学園祭編とか言いながら関係の無いイベントですが、
学園祭や魔法世界、今後の展開の鍵を集めているような話です。
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第36話『学園祭編1・後20日』
朝になった。
昨日はアーニャの買い物に付き合っていた。
その疲れのせいか、いつもより早く眠った。
「ふわあ」
僕は目が覚めてしまった。
時計を見ると、6時と表示が出てる。
いつもより早く起きてしまったようだ。
2段ベットの方を見ると明日菜さんが制服姿で寝ていた。
新聞配達に行き、戻ってきた時、面倒だから制服に着替えたって所か。
「木乃香さんも寝てるんだ。まあいっか」
自分の所から赤いソファーに飛び込んだ。
ソファーに体を預けてポケットの中からカードを取り出す。
今まで契約してきた人の分だ。
「そういえばアーニャはどこで……ってそこか」
2段ベットの隣に1人分のベットが追加されていた。
ベットの空間は僕が広げたので問題はない。
そっちはどうでもいいや、とカードをテーブルに置く。
「前と全然違うな」
仮契約したメンバーは明日菜、木乃香、刹那、夕映、のどか、千雨、エヴァ、アーニャ
ハルナさんと朝倉さんは保留の形だ。そうだっけ?
「まあいいや、とりあえずは8人、そういえば学園祭まで何日だ?」
日付を調べると、あと20日だった。
てっきりあと数日だと思ってたよ。
過去なんだから日付が同じなんて事、今更思う気にもなれない。
この部屋に地下の事といい、もう訳が分からん。
そんな事を考えていると、僕の肩に優しい感触がした。
「おはよう、ネギ」
「明日菜さん、おはようございます。寝ていたんじゃないんですか?」
「そうなんだけどね、時間も時間だし」
「でも、木乃香さんがまだ」
「ウチがどうかしたん?」
「え?」
「ええ?」
いつの間にか僕の隣に木乃香さんがいた。
気配が感じなかったのはきっと起きたばかりだからだろう。
この部屋では安全と分かってるから気を抜いてるだけ。
パジャマ姿だったから今起きたのかな?
「こ、木乃香、いつから」
「ネギ君と明日菜の声がしたから目が覚めたんやけど?」
「アーニャちゃんを起こす?」
「ほっといてあげましょう」
「いや、起こした方がええやん?」
「仕方がないですねぇ」
僕は仕方がなく、仕方がなくアーニャの寝てるベットの前まで移動する。
寝息を立てて、なんか嬉しそうな表情をしてる。
良い夢でも見ているのかも知れん。
なら、夢の中を悪化させてあげよう。
邪魔をしてやろうと決めた。
僕の全身と同化している権限の鍵を起動させる。
アーニャの額に手を置く。
「悪夢を見て起きろ」
呟いた瞬間、アーニャの眼がぱっと開くと同時に涙が出ていた。
何でそんなに泣きそうなのか理由を聞いてみよう。
「どうしたの? アーニャ」
「な、何でもないわよ!」
「いいじゃないか、僕がアーニャの夢を弄ったんだから」
「アレってネギのせいなの!?」
「そうだけどどんな夢を見たの?」
そう言うと、アーニャがベットから出て、青いソファーに座り
「そんなのどうでもいいでしょ? 今はまだ6時じゃない!」
時計を見るなり、損した様な気分になっていた。
無理やり起こされたら誰でもそうなるな。
僕だって無理やり起こされた時、魔法波でぶっ飛ばしたし。
ちなみに、その時の損害は見た目20歳のネギで雷の暴風2発分を充填させた程度なので3,4つの国が消滅した。
「そういえば、学園祭準備期間はそろそろや」
「準備期間中はその時しか食べられない物もあるしね」
もうそんな時期か、分かっていたけど超さんとの対面も早いな。
「学園祭があっても修行はさぼらないでくださいね」
「わ、わかってるわよ」
「う、うん」
「木乃香と明日菜ってネギと修行してるの?」
ボーっとしていたアーニャが顎に手を当て質問してきた。
「エヴァちゃんの弟子やし」
「あ、でもネギの弟子でもある訳だし、そうね」
「最近はエヴァちゃんのばっかやけど」
「ふ~ん」
他人事のように理解してるアーニャ。
けどね、アーニャも他人事じゃないよ?
