No.347374

LyricalGENERATION  1st 第四話

三振王さん

第四話になります。

2011-12-14 20:56:53 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1240   閲覧ユーザー数:1215

第四話「僕が選んだ今」

 

 

少女は夢を見ていました、彼女の母親が、見知らぬ少女を紐で磔にし、背中に何度も鞭をうつ悪夢です。

 

 

―――母さん? どうしてそんな事をするの? その子……痛がっているよ?―――

 

 

彼女の言葉は届かず、母親は痛さのあまり悲鳴を上げる少女に何度も鞭をうちました。

 

「フェイト……どうして母さんを悲しませるの!? ちゃんとしてくれなきゃ……!」

「ごめんなさい……! ごめんなさい母さん……!」

 

 

―――そうか、あの子フェイトって名前なんだ……。―――

 

 

ふと、彼女は自分の母親の顔を見ます、母親の顔はまるで悪魔が乗り移ったような恐ろしい形相をしていました。

 

 

―――お母さん、どうしてそんな怖い顔をするの? 昔のように笑ってよ、ねえ……―――

 

 

「フェイト……これ以上母さんを失望させないで頂戴」

「はい……母さん……」

 

 

―――お母さん……―――

 

 

彼女は母親の姿を見て、とても悲しい思いに囚われました。そしてどうやったら母親が笑顔を取り戻してくれるか必死に考えました。

 

 

―――ああ、そうか―――

 

 

そして彼女はある考えに達します、母はあのフェイトという子に対して怒っている、それなら……。

 

 

―――あの子が……フェイトがいなクナッチャエバイインダ―――

 

 

 

 

 

 

「ううう……」

先程の戦闘でシンを管理局に捕えられジュエルシードも取れなかったフェイトは、プレシアに時の庭園に呼び出され折檻を受け、その場でぐったりと地面に倒れ込んでいた、そこに別室で待機していたアルフが慌てて駆け寄って来る。

「フェイト! フェイトォ!」

ぐったりするフェイトを、アルフは半べそ状態で抱き起す。

「アルフ……私は大丈夫だよ」

「大丈夫なわけあるかい! あの鬼婆……! フェイトをこんな目に遭わせて!」

そう言ってアルフは文句を言おうとプレシアのいる部屋に行こうとする、しかしフェイトに腕を掴まれた事により制止される。

「やめてアルフ、母さんを責めないで」

「フェイト! でも!」

「大丈夫……私がちゃんとやれば、母さんもきっと昔のように笑ってくれるよ……」

「フェイトォ……!」

アルフはそんな母親を信じ続けるフェイトの姿に思わず涙する、するとそんな彼女の元に、救急箱を持ったヴィアが駆け寄って来た。

「フェイトちゃん! 大丈夫!?」

「ヴィアさん……私は平気です……」

「そんな訳ないでしょう! ああ、こんなに叩かれて……私の研究室に来なさい、治療してあげるから! アルフ、フェイトちゃんを抱えてあげて!」

「わかった!」

アルフはヴィアに言われるがまま、衰弱したフェイトを抱えて研究室に向かって行った……。

 

 

 

「ほら、ちょっとしみるわよ……ごめんね、私魔法が使えないからこんなことしかできなくて」

「いえ、平気です……っ」

ヴィアの研究室に連れてこられたフェイトは、上着を脱いで両腕で自分の胸を隠しながら、プレシアに傷つけられた背中をヴィアに治療してもらう。そして消毒液が傷に染みり顔を顰めた。

「まったく、アナタは平気と大丈夫って言葉しか知らないの? 痛いなら痛いって言いなさい」

「ご、ごめんなさい……」

ヴィアに素直じゃないことを叱られ、フェイトはしゅんとしょげてしまう、そしてフェイトの為に濡れタオルを用意していたアルフはヴィアにある事を尋ねる。

「そういやシンがあの後どうなったか、ヴィアさんは知っているかい?」

「シン君ね……あの子は管理局に囚われてしまったわ、まああの組織なら子供に酷い事はしないと思うけど」

「そっか……」

 

「ごめんね、何も出来なくて……プレシアも管理局に嗅ぎつけられて最近焦っているみたいなの、もし辛くなったらいつでも私に相談するのよ?」

「は、はい」

フェイトはヴィアの心からの親切に、心からの感謝の念を言葉に託した……。

 

 

