二回戦終了後、休憩時間の会場内廊下
「ちっ・・・」
舌打ちをする一刀。
凪の前で体調を崩した時と同じで、その顔は青ざめており、床に座り込んでいる。
体が消えて無くなったような虚脱感。
それが一刀を苦しめていた。
凪と一緒の時よりも、苦しみは増している。
「・・・華佗にでも見てもらうか」
息絶え絶えな状態で渋々そう言う一刀。
しかし・・・
「残念だけど」
「だーりんでも治す事は出来ん」
一刀が振り返ると、いつからいたのか貂蝉と卑弥呼が一刀の背後に立っていた。
「・・・どういう事だ?」
「・・・卑弥呼」
「うむ、もう言ってもよいだろう」
卑弥呼の方を向いた貂蝉は、その言葉を聞くと一刀に向き直り、
「ご主人様。全て話すわ」
一刀に語り始めた・・・・・・
貂蝉は外史についての説明を淡々としていった。
そして、歴史を大きく変えた者の末路についても・・・
「ふ~ん、外史ね。どおりで俺の知ってる三国志とは違ったわけだ」
貂蝉から話を聞いた一刀は、頷きながら言った。
「それで、俺はもうすぐ消えるって事か?」
「ええ・・・」
沈んだ声で話す貂蝉。
「阻止する方法は?」
「無い。ここまで歴史が違ってしまってはもう・・・」
卑弥呼が神妙な顔で言う。
「そうかい・・・」
一刀はそう言うと、体調も落ち着いたようで立ち上がり、
「んじゃ、そろそろ行くか。・・・後どのくらい持つか知らんけど」
頭を掻きながら、闘場に向かって歩いていった・・・
「・・・本当に言ってよかったのかしらん?」
「そんな事も分からんのか!だからお前はアホなのだ!」
卑弥呼に叱責される貂蝉であった・・・
所変わって・・・
「さあ!様々な闘いが繰り広げられた武道大会もいよいよ大詰めです!最後に立っているのは、果たして誰なのでしょうか!?」
「「「「おおおおおおおお!!」」」」
観客の咆哮がコダマする。
闘場には残った三組が勢揃いしていた。
「さて、ここで改めて残った三組をご紹介しましょう!呉の次期君主としての意地を見せられるか!?呉の蓮華・思春組!」
「・・・(ギロッ!)」
「し、思春。気持ちは分かるけど試合に・・・」
睨みながら殺気を審判の一刀へ向ける思春と、試合に集中させようとなだめる蓮華。
「経験では圧倒的に上の大人の二人!蜀の紫苑・桔梗組!」
「ひよっこたちに戦い方と言うものを教えてやるかのう?」
「ええ」
緊張するそぶりも見せず、落ち着いている紫苑と桔梗。
「食べる、作るの役割が見事に分かれた仲良し二人組。元、魏の季衣・流琉組!」
「よーし!優勝するぞ~~!」
「うん!」
気合を入れる季衣と流琉。
「え~、それでは試合形式についてお知らせがあります。決勝は三組入り乱れての一大決戦となります。規則自体は同じで、最後に残っていた二人が優勝となります」
「一組ばかりに気を取られていたら、もう一組にやられるなんて事もありえるわね。難しい試合になりそうね」
そういいながら、華琳は嬉しそうだ。
「さあ!決勝戦の始まりです!」
今までとは違い、三組は中央から少し離れた場所で綺麗に三角形を描くように位置取った。
そして
「これで最後だ!最終戦・・・開始!!」
一刀もとばっちりを食わないように、場外から試合開始を行ったのだった・・・・・・
試合が始まって二十分。
選手は誰一人動いていなかった。
というか、動けなかった。
一組が動いてもう一組とやりあえば、自然と残った一組が有利になるのは明白である。
そのため、警戒しながらも動けない三竦みの状態が形勢されてしまっていた。
緊張感が高まる試合場。
観客も誰も声を発さない。
そして選手たちは気だけが溜まっていた。
そんな時、
(むずむず)
「ハクション!!」
季衣が大きなくしゃみをした。
ビクッ!
「「はあああ!」」
そのくしゃみによって溜まっていた気が暴発してしまったようで、蓮華と思春は突っ込んでいった。
紫苑、桔梗の方へ。
殺気の量が、季衣と流琉より多かったのが原因であった。
「ぬう!」
ドーン!ドーン!
「はあっ!」
ヒュヒュヒュヒュ!
応戦する紫苑と桔梗。
その戦いを取り残される形となった季衣と流琉は、とりあえず見ていたのだった・・・
一度戦い始めてしまえば、簡単に止める事は出来ない。
残された季衣・流琉組が気にはなるが、こうなってしまった以上、少しでも早く目の前の敵を片付けて季衣たちに挑むしかないと、二組共に判断した。
戦況は・・・紫苑・桔梗組優勢だった。
思春は矢と砲弾を潜り抜けてなんとか近づいて行けたが、蓮華は避けるのが精一杯だった。
ガッ!
