『改訂版』第一部 其の三
時は同盟軍の虎牢関戦開始直後に戻る
【エクストラturn】
戦闘開始を告げる銅鑼が鳴り止まぬ内に、霞が騎馬隊を連れ出陣してきた。
その数壱千。
汜水関の華雄救出戦の時の倍。
「攻撃開始やあああぁ!!いてこましたれえぇいっ!!」
二十に分けた騎馬隊がその機動力を活かし一撃離脱の波状攻撃を繰り返す。
それを受け止めるのは曹操軍と孫策軍。
矢の応酬が天を覆い、その下で刃を交える両軍先鋒の兵達。
「ちょおおおおぉぉりょおおおおぉぉ!!貴様の相手はこの!夏候元譲だあああああぁぁぁっ!!」
春蘭が雄叫びと共に一騎で突っ込んで来る。
「現れよったな!・・・・・・・・・おっちゃん、すまんけど隊の指揮頼むわ。」
「心得ました。ご武運を。」
中隊長は余計なことを言わず、霞の思いを汲んで従った。
霞は愛馬から降りて飛龍偃月刀の石突きを地面に突き刺し、腕を組んで春蘭を待ち構える。
その姿、正に威風堂々!
「貴様!どういうつもりだっ!?」
霞の目前で止まった春蘭が訊く。
「あんたん
それを聞いた春蘭は喜色満面で馬から飛び降りた。
「面白いっ!思う存分やってやるぞ!張遼っ!!」
春蘭が七星餓狼を構え、それを受けて霞が飛龍偃月刀を地面から引っこ抜き、一度大きく振り回してからピタリと切っ先を春蘭に向けた。
「ほんならいくでええええぇぇぇっ!!」
「でやああああああああぁぁっ!!」
お互いが走り込み、刃と刃をぶつけて火花を散らす。
十合、二十合、三十合と重ねて斬り結ぶ内に、両者の顔には我知らず
「あーーっはっはっはっは!いいで夏侯惇っ!あんた最高やわ!こんなおもろいんはひっさしぶりやで!!」
「はーーっはっはっはっは!私もだ張遼っ!!」
その瞬間、春蘭の左目に矢が突き立った。
「ぐわあああああああああああああっ!!」
霞は自分の目が信じられなかった。
さっきから
その
しかし春蘭の左目に突き立った矢は余りにも殺気が無く、二人の視界から消えていた。
「しっかりせい夏侯惇っ!!そんなへろへろ矢で・・・」
霞は自分の獲物を放り投げると春蘭に向かって駆け寄ろうとする。
「来るな張遼っ!」
左手で矢を抑え、右手で霞を制止する。
「春蘭っ!!」
「姉者っ!!」
一騎打ちを見ていた華琳と秋蘭が駆け寄ろうと走り出す。
「来ないで下さいっ!華琳様っ!!秋蘭も来るなっ!!」
春蘭の気魄に二人は足を止めた。
「この私の身体は髪の毛一筋まで華琳様の物。決して無駄に捨てたり致しませんっ!我が覚悟をご覧くださいっ!!」
雄叫びを上げて矢を左目ごと引き抜くと、その左目を飲み込んだ。
「・・・・・・華佗を・・・・・・季衣っ!流琉っ!華佗をここに連れて来なさいっ!!早くっ!!」
春蘭から一瞬も目を離さず華琳は叫んだ。
「「は、はいっ!!」」
二人は
「これで我が
「アホぬかせっ!!」
春蘭の呼びかけで我に帰った霞は思わず叫んでいた。
「・・・・・ウチの負けや・・・武人の誇りを賭ける言うたやろ。ウチの完敗や・・・・・・煮るなり焼くなり好きにせいっ!!」
霞はその場にどかりと胡座をかいた。
「むう、そうか?・・・・・華琳様!張遼の調略、終わりました!!」
左目から血を流しながら笑う春蘭に、華琳と秋蘭が駆け寄り抱きしめた。
「・・・春蘭・・・・・・本当に馬鹿な子・・・・・・・・・あなたは私の誇りよ・・・」
華琳が涙を流していた。決して人前で泣く姿を見せなかった華琳が・・・。
「張文遠、夏侯惇の妹として心からお礼申し上げる。私は夏侯淵妙才だ。立ってもらえぬか?」
秋蘭は霞の所に行き手を差し延べる。
