No.384628

桜ちゃんはバレンタインデー前日に薄い腐った本を拾いました前編

バレンタインの時にpixivであげたもの


2012お正月特集
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2012-02-29 00:29:25 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2962   閲覧ユーザー数:2770

桜ちゃんはバレンタインデー前日に薄い腐った本を拾いました前編

 

 

 冬木という街に間桐さん家という魔術師一家がいました。

 間桐さん家は昔は名門としてその業界ではとても有名でした。ですが今ではとても落ちぶれてへっぽこ魔術師一家になっていました。

 間桐家の当主はおじさんのお兄さんという人でしたが、魔術師の才能がまるでなく昼間からお酒ばっかり飲んでいるへっぽこな人でした。 

 おじさんのお兄さんには子供が2人いました。男の子と女の子が1人ずつです。

 お兄さんの男の子は名をワカメと言いました。本名は他にあるのかもしれませんがワカメで十分です。

 妹の女の子は名前を桜ちゃんと言いました。間桐家にはあり得ないとても可愛い女の子です。

 それもその筈、桜ちゃんはへっぽこ魔術師一家を救う為に名門遠坂家から養女にやってきた救世主だったのです。

 こうしてワカメには可愛い妹が、桜ちゃんにはへっぽこなお兄さんがある日突然出来たのでした。

 

 桜ちゃんが間桐家に来た当初、兄妹の仲は良くありませんでした。

 ワカメは人間が出来ていなかったので余所からやってきた桜ちゃんを邪魔に思って虐めていたのです。

 でも、虐めはすぐになくなっていきました。

 ワカメが綺麗なワカメになって性格が変わっていったからです。

 

 おじさんのお兄さんのお父さん臓硯おじいちゃんは桜ちゃんが家にやってきたあの日、桜ちゃんと間違えてワカメを蟲蔵に放り込みました。

 ワカメの方が掴み心地、投げ心地が良かったのです。欲望に従って投げ入れてしまいました。

 蟲蔵の中でワカメの人生は一変しました。

 何かとても大切なものを失ったワカメは代わりに身も心も綺麗になりました。

 そして魔術師として覚醒したのです。

 臓硯おじいちゃんは覚醒した綺麗なワカメを見て急に血縁愛に目覚めました。

 そして貰われ子である桜ちゃんを露骨に差別し、魔術師としての修行を施すのを一切やめてしまったのです。

 桜ちゃんが蟲蔵に入ることはありませんでした。代わりに毎日松坂牛ばかり食べることを強いられて幼いながら体重を気にする日々を送ることになりました。

 

 桜ちゃんは来た当初、意地悪なワカメが嫌いでした。ですが、段々と綺麗に、そして善い人になっていくので嫌わないようになりました。

 だけどこの展開は桜ちゃんにとってあまり好ましいものでもありませんでした。

 

 桜ちゃんが間桐家に来てから数日、将来お嫁さんになりたいと真剣に思っている大好きなおじさんが数年ぶりに間桐家に戻って来ました。

 おじさんは間桐雁夜という名前で、まだ20代でしたが桜ちゃんの前で自分のことをおじさんと名乗っていました。

 桜ちゃんのお母さんである葵さんはおじさんのお姉さんのような人で、おじさんは葵さんが大好きでした。だからおじさんは昔から桜ちゃんと昔から度々会っていたのです。

 そのおじさんは凄い剣幕で家の中へと入り、蟲蔵へと入りました。

 そこでおじさんが見たもの。

 それは、蟲の海に浮かんでいる綺麗なワカメでした。それはまさに海中を思わせる神秘的な光景でした。

 

「何の問題も存在しないな」

 

 おじさんは臓硯おじいちゃんにお土産のお饅頭を渡して蟲蔵を出ました。臓硯おじいちゃんはお饅頭にイチゴが入っていることを知ってこれからはおじさんと仲良くしようと思いました。

 