そして数十分後、ヴィアと別れたフェイトとアルフは2人だけでアジトに戻ってきていた。

「なんかシン達が居なくなると、急にこの部屋も寂しくなっちまったね」

「うん」

返事もそこそこに、フェイトはそのままソファーにバフンッと倒れ込んだ。

「もう寝ちゃうのかい? 先に風呂入ったほうが……」

「アルフが先に入っていいよ、もし寝ちゃっていたら……起こしてね?」

「わかったよ」

そう言い残してアルフは浴室に向かう、そしてフェイトは座布団に顔をうずめながら管理局に囚われたシンの事を思っていた。

(私がもっとしっかりしていればシンが捕まる事なかったのに……)

その時、フェイトは以前シンに言われたある事を思い出していた。

 

―――目の前で女の子が危ない目に遭っているのに、何もしないなんてカッコ悪いじゃん、だから……ね?―――

 

(こんなこと言ったら、きっとシンはそう言うんだろうな)

そしてフェイトは座布団を抱きしめながら寝返りをうった。

(大丈夫かなシン、管理局の人に酷い事されてないかな? もしかしたら元の世界に帰されているかも……)

そう考えた途端、フェイトの心に今までに感じたことのない寂しさが襲いかかってきた。

(もし帰されたらもう会えないんだろうな……そうしたらまたアルフと二人っきりなんだ)

いつの間にか瞳には涙がうっすらと浮かんでいた。

(シン……会いたい……)

 

 

それから数日後、時空間を航行する時空管理局の旗艦アースラ……その一室にシンは一人で閉じ込められていた。

「はあ……毎日毎日事情聴取ばっかりでもううんざりだ、デスティニーもどこかに連れてかれちゃうし、俺も刑務所行きかなあ」

シンは今自分を捕えている組織が先日ヴィアに説明された時空犯罪を取り締まる組織“時空管理局”だということを知っており(正しくは取り調べ中に知った)、部屋の片隅で項垂れる、そして彼の頭にあるひらめきが浮かんだ。

(そうだ! ここから逃げよう! いつまでもこんな所にいられない!)

そしてシンは扉を破壊する為、部屋の隅に移動して助走をつける。

「うおおおおおおおお!!!!!」

そして扉に向かって猛突進する。

「艦長がお呼びだ、出ろ。」

その時突如扉が開かれ、そこからクロノが顔を覗かせてきた。

「うわ! 急に開けるな~! うわ~!」

「え? なぁ~!!?」

二人はそのまま正面衝突し、床の上に二人重なるように倒れてしまった。

「いたたた……」

「は、はやくどいてくれ! 重い!」

「あーあ、何やってんだか」

その様子を、クロノの後ろから着いてきたアースラのオペレーター……エイミィは苦笑交じりに見ていた……。

 

 

 

数分後、シンはクロノに連れられてアースラの艦長室の前にやってきた。

「艦長、シン・アスカを連れてきました」

『ええ、通して頂戴』

中にいるアースラの艦長に指示され、クロノはシンを艦長室の中に入れる、そしてシンはそこで驚くべき光景を目にする。

「……ここって本当に艦長室?」

部屋にはししおとし(日本庭園によく置いてある竹筒のアレ)や松の木など、とても艦長室とは思えない趣味全開のコーディネイトがされていた。

「いらっしゃい、君がシン・アスカ君ね」

すると部屋の中心に設置されている畳の上に、エメラルドグリーンの髪をした青い管理局の制服を身にまとう女性が座っていた。

「えっと、これは……」

「まあまあ堅い話は抜きにして、ここに座りなさい」

シンはその女性に言われるがまま、畳の上に敷かれていた座布団の上に靴を脱いで腰かける。

「私はリンディ・ハラオウン、このアースラの指揮官をしています、君のことは……事情聴取を行った局員から聞いているわ、災難だったわね、ジュエルシードを取りこんじゃうなんてね」

「……」

実はシンは前日、局員達の手により身体検査を受けさせられ、秘密にしていた自分の体のことがバレてしまっていたのだ。

「俺はこれからどうなるんです? このまま刑務所行きとか?」

「ふふふっ、そう警戒しなくてもいいのよ」

そう言ってリンディは置いてあった緑茶にコーヒーシュガーとミルクを大量に入れてかき混ぜ、それをおいしそうに飲んだ。

(あれ? あれって緑茶だよな、緑茶って砂糖とかいれるっけ?)

