No.341915

真・小姫†無双 #34

一郎太さん

#33にも王冠が!?
………きっと年末でみんな忙しいんだろうなぁ。
え、一郎太?一郎太は明日の発表の為に徹夜の予定ですが何か?
だが、兵は拙速を尊ぶ!という訳で今日もこの時間に投稿出来た。
今回は久しぶりのイチ押し………だったらいいなぁ。

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2011-12-01 17:08:20 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:7697   閲覧ユーザー数:5217

 

 

 

【CAUTION!】

 

 

この作品を読むかどうかは自己責任です。

 

気分を害しようと、それは自己責任です。

 

お金がないのも自己責任です。

 

彼女がいないのも自己責任です。

 

それでもいいという方は、文頭に

 

『(* ´Д`)ハァハァ』

 

と荒い息を書き込んでからコメントしてください。

 

ただし色々と否定的な※はなし。

 

作者の心が痛むから。

 

ではまた後書きにて。

 

 

 

 

 

 

 

#34

 

 

孫策の許可を受け、俺は周りを見渡した。ひぃ、ふぅ、みぃ………孫策とシャオを除外して全部で9人か。

 

「ふむ、何人か見知った顔がいるな」

 

俺はまず武官の1人に近づく。

 

「君は…あぁ、うちによく忍び込んでいる娘だな」

「はぅあぁっ!?ば、バレてたのですか!?」

「全然?」

「へ?」

「服装が隠密っぽいからカマかけてみた」

「………………」

 

茫然としてやがる。くくく、俺に口で勝とうなんざ生まれ変わっても無理だ。

 

「ところで、君は猫が好きだろう?」

「はいっ!あ、いえ、その……どうしてわかったんですか?」

「服に猫の毛がついている」

「………………」

 

さて、まずはこの娘からだ。俺は懐から1枚の紙片を取り出した。

 

「さて、君に見せたいものがある。さっきシャオから動物園の話は聞いたな?名前の通り、動物のいる園だ。勿論猫もいるぞ」

「っ…」

「そして、これがその写真だ」

「しゃしん…?」

 

そう、俺が見せたのは1枚の写真。李典が来た時に、暇そうにしていたのでカメラの原理を教えたらマジで作りやがった。それで撮影した1枚だ。うちの白虎の腹にもたれかかって眠る恋の周りに20匹近い猫たちが丸まったり伸びきったりして眠っている。

 

「これは、君にあげよう。いまはそれだけだ」

「………………」

 

写真を受け取った周泰は、ふるふると肩を震わせていた。

 

 

 

 

 

 

「まさか買収とはね。袁家の将の誇りもないのかしら?いえ、ある意味袁家らしいわね」

 

厭味たらしく孫策が言うが、そんな事はない。お近づきの印に、俺は猫好きな少女に猫の写真をプレゼントしただけだ。

 

「次は…ふむ、そこのお姉さん」

「儂か?儂はもうお姉さんという歳ではないぞ」

「いやいや、貴方はまだまだ若い。俺が紳士(ろりこん)でなければ襲い掛かっているくらいだ」

「上手い事言うのぅ、くっくっく」

 

流石年上の余裕だな。だが、#33での発言から黄蓋が酒好きという事は分かっている。俺は荷物の中から徳利をひとつ、取り出した。

 

「む?」

「これは俺が作った酒だ」

 

わざとらしくキュポンと音を立てて栓を抜くと、その入り口を黄蓋の鼻先に近づけた。

 

「むむっ!?この香り…儂がこれまで嗅いだことのない香りじゃ。そして酒は綺麗に透き通り、まるで雪解けの水そのもの………あぁ、こうして匂いを感じるだけでも涎が溢れてくるわ………」

「ほぅれ、ほぉれ」

「おぉぅ、おぅ」

 

彼女の前で徳利を左右に振れば、それに合わせて彼女も揺れている。

 

「さ、祭殿!?」

 

周瑜が慌てている。まぁ待て。お前の番はすぐに来るさ。

 

「これは貴方に進呈しよう。気に入ったのならば南陽にくればいい。たくさん作っているからな」

「お、おぉ…」

 

その豊満な胸元に徳利を軽く押しつけると、彼女は大切な宝のように抱き締めた。徳利が羨ましいと思いました。

 

 

 

 

 

 

「まさか、祭まで籠絡するとは………」

「あぁ、こちらの嗜好を熟知しているようだな。気を抜くなよ、お前達」

 

王と大軍師が警戒している。だがもう遅い。俺がここにいる時点で勝負は決まってるんだよ。

 

「さて…君は、諸葛瑾か?」

「あぅぅ…ご存知なので?」

 

次に目を付けたのは、金色の長い髪をした少女だ。大き目の服装にゆったりと身をつつみ、頭にはこれまた大き目のベレー帽が乗っている。朱里を成長させたらこんな感じになるのだろうな。成長などさせないがな!