 桜ちゃんはおじさんに会えるのを楽しみにしながら待っていました。

 桜ちゃんはまだ幼い女の子でしたがもう立派な恋する乙女でした。 

 間桐家に引き取られて不憫な生活を送っている自分に優しく声を掛けて抱きしめてくれる瞬間を楽しみにしていました。

 大好きな人にギュッと抱きしめてもらえるのは女の本懐だと勢い込んでいました。

 そして運命の時がやって来ました。

 

「お、おじさん……」

 

 桜ちゃんは蟲蔵から出て来たおじさんに声を掛けました。

 頬は上気して目は潤んでいます。

 よほど鈍くなければ恋する少女であることがすぐにわかる表情です。

 

「やあ、桜ちゃん。あの蟲じじいに酷いことをされたんじゃないかと心配したけれど、そんなことは全然なかったぜ」

 

 おじさんはよほど鈍い人でした。

 

「あのね、おじさん……っ」

 

 でも、恋する乙女の桜ちゃんはこれぐらいでは引き下がりません。恋する乙女は最強なのです。桜ちゃんはおじさんに食い下がりました。恋心を伝えようと必死です。

 

「そうだ。これは桜ちゃんへのお土産ね。はいっ、うさぎのぬいぐるみ」

「あっ、ありがとう……」

 

 お土産のうさぎのぬいぐるみを渡されて桜ちゃんはあっという間に懐柔されてしまいました。

 大好きなおじさんからのお土産に首まで真っ赤になってぽぉ~としています。

 

「それじゃあ俺は仕事があるからもうこれで行くね」

 

 おじさんは手を振りながら間桐屋敷を去っていきました。

 桜ちゃんはその後姿をぽぉ~となりながら見送っています。

 そしておじさんの姿が見えなくなって30分経ってから桜ちゃんは気が付いたのです。

 

「これ……私が望むルートじゃない……」

 

 桜ちゃんの顔は青ざめました。

 薄幸に陥っていない桜ちゃんはおじさんの興味を惹けません。

 セイバールートや凛ルートに入った士郎くん並に桜ちゃんに関心を寄せません。

 劇場版で桜ちゃんがどれだけ出て来たのか考えるとわかり易いほどに無関心です。ワカメ以下という屈辱です。

 

「ど、どうしよう……?」

 

 桜ちゃんはお土産のうさぎを抱きしめながら全身を震わせました。

 桜ちゃんの恋に大き過ぎる障害がこうして発生しました。

 

 

 桜ちゃんが間桐家に来てから数ヶ月が経ちました。

 桜ちゃんは1度も蟲蔵に入れてもらったことがありません。

 

「血の繋がった孫EVOLじゃっ!」

 

 1万年と2千年前から生きていそうな臓硯おじいちゃんは綺麗なワカメ贔屓です。

 桜ちゃんを1歩たりとも蟲蔵に近づけません。臓硯おじいちゃんはディフェンスに定評があるおじいちゃんでした。

 

「やあ、桜ちゃん。今日も元気そうで何よりだ」

 

 最近は臓硯おじいちゃんとの喧嘩もやめて時々帰って来るようになったおじさん。

 でもおじさんは桜ちゃんの恋心に全く気付きません。

 それどころか──

 

「いやぁ~実は今日凛ちゃんにあったらさぁ~俺にプレゼントだってこんなのを貰っちゃってさあ」

 

 おじさんはちょっとデレデレしながら『肩揉み券』と『足揉み券』を桜ちゃんに見せました。

 

「あの……赤い悪魔。体を使って……おじさんを誘惑する気なんだ……淫乱……ビッチ……泥棒猫……」

 

 凛ちゃんは桜ちゃんの血の繋がった本当のお姉さんでした。

 桜ちゃんと凛ちゃんは好きな男の子のタイプが似ていました。

 凛ちゃんもまたおじさんを狙っていると見て間違いありません。

 凛ちゃんは桜ちゃんよりお姉さんなので大人の魅力にも溢れています。そして積極性に溢れた行動派の女の子なのです。

 桜ちゃんにとっては大き過ぎるライバルの登場でした。

 

「このままじゃ……おじさんが……赤い悪魔に……寝取られちゃう……」

 

