No.356450

寂しがり屋の女の子の為に…… 廿壱話

DOWANNGOさん

遅くなりましたがあけましておめでとうございます。
今年最初の投稿です。

2012-01-01 21:04:18 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:4402   閲覧ユーザー数:3864

快晴の蒼い空。

いつもの庭。

そのいつもの庭で俺はある異変を見つけた。

 

「これは何だ?」

 

庭の真ん中に変な物を見つけたのだ。

木製のやぐららしきそれは、基分に車輪が付いていて、動けるようになっているようだが

まだ組み立てている途中で、それが何なのかは分からない。

俺はそのやぐららしき物の周りで騒いでいる、凪、沙和、真桜の三人に近づきながら話しかける。

 

「おい、沙和~真桜~何怪しい物造ってるんだ~?」

 

 

俺がそう言うと沙和と真桜は心底心外そうな顔を顔をした。

 

「何で私達だけなの~?」

 

「そうや!凪も一緒につるんでるかもしれんやん!」

 

「凪が悪さしてるところなんて想像出来ないだろうが」

 

凪は本当に真面目で俺に迷惑をかけない良い子だ。

そんな凪が悪さをしてるところは想像出来ない。

まぁ、実際してても余程のことでなければ俺は目を瞑ってしまうだろう。

 

「それでこれは何だ?程々にしないと桂花や華琳に叱られるぞ」

 

「私と美蓮の指示ですから別に叱りませんよ」

 

「ああ、そうだったのか?」

 

そう言って俺の後ろに居る桂花に問いかける。

敵ならば叩き斬ってたところだったが気配で桂花だと分かったから放置していた。

 

「と言うかこれってもっと大きくなるのか?」

 

「勿論や!この上にごっつい回転軸と本隊の絡操備わって、もっと大きく……と、この先はまだ秘密や!

隊長にも教えられん!くうぅっ、この言いたいけど言えない悔しさ、たまらんなぁっ!」

 

別に秘密なんて何でも良いが……

 

「これ、門から出せるのか?」

 

「「あ」」

 

考えてなかったんだな……

 

「門から出してから造るだったな。

桂花、そろそろ軍議の時間だから行くぞ」

 

「は、はい!」

 

俺達は玉座の間に向かって歩き始めた。

後で『これ解体せなあかんのか……』と言う声が聞こえたけど全力で無視した。

「まず、一刀、あなたには紹介して無かったわね。呂布と陳宮よ」

 

「………恋」

 

「それ真名だろ?良いのか?」

 

「………ん、恋、劉郷に負けたから」

 

「そ、そうか」

 

やばい、調子が狂う……

 

「恋殿が真名を預けたから音々も預けるのです!

音々の真名は音々音なのです!

言い難かったら音々でも良いのです!」

 

「ああ、よろしくな(ニコ)」

 

「よ、よろしくなのです」

 

「「「はぁ……」」」

 

「何だよその『またこいつは……』って顔は」

 

「「「何でもありません(ないわよ)(です)(ない)」」」

 

そう言わりには皆呆れているんだけど……

まぁ、そこは触れちゃいけないんだろうな……

 

「恋と陳宮は力は貸すけどそれは戦だけだそうよ。

それ以外の時は会議にも出席しないそうよ。

出席しても意見は言わないらしいわ」

 

「良く承諾したな」

 

そんな滅茶苦茶な条件を華琳が読むとは思えないけど……

 

「恋の実力は分かってるもの。

さて、本題に入りましょうか。

夜月、美蓮、桂花、情報は入って来てる?」

 

「はっ、先日の袁紹と公孫賛の争いですが……

予想通り袁紹が勝ちました。公孫賛は徐州の劉備の所に落ち延びたようです」

 

劉備は反董卓連合で功績を認められ平原から徐州に移ったらしい。

華琳も俺が董卓を討ったと言う設定だったから西園八校尉から司隷校尉に上がった。

 

「それで袁紹の動きは?」

 