「くうっ!」
蓮華の左腕に矢が当たった。
「蓮華様!」
「来るな!」
自分の所へ戻ってこようとする思春を止める蓮華。
「これくらい何ともない!私の事を案じるなら思春!私に勝利を!!」
「!」
蓮華の叫びにハッとする思春。
「・・・必ず!」
主の声に応え、前だけ見据えて突っ込んでいく思春。
「それでいい・・・」
左腕を庇いながらも攻撃を避ける蓮華。
全ては思春の手に委ねられたのだった・・・
そんな一連の流れを見ていた季衣たち。
「流琉。ボクも参加したい!」
「うん。見てるだけって、何か嫌だよね・・・」
「じゃあ行こう!」
「うん!」
見ていただけだった季衣たちも戦闘に参加した。
彼女たちの狙いは紫苑、桔梗。
今度は紫苑たちが劣勢になる番だった・・・・・・
「まずいわね」
「うむ・・・」
凄まじい気迫で紫苑たちに迫る思春。
そしてそれぞれ別方向から攻撃を仕掛ける季衣と流琉。
それぞれに対応するため、思春と蓮華を紫苑、季衣と流琉を桔梗が攻撃していた。
しかし、思春は好機とばかりに距離を詰めてくるし、季衣と流琉は二手に分かれているため両方を足止めできない。
張り付かれるのは時間の問題。
そこで、紫苑と桔梗は目配せし合い、
ドーン!
ヒュヒュヒュ!
攻撃を一点に集中した。
その狙った先は・・・蓮華。
思春の後ろで派手な音が響く。
しかし思春は振り向かず、神速で間合いを詰め
「終わりだ!!」
紫苑に斬撃を見舞った・・・
現在、思春と季衣、流琉の戦いが繰り広げられていた。
思春の一撃は紫苑の首筋でピタリと止まっており、紫苑はため息をついてギブアップ。
こうして残ったのは蓮華・思春と季衣・流琉の組となった。
その時、思春は蓮華の方を振り向いたが
「・・・・・・」
蓮華は立っていた。
いくらか攻撃が当たっていたようでボロボロであったが、剣を支えにして、今にも倒れそうであったが確かに立っていた。
それを見た思春はすぐさま季衣、流琉へと攻撃を開始した。
全ては主のために。
ガキン!キン!ギィン!
「わわ・・・」
「くうっ!」
思春の気迫、そして烈火のような激しい連撃に季衣たちは二人がかりでも押されていた。
そして・・・
「このーー!」
「えーい!」
季衣は飛んで上から、流琉は犬の散歩の要領で闘場を破壊しながら思春めがけて攻撃してきた。
それを、
「でやぁーーー!!」
ガキィン!!
鉄球は渾身の一撃で弾き飛ばし、ヨーヨーは飛び越えて避けた。
「「ええ!?」」
あまりの事に動揺する季衣たち。
思春は着地直前の季衣へ向けて一撃を加えようとした。
が、
「それまで!優勝は季衣、流琉組!!」
いつのまにか闘場に上がっていた一刀の声が響き、その攻撃は止まった・・・・・・
「貴様!どういう事だ!!」
一刀の方を向いて怒りを露わにする思春。
もう少しで蓮華に勝利を届けられたのに、邪魔されて敗北宣言をされたのだから無理もないが・・・
「・・・ん」
一刀は蓮華を指差した。
思春は蓮華を見た。
さっきと全く変わらない姿で立っている。
・・・本当に、少しも変わらず・・・
「蓮華・・・様?」
思春は蓮華に近づいて声をかけた。
「・・・・・・」
蓮華から返事はない。
顔は下を向いていて見えない。
思春は覗き込むように、主の顔を見た。
「・・・・・・」
蓮華の目に光は無かった。
立ったまま気を失っていたのである。
「気付くのに時間がかかったけどな。お前の主はたいした女だよ、ほんと」
一刀の声に思春は答えない。
彼女は蓮華に対して跪き、頭を垂れて
「・・・申し訳ありません蓮華様。思春は貴方に勝利をお届けする約束、果たせませんでした・・・」
震えながらそう言った。
場内は、衝撃の結果に静まり返っている。
こうして
波乱の相次いだ武道大会は
幕を閉じたのだった・・・・・・
どうも、アキナスです。
長い長い武道大会も、幕を閉じました。
バトルシーン難しい!
こんだけ書いても全然上手くならないんですから!
それと、予告します。
アナザーもうすぐ終了します。
終わらせてまた長編書くか、それとも異聞を先に終わらせるか悩んでますが、とにかくアナザーは終わります。
そんな悩みを抱えながら次回に・・・・・・
「フラッシュチャリオット!!」
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フラグ、そしてラストバトル・・・・・・