 桜ちゃんは大きな不安に駆られました。

 桜ちゃんは以前おじさんにもらったうさぎのぬいぐるみを持ち歩きながら屋敷内をグルグルと回り出しました。

 不安が桜ちゃんを突き動かしていました。

 そんな桜ちゃんを見ながら綺麗なワカメは心配そうな瞳を向けていました。

 

 

 考えた末に綺麗なワカメは桜ちゃんをお散歩に誘いました。

 

「おじさん……はぁ~」

 

 桜ちゃんはお散歩していても気分が晴れませんでした。

 そして桜ちゃんは昔の自分の家付近で、ライバルである凛ちゃん以上の攻勢以上の衝撃を受けたのです。

 

「間桐雁夜……大した腕だ。だが、君の動きには決定的に優雅が欠けているっ!」

「生憎……優雅などないのでなぁっ!」

 

 桜ちゃんのすぐ目の前で、桜ちゃんの実のお父さんである遠坂時臣さんとおじさんが本気の喧嘩をしていたのです。

 2人は全く桜ちゃんたちに気付かずに戦っています。

 激しいポカポカ合戦の後、時臣お父さんはおじさんから距離を取りました。

 時臣お父さんは必殺攻撃に移るつもりなのです。

 

「I am the bone of my dust….」

 

 対するおじさんは絶対の防御の構えに入ります。

 そして……

 

「遠坂魔術究極秘奥義、“カッコいいポーズ”っ!!」

 

 時臣お父さんが必殺魔術を発動させました。

 謎の光がおじさんに向かって襲い掛かります。

 それに対しておじさんは……

 

「ポリバケツの蓋(熾天覆う七つの円冠)っ!」

 

 優雅という概念に対して無敵という概念を誇る結界を展開させたのです。

 時臣お父さんの光った謎の光はおじさんの盾を砕いていきます。

 ポリバケツの蓋は元の半分、いいえ、7分の1まで粉砕されました。

 ですが……

 

「私の“カッコいいポーズ”を防いだだと?」

 

 盾は完全に砕け散るその直前で時臣お父さんの攻撃を防いだのです。

 

「貴様、何者だっ!」

「桜ちゃんと凛ちゃんのおじさんだっ!」

 

 時臣お父さんとおじさんは険しい剣幕で睨み合っています。

 

「娘たちにこれ以上近付いたら殺すっ!」

「だが断るっ!」

 

 2人の争いは止みそうにありませんでした。

 時臣お父さんとおじさんの大喧嘩を見ながら桜ちゃんは大きなショックを受けていました。

 

「これじゃあ……おじさんとの結婚を……お父様は許してくれない……」

 

 おじさんとの結婚の了解を時臣お父さんに貰いに行ったら100%反対されそうでした。それは桜ちゃんの今後の人生計画に大きな支障をきたしかねない問題でした。

 

「ど、どうしたら良いの……?」

 

 桜ちゃんは今にも倒れてしまいそうでした。

 そんな桜ちゃんの背中を支えたのはお兄さんの綺麗なワカメでした。

 綺麗なワカメは考えました。

 どうすれば桜ちゃんは元気を取り戻してくれるだろうかと?

 綺麗なワカメは地の文でしか喋れないので直接桜ちゃんを元気付けることができません。

 だから綺麗なワカメは他のことで元気付けようと考えました。

 すると綺麗なワカメは先ほどおじさんが宝具を発動させたすぐ脇に薄い本が捨てられているのを発見しました。

 2人の制服姿の少年が表紙に描かれている漫画のようでした。

 それを見て綺麗なワカメはピンと来ました。

 綺麗なワカメは桜ちゃんにこの漫画をプレゼントしようと思ったのです。

 臓硯おじいちゃんもおじさんのお兄さんも漫画を嫌っていたので間桐家には漫画がありません。

 桜ちゃんに漫画でストレスを発散してもらえば良いと綺麗なワカメは考えました。

 少年同士が抱き合っている表紙に少し違和感を覚えましたが、綺麗なワカメはその薄い本を持って帰りました。

 