 

「あぁ、朱里がうちで働いているのは知っているだろう?朱里は君によく似ているからね」

「そうですか。妹は元気で?」

「あぁ、小さい身体で元気に頑張ってるよ」

 

ふむ、文官は手強いのかもな。冷静に対処してくる。だが、その余裕が崩れるのを見るのもまた一興。

 

「さて、ここから取り出したるは」

「………」

 

何が出てきても動じないという顔だな。だが甘い。お前が朱里の血縁である時点で、もう結果は決まっているのだよ。

 

「………『御遣いと天子』?」

 

食いついたな。だが、それだけじゃないぞ。俺は彼女に見えるように、ゆっくりと表紙を捲った。

 

「なっ!まさか………本物なのですか?」

 

そこに書かれているのは、『つくよみ』という名と『すかい』という名。作者と監修の直筆サインだ。

 

「あぁ。この作者たちと懇意にしていてな。最初の出版も俺が出資して手伝ったんだ。絶対人気が出るから、その時にはこの価値もきっと上がる筈だと、俺の為に署名(サイン)してくれたのだよ」

「あ…あぁ………」

「だが、これは君に差しあげよう」

「あ、あぅぁぅ……」

 

チョロイわ。

 

 

 

 

 

 

「さて……」

「ひぅっ!」

 

おっと、振り返っただけなのに、驚きの声が上がったぞ。………この娘か。

見れば、大きな袖で顔を隠した少女がいた。僅かに隙間から覗き見える顔は、真っ赤に染まっている。ふむ。

 

「おっと、驚かせてしまったかな?」

「ひゃ、い、いえっ!」

「すまない、君があまりにも可愛いから、早く声をかけたいとずっと思っていたんだ」

「へっ?は、はややややっやややややあっぁあぁぁ………」

 

俺は呂蒙の手をそっと握ると、その耳に口を寄せて囁いた。

 

「君の顔をもっと近くで見たいんだ。隠さずに見せてくれるかな?」

「ははははははひぃっ!!」

 

ゆっくりと力を込めないように彼女の顔の前にある両手を広げる。俺は自分の顔を彼女の真っ赤な顔に近づけ、顕わになった片眼鏡の奥の瞳を覗き込んだ。

 

「思った通りだ。とても…とても澄んだ瞳をしているね」

「……………」

「あ、亞莎ちゃん!?」

 

おっと、気絶してしまったようだ。でもこの純真さは可愛いなぁ。幼女(ろり)には入らないが、観賞用にはいいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

「お次は、陸遜さん」

「は…はいっ」

 

巨乳(おっぱい)お化けの声が裏返った。

 

「貴女は大層読書がお好きだと聞きましたが」

「は、はぁ……」

 

くくく、腰が引けてやがるぜ。

 

「そんな貴女には………何でしょう?」

 

俺は荷物からゆっくりと、1文字1文字タイトルが見えるように本を引き出す。

 

「えっと………『孟』」

「そして?」

「『徳』…」

「さらに?」

「『新』……まさか」

「そのまさかだ」

 

陳留に李典を借りに行った時にパクっておいたのだ。

 

「『書』!『孟徳新書』ですか!?曹操さんの領内でしか販売していないという、曹操さん自身が手掛けた、この『孟徳新書』を下さると言うんですか!?」

「あぁ、勿論だ」

「は、はぅぅ…表紙だけで濡れてしまいそうですぅ………」

 

ちょっとだけおっきした。

 

 

 

 

 

 

「どうする、冥琳?文官は冥琳以外全滅よ?」

「あぁ……私まで堕ちるわけにはいかないな」

「まさか。冥琳が私以外になびくわけがないじゃない」

「当然だ」

 

そんな余裕もいつまでもつかな?

 

「さて、周瑜よ」

「お前が私に何を献上するのかが今から楽しみだよ」

「そうか、わかっているなら話が早い」

 

だが、何が出るまではわかっていないだろう?