「アーニャも受けるんだよ?」
「ええ!?」
「夕映とか受け取るしな」
「アーニャは夕映さん達よりちょっと強いだけだよ? 強くならないと置いて行かれるよ?」
「あ、ああ……」
アーニャは置いて行かれるという言葉に固まった。
おそらく僕から見限られると思っているのか?
そんな事をする訳がない。
「ネギ君から置いて行かれるんは嫌やな」
「でもどうして強くならないと駄目なの?」
「明日菜さんはマジックキャンセラーだし、木乃香さんは修学旅行の時の理由だし、ね」
時に明日菜さんとアーニャはまずい。
だって、魔法世界に行った時、一番に目を付けられるからな。
あの時は助けるので必死だったが、
今となってはだるい、めんどい、自分で脱出してくれ、と思ってしまう。
「魔法無効化は魔法使いの天敵だけど、明日菜が持ってるなんて」
「だから、明日菜さんミサイルができるんじゃないか」
「あれは二度とやめてほしいわ」
「もうやりませんよ。飽きましたし」
「飽きてなかったらやるんやな」
「当然です」
「うう~」
ネギの答えに頭を抱える明日菜さん。
しばらく時間が経過する。
僕達は久しぶりに走って学園に向かってます。
もちろんスピードは滅茶苦茶落としてる。
木乃香さんが急に立ち止まった。釣られる様に僕達も立ち止まる。
「これって作りもんやろ?」
「恐竜、作りものにしてはすごいですね」
目の前には数メートル以上の恐竜みたいな物体があった。
あれ? 20日前なのにこんなものがあるのはどうして?
う~ん、多少のズレはあるのか。
だが、恐竜の作り物がこちらに倒れてきた。
「ちょっと!?」
「どうするん?」
恐竜なる物を倒れてくる前に軽く回し蹴りを放つ。
ぐらっと勢いよく揺れて元の位置に戻った。
その光景を周りの生徒達が見ていた。
「すげえ!」
「子供先生がでかいものを蹴ったぞ」
「キャー!!」
周りがざわめく。
それはそうだろう、子供が軽く巨大な物を蹴り飛ばしたのだから。
「面倒ですね」
「急ごう!」
騒ぎが始まる前に僕達はこの場から立ち去った。
「ここまでこれば大丈夫ね」
「僕は向こうですので」
「ネギ君、またな~」
木乃香さん達に手を振ってから職員室の方へ急いだ。
職員室に着いた僕は自分の席に座り、深く考え込む。
多少のズレは問題ない。
この頃に宇宙のどこかでガノードが権限の鍵を探していたらしい。
反応があるはずの存在もいないみたいだからガノードはありえない。
それが無いとすると、未来は別ルートに向かってるようだ。
別にガノードなんて居なくて良いけどね。
あいつ、全魔力放出で3つぐらいの惑星消せるんだもん。
戦った時、光化しなかったら終わってた。
ええと、光化っていうのはだな、雷化もできたんだから雷より最強だろう光になる修行をしていた。
すると、偶然出来てしまったのだ。常時雷化とは全く違う能力になったが…
それはともかく、僕の体験した未来と違うってのは楽しそうだ。
「まいっか、今考えていても仕方がない。……学園祭の資料を」
僕は机の上に置いてある学園祭の書類を見ていた。
今回もお化け屋敷か何かなんだろう。
バラバラに散らばってる書類を整理して、机の引き出しの中に入れた。
「ネギ先生」
「どうかしたんですか?」
声をかけてきたのはしずな先生だった。
「学園長がお呼びですよ?」
「わかりました」
一体何の様なんだ? あの爺は。
そんな疑問を抱きつつ、学園長室へ向かった。
~学園長室~
いつも通り一人しかいなかった。
だいたいここはそんなに来る所じゃない。
この時期に呼ばれた記憶はほぼ無いんだけど……。
「何ですか?」
「よく来てくれた。ネギ君」
「はぁ」
年の割には元気のいいおじいちゃんだ。
今度は何を企んでいるんだ?
そのおじいちゃんが髭を触りながら
「実はのぅ、これを渡しておこうと思ってのぅ」
「渡しておこう?」
「これじゃ」
ほぉほぉほぉと薄気味悪く笑いながら手のひらサイズ並みの瓶を渡してきた。
瓶に書いてあるタイトルを見たら年齢詐ってちょっと待て!
