の魔法しか教えていないが、相当練習したのであろうな。そうでもなければ、これだけの魔力を持つエヴァが疲労を感じることはない。
では、直接見てやるべきであるな。魔法はイメージが重要である。間違ったイメージで続けると消費も多くなるうえ、正しいイメージに移行できなくなりかねん。
「そう。なら早くアフリカへ行くべきね。私も直接指導したいし」
「ねえ、アランさん?」
「なあに?」
アランとは、我のイニシャルのA.R.A.Nをそのまま読んだものだ。偽名としてちょうどいいので、そう呼ぶように言い含めた。万一聞かれても、
「そろそろその口調やめてくれない? えっと、なんだか気が狂うというか……」
「この姿で
「――ごめんなさい。やっぱり前の口調でいいです」
であろうな。
「さて、一気にエジプトを抜けるけど、その前にこれをあげるわ」
先程購入したナツメをエヴァに渡す。
「これって……木の実?」
「デーツっていう、甘い木の実よ」
一応、前世で食べたことはある。甘かったような記憶しか残っていないが。そんなことはどうでもいいか。
「もう一度影に潜りなさい。この宿を出るから」
「本当だ、甘ぁい。意外とおいしいし」
「ねえ、沈められたい?」
「……は~い。おやすみなさい」
顔全体では笑顔、だけど目だけは笑っていない。そんな顔を見せてあげたら、しぶしぶと返事をしたエヴァがずぶずぶと影の中身潜りこんでいく。さて、
そして、アフリカに来て40年余り。その間に魔法を教え(
「ツマリ、俺ノコトヲ人数ニ数エテナイッテコトカ?」
「そういうことだ」
まあ、途中でエヴァが作り出したチャチャゼロを人数に数えるか迷ったが、生命体ではないので数えない。そもそも、AIが貧弱であるチャチャゼロは人間性に乏しい。数えたくないというのが本音だ。
「どうした、アラン。チャチャゼロが粗相でもしたか?」
「いや、そんなことはない。ところでキティ、最近開発している魔法とやらの進み具合はどうだ」
「さっぱりだ。どうにもすすまん」
俺はエヴァのことをキティと呼んでいる。アフリカについてすぐ、自分のミドルネームを考え付いてこう言ったのだ。
(私はこの姿から成長しない。不老不死の幼女、永遠の子猫。だから私は、私自身に不死の子猫、アタナシア・キティの名前を付けるの)
だから、その思いを鑑みてあいつのことをキティと呼んでやっている。恥ずかしいのか最近は顔を赤くすることもあるが、それはそれで可愛いのでいい。しかし荒んだのか、口調が
「
「ああ、そうだったな。私だけではどうにも進まなくて困っていたところだ。アランの意見も聞くことにするか」
そういって、キティは
しかし……これはあれか、『闇の魔法』か。
いや、それを前提に考えれば、魔法を取りこむことは十分に良いものだ。魔法を取りこむとすると、ここがこうなって、ここをこうすると……だがそうなるとこっちに支障が……
「ううむ、ひとつ思いついたが、形にしにくいな……少々書き込むぞ」
「構わんぞ。アランの考えることは、形で示されないと私にはよくわからないものが多すぎる」
許可も得られたので、術式を次々に書き込んでいく。こちらがこうだから、ここをこうして、っと。
「む、ではこちらはこうか?」
「それは
「……ああ、ここに矛盾が発生するな。ならばこれを――――」
「それがあったか。そうなるとここは――――」
「……俺ハ御邪魔虫カ? 御主人ノ邪魔ヲスルワケニモイカネーシナァ……」
五月蠅いな、人形のくせに。
そして一年ほどかけて、ようやくエヴァと
「咒式選択、<
「『雷の斧』、固定、掌握……ふむ」
隣のキティを見れば、全身に雷がちらつき、やや輪郭があやふやになっている。おそらく体が雷化している影響であろう。さて
「アランは髪や瞳がやや青白くなったな。足もとの草も凍結しているから、成功しているな」
「キティは輪郭があやふやになって雷を纏っている。雷になっているな」
果たして取り込むことは可能になったようだ。これからも少しずつレパートリーを増やすべきであるな。術式解放、魔力配給破棄、咒式停止。
「オ、終ワッタカ? ココ最近相手ニサレテナイシヨ、チョックラ手合ワセシテクレネーカ?」