俺は荷物から1冊の本を取り出す。

 

「………ふん、何かと思えばまた『御遣いと天子』か。馬鹿のひとつ覚えだな」

「………」

「私は署名(サイン)になど興味ないぞ?それにその連作(しりぃず)ならすべて初版で集めている」

「マジ?」

 

おい、隣でお前の相方が軽くヒいてるぞ。

 

「なるほど、さすがは呉の大軍師様だ。では、ここに書いてあるものが読めるかな?」

「甘い。どのようなものを持ってきて、も………」

「気づいたようだな」

「………」

「冥琳?」

 

孫策が声を掛けるが、周瑜は答えない。ぐわと目を見開き、食い入るように俺の手にある本の表紙を見つめている。

 

「『御遣いと天子』は現在5冊目まで刊行されている。

『~禁断の愛~』

『~出会い編~』

『~月が詠うは泥の愛~』

『~雄々しき華の略奪~』

『~霞の如き~』」

 

俺の言葉が聞こえているのかいないのか、周瑜は夢遊病者のように両手を前に出して本に触れようとして、手を戻すという動きを繰り返している。

 

「では、これはご存知かな?………いや、その様子なら知っているのだろうな」

「凌辱…編……」

「そうだ。二作目の次に発表された、幻の第三作『御遣いと天子~凌辱編~』だ。公式にはなかった事になっているがな。周瑜ならその噂の内容も知っているのだろう?」

「あぁ…そのあまりに過激な内容の為に、発売後、作者自らが街を歩いて書店を渡り、回収作業を進めたという作品だ。中には返品を拒もうとする読者もいたという。………だが、何故それが此処にある!?あの本は回収後に数を確認し、すべて燃やされたと聞いたぞ!」

「先ほどの諸葛瑾への話を聞いていなかったのか?俺は『つくよみ』と懇意にしている。如何に作者の意志で廃版にしたくても、出資者を裏切る訳にはいくまい。それに、折角書いたものを捨てるのも、作者としては受け入れがたいものだ。いかなる駄作といえど、いかなる激作といえど」

「い、いいのか?」

「何が?」

「これを……私にくれるのか?」

「いつ俺がそんな事を言った?」

 

おっと、俺の中のサド公爵が目覚めてしまったようだ。だが、なんとなく可愛いので続けてみる。

 

「だ、ダメなのか?」

「くくく…欲しいなら自分でおねだりするんだな」

「あ…あぁ……どうか、どうかその本を私に譲ってはくれないか!?」

「そちらから条件もないのに?」

「じ、条件…?」

「あぁ、条件だ……さて、俺が何を望んでいると思う?」

 

俺の意図を察したようだ。彼女の瞳が眼鏡の奥で揺れる。

 

「わ、わかった……私は、お前の――――――」

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

周瑜が決定的な言葉を口にしようとした瞬間、俺は飛び退(すさ)る。俺がいた場所を、斜めに剣が振り下ろされていた。

 

「れ、蓮華様…?」

「………冥琳」

 

孫策かと思ったが、妹の孫権だ。彼女は姉にも劣らぬ、まさに王と呼べるほどの覇気を振りまきながら口を開く。

 

「ダメよ、冥琳…」

 

その言葉と重圧に、周瑜は知らず膝をついた。何を言おうとしているか理解したようだ。

 

「も、申し訳ありません、蓮華様………私が間違っていました」

「………」

「すまないが北郷、それを受け取る訳にはいかぬ」

 

ちっ、失敗した――――――

 

「ダメよ、冥琳!」

「「は?」」

 

――――――と思った俺と、周瑜の声がハモった。

 

「その本は私が貰うわ。北郷と言ったな、その本は私が頂こう」

 

まさか、これほど腐った奴がいるとはな。姉の孫策も呆気にとられている。

 

「なりませぬ、蓮華様!この書は一度使えば離れられぬ麻薬のようなもの!私が家臣として――――――」

「そう言って独り占めするつもりでしょう!?私にも読ませなさい!」

「いけません!そう言って先日お貸しした『御遣いと天子』の同人誌もパリパリになって返ってきたではありませんか!」

「そ、それは――――――」

 

どうしたものかとその醜い争いを眺めていると、後ろからこっそりと服を引っ張られた。

 

「どうした、甘寧?」

「あ、その……」

 

振り返れば、いたのは甘寧だった。何か言い淀み、恥ずかしそうに頬を染めている。

 

「その…頼みがあるのだが」

 