リンディのお茶の飲み方に疑問を持ちながら、シンはさらに彼女の話を聞く。

「あなたの中にあるジュエルシード、それがいかに危険なものかわかっているわよね?   一応取り出す方法が見つかるまではあなたの身柄を管理局で預からせてもらいます、もちろんコズミックイラの親御さん達には連絡させてもらいますけどね。それと……」

するとそこに、デスティニーが入っている鳥かごのようなものを持ったクロノがやってくる。

「主!」

「デスティニー! その子をそこから出してくれ! 何も悪いことはさせないから!」

「わかった」

シンの言葉を受けクロノはデスティニーを鳥かごから出す。

「はあよかった、解剖でもされているのかと思ったよ」

「主……」

そして互いに抱き合って再会を喜ぶシンとデスティニー、そんな彼らを見てリンディはある質問を投げかけてくる。

「シン君、その……デスティニーちゃんだっけ? その子を作った人がどんな人か教えてくれない?」

「ヴィアさんの事……? 俺と同じ世界の出身だって事以外はわかりません」

シンは何となくだがヴィアの情報はリンディ達にあまり言わないほうがいいと感じて適当にはぐらかした。

「詳しくは知らないのね……それほどのオーバーテクノロジーだらけのデバイス、作った人がどんな人か知りたかったんだけど」

「え? こいつってそんなにすごいんですか?」

そう言ってシンはデスティニーの頭をツンツン突きながらリンディに質問する。

「ええ……クロノとの戦闘も見せてもらったけど、君のデバイスの力はあまりにも特殊で私たちにも解析できない部分が多すぎるのよ、まるで10年ぐらい先の技術を先取りしているみたい」

「お前……すごいやつだったんだな」

「まあ全力を出すには主にまだまだ頑張ってもらわないといけませんが」

 

そして和やかな雰囲気の中、シンは思い出したかのようにリンディに質問する。

「そういえば俺と一緒にいた女の子……フェイトとアルフはあれからどうなったかわかりますか?」

「あの子たちね……報告によればあの子たちはジュエルシードを二つ集めたみたい、なのはさんが集めた物を含めればあと6つね」

「そうですか」

とりあえず二人が無事だということが解りシンは胸を撫で下ろす、するとリンディはそんなシンを見て優しい声色で問いかける。

「大切な子なのね、君にとってフェイトさんとアルフさんは……」

「俺が……俺が守ってあげなきゃいけないんです、戦う力を持っているのは俺だけですから」

 

 

その時、艦内に警報が鳴り響き、一同ははっと顔を上げた。

「何か動きがあったみたいね、一緒に来てくれる?」

「あ……はい!」

シンはリンディ達に連れられて、アースラのブリッジに向かった。

 

 

 

「一体何があったの!?」

ブリッジに到着したリンディはすぐさま、外の様子をモニタリングしていたエイミィに問いかける。

「捜査区域の海上で異常な魔力反応をキャッチ!!」

「スクリーンにだして!」

 