「青州や併州にも勢力を伸ばし、河北四州はほぼ袁紹の勢力下に入っています。

もう北にはこれ以上すすめませんから後は南へ下るだけかと」

 

「なら、次に狙われるのは劉備か?」

 

河北四州のすぐ南、海沿いの徐州が劉備その内陸部が華琳の領土だ。

華琳の領土よりも南にある揚州に本拠地を構えるのは袁術だ。

華琳と劉備は北を袁紹、南を袁術に挟まれてる形になる。

つまり次は最小勢力の劉備だろう。

 

「さぁ、どうでしょうね……」

 

「違うのか?」

 

小勢力から潰していくのは定石だと思うけど……

 

「麗羽は派手好きでね。大きな宝箱と小さな宝箱出されてどちらかを選ぶように言われたら

迷わず大きな宝箱を選ぶような相手よ」

 

「成程、小さい物をこつこつ潰していくのは性に合わないってことか」

 

「そう言うこと。国境の各城には万全の態勢で警戒するように通達しておきなさい。

それから河北の袁術の動きはどうなっているの?」

 

「特に大きな動きはありません。

我々や劉備の国境を視察する散見されていますがその程度です」

 

「あれも相当な俗物だけれど……動かないと言うのも気味が悪いわね。

警戒を怠らない様にしておきなさい」

 

「そちらも既に指示を出していますです。

大丈夫なのですよ」

 

美蓮も桂花も音々も大変だな。

まぁ、俺達は所詮武将だから手伝えないけどな……

 

「そう言えば華琳、宝箱の話だけど華琳ならどうするんだ?

やっぱり中身が多そうな方か?」

 

「ああ、決まってるじゃない」

 

華琳はそう言って微笑み

 

「両方開けさせて。中の良いところ全てよ」

 

こう言った。

非常招集がかけられたのはあの軍議から数日と経ってない日のことだった。

 

「華琳!もう袁紹が動いたのか!?」

 

「馬鹿は決断が早過ぎるのが厄介ね。敵の情報は」

 

「旗印は袁、文、顔、敵の主力は全て揃っているようです。

その数、およそ三万……」

 

多いな……

 

「敵の足は極めて遅く奇襲などは考える様子も無くただ力を誇示したいだけと言う印象を受けたそうです」

 

「馬鹿の麗羽らしい行動ね」

 

「それで?その城にはどれ程の兵が居るのだ?三千か五千か?」

 

「七百と言ったところらしい」

 

「そんなの手も足も出ないではないか!籠城したところで一日も保たんぞ!」

 

「桂花、今すぐ動かせる戦力はどれ位?」

 

「半日以内に二千、もう半日あれば季衣や凪達が帰ってくる予定ですから何とか二万は……」

 

そんなに保つとは思えない……

今すぐにその圧倒的差を覆す必要がある。

 

「華琳、出る許可をくれ。俺が出る」

 

その言葉にその場に居る全員が驚愕の表情を浮かべる。

 

「駄目よ。それで勝てる確信は無いわ」

 

「華琳、恋は三万を一人で倒した。

それに勝った俺がそれを出来ないと思うか?」

 

「それは相手が雑兵だったからよ。

今の相手は訓練された兵士。

勝てる確証は無いわ」

 

「華琳、分かってるだろ?

俺には出来るんだ。

例え俺だからって遠慮無く使え」

 

華琳は俺が夫だから死ぬことを嫌がってる。

でも、それは覇王としては失格だ。

覇王ならば使う時に遠慮なく使うべきだ。

そんなことを思っていながら華琳と睨み合っていると秋蘭が言い難そうにこう言って来た。

 

「華琳様、師匠、それが兵の増援は要らないと……」

 

「はぁ!?その指揮官は死ぬ気か!?」

 

春蘭の言う通り普通に聞けば自殺志願者だ。

だけど……

 

「美蓮、この判断は正しいと思うか?」

 

「相手によるのです。

袁紹さん相手なら正しい判断なのです」

 

やっぱりな。

 

「一応聞いておく、その指揮官の名前は?」

 