「礼を言われる様な事何もしてへんけどな・・・・・・よっと。」
霞はその手を取って立ち上がった。
「あの場で姉者を斬り捨てる事も出来たであろうに・・・武器を捨て駆け寄ろうとしておいてか?」
「知らんわ。体が勝手に動いたんや!」
霞は顔を赤くしてそっぽを向いた。
「あ・・・そや、さっき夏侯惇が調略言うとったが・・・」
「うむ、そういう事だ。詳しい話はこちらが落ち着いてからになるが・・・とりあえず兵を・・・」
そこまで言って戦場全てで戦闘が止まっている事に初めて気が付いた。
「どうしたんだ一体・・・こちら側だけならまだしも・・・・・」
「まさか恋・・・呂布がやられた・・・・・・いや、それだけやったらこんな事態にならんはずや・・・・・」
両陣営から聞こえるざわめきの中、季衣と流琉が華佗を連れて戻って来た。
【緑一刀turn】
兵達がみんな戦闘を中断してるけど、ざわめく声が戦場全てから聞こえてくるな。
そのざわめきの中を俺たち『北郷一刀』三人と恋、陳宮、愛紗、鈴々、星、貂蝉、卑弥呼、そして案内役の明命を先頭に走り抜けていく。
辿り着いた先では華佗が春蘭の治療をしていた。
「貂蝉と卑弥呼は華佗の助手をしてあげてくれ。」
「まかせてちょうだい。」
「心得た。」
残りのメンバーで少し離れた所に居る華琳、霞、季衣、流琉、秋蘭、雪蓮、冥琳の所へ向かった。
俺が紫の眼を見ると頷いて華琳に話しかけた。
「華琳!春蘭は・・・・・・」
「・・・・・・・今は命に別状無いそうよ・・・華佗は傷口が腐ったり、化膿しない様にしてくれているわ・・・・」
目蓋が腫れて涙の跡が見える。
華琳が泣くなんて・・・・・・しかもこんなに人目の在る場所で・・・・。
「そうか・・・・・まずは一安心だな。」
無言で頷く華琳・・・・・・むしろ華琳の方が心配になってくるな。
「その子が呂布ね・・・まさかとは思ったけどやっぱりそういう事だったのね。」
振り向いて俺達を見た華琳は、この戦闘が止んだ理由を把握したみたいだ。
・・・・・これは状況を整理する時間が欲しいな・・・・・。
「なあみんな。少し全員で話し合う時間を作らないか?」
俺の声に冥琳が答える。
「何を言ってるんだ、緑北郷。戦闘が終了してしまって・・・・・成程、折角戦闘が早くに終結したんだ。こちらの会議をする時間も貰ってしまうか。」
冥琳は話が早くて助かる。華淋も無言で頷いていた。
「それじゃあみんな、兵達に戦闘をしている振りをさせてくれ。」
虎牢関内一室
【緑一刀turn】
実際に合戦させる訳じゃなく、叫んだり、派手に音を立てさせたり、砂煙を立てさせるだけだけどね。
そうして稼いだ時間で俺達は虎牢関の中で会議を行う。
今この部屋に居るのは俺たち三人と桃香、愛紗、朱里、雛里、華琳、桂花、雪蓮、冥琳、蓮華、穏、白蓮、霞、恋、陳宮、そして貂蝉と卑弥呼。
ここに移動する途中に華琳の精神状態が心配だったので声を掛けたら、
「春蘭に、今は私がやるべき事をやってくれと諭されたわ・・・・・ふふ、あの春蘭によ。」
と、言っていた。
その瞳は春蘭の為にと、口上の時よりも燃えている感じだった。
「まさか本当に緑北郷が呂布を調略してしまうとはな・・・・・・貴様一体何をした?」
冥琳の言葉に、その場に居た愛紗と当事者の恋以外の女性陣から睨まれた。
っておい!陳宮はあの場にいただろうがっ!!
「俺は何もしてないって!!」
「私もあの場にいたが確かにご主人様は何もしておられない。呂布がご主人様を見たら殺気が消えて、武器を捨ててご主人様に飛びついたのだ。」
愛紗が戸惑いながらも擁護してくれた。
「なにそれ?」
雪蓮、そこで呆れないで!