エイミィが出した巨大なスクリーンに映し出されたのは、嵐の中六つの突き上げる海流に翻弄されているフェイトの姿だった。

「フェイト……!」

「なんとも呆れた無茶をする子だわ!」

「あれは個人で出せる魔力の限界を超えている……このままでは自滅するぞ!」

その時、なのはと見知らぬ少年がブリッジに入ってくる。

「遅くなりました……!?」

「あ! お前は!」

シンはなのは達の姿を見つけ睨みつける。しばらく続く沈黙……だがスクリーンに映っているフェイトをみて、

「今はフェイトちゃんの所に向かうのが先だね」

「ああ、話はそれからだ」

意見が一致しブリッジを出ようとする。だがクロノに呼び止められてしまう。

「その必要はないよ、放っておけばあの子は自滅する、仮にそうならなくても力を使い果たしたところを叩けばいい」

「叩くってアイツらは……」

「局員への攻撃や今まで行っている魔法による危険行為…、逮捕の理由には十分だ」

「た、逮捕って……!」

反論しようとするなのはを無視し、リンディは淡々と他の局員たちに指示を出す。

「今のうちに鹵獲の準備を」

スクリーンにはボロボロになりながらも必死でジュエルシードの暴走を押さえ込もうとしているフェイトの姿が映し出されていた。

「残酷に見えるかもしれないけど私達は常に最善の選択をしなければならないの」

リンディの戒めの言葉に、言い負かされて俯いてしまうなのは、その時……。

「ふ……ふざけんな!」

辺りに響いたシンの叫びに驚いて、その場にいた者は全員シンに視線を向ける。

「これがあんた達の“なんとかする”なのかよ!! フェイトは……あの子はただ……!」

「彼女はすでにこちらの警告を無視している! 然るべき裁きを受けるべきだ!」

喚き散らすシンに対し、クロノが諭すように反論する。だがシンはそれでも言葉を続けた。

「フェイトはただ母親のためにがんばっているのに……どうしてみんなフェイトを追いつめるんだよ!!」

「……!?」

シンの凄まじい威圧感に圧されてしまう、その時……。

『行って』

「!?」

『ユーノ君!?』

先程なのはと一緒に来ていた少年がシンとなのはに念話で語りかけてきた。

『僕がゲートを開くから言ってあの子を……』

『ユーノ君、でも私がフェイトちゃんと話をしたいのは……』

『僕には関係の無いことかもしれない、でも僕はなのはが困っているなら助けてあげたいんだ、なのはが僕にそうしてくれたように……』

『ユーノ君……ありがとう』

『ど、どこの誰だか知らないけどありがとう!』

そしてなのはとシンは転移装置に向かう。

「待て! 君達は……!」

止めようと駆け出すクロノ、その時……。

「デス子フラッシュ!」

突如デスティニーが手のひらから強い光を発し、引き留めようとしたクロノの動きを止める。

「うわ! まぶし!」

「今です!」

「ごめんなさい! 高町なのは命令を無視して勝手な行動をとります!」

「シン・アスカ、あんた達のやり方が気に食わないので脱走します!」

「あの子の結界内へ、転送!」

そして少年の転移魔法によりシンとなのは、そしてデスティニーはフェイト達のもとへ転送されていった。

 

上空、雲をかき分けるように落ちてゆく二人。

「レイジングハート! セーットアーップ!」

白いバリアジャケットに身を包むなのは。

 

「シン・アスカ、デスティニー、いきます!」

シンの右手に大剣アロンダイトが握られ、背中には紅の翼が現れる。

 

 

 

 

 

一方その頃、フェイトは六つのジュエルシードを封印するため海流相手に悪戦苦闘していた。

「きゃあ!」

「フェイト!」

ジュエルシードの暴走は激しく、フェイトはそれを抑えようと近づこうとするが、何度も何度も吹き飛ばされてしまう。

「無茶だよフェイト! こんなの私達だけじゃ!」

「それでもやらなきゃ! それに……!」

これだけのことをすればジュエルシードが回収できるだけでなく管理局も来る、そうなればシンがあれからどうなったかあのクロノとかいう少年から聞き出せるかもしれないとフェイトは考えたのだ。

「だから……退く訳にはいかないんだ!」

そう言ってバルディッシュを強く握り直す、だが突然の突風によりバランスを崩しフェイトは海面に真っ逆さまに落ちていった

「フェイトー!!」

「くっ……!」

もう防御したり飛んだりする魔力はフェイトには残っておらず、死を覚悟した彼女は落下しながらぎゅっと目をつむった。

(シン、ごめん……!)

「フェイトーーーーー!!」

「え……!?」

その時、上空から効きなれた声がしたと思うと、フェイトは何者かによって海面に激突する直前に助け出された。フェイトは瞳を開け自分を今抱えている者……シンの顔を見る。

「シン……!」

「大丈夫か!? フェイト!」

シンはフェイトを安全なところまで連れて行き、一度降ろす。

「このバカッ! 無茶ばっかして…!?」

シンは危険な行いをしたフェイトを叱ろうとするが、突然彼女に抱きしめられたことにより固まってしまう。

「バカはシンだよ! あんな無茶をして……! すごく心配していたんだよ!!」

そう言ってフェイトはシンの胸の中で声を殺しながら泣き初めた。

「わ……悪かったよ、だから泣かないで」

「う……うん……!」

シンはフェイトの行動に驚き、とりあえずいつも妹にしているように彼女の頭を優しく撫でてあげた。

「シン! 無事だったんだねー!」

そしてそんな彼らの元にアルフが駆け寄る、しかしこちらに向かってくるなのはと知らない少年の姿を見つけ、臨戦態勢をとる。

「あっ! アイツら……!!」

「まってくれ! 今は戦いに来たんじゃない! ジュエルシードをあのままにしておくと大変なことになるんだよ!」

好戦的な態度を取るアルフを抑えるシン、そしてなのははフェイトに近づき、レイジングハートからバルディッシュへ魔力を分け与える。

「フェイトちゃん……一人でこれを抑えるなんて無理だよ! だから……私も手伝う!」

そう言うとなのはは嵐の中へ入っていった。その姿をぽかんと見送るフェイト。そんな彼女の隣にシンが立ち、語りかける。

「あの子って不思議な子だよな」

「うん……でも悪い気はしない」

そしてシンはフェイトの背中をポンと押して彼女を激励する。

「よっし! それじゃ俺達も行こう!」

「……うん!」

シンの言葉にフェイトは頷き、なのはのもとへ飛び立っていった。

「それじゃ皆も!」

「おう!」

「了解しました」

「うん!」

シンの言葉にアルフと少年、そしてデスティニーは力強く頷いた。即席のチームでありながら、皆の間には長年一緒だったような一体感が生まれていた。

 

