No.349305

真・恋姫†夢想 『聖夜、桂花の想い」

狭乃 狼さん

はいはい。

れっつ、ぱーりー!!

てことで、本日より第三回、同人恋姫祭りの開催です!

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2011-12-19 00:04:42 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:9305   閲覧ユーザー数:6957

 

 クリスマス。

 

 っていうお祭りが、天の世界にはあるんだと、何時だか一刀が言っていた。

 

 彼の生まれた国ではない、別の国の聖人が生まれた日を、その信者が盛大に祝うための日なんだそうだ。

 

 けど、それが何故か彼の国では、聖人の聖誕祭を祝うのではなく、ただ単に、年に一度のお祭りとして、国中のあちこちで大盛り上がりするのだそうだ。

 

 さらに、その生誕日当日ではなく、その一日前の日は、特に恋人同士にとっては大切な日になっているそうなのである。

 

 「……ほんと、理解に苦しむ風習だわ」

 

 ただし。

 

 そんな話を聞いた華琳様がとっても乗り気になってしまわれて、この国でも三国合同でクリスマスとやらを祝う、その為の祭りを開くことになってしまった。

 

 もちろん、華琳さまのご指示である以上、私はそれに従うだけ。

 

 他の連中は、その日の当日にどうやって一刀の奴を独占するかを、祭りの準備を行なうその最中にも、あれやこれやと策を考え、日夜水面下で他の面子を牽制しあっている。

 

 「どいつもこいつも浮かれちゃってさ。……一刀と過ごすクリスマス、か……フフ。……私には、関係の無いことよ」

 

 そう。

 

 関係ない。

 

 たとえどんな催しだろうと、アイツが絡む以上、私には全く関係ない。

 

 何故なら私は、アイツが大嫌いだから。

 

 出あったばかりのその頃も。

 

 魏の種馬と呼ばれていたあの頃も。

 

 三国の象徴となって、至尊の位と言ってもいい位置に座ってる、今であっても。

 

 私は、アイツが、嫌い。

 

 大嫌い……なんだから。

 

 

 

 アイツ曰く、いるみねーしょんとやらの代わりだという、提灯とかっていう名前の簡易照明が、街中のいたるところに飾られている。

 

 街の人々は初めて催されるこの珍しい祭りに、誰も彼もが高揚した気分で居て、まるで街中の人間が幼子にでもなったのではと言うぐらいに、あちらこちらではしゃぎ回っている。

 

 今日はもう師走の二十三日。

 

 友人。

 

 夫婦。

 

 家族。

 

 そして、恋人。

 

 様々な関係同士の人間達が、都を上げて行なわれる、この盛大な一夜限りの祭りを明日に控え、心底から楽しみにし、この日も過ごしている。

 

 ……まあ、もっとも。

 

 その中のごく一部には、「くりすますなんて、でっきれーだー!!」とか、「りあ充なんて爆発しろー!!」……なんていう魂の底からの叫びを、酒家の中から轟かせている連中もいたりするけど。

 

 ……りあ充ってなんの事だろう?

 

 まあそれはともかく。

 

 かくいう私は今、そんな風に騒がしい街中を、一人、城の方を目指して歩いていた。

 

 城内で行なわれた、三国の将が全て集まっての前夜祭と言う名の宴が一段落し、後の時間は、思い思いに街に出て過ごそうと言う事になった。勿論、私はすぐさま華琳様のお供を名乗り出て、(来なくてもいいのに)一緒に引っ付いてきた春蘭や秋蘭と共に、街中の屋台めぐりに興じた。

 

 けど、ある程度の屋台を見て回った後、わたしはふと、その事に気がついた。

 

 「……そういえば華琳さま。アイツはどうしたんですか?先ほどの宴の後、外出するときには姿が見えませんでしたが」

 「あら。気付いていなかったの、桂花?……彼なら今頃、城の中庭に居るわ。桃香や愛紗と一緒にね」

 「……その。華琳さまは宜しいのですか?アイツを他の」

 「ああ、別に構わないわ。……じゃんけんで負けて、今日は順番を譲っただけだし。それに何より、本番は明日ですもの」

 「は、はあ……」

 「でもそうね。そろそろ結構いい時刻だし。桂花?申し訳ないけど先に城に戻って、桃香たちから彼の身柄を確保しておいてくれる?」

 

 なんで私がですか?と、思わずそう問いかけたのだけど、華琳さま曰く、

 

 『貴女だったら万が一にも、彼のことを横から掻っ攫う心配は無いでしょう?』 

 

 との事でした。

 

 ……そう、よね。

 

 他の皆と違って、私なら、アイツを独占したいなんて思うはずが無い、わよね。

 

 ……そう。

 

 出来るわけ……ないもの。

 

 

 そうして、一人とぼとぼと城に戻ってきた私は、彼が居ると思しき中庭へと、重い足取りで向かった。

 

 ……なんで、こんなに足が重く感じるんだろ?