「そうするか。
「――え? 今何と言った?」
「ん? そろそろ別れようかと――」
「どうして!?」
身長差のせいで襟を掴めないキティは胸座をつかんでがくがくと揺らす。まあ、突然では驚くか。さて、理由を――
「どうして!? 私を捨てるの!? ねえ!」
「ま、まて。何かおかしなことを口走ってないか?」
――話すこともできないくらい錯乱するだと!? まてまて、
「とりあえず落ち着け。息を吸って、吐いて。ゆっくり吸って、ゆっくり吐いて」
「すぅ~、はぁ~、すぅ~~、はぁ~~」
「ゆっくり吸って、ゆっくり吸って、ゆっくり吸って……」
「すぅ~~、すぅ~~、すぅ~~……って、いい加減苦しいわ!」
「落ち着いたようだな」
半ばギャグで言ったのだが、まさか実践されるとは。ともかく落ち着いたところで話を再開しよう。
「別れる理由はいくつかあるが。最も大きい理由は、キティが
「わ、私がアランに依存しているだと!?」
「でなければ、あれほど取り乱すこともあるまい」
「う……」
まあ、あそこまで依存しているとは思わなんだ。
「それと、
「……わかった。アランがそういうなら私も止めない。だが!」
顔を真っ赤にし、ビシッ! と音がしそうなほど勢い良く、その繊細な指を我に向ける。この状況で何か要求するとなると……思いつかんな。まさか処女を捧げると言い出さなければいいが。
「その前に私と仮契約しろ!」
「その程度でいいのか。ならばすぐにでもしてやるぞ。チャチャゼロ、陣をかけ」
「人形使イガ荒イゼ、ホント。ジャ、アトハ勝手ニシナ。ケケケ、ゴユックリ~」
嫌味と愉悦を混ぜたような捨て台詞をはいて、チャチャゼロは
「キティを従者にするが、いいか?」
「構わん。アランがマスターなら本望だ」
そう言ってキティは眼を閉じる。はぁ、仕方ない。宝石を使おうとも思っていたが、こっちがお望みならそうしてやるのも男の甲斐性ってやつか。
少し腰をかがめ、キティと目線を合わせる。そのまま
「っと、これでいいか?」
目を開けると、先ほどより赤くなったキティの顔。やべ、かわいすぎる。
不埒な感情が押し寄せる前に、パクティオーカードを拾い上げる。
「カードはアーティファクトカードか。使ってみろ、キティ」
「え、あ、うん。アデアット」
いや、現実逃避は止めるとするか。まさか、
「いやはや、
「これは、いったい何なのだ? 普通の剣ではないことは理解できるが……」
「く、くく。それは
「? ああ。荒唐無稽な話ではあったが、話に矛盾がなく、咒式なる魔法を扱える理由としては納得できるものがあったな……まさか」
どうやらキティも気づいたようだ。しかもこれは、あのレメディウス謹製の最高傑作『内なるナリシア』なのだからな!
「その剣。正式名称は『内なるナリシア』。さる高名な博士が作り上げた、最後にして最高の作品だ」
キティに覚えている限りの説明をしていく。
「魔杖剣は咒式発動の補助をする。
それ以外にも言わなければならないことは多いが、さすがの
「魔力を込めてみるがいい。どれほどのものか
「ああ、わかった。では……うぉ!」
「ぬっ!」
周囲に多重の咒式干渉結界が作動。さらに咒印からは良く分からないが、演算咒式と思われるものも発動している。試しに<
「凄まじいな……対魔法戦に関しては最強の守護を約束していないか? 否、状況分析を補助されているから、攻撃も行いやすい……」
「そう思うが、慣れすぎは良くないな。緊急時以外は使用しない方がいい」
「それもそうか。アベアット」
少し惜しそうに、キティは『内なるナリシア』を還す。その間にコピーを作成した
「さて、少し咒式を学んでいけ。それを使いこなせるようにな」
「う、やはりそういう話になるか……」
まあ、嫌なのは理解できるぞ。咒式原理からして、この時代の人間には理解できないものが多すぎるからな。だが、これから別れる以上、教えられることは教えておきたいのが性というものだ。
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我も賞金首となった。仕方なくアフリカへ向かうのだが……修行内容はカットだ。