 

「せーのでいくよ! フェイトちゃん!」

なのはとフェイトは高度を上げ、暴走するジュエルシードの封印の準備に取り掛かっていた。下ではシン達がバインドで突き上げる海流を抑えている。

「よし……! なのは!こっちはOKだよ!」

「こっちもだ!」

「思いっきりいけー!!」

シンたちの合図を受け、足元に桜色の魔法陣を展開しながら、桜色の羽が生えたレイジングハートを構えるなのは。

「ディバイン……!」

「サンダー……!」

対してフェイトなのはに合わせて、黄色の魔法陣を足元に展開しながらバルディッシュを構える。

「バスターー!!」

「レイジーー!」

同時に放たれる桜色と黄色の光、そしてあたりに魔力の衝撃波が起た。

数十秒後にそれが止むと、六つのジュエルシードが浮かんでいた。

 

なのはとフェイトはその六つのジュエルシードに高度を下げて赴き、互いに見つめあう。

そしてなのははある決意をし、胸に手を当て口を開いた。

「私解ったの、私はどうしたいのか、フェイトちゃんとどうなりたいのか……」

なのははすべてを包み込むような優しい笑顔で、フェイトに自分の手を差し出した。

 

「友達に……なりたいんだ」

 

その言葉に驚くフェイト、その光景を見守るシン達、だが、

「あれ……? 空が……?」

上空の雲が通常ではありえない色でうなりをあげているのにシンは気付く。

「まずい! みんなにげろ!」

「えっ!?」

「シン!?」

だが一足遅く空から赤紫色の雷がなのはとフェイトを襲う。

「きゃあ~~!」

「母さん!?」

おびえる様にフェイトは空を見る。

「フェイト! 危ないっ!」

上空の雷がフェイトに狙いを定めていることに気付き、雷から守ろうと彼女に飛びつくシン、しかし二人とも雷の直撃を受け、そのまま力なく海へ落下していった。

「うわあー!」

「きゃああー!」

「ちぃ!」

アルフは空中で二人を受け止め、ジュエルシードに手を伸ばすが、

「させるか!」

突然転移してきたクロノにあともう少しというところで三つ取られてしまう。

「う……うわあああーー!!」

残りの三つを手に入れたアルフは海面に力いっぱい魔力弾を打ち込み、発生した水しぶきを目くらましにその場から撤退していった。

「くそっ!逃げられたか!」

(フェイトちゃん……シン君……)

なのははただその光景を呆然と見ているしかなかった。

 

 

 

 

 