 

 

「えっ? 一緒に……ご本読むの? うん、わかった」

 

 桜ちゃんは綺麗なワカメと一緒に薄い本を読むことになりました。

 綺麗なワカメは拾ってきた本の表紙を改めて見ます。

 表紙の上段には題名が書いてありました。

 

『 喧嘩するほど中が良い 雄二と明久の情事  R-18』

 

 意味はわかりませんでしたが、綺麗なワカメはR-18という文字に危機感を覚えた。

 そして表紙絵の隅には製作者の情報が載っていました。

 

『 ストーリー:木下U子

  イラスト:玉野ミッキー 』

 

 綺麗なワカメはこれは見てはならないものだと直感しました。何故かはわかりませんが、そう思ったのです。

 綺麗なワカメは読書会を中止にしようと思いました。でも、この表紙に興味を持ってしまったのは桜ちゃんの方でした。

 

「漫画……楽しみだなあ」

 

 好奇心に満ちた目で桜ちゃんはページを捲りました。

 

 

 

 

 僕と雄二は仲が悪い。

 それは学園の誰もが知っていること。

 

「おいおいおい。どうしたんだ? もう降参か? 俺はまだまだこれからだってのによ」

「フッ。バカ言ってんじゃないよ。僕の全力はまだまだこれからだよっ!」

 

 雄二は僕に意地悪だ。いつも自分勝手に振舞う。

 それも学園の誰もが知っていること。

 

「ほぉ~。随分元気そうじゃねえか。なら……俺ももっともっと本気を出して良いってことだな。おらぁ~っ!」

「ちょっ!? 幾らなんでもそれは……っ!?」

 

 僕と雄二は仲が悪い。なのにいつも一緒にいる。

 それも学園の誰もが知っていること。

 

「これでフィニッシュだぁ~~っ!」

「そんな一方的に……ひ、酷い……っ」

 

 何でこんなにも意地悪で仲が悪い雄二と一緒にいるのか?

 その本当の理由を知っている人はきっとこの学園にほとんどいない。

 秀吉とムッツリーニぐらいのもんだと思う。

 その本当の理由。それは……。

 

「ワリィ。疲れたからもう寝るわ」

「ちょっ……ちょっと待ってよ。僕はまだ……」

 

 雄二は僕に圧し掛かって本当に寝てしまった。

 180cmの巨体、しかも筋肉質の男に覆い被られては中肉中背の僕に出来ることは何もない。

 このまま朝を待つしかなさそうだった。

 

「何でこんなヤツ……好きになっちゃったんだろう?」

 

 どうしようもなく自分勝手で俺様本意な乱暴男。僕のことなんか全く考えず自分だけ満足するとそのまま寝てしまう。

 そんな男を、そんな坂本雄二を……僕は好きになってしまった。

 

 僕と雄二の関係は何だろう?

 恋人……ともちょっと違う。

 雄二は僕の体を一方的に貪るだけ。愛の言葉なんかちっとも囁いてくれない。

 僕としてもそんなものを囁かれたいとも思わない。

 じゃあ、やっぱり親友?

 でも、親友というには僕たちの関係は深過ぎる。

 きっと世間一般の親友という言葉には性的な物は含まれていないと思うし。

 じゃあ、何だろう?

 

「俺と明久の関係なんて……喧嘩友達でいいじゃねえか」

 

 雄二が寝言を発した。まるで僕が考えていることが雄二の夢になって現れているみたいなシンクロだった。

 

「そうだね。僕と雄二は喧嘩友達、だよね」

 

 僕は寝ている雄二の頬にそっとキスをした。

 そう。僕と雄二は喧嘩友達。

 きっと明日も明後日も喧嘩して、そして……愛し合うんだ。

 それが僕と雄二の仲。

 僕と雄二は喧嘩するほどに仲が良い喧嘩友達なんだ。

 

「明久~。避妊してないけれど妊娠とか大丈夫か~?」

「そんな心配寝言でしなくて良いよっ!」

 