「程昱と郭嘉の二名でございます」

 

「風ちゃんと凛ちゃんなのですか!?」

 

美蓮はそう言って身を乗り出した。

程昱って名前に何だか聞き覚えが……

 

「ああ!華琳達と会う前に助けたあの子か!」

 

美蓮と似ているあの子だな。

 

「知り合い?」

 

「ああ、華琳達と会う前に暴漢から助けたんだよ。

美蓮はその子達と幼馴染らしい」

 

「そうなの」

 

「ああ、美蓮の幼馴染なら任せておいて安心だろ。

俺はその二人を迎えに行くよ」

 

「待ちなさい、一刀」

 

俺が立ち上がると華琳に呼び止められた。

俺は華琳の方を向く。

すると華琳は微笑み

 

「一刀、行ってらっしゃい」

 

そう言ってくれた。

俺も微笑み

 

「ああ、行ってきます」

 

そう言って玉座の間から出た。

襲撃を受けた城

 

「はぁ……見事なまでに無傷だな……」

 

俺は感心しながら城を観察する。

城には全くと言って良いほど傷が無い。

すると

 

「貴様!何者だ!袁紹軍の人間か!」

 

そんな声が聞こえてゆっくりと後を向く。

そこには五人程兵士槍を俺に突きつけていた。

 

「落ち着け、俺は劉喬契だ」

 

「おい、劉喬契って……申し訳ありません!まさか劉将軍とは!

お許しください!」

 

そう言って兵士達は頭を地面に擦り付けて謝り始めた。

別にそんなことはしなくても良いんだけどな……

 

「別に良いよ。

俺も誤解されるようなことしてたから。

ところでここに程昱と郭嘉って言う奴がこの城に居ると思うんだけど……

案内してくれないか?」

 

「はっ!こちらです!」

 

兵士はそう言って案内を始めた。

城壁の上に着くと二人の少女が立っていた。

 

「案内ご苦労さま、ここまでで良いよ。

彼女達が程昱と郭嘉だろ?」

 

「はい」

 

「それじゃ持ち場に戻って」

 

「はっ!失礼します!」

 

兵士はそう言って頭を下げて来た道を戻って行った。

俺は少し息を吸って近付いて行く。

 

「七百人しか居ない城を見て袁紹は詰まらない思って撤退していく。

そんなことは相手の心を読まないと絶対に出来ない策だよな。

二人共、見事だ」

 

俺がそう言うと二人は驚いた顔で俺を見る。

 

「初めまして、劉喬契だ。

君達を迎えに来たよ」

 

「まさか……剣神劉郷!?」

 

最近この反応に慣れたな。

 

「その劉郷で合ってるよ。

そんなことは置いといて……さぁ、行こう」

 

「おおっ!?どこかで見たと思ったら前に助けてくれたお兄さんなのです!」

 

「俺今さ、行こうって言ったのに何でそう……」

 

「曹操様に士官したのですね~」

 

「無視か?無視なのか?」

 

「いやいや~一緒に働けることになって嬉しいのです~」

 

無視されると傷つく……

 

「お兄さん、頭を抱えて無いで行くのですよ~」

 

「君の所為だよ!」

 

「ふふっ」

 

まさか……わざとか?

くっ……

 

「ほら、早く行くぞ!」

 

俺はそう言いながら少し足早に歩き始めた。

城の玉座の間

 

「ただいま~」

 

家に帰ってくるノリで玉座の間に入った。

そうしたら華琳が微笑みながら『お帰りなさい』って言って俺に抱き付いて来てくれると思ったんだけど現実はそうは甘く無いらしい。

 

「一刀、お帰りなさい」

 

華琳は玉座に座り覇気を纏っていた。

 

「ああ、郭嘉と程昱を連れてきた。

この二人だ」

 

俺はそう言って二人を前に出す。

美蓮は嬉しそう二人を見ている。

 

「さて、二人共帰って来て早々悪いのだけどどうして増援は要らないと思ったの?」

 

「えっとですね~、相手は数万の袁紹軍で

前線指揮官は派手好きの文醜さんだったのですが……

そんな派手好きの文醜さんが七百の相手なんかしたくないだろうと思ったのです。

でも、曹操様が増援を送ると向うも喧嘩を売られたと思いますよねー

袁紹さんの性格だと絶対に買っちゃいますから増援は要らなかったのです」

 

「成程ね……」

 

ここまでは俺と美蓮が思ったのと同じだ。

でも……

 

「もし、別の指揮官が来たらどうするつもりだった?