 

 ただ、アイツの所に行って、華琳さまの所へ行くよう、そう伝えるだけなのに。

 

 なんで、こんなに、押しつぶされそうなくらい、心が、痛いんだろう?

 

 ……まさか、私はアイツを、華琳様の所に、行かせたく、ない……?

 

 いえ!そんな筈ない!!

 

 この私が!

 

 アイツをこの世で、一番嫌いな私が!

 

 アイツを、この世で一番、憎らしく思っている私が!!

 

 アイツを、独占したがっているだなんて!

 

 誰かに、渡したくないだなんて!

 

 そんな、そんな事を思っている筈がない!! 

 

 ……思ってる……筈が……無い……の……に……。

 

 一度頭に浮かんだその思考は、もう、自分自身でも止められなくなっていて。

 

 一歩。

 

 また、一歩と、その足を動かす、ただ、それだけのことが、凄く、長い時間に感じられて。

 

 そして。

 

 中庭に着いた、着いてしまった私が見たのは、月明かりに照らされ、一人、庭に立っている、アイツ、だった。

 

 

 

 「……」

    

 一瞬。

 

 ほんの一瞬だけ。……その、月を見上げるアイツの、その端正な横顔に、見惚れてしまった。

 

 「……桂花?」

 「っ……!?」

 

 アイツが、私に気がついて、その顔を、こっちに向けた。

 

 「……どうかした?……なんか、顔、赤いけど。……熱でもあるのか?」

 「……べ、別に熱なんて無いわよ。……お酒のせいで、そう見えるだけよ。そ、それより!華琳様がお待ちよ!?さっさと街に」

 「……なあ、桂花」

 「あ、あによ?」

 

 それまで、視線だけを私に向けていた彼が、今度は体ごと私の方を真っ直ぐに見つめながら、一歩づつ、歩みを進め始めた。

 

 「……俺さ。ずっと思って居たんだ。……俺はさ、どうして、桂花に嫌われるんだろうな、って」

 「ど、どうしてって……!そ、そんなのあんたが、だ、だれかれ構わず手を出す、極悪な性欲魔人の歩く種馬だからに決まってるでしょ?!」

 「……そか。やっぱ、それ……なんだ。……それじゃあ、さ」

 「な、何?」

 

 およそ、一歩半。

 

 何時の間にか、私と彼の間には、たった、それだけの空間しか無かった。

 

 「……おれがさ、他の娘には一切見向きもせず、たった一人だけを見つめ続けたのなら、もう、桂花に嫌われなくて済むようになる……か?」

 「え……」

 

 それは完全に。

 

 そして全く。

 

 想像だにすらしていた無かった台詞、だった。

 

 「……正直言ってさ。完全には信用してもらえないとも思ってるし、他の娘たちを納得させるのも、多分に自業自得とは言え、かなり骨の折れる事だとはおもうけど。……でも、いつかははっきりさせなきゃいけない事だから。……だから、桂花」

 「……だ……め……」

 「おれは、北郷一刀は、誰よりも、一番に、君の事を」 

 「っ……!!……だ……駄目えーーーーーーっ!!」

 「!?」

 

 思わず、彼を思い切り突き飛ばし、私はそこから走り出して、いや、“逃げ出していた”。

 

 そして、その後のことはもう、何も覚えていない。 

 

 気がつけば、自分の私室で寝台に潜り込み、さっきのは夢なんだと。

 

 現実に起こったことではないんだと。

 

 自分にそう強く言い聞かせながら、そのまま知らぬうちに、私はまどろみの中へと落ちてしまっていた。

 

 

 そうして、一夜が明け。

 

 師走の二十四日。

 

 クリスマス、当日。

 

 

 私は今、一人で居た。

 

 場所は、都の城門の、その上。

 

