No.380649

【BP】プロローグ【Folece Side.】

 

 フォル(http://www.tinami.com/view/380646 )視点のプロローグ的な文章。
 (話を進める上で不都合があったので、三人称に書き換えました)

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2012-02-20 01:42:30 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:596   閲覧ユーザー数:586

 

 

 

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「ここが、アクトティニア?」

 

 青く澄み渡る空の下。鬱蒼と生い茂る森のすぐ側に、一人の仔狼が呆然と立ち尽くしていた。まるで今自分が見ているものが夢の出来事であるかのような、現実には不釣り合いな異様な光景を眺めているような。そんな声で呟きながらひたすらに前を見つめている。

 しかし、そんな仔狼自身の見た目もかなり異様である。濃紺のマントで灰色の体をすっぽりと覆い隠し、そこからわずかに見えている足には何も履いていない。そもそもその体躯もまだ未成熟で発達途上といったところで、雄としては小さい部類に入るだろう。そんな何から何までちぐはぐな容姿をした彼は、くしゃくしゃになった紙切れを右手で取り出すと低く唸った。

 

「森を抜けると田園が目の前に広がり、その少し先に住宅街が……って教えてもらったのに。まさか、こんなに酷いなんて」

 

 彼は自分の手元にある地図を何度も確認しながら歩いてきた。だから道に迷う事はないはずだし、遠くからでも確認できる巨大な城はここが目的の国である事を明らかに示している。それでも、思わず疑問を呟かずにはいられなかったのだ。

 本来ならもうとっくに国土に足を踏み入れているはずなのに、目に入るのは――荒野。民家はおろか、田畑の一つすら見当たらないのだ。厳密に言えば、遠くの方には家屋らしき影が見えるのだが。

 

 

 彼がこのアクトティニアに訪れたのは、とある小さな国の街角にあった掲示板の貼り紙を見たからだった。

 

“国の再興の為 人材募集!”

 

 自分が身を置ける場所を探していた仔狼にとって、その内容はまさに今自彼が必要としているものだった。それが故に、気付いた時には近くにいた人にアクトティニアへの道を尋ね、次に我に返った時にはもうその道中に立っていたのだ。その事を後悔するつもりは、今の彼には全くない。

 だが、それでも流石に予想できる範疇からはみ出しすぎてる。こんなに酷い状態だとは、彼は思ってもみなかったのだ。

 

「一体、何が起きればこんな事になるんだろう」

 

 地震や台風のような天災の類ならこの国だけが荒廃する原因にはなり得ないし、戦争などで負けたのだったら再興募集をかけるのはおかしい(勝った側が負けた側の戦力増強なんか認める訳が無い)。そもそも、どちらにしたってこんなに荒れ果てた光景を作り出せるとは思えない。

 まるで、国全体が地獄の炎に焼き尽くされてしまったかのような……瓦礫すら疎らにしか視界に入らない景色。そんなものを、一体何が作り出せるというのか。

 

「……考えてても仕方ないか」

 

 とりあえず城は無事のようだし、ここがアクトティニアである事実も変わらない。それならば、彼が再興の為に出来る事は沢山ある。

 それは、彼にとっては紛れもなく悪くない事だった。

 

「とにかく、城に行ってみよう」

 

 そういって歩み始めた彼の後ろを、金属の擦れる小さな音がついてきた。

 

 

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