 僕の喧嘩友達は終始こんな調子なのだ。

 

 

 

 

 綺麗なワカメは目の前で展開されている漫画の内容に驚愕していました。

 こんな漫画が世の中に存在していいのかと歯を鳴らしています。寒気が全身を渦巻いています。

 綺麗なワカメも毎日似たような目に遭っていますが、この漫画は別世界のものでした。

 

「…………ゆ、ユニバース……」

 

 一方、桜ちゃんはこの未知の世界に夢中になっていました。

 幼い桜ちゃんにはこの薄い本に書かれている内容を理解できません。でも、そこに広がる世界がユニバースであることはわかりました。

 桜ちゃんは目を爛々と輝かせながら続きを読もうとしています。

 そんな妹の様を見て綺麗なワカメは慌てて本を閉じました。

 

「どうしたの? 続き……読もうよ?」

 

 桜ちゃんのこんなホクホクした顔を見たのは綺麗なワカメにとって初めてのことでした。

 でも、綺麗なワカメもお兄さんとして意地があります。

 薄い本を胸の前で握り締め必死に首を横に振ります。

 この本は桜ちゃんを体の内側から腐らせてしまうものだと直感しました。

 蟲に蹂躙され尽くした綺麗なワカメだからこそ体の大切さがわかるのです。

 綺麗なワカメは妹が腐ってしまわないように必死でした。

 

 綺麗なワカメが必死に防御したので桜ちゃんはそれ以上本を読むことが出来ませんでした。

 でも、それは代わりに意識がまた先ほどの嫌な光景に向かってしまうことを意味していたのです。

 そして桜ちゃんは恐ろしいことに気付いてしまいました。

 

「そう言えば……おじさんとお父様も仲が悪いのによく一緒にいる。これって、もしかして……2人は喧嘩友達なんじゃ?」

 

 それは桜ちゃんがこれまで生きてきた中で最も恐ろしい想像でした。

 桜ちゃんは今まで時臣お父さんとおじさんは仲が悪いとしか考えていませんでした。

 でも、先ほどの薄い本を見てその考えは間違っているのかもしれないと思いました。

 時臣お父さんが雄二と重なって見えました。おじさんが明久と重なって見えました。

 そして2人は夜のベッドで……。

 

「もしかして……お父様がわたしの恋の最大のライバル……なの?」

 

 口に出してみて、桜ちゃんはそれを否定することが出来ませんでした。

 桜ちゃんはこれまで、お母さんの葵さんがおじさんを巡る最大のライバルだと思ってきました。

 そこに恋のライバルとしてお姉さんの凛ちゃんが参戦して来ました。

 そして、最強の敵として喧嘩友達である時臣お父さんが満を持して登場したのです。

 

 雁夜おじさんは遠坂家の人間にモテ過ぎでした。

 

 

「ど、どうしよう……?」

 

 桜ちゃんは再び体を震わせました。

 桜ちゃんの恋のライバルは、時臣お父さん、葵お母さん、凛お姉さんといずれも強敵揃いです。

 同棲というアドバンテージもないので、ハイスペックを誇る遠坂一家は桜ちゃんにとってあまりにも高い壁となって立ちはだかったのです。

 

 当惑する桜ちゃんを見ながら綺麗なワカメは何とか妹の手助けになれないかと考えました。

 するとカレンダーが目に入りました。

 今日は2月13日です。

 つまり、明日は2月14日です。

 綺麗なワカメは起死回生の逆転劇を頭に思い浮かべました。

 そしてそれを伝えるべく桜ちゃんの肩に手を乗せました。

 

「えっ? 桜が……チョコレートを作っておじさんにあげるの?」

 

 桜ちゃんの質問に対して綺麗なワカメは力強く首を縦に振りました。

 

 

 果たして桜ちゃんはおじさんにチョコと想いを伝えることが出来るでしょうか?

 桜ちゃんの恋の行方は?

 そして、この後綺麗なワカメはどんな酷い目に遭うのか?

 

 

 後編に続きます。

 

 

 


 
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