 街は例のいるみねーしょん代わりの提灯の明かりに包まれ、たくさんの人の賑わいの声が、ここに居てもはっきりと聞き取れている。

 

 「……楽しそう、だな……」

 

 今頃、アイツを初めとした他の面子は、それぞれ思い思いに、この聖なる夜を、アイツを中心にして過ごしているだろう。

 

 「……何やってんのかな、わたし……」

 

 昨日の夜。

 

 アイツの告白めいたものから、わたしはただ無我夢中で逃げ出し、そのまま部屋にこもって夜を明かした。

 

 ……まあ、夜が明けて早々に、華琳さまから言われた用事をすっぽかした事で、思いっきりお説教をされたけど。

 

 けど。

 

 あの時の私は、もう、本当に何も考えられないくらいに、取り乱してしまった。

 

 『おれは、北郷一刀は、誰よりも、一番に、君の事を』

 

 ……。

 

 私は、アイツが嫌い。

 

 殺したいほどに、憎らしい。

 

 ……そう、思っていた、筈なのに。

 

 あの時、アイツの台詞を聞いたその時に、この心に湧き上がっていた感情は。

 

 戸惑いと、そして、喜び、だった。

 

 「……はあ。……お間抜けどころか、滑稽もいい所だわ。……あれだけ嫌いだ嫌いだと言っていたはずのアイツなのに、心の底じゃあ、好き……だったなんて、さ。……道化、ね。あはは……は……」

 

 そう。

 

 夕べ、寝台の中に潜り込み、何度も何度も、アイツのあの言葉を反芻しているうちに、私はとうとう、おそらくは自分でも無意識の内に、意識の底の底に封じていた、その感情を悟ってしまった。

 

 「……私、一刀のこと……こんなに、好き、だったんだ……」

 

 小さい子供が、好きな異性の気を引くために、わざといたずらをしては、からかう。

 

 それと同程度の言動。

 

 今までの暴言(あれ)罵倒(これ)やは、全てそれを、無意識にやっていただけのモノだったと。今頃になって、気がつくことが出来た私だったりしていた。

 

 でも、今更それを、はっきり意思表示できないのも、私の悪い性癖で。

 

 だから、この日に一人で、こんな所に来て、こんな事を、誰にも聞かれないように、街とは正反対の、暗闇が広がるそちらへと向かって、思いっきり叫んでやった。

 

 「……北郷一刀ーーーーっ!!私はあっ!あんたのことをおっ!本当はあっ!大好きなのよおーーーーーっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 「……俺も、だよ。桂花」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……………………へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 今回の結論。

 

 

 

 「……お約束なんて、大っっっっっっ嫌いよおおおおおおっっっっ!!」

 「……そう?俺は好きだけど?あ、もちろん、桂花のことな?」

 「る、るっさいっ!//////死ね!今すぐ死ね!変態性欲魔人の種馬男!全身性液の全自動子種工場長!!アンタなんか、アンタなんか、大っっっっ嫌いなんだからねええええええっっっ!!/////」

 

 

 

 

 

 ちらほらと。

 

 

 白い天使の舞い降り始めた聖なる夜に、街中に大音響でこだました、私のそんな叫び。

 

 

 でも、まあ。

 

 

 私がほんのちょっとだけ、自分に素直になれたことだけは、確かなこと。

 

 

 だからここは、この一言だけは、贈っておこう。

 

 

 この世界に生きる、全ての人達に、幸せなこの一時をくれた、天の御遣いに。

 

  

 その彼を、この世界に送り込んでくれた、天に。

 

 

 そして、今を共に生きる、多く(ともがら)たちに。

 

 

 

 

 

 「メリー、クリスマス♪」

 

 

 

 

 おわり

  

 

 

 

 はい。

 

 同人祭りネタ、その第一弾をお送りしました。

 

 相も変わらずの桂花でスイマセンwww

 

 

 今回はクリスマスがテーマってことで、どういう話にするか直前まで悩んだんですが、結局、桂花のデレ話になってしまいました。

 

 といっても、以前の日記とかに比べれば、デレ分ちょっと控えめ(当社比)ですが。

 

 

 さて。

 

 

 次の投下予定ですが、クリスマスイヴの日に、祭りとはちょっと関係無しで、ユーザー参加によるクリスマスパーティを、ご紹介する予定です。

 

 ではまた、その時にでもお会いしましょう。

 

 

 再見~( ゜∀゜)o彡゜

    


 
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