「なあ恋、戦闘の前に北郷っちゅう名前気になるけど知らん言うとったよな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、言った。」
「ほんなら何で今はこの男らの事『ご主人さま』って呼ぶねん?」
「???・・・・・・・・・・・・・・・・ご主人さまはご主人さまだから。」
全員沈黙・・・・・・そりゃそうだ。
「こいつら、本当に妖術使いなのではないのですか?その妖術で恋殿を・・・」
「「「そんな便利な術が使えりゃ俺たちはとっくに大陸統一してるっての!!」」」
「まあ、確かにそういった妖しさは無いなぁ、ただのスケベェには見えるけど。」
またしても全員沈黙・・・・・。
「「「お願いだから、誰か否定して・・・」」」
「あの、みなさん・・・」
おお、朱里が否定してくれる!
「ご主人さまたちが助平に見えるのは仕方が有りませんが、『天の御遣い』の喧伝にこの状況は最高だと思うんです!」
・・・否定どころか流されました・・・・・・・。
「今、虎牢関にいる兵隊さんの間で『飛将軍が天の御遣いを一目見て、その威光に平伏した』という噂が広がっています。実際私や桃香さまは報告よりその噂の方が先に耳に届きました。」
「もしかして、戦闘が止まってざわめいてたのって・・・・」
「はい、その通りです。」
「うわあ・・・恥ずかしい・・・」
「この噂は放っておいても広がるでしょうけど、より我々に有利になる形で広めたいんです。例えば曹操軍、孫策軍、公孫賛軍の活躍も合わせて、各地に旅人に扮した兵隊さんを送り噂を広めてもらえば、我々への協力者を増やす事ができると思います。」
朱里の話をここまで聞いて、華琳が口を開いた。
「その話、劉備軍と公孫賛軍、そして私の処にはいい話だけど、孫策軍には致命的な不利益が発生するのではなくて?」
その言葉に冥琳が発言する。
「それは赤北郷の存在が袁術の知れる所になるという事か?」
「ええ、その噂が広がれば袁術が孫呉を警戒するのは明らかだわ。いくら馬鹿遠術でも。」
朱里が困った顔になるがそれでも発言する。
「それは私も考えました・・・・・・でも・・・冥琳さんも気付いていると思いますけど・・・」
「ああ、今現在の状況でも既に赤北郷の噂が広がる種になっている。赤北郷の存在は公にしてないだけで街中では結構名が知られてるからな。我らが御当主様が引っ張りまわしてくれたおかげでな。」
「うわ!なんか私に回ってきた!?」
冥琳に睨まれ、雪蓮が慌てる。
「それについては幾つか策を考えているから、我々ことは心配ない。むしろ派手にやってくれ、孫呉からも江東に噂を広める事もしておくぞ。」
「ありがとうございましゅ!そ、それではどのような噂を広めるかは、草案が出来次第みなさんにお渡しします!」
朱里は真っ赤になってペコペコと頭を下げまくっていた。
「さあ、ようやく本題に入れそうね。一刀たちが知りたがってた董卓の事が。」
ええ?何で華琳がそのこと・・・・・・紫が手を合わせて謝ってる・・・・なるほど・・・。
「あ~、張遼と陳宮に董卓の事を教えてもらいたいんだけど、お願い出来るかな?」
「ちょい待ち!陳宮はどうか知らんけど、ウチは自分に降伏したんやない!」
霞の凄みって本当に怖いんだよぅ。
でもなんとか眼から視線を外さずに堪えた。
「と、言いたいトコやねんけど・・・・・・ホントいうとウチらの扱いが宙ブラリンのまんまで、今の立場で言うていいのか判断が付かんねん。」
「その辺も含めて、この『天の御遣い北郷一刀』の話を聞いてみてくれるかしら?」
華琳が真剣な顔で言うので霞も頷いた。
「分かった。まずは話聞こうやないか・・・・・・・下らん話したら殴ってええ?」
「えぇ、構わないわ。」
うう、勝手に許可出された・・・・。
「それじゃあ・・・・・俺たち『天の御遣い北郷一刀』は董卓を助けたいと思ってる。」
驚きの声が上がった・・・・・・・・劉備陣営と孫策陣営から。
「ちょっと一刀!そんな話聞いてないわよっ!」
「ご主人さま!どういう事なの!?」
当然こうなるよね・・・・。