そう言って取り出したのは、1冊の本。

 

「『新約』か。甘寧はソッチ系なんだな」

「あぁ。それで、今度『つくよみ』殿と『すかい』殿に署名(サイン)を貰ってきてはくれないだろうか?………できれば『思春さんへ』とつけて貰えるとありがたい」

「………わかった。今度来る時に持ってくる。だが、その本はいい。こっちで新しい本を用意して、それに書いてもらうさ。ちゃんと初版だ」

「いいのか?」

「あぁ。それに、ソイツは布教用に必要だろう?」

「お、恩に着るっ!」

 

うちも相当ヤバいと思っていたが、コッチも末期だったようだ。

 

 

 

 

 

 

周瑜と孫権はいまだ骨肉の争いをし、そこにどのカップリングがいいかなどと陸遜や甘寧、諸葛瑾も加わった。

 

「なぁ、孫策」

「………なに?」

 

それを眺めながら、俺は隣で茫然と佇む孫策に声を掛ける。呂蒙は倒れたままだし、周泰は写真にボタボタと紅い雫を垂らしていて、黄蓋は徳利を傾けて赤ら顔だ。

 

「戦争、やる?」

「………やらない。というか、もうどうでもいい気がしてきた」

「とりあえず、このままいるとアイツらの妄想に巻き込まれそうだから帰るけど、お前も来るか?」

「………そうね。祭、いつまでもお酒飲んでないの。明命もシャシンとやらは一度しまって、亞莎を起こしなさい」

「む?仕方がないのぅ。まぁ、もうなくなってしまったし、丁度よいか」

「はぅぅ…亞莎、起きるのです!亞莎!」

「う、うぅぅん…」

 

もう飲み干したのかよ。というか周泰、鼻血が呂蒙にかかってる。

 

「シャオ、お望み通り戦争は回避したけど、こんな状態だ。シャオも一緒に南陽に行くぞ」

「え、シャオの為だったの!?」

「当り前だろう?シャオが戦争をしたくない、って言ったんじゃないか」

「あ…ありがとう、一刀っ!」

 

自分の発言を思い出し、俺の意図を理解したシャオが、胸に飛び込んできた。可愛いなぁ、もう。

 

「それじゃ、行くぞ、孫策」

「雪蓮でいいわよ」

「じゃぁ、俺も一刀でいいぞ。荷物なんかは後で手配してもらえ。城が壊れる前に脱出する」

「そうね」

 

振り返れば、玉座の間は戦場と化していた。周瑜は鞭を振るい、甘寧が曲刀で防いでいる。諸葛瑾は朱里の姉とは思えないような素早さで本を投げつけ(どっから出してるんだ?)、陸遜は自分の棍にエロく絡まっていた。そして孫権はと言えば――――――。

 

「あの闘気…昔の母様を思い出すわね」

「え、母様もあんな感じだったの?」

「そうよ。特に()()()の時は手がつけられなかったわ」

「そうなんだー」

 

とりあえず、逃げる事にするか。

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「兄上!『御遣いと天子』の三作目が出たぞ!」

「そうか、もう書店には販売してるのか?」

「うむ、数はまだ少ないが、反応を見て増版する予定じゃ」

 

とてとてと走り寄った妹の自慢話を聞いてやる。どうやら、書いている小説の第三作目が販売開始となったらしい。前回も前々回もベストセラーだったからな。収入は意外と多い。

 

「兄様にも読んで欲しいのじゃ」

「あぁ、いいぞ」

 

そう言うと、空は懐から1冊の本を取り出した。

 

「なになに?『御遣いと天子~凌辱編~』か。よくこんなのが書けたな」

「うむ、そこは雛里の同人誌のおかげじゃ」

「やっぱり出所はアッチか………って、雛里?」

「うむ、雛里じゃ」

 

嫌な予感がしてきた。

 

「読ませてもらうぞ?」

「うむ!」

 

そして――――――。

 

「凌辱って、俺がされる側かよっ!?」

「?」

 

こうして、スポンサーの不況を買い、『御遣いと天子』シリーズの第三作目は回収される事となった。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

という訳で#34でした。

 

誰が南陽に来るのか期待やら予想やらしていたと思いますが、

みんなの期待を裏切る、それが一郎太クオリティ。

 

明日もたぶんこのくらいの時間に投稿できそうなので、また読んでやってください。

 

ではまた明日。

 

バイバイ。

 

 

 


 
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