それにもし攻めて来たらどうしたのだ?」

 

夜月の言う通りだ。

前線指揮官が他の奴だったら攻めて来ただろうし

文醜であったとしても攻めて来た可能性はあった。

そのことから言えば絶対に策が成功する確信は無かっただろう。

 

「まず、別の指揮官……その場合は顔良さんですね。

あの三人が出たら顔良さんは必ず補佐に回るからから大丈夫です。

それと攻めて来た場合ですがその場合は損害が兵七百と砦一つで済みますね。

相手の情報は送っていたから無駄死にではありませんし、袁紹さんの風評操作にも使えたと思います」

 

成程な……ってこの子死ぬ気だったかのか?

そんなこと思ってる様には見えないけど……

 

「郭嘉、あなたはその策をどう見たの?」

 

「………」

 

ん?この子少し震えてる様な気が……

 

「郭嘉、華琳様のご質問だ。答えなさい」

 

「……ぶはっ」

 

え、はぁ!?鼻血!?何が起こったんだ!?

 

「ちょ、だ、誰か医者呼べ!医者!」

 

鼻血とは言え出し過ぎたら出血多量で死ぬ!

 

「劉郷さん、あれはいつものことなのです。

大丈夫なのですよ」

 

「ほ、ホントか?」

 

でも、流石にあれは不味いと思うんだが……

 

「やっぱり出しちゃいましたか~。稟ちゃん、とんとんしますよ。

とんと~ん」

 

そう言って程昱は郭嘉の首を叩く。

すると、不思議なことに郭嘉の鼻血が止まった。

 

「……う、うぅ……すまん」

 

随分と手慣れてるな……

美蓮も言ってたし郭嘉はいつも鼻血を出しているのか?

 

「郭嘉、大丈夫か?気分が悪いようなら医者を呼ぶが……」

 

「だ、大丈夫です。曹操様、恥ずかしいところをお見せしました」

 

「無理な様なら一刀も言っていたけど医者を呼ぶわよ?」

 

華琳が心配そうな顔をして郭嘉に言うと

 

「そ、曹操様に心配して頂いている……!……ぶはっ!」

 

郭嘉は鼻血を出した。

 

「お、おい!ホントに大丈夫か!?」」

 

この量はホントに不味くないか!?

 

「衛生兵!衛生兵ー!」

 

ほら!いつもは冷静な秋蘭も取り乱してる!

 

「……程昱、代わりに説明してくれるかしら?」

 

「はいはい、稟ちゃんはもし最悪な状況になったら城に火を放って皆で逃げようとしてたみたいですねー。

七百の兵ならそれも可能ですし」

 

確かに七百なら可能だな。

逆に兵が下手に増えると危なかったな。

 

「華琳、どうする?俺は中々有能と思うんだけど」

 

「劉郷さんの言う通りなのです。二人は有能なのですよ」

 

いつもの口調で言っているが美蓮の顔はいつもの呑気な顔ではなくすごく真面目な顔だった。

やっぱり一緒に働きたいんだろう。

 

「そうね、今回の件は二人が居なければ乗り越えられなかったのだし。

ここで私の軍師として働かせましょう」

 

「分かりましたー」

 

「ぎょ、御意」

 

「一刀、美蓮、二人を案内してあげて。

それと一刀は案内し終えたら私の部屋に来なさい」

 

「おいおい、そう言うことを大声で『ぶはっ!』誰か医者を呼べぇぇぇぇっ!」

 

俺の必死な叫び声が玉座の間に響き渡った。


 
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