「なんか意思統一がされてへんのやけど?」
「うん、まだ話して無かったし・・・・・・みんなも聞いてくれ。俺たちに董卓がどんな人物なのか『天の遣いの知識』として有ったんだけど、それが正しいのか確証が得られるまでは言えなかったんだ。」
みんなが聞く態勢になるまで待ってから続きを話し出す。
「正しいと確信したのは、張遼と恋・・・呂布の言葉を聞いたからなんだ。」
「ウチ!?何か言うたっけ?」
まさかこんなことを言われると思ってなかったんだろうな、すごい慌ててる。
「口上で張遼が董卓は兵に大人気だって言ってたよね。」
「あ、あれか!?」
「それに呂布から『董卓が囚われている』って聞いてるんだ。この二つが確信した理由。俺たちは囚われた状態とこの状況から董卓を助けたいと思っている。」
「緑と赤の一刀は言わなかったみたいだけど、私達は紫の一刀に『確信』が得られたら助けたいって言われていたの。それを言い出せる状況が我が軍に有ったから・・・」
華琳が一呼吸置た。
「黄巾党の首謀者、張角、張宝、張梁、の三人はうちで匿っているわ。」
「「な・・・・・・・・それって本当!?」」
曹操軍以外の全員が声を出して驚いた。
けど俺と赤には希望に満ちた驚きだ。
一番説得が難しいんじゃないかと思っていた華琳がこんなことを言ってくれるなんて。
「あら、三人だけにさせてあげたとき、話してあると思っていたわ。」
「こんな機密はさすがに話せないって。」
言われて紫は笑って答えた。
「それではこれを覚えているかしら?」
華琳がそう言って一枚の絵を出した。
そこには髭もじゃの大男・・・でいいんだよな?腕が八本あって足が五本、角と尻尾が生えている絵が描いてある・・・・・・。
「これって、張角さんの姿絵として官軍が配布したものですよね。」
朱里に言われて思い出した。
いくらなんでもこりゃ無いだろうと思ってあまり見て無かったもんな。
「そしてこれが本物の張角の姿、真ん中のがそうよ。」
そう言って出された
「え~と・・・・・・・・俺はまず何からツッコミを入れたらいいんだ?」
俺の呟きに紫が俺の肩に手を置いて言った。
「後で説明するからここは話の進行上張角の姿にツッコミを入れてくれ。」
「・・・・・・・・うわー、姿絵と本人が全然違うぞー!(棒読み)」
「はい、ご苦労様。で、これがいま世間に流れている董卓の姿絵。」
それを見た恋、霞、陳宮の反応は・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・トゲトゲ。」
「張角よりは
「身の丈が大人の三倍で、こっちは角が五本も生えとる・・・・・・・どんだけ角が好きやねん!?」
「まあ、この反応を見るまでも無く、こんな姿絵では見つける事さえ無理でしょうね。」
紫が華琳の後に続いて霞に話し掛ける。
「反董卓連合決起の檄文には董卓が都で暴虐の限りを尽くしているって書いて在ったから、こんな絵になったと思うけど・・・・・・実際の董卓がどんな感じかをみんなに説明して欲しい。」
霞が納得したのか頷いてくれた。
「董卓はとっても優しい子や。でも、その優しさに付け込んで張譲のアホが騙して洛陽に連れて来てん。董卓と腹心の賈駆が幽閉されて張譲と十常侍のヒヒジジイ共が好き勝手やりはじめてな。それをウチらが何とかしたんがついこの間の事や。んで、こっちが片付いた思たら、今度は反董卓連合が組まれてて今に至る、てな処やな。」
この話を聞いて桃香と愛紗はかなりショックを受けている・・・・・二人とも悪い董卓を倒して庶人を助けるって息巻いてたもんなぁ。
「そやからさっきの恋があんたに言うた『囚われてる』っちゅうのがどういう意味なのか?・・・まあ、在る意味『洛陽』に囚われてるとは言えるけどな。」
「それってどういう事?」
俺の質問には華琳が答えてくれた。
「洛陽は『伏魔殿』よ。張譲を含む十常侍以外にもいろんな奴らが居るって事。」
「さっきの檄文の話やと、董卓は相当悪者に仕立て上げられとるみたいやな。これがあんたの言うた『この状況』やろ・・・・・アホの荷進と一緒になって騒いどった袁紹と袁術のやりそうなこっちゃ。」