「シン……シン」

「う……アルフ? ここは?」

数分後、シンはアルフに起こされ目をさます、彼等は時の庭園に戻って来ていた。

「……!? フェイトは!? フェイトはどうなったんだ!?」

「静かにしな……今アンタの隣で眠っているよ」

シンはアルフに言われ隣を見てる、するとそこには寝息を立てて眠るフェイトがいた。

「はあ、よかった……」

「まったく、フェイトったらシンを見つけるんだって聞かなくてさ、ここ数日働き詰めだったんだよ。」

「そうだったのか、ごめん……ありがとうアルフ」

「よしとくれよ……なんか照れるじゃないか」

頬を赤らめ微笑むアルフ。

「……さっきの雷はプレシアさんがやったんだな」

「ああ」

そしてシンはある所に向かう為立ち上がろうとするが、アルフに腕を捕まれ止められる。

「シン、どこへ行く気だい?」

「決まっている、プレシアさんのところだ! もうこんな事許しておけない……!」

「まあ待ちなって、ちょっとアタシの話を聞きな」

アルフは眠っているフェイトの頭を撫でながら静かに語り始めた。

「この子はね……母親があんなのだし、世話をしてくれたリニスもどこかへ行っちゃうし、私の前以外じゃあんまり笑わない子だったんだ」

「それは……何となくわかる気がする」

シンはフェイトと初めて出会った頃の事を思い出し、自分しか知らない彼女の境遇を照らし合わせて顔を顰める。

「でもね、シンに出会ってからフェイトすごく変わったんだよ、あんなに怒ったり泣いたりするフェイト初めて見るよ」

「……」

「私にもよくわからないけど……私に出来なかったことをシンはやってのけたんだ。本当にありがとう」

「そんな、お礼なんて……」

自分なんて大した事をしていない、そう言おうとした時……。

「だからさ、これからもさ」

「!?」

突如シンの腹部に重い衝撃が走り、彼の意識は何処かに飛んで行ってしまう、その直前……。

「フェイトの事、守ってあげてね」

どこか寂しげなアルフの声が、シンの耳に辛うじて入った。

 

 

アルフはその場にシン達を残し、プレシアのいる王座がある部屋にやって来た。

「どうしたのフェイトの使い魔……? 私に何か用?」

アルフの姿に気付いたプレシアは彼女の方を振りむこうとする、その時……。

「おらあ!!」

いつの間にか距離を詰めていたアルフの渾身の右ストレートが、プレシアの左頬にクリーンヒットした。

「ぐっ……!?」

予想より早いアルフの動きについて行けず、プレシアは数メートル吹き飛ばされてしまう。

「今のはフェイトの分だ……! あんたって奴はシンまで巻き込んで……! なんでそこまで! あの子はアンタの為に頑張っているのに!」

そう言ってアルフはもう一発パンチをお見舞いしようとプレシアの元へ飛んでいく、しかし……。

「あの子は使い魔の作り方がなっていないわね、余分な感情が多すぎる……」

アルフが目と鼻の先まで接近した瞬間、プレシアは彼女の腹部目がけて圧縮した魔法をお見舞いし、数メートル先まで吹き飛ばしてしまった。

「うわっ! ……ぐぐっぐ……へへへ……一発ブチ込んでやったよ、ざまあみろ……!」

アルフはボロボロの体を必死に起こしながら、満足そうににやりと笑った。

そのアルフの表情が癪に障ったのか、プレシアは彼女に向かって膨大な魔力弾を放ち彼女がいた場所ごと吹き飛ばしてしまった。

「ったく、調子に乗るんじゃないわよ……!」

プレシアは切れた口から垂れてきた血を拭う、するとそこに騒ぎを聞きつけたヴィアが駆けつけてきた。

「プレシア! 今の大きな音は何!?」

「なんでもないわ、そんな事よりあの子へのアルティメット細胞の適応経過はどうなっているの?」

「そんなことよりさっきのは……!」

するとプレシアはヴィアの足もとにに向かって魔力弾を放ち、彼女を威嚇する。

「きゃあ!?」

「そんな事ですって……!? アナタは余計な事せずに研究を進めればいいのよ! アリシアはどうなったの!?」

その、プレシアの鬼気迫る表情に圧されたヴィアは、震える声で経過を報告した。

「い、今のところ拒絶反応はないみたいだけど、流石に蘇生までは……」

「そう……後はジュエルシードをすべて揃えるだけね」

「でも予断を許す状況じゃないわ、今後逐一に様子を見ないと」

「じゃあもうアナタは用済みって訳ね」

「え?」

ヴィアはその時初めて、自分の頭上に巨大な魔力の塊が浮いていることに気付いた。

「プレシア! アナタ!」

「ありがとうヴィア、いままで手伝ってくれて……でもこれから私とアリシアの幸せな時間を作るにはアナタは不要よ」

そう言ってプレシアはヴィアに向かって指をさすと、そのまま下におろすジェスチャーをとり魔力の塊をヴィアに向かって降ろした。

そしてヴィアのいた場所は轟音と共に跡かたもなく消え去っていた……。

「これで邪魔者は一人消えた、後2人……ふふふふ……あはははは!」

プレシアはシンとフェイトがいる方角を見ると、狂ったように笑いだした。

「もうすぐよ! もうすぐよアリシア! 私達は失われた時間を取り戻す! あははははははは!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――お母さん、怖い……あんなのお母さんじゃない……。―――

 

―――なんで?なんでお母さん、昔のように優しく笑ってくれないの?―――

 

―――そうか、世界中のみんながお母さんをいじめたから、お母さんいなくなっちゃったんだね。―――

 

―――大丈夫だよお母さん、わたしガコンナセカイ、コワシテアゲルカラ―――

 

 


 
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