「何でこんなのを持ってるんですか!?」
「木乃香のために問い合わせて速達でゲットしたんじゃ」
「でもこの薬ってどれぐらいの効果なんですか?」
ちょっと可能性だけ考えてみた。
もし、この薬1粒で20歳までなれるんだとしたらこの薬は重要性を持つ。
20歳の姿になれば100%の力を出す事が出来る。
考えていると、学園長が可能性を潰してくれた。
「一粒で大体8歳じゃな。ネギ君に飲ませれば18歳じゃから問題ないぞ」
「二粒飲むとどうなんですか?」
「効果が上乗せされるタイプじゃないからのぅ。そちらのは時間がかかるし」
「さ、さいですか」
18歳、か。
それでも60パーセントの力と闇の魔法コントロールはできるからいっか。
頷いて決断した僕は学園長から瓶を受け取りポケットの中に入れた。
僕は年齢詐称薬・8歳版を手に入れた! ってそうじゃない。
「別の用件は?」
「うむ、それだけじゃ」
「はぁ……わかりました。それでは失礼します」
学園長に背を向け、ここから出る。
これを渡すためだけの用件とは思いもしなかった。
この世界、完全に歪み過ぎてるんじゃないのか?
歪んでるせいで、妙な存在が修正しなければいけません、とか言って戦うのは勘弁な。
溜息を吐いて、ノコノコと自分の持ち場へ帰った。
~教室~
あれから時間が経過しました。
担任としてのホームルームを終わらせた。
大した出来事もなく、妙な騒ぎもなく終えた今日は刹那さん達を連れてっと考えていると
「ネギ先生!」
「あやかさん……」
いつの間にか僕の左手をあやかさんの両手で包み込まれていた。
暖かい。
「明日の放課後、私の別荘に行きませんか?」
「別荘?」
「ええ、せっかくですから夏の思い出を」
ああ、あれってアスナと喧嘩してた時の海か。
「委員長、私も誘って~」
「あ、私も!」
「委員長、抜け駆け!」
どうやら、前の様にクラスの半分以上が付いてきそうだ。
あやかさんが顔を引き攣らせてまき絵さん達を見て溜息を吐く。
「仕方ありませんねぇ、明日菜さん達はどうするんですの?」
「え? 私は……」
いきなり声を掛けられた明日菜さんはエヴァをチラッと見る。
修行の事か
だが、エヴァが明日菜さんの前に出てこう言った。
「私も参加するぞ」
「じゃあ私も」
「ウチも参加すんで」
これでいつものメンバーが来る事が決定。
でもあれ? アーニャが黙ってる
「アーニャどうしたの?」
椅子に座ってるアーニャに話しかける。
表情を見ると難しそうに考えていた。
「……いいの?」
「え?」
「あ~、だから!」
アーニャが僕の腕を引っ張って小声でつぶやく。
「修行は?」
「明日菜さんも行くみたいだから」
僕の返答に呆れ表情のアーニャは委員長に指を差し
「私も行くわ! その別荘広いんでしょうね!」
「当然ですわ! 雪広家の別荘ですもの」
「じゃあいいわ」
よし、アーニャも行くんだな。以前より一人多いだけだ。
時期がズレまくりなんだけどどうなってるんだ?
それはいい。
後の事を考えれば、巻き込まれるのは勘弁だ。
「僕はこれで失礼しますね」
誰にも気づかれず、この場から逃げた。
~男子寮~
教師としての仕事を終わらせた僕は小太郎の住む男子寮に来た。
あいつ、今何をしてるんだろう、とほんのちょっとだけ気になり、今この場にいる。
「ここか、小太郎は」
中に入ると、小太郎の気配を感知できた。
なぜここまで来ないと感知できないんだ?