俺はみんなの顔を見た。
「さてと、ここまでみんなに聞いてもらって・・・・・どうだろう?董卓を助ける事に賛成してもらえるかな?」
「私は絶対賛成ですっ!!董卓さんがそんなにいい人なら、絶対助けたいっ!!」
うん、桃香ならそう言ってくれると思ってた。
「さて雪蓮、我々孫呉はどうする?」
「そうねぇ、正直董卓が悪人か善人かなんて興味無かったけど・・・・・一刀たちが助けたいって思ってるなら全力で協力するに決まってるでしょ♪」
「まあ、そう言うと思ったわ・・・・・・・さて、そうなってくると今の状況だと董卓が暗殺される危険性があるな。」
冥琳が新たな懸念を指摘してきた。
「そうね、下手をすると下賎な輩がこちらに寝返るために董卓の首級を、なんて事になりかねないわ。」
華淋もその可能性は考えていたのか。
「う~ん、そうだな・・・・」
冥琳と華琳の言う懸念は確かにある。しかし俺にはまた別の懸念があった。
今のところその気配はまるで感じられなかったが、あいつらが・・・左慈や于吉がもしかしたら裏で糸を引いているのかも知れない・・・。
何かいい案はないかと腕を組んで辺を見回すと・・・居た。俺のすぐ後ろに二人ほど。
「なあ貂蝉、卑弥呼。」
「あらん、なあにご主人さぁま。」
「何かの、ご主人様。」
「二人に頼みたいことが在るんだけど・・・・・・。」
「月ちゃんと詠ちゃんのことね。わたしたちが先行して二人を守ればいいのねん。」
「ふ、任せておけ。我らなら造作も無いことだ。」
「二人とも俺の考えてる事・・・。」
「ご主人さぁま。皆まで言わなくてもダ・イ・ジョ・ウ・ブ。」
「愛するオノコの考えを察するなど漢女道の初歩の初歩よ。ふっふっふ。」
「あ、ああ。これは二人にしか出来ない。俺はそう確信している。頼むぞ貂蝉、卑弥呼!」
「ご主人さまの愛をビンビンに感じるわぁ~~~!まっかせてね~ん!」
「おお!ご主人様のその言葉で私の勇気と元気は百倍だ!滾る!滾るぞぉぉぉぉぉ!!!」
「それじゃ、早速いってくるわねん。ご主人さまたちも急いでねぇ。」
言うが早いか二人は窓から飛んでいった。
それを見ていた霞と陳宮が引きつった顔で見送っていた。
「なあ、ねね。あの二人見て月と賈駆っち大丈夫やろか?」
「きっと卒倒するに違いないのです・・・・。」
「さてと、とりあえずあの二人がいれば董卓の身の安全は大丈夫でしょう。では張遼、こちらはこの様になったけど、あなたはどうかしら?」
華琳の視線を真向から受け止めて、霞は少し考えた。
「そうやなぁ、ひとつだけ疑問があんのやけど・・・・・」
「なにかしら?」
「何でこの『天の遣い』のニイちゃんが三人もおんねん!?」
「そうなのです!さっきもその説明がされてないのです!!」
「う~ん、それは・・・・・・」
二人にこれまでの経緯を説明すると、とりあえずは納得してくれたようだ。
「元は一人の人間なぁ・・・・」
「自分の意思でこうなった訳じゃないけど、この大陸で生きて行く以上できることをする。天の意思なんて知ったこっちゃないけど、俺たちを助けてくれた人たちに恩返しが出来るようにはなりたいさ。」
「ふ~ん・・・ええ面構えも出来るやん♪まあ、恋が懐いてる段階で疑う余地は無いねんけどな・・・・・・やっしゃあっ!腹は決まった!曹操、あんたにこの張遼文遠の命と真名、霞を預けたるわぁっ!!」
「・・・・・・ねねも。」
「恋どの!?私もなのですか??」
「まずはご主人さまに。」
恋に肩を掴まれて俺の前に連れて来られた陳宮。
「わ・・・・分かりましたです・・・姓は陳、名は宮、字は公台、真名は音々音なのです。」
「これからよろしく。」
俺は笑顔で右手を差し出した。
「ねねねね。」
「ちんきゅうキック!」
「ぐべっ!」
俺の顔面はみごとにその蹴りを受け止めていた。
「真名を間違えるなんて最低なヤツなのですっ!!」
いや、『よろしくね、音々音。』って言おうとして切る場所を間違えました。
「緑北郷、遊んでいる所すまんがちょっと来てくれ。」
俺は別に遊んで無いぞ!大体、顔面蹴られる遊びなんて嫌過ぎるだろ!
と、思いながらも冷静に返事をした。
「どうしたの?冥琳。」
「皆で話し合ったんだが、董卓の姿を諸侯に知られない様にする為に、洛陽も我々が一番乗りを目指すことになった。」
「あぁ、そうか。確かにそうだよな。」
「そこで我々はこれから霞、恋、音々音の部隊を追撃する振りをして洛陽までの距離を一気に稼ぐ。」
「ああっ!その手が有ったか!霞たちはその追撃の後で降伏したことにするわけだ。」
「外で兵達を騒がせておいたから出来る策だ。幸いしたな。」
「あ、でも恋と霞の降伏が噂とずれて怪しまれないか?」
「なぁに、戦場ではその程度の誤差など良く在ることだ。気にするな。その後は我々が一番乗りを争っているように見せかけて洛陽を目指す。」
「それって大丈夫なのか?まだ洛陽には戦力が残ってるはずだよな。」
「霞に確認したら残りの戦力で障害になる様な部隊は無いそうだ。董卓軍は霞たちが説得して寝返らせられるし洛陽の常駐軍も主だった将はいないらしい。」
「そうか、じゃあもう出発するのかな?」
「いや、最後に虎牢関で諸侯に袁紹たちの足止めをしてもらう策を残していく。もう、皆その準備に取り掛かった。」
部屋を見回すと残っているのは俺と冥琳、桃香、華琳、赤と紫だけだった。
「みんな行動が早いなぁ。」
華琳が俺を見て説明してくれる。
「今度は時間が無いもの、取り急ぎ鹵獲物資は同盟軍以外の諸侯へ公平に分配するわ。」
「そうだよな、汜水関と虎牢関だけじゃなく洛陽まで俺たちで落とす形になるからこのままだと恨みを買っちゃうもんな。」
諸侯だってここまで何もしてなかった訳じゃない。
ここまで来るのに中小の砦が結構有って、その相手は諸侯がしてくれていた。
そんな苦労をしても、おいしい所を持って行かれてしまっては恨まないはずがない。
その溜飲を少しでも下げる為に虎牢関の鹵獲物資は、華琳に一番乗り宣言してもらい全て掌握してもらう必要があるのだ。
「袁紹と遠術にも分配するのか?」
「ええ、それが冥琳の言った策よ。必ず少ないとか文句を言って一悶着起こすでしょう。」
その光景が在り在りと目に浮かぶ・・・・・。
「さあ、あなたたちも下に行って準備なさい。あと四半刻で出発よ。」
俺達は再び馬上の人となり虎牢関の城壁を見上げる。
周りには立ち込める砂塵と叫びあう声。
「我は曹孟徳なりっ!!虎牢関一番乗りは我軍が貰ったっ!!」
壁の向こうから部隊が走り出す音が聞こえてきた。
「虎牢関攻撃の先鋒司令官として命じるっ!全軍追撃っ!!」
華琳の号令の下、俺達は虎牢関の城門を
「董卓さんを早く助けられるといいね♪ご主人さま♪」
「ああ、頑張ろう!桃香!!」
洛陽に向けて、俺達の進軍が始まった。
あとがき
今回は書き上げるのに
かなり葛藤、そして悩みました。
春蘭vs霞
魏√の名シーンに
果して自分がチャレンジしてもいいのか?
そもそも自分に書けるのか?と、
それでも挑戦したのはひとえに
華琳の泣くシーンが書きたかったからですw
次はいよいよ洛陽
やっと月&詠を登場させられそうです。
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大幅加筆+修正となっております。
春蘭vs霞から虎牢関戦終了までです。
ご意見、ご指摘、ご感想、ご要望、さらに「白蓮様はなんだかんだ言って出番が在るのに我々北郷隊は一名を除き名前すら出ないのはどういう事でしょう?まさか第二部まで出番が無いということは無いですよね。」などのお叱りがご座いましたら是非コメント下さいませ。
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