妙な術でも身に付けたのか、と楽しみになってきた。
僕は影の中に入り込み、小太郎の所まで移動した。
影の中から出た僕はさっそく小太郎と対面するのだが……。
「……白くなってる」
目の前の小太郎がまるで某ボクシングの格好で燃え尽きていた。
これだと気配が探りにくいにも無理だな。
とりあえず、僕は魔法で水を生み出し、小太郎の頭からドバッとかけてあげた。
すると小太郎の色が正常に戻り
「つめてええええええええええ!?」
と地面にゴロゴロと転がっていく。
「そんなに冷たかったかなぁ。たかが2.3度程度の水だよ?」
氷やマイナスを行く物体よりマシでしょうが。
僕が耐えられる温度はマイナスはさぁ? だし、プラスも太陽以上は試した事ないから限界知らない。
だからって実験して『ネギ先生は(以下略)でお亡くなりになりました』ってオチはしたくない。
「いきなり何すんねん!」
「あ、やっと気づいたんだ」
「水ぶっかけんな!」
「いやあ、どうして白くなってたのか知りたくてね」
まるでこの世の終わりだ!と絶望してる姿だったからつい、ね。
それを聞いた小太郎はうっ、と青ざめていた。
何に対してそうなったのか答えを待つ。
「勉強について行けへん」
「何……だと!?」
ここの小太郎はアホなのか?
まぁ、小太郎自体は馬鹿だしドジだしアホだけど勉強はギリギリできてた気もする。
「くそっ! 真剣に勉強もしとけばよかったな~」
「なら僕が教えようか?」
「ホントか!」
助けてくれ、という眼差しで僕を見てくる。
絶望的な表情にゾクゾクっと来た僕は頷き、
「いいよ。そのかわり、この後付き合ってもらうよ」
「俺、そんな趣味は無いで!」
「違うって……修行だよ、修行! 小太郎も強くなりたいでしょ?」
修行という言葉に反応した小太郎は腕を組んで考える。
何を考えているのか大体の事は予想できる。
それぐらいしてくれないと木乃香達にすら負けそうだ。
木乃香さんは例外で良い気がする。星光破壊とかいう非常識の塊を生み出したのだから。
僕が使用すれば、世界の1つや2つ軽くってそんな話はどうでもいいな。
とにかく、小太郎のレベルも上げとかないと魔法世界でさよなら状態だ。
答えが決まったのか、小太郎は口を開く。
「いいで!」
「じゃあ勉強しようか」
「ああ」
テーブルの上に勉強一式を置き、小太郎の向かい合わせで勉強を教える事になった。
途中、わからないとか寝言をほざいたから魔法の矢でお仕置きしておいた。
……数時間後
窓から見える空は真っ暗だった。
よく考えてみると当然だ。放課後は既に3,4時過ぎになっていた。
小太郎の勉強に付き合っていると夜になるのは当り前。
空の光景を見てエヴァの別荘に行ってない僕はエヴァ達の現状を想像して青ざめた。
「明日菜さん達、怒ってるだろうなぁ」
「ネギ、お前本当に教師やったんやな!」
「失礼だな」
「普段のネギを見てると有りえへん!」
全くその通りです。
これでも外時間で言うと1000歳なんだから
僕の時間別荘や異世界分も含むと何歳か知らんが。
「もう夜や」
修行時間が無くて嘆いているようだ。
小太郎のせいなんだけど仕方がない。
奥の手を使うため、僕と同化してる権限の鍵を起動させる。
起動させるというよりもそういう機能を起動させる意味ね。
「世界の修正力削除、時間逆行3時間前指定、場所、現在地。記憶継承ネギの関係者のみ始動」
0コンマ1すら経過せずに言い終わった瞬間、権限の鍵が発動し時間が巻き戻る。
窓の景色が暗いから夕焼けになった。
いきなりの現象に小太郎が驚く。
「どうなってんねん!」
「さぁ……」
説明が面倒だから、しらばっくれる事にした。
この時間逆行って今の僕だと権限の鍵使用じゃないとできない。
僕は権限の鍵を常時警戒モードに切り替え、小太郎に聞く。
「小太郎、修行しに行く?」
「ええで、何か知らんけどラッキーや」
嬉しそうな表情で拳を突き出す。
じゃあエヴァの別荘に行こうか。
「行くよ」
「あの転移やな?」
小太郎の口ぶりからすると、知ってるみたいだな。
興奮してる小太郎を見て苦笑いした僕は魔法陣を地面に敷き、一言だけ呟く。
「極移」
僕と小太郎は魔法陣と共にこの場から消え去った。
残されたのはその反動でエンピツが転がる音だけだった。
第37話『学園祭編2・後19日、修行とう~み』へ
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次の話は題名通りで、学園祭編や今後の魔法世界編の(かなり小さい欠片程度の)フラグが存在します。
原作の年齢詐称薬は別に出てきます。
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