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恋姫夢想 ~至高の鍛冶師?の物語~ 第六話

第六話投稿です。
ある人物が登場します。
あり得るのか?って考える方もいらっしゃるでしょうが
見て見ぬ振りをお願いします。

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2011-11-18 00:30:50 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:5884   閲覧ユーザー数:4842

こんにちは。

鍛冶屋「鋼鷹」店主兼「羽丸印」創設者  鷹原 真也だ。

肩書きが少し増えた。

 

 

 

 

「羽丸印」のブランド名を作ってから暫く経った。

飯屋で扱われてる「羽丸印」のメニューも大分増え、この街で「羽丸印」を

知らない人間は幼い子供を除いていなくなった。流石にすべての人間に

知られるなんて事は考えない。『変わってるけどおいしい物』って認識は

あるみたいだが。

で、街全体に知られれば他の街でも噂になる。主に商人経由で。噂を聞きつけて

「羽丸印」の料理を食べ、その美味しさに感激した人間が店主に弟子入りを

してきたらしい。弟子入りは良いんだが、「羽丸印」のメニューを教えるのは

俺からの条件を破る事になるのでどうすればいいか、と俺自身に相談に来た。

 

 

こういう所がこの店主の慕われる理由なんだよな。その気になれば「羽丸印」

を自分の物として扱う事だってできるのだ。鍛冶関係はともかく、料理関係

は店主が作って売り出しているのだから、この街では無理でも他の街でなら

俺に知られずにいる事も可能だ。だがそれをする事をせず、それどころか

俺に相談する。卑しい人間なら絶対にしないだろう。

 

 

全く関係ないが、この街で「大将」と言えば俺だが、「店主」単独呼びだと

この人の事を指したりする。だから他の店の店主の場合は「○○屋の店主」等と

呼ばれる。

けど公私とも名前じゃなくて「店主」って呼べなんてこの人位だろう。絶対。

なんで「店主」なのか訊いたら

 

「おれが店主だからだ!」

 

って答えた。…本気なのか、はぐらかされたのか、判断がつかなかった。

 

 

 

 

で、「羽丸印」のメニューを教える事については、店主が認めた人間にのみ俺が

教えることにした。店主の見る目は長年飯屋でいろんなお客を見てきた為か、

怖いくらいに確かだ。もし単純に名前だけ使おうなんて奴はまず弾かれる。

しかも飯屋と別ともなれば店主に弟子入りしたいのか、それとも

「羽丸印」のメニューだけが知りたいのかも分かる訳だ。後者だったら飯屋に

通う事はなくなるしな。その場合は絶対に教える気はないが。

勿論、これでメニューを覚えた人間にも特許料の報酬、第三者への教授厳禁、

「羽丸印」の名称使用の旨は徹底させている。

それなりの人数に教えたから結構な数の街で「羽丸印」は有名になってるだろう。

 

 

 

 

 

次は本命の鍛冶関係。こっちもかなり変化があった。マークを入れるように

なってから商人が仲介人を申し出るようになったのだ。以前は俺が作った物でも

目の利く人間じゃないと「同じ人間の作品」と分からなかったのが、マークを

入れる事で誰の目にも分かるようになった。そうなると俺の作品はまず

売れ残らない、という事実が浮き彫りになり

 

「『羽丸印』の作品は売れる」

 

という情報が商人達の間で交わされたらしい。かなりの数の商人が接触してきた。

……正直、商人のネットワークを舐めてた。

で、店主にも協力を仰ぎ、信頼できる商人を何人か選んで仲介人を頼んだ。

元の世界では家の事でも、俺の作品に関しても寄ってくる商人は何人も

いたので、俺自身人間観察は得意だ。そして店主とのコンボならまず騙そうなんて

人間は見分けられる。他の街の事だから値段を法外にして売ったり、横流ししたり

しようとする奴もいるだろうからな。

で、今の俺は他の街からの注文も受けている。俺だけだから大量には作れないが、

それが希少価値に拍車をかけてるらしい。

こっちの「羽丸印」もかなり他の街では有名になってる様だ。

 

 

結果、かなりの金が俺の所に入ってきた。

……このままなら一財産築けるな、たぶん。

 

 

 

 

 

あと事情があって臨時ではあるが俺の店で働く人間ができた。

 

 

 

 

 

「楽進、この鎌を前に行った東門のお婆ちゃんの所に届けて来てくれ」

「分かりました、鷹原さん」

 

それがこの子、楽進である。

 

 

 

マークの入った作品を売るようになってから少し経ったある日、楽進は俺に会いに来た。

自分の武具を作ってほしい、と。

俺はすぐに断った。今までにも武具を作って欲しいという人間はいたが、例外なく

断ってきたのだ。

この世界に来てから最初の方こそ剣等も作り、それを売りもしていたが、城に武具を

納めるようにしてからは董卓軍関係以外では作らない様にしたのだ。

利益という点では間違いだろうが、そうすると董卓軍は俺の武具を使いながら

俺の武具と戦うなんて事になりかねない。

これでも感謝しているのだ。もしもこの街の軍が董卓軍でなかったら今の俺は間違いなく

存在しないのだから。

一切作らない訳ではないが、ばら撒く様な真似をする気は無かった。

だから軍関係以外では包丁等の日用品を主に作っている。

だが、僅かながら作った武具が存在するのは事実。その内の剣一振りを楽進の知り合いが

手に入れていたらしい。楽進自身はそうでもないが、その知り合いは目利きも

できるらしく、最近楽進が手に入れた「羽丸印」の包丁を見て二つの作品は同一人物に

よる物と気付いたんだそうだ。

わざわざ武具の為に移動手段の発達していないこの世界で他の街から足を

運んで来るのだから本気なのは分かるが、それでも俺は作る気がなかった。

 

だが楽進は折れようとせず、それから何度も店を訪れた。

いくら追い返しても全然退こうとはせず、俺に武具を頼み続けた。

 

 

そんな中、ある事件が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

俺が店主に、注文を受けた鍋を届けた時の事だ。

 

「あの嬢ちゃん、また来てんのか」

「ああ」

 

この時、楽進は俺から少し離れて付いてきていた。

 

「何の武具が御所望なんだ?あの嬢ちゃん」

「手甲」

「なら作ってやればいいじゃねえか。大将も自分用の作ったんだろ?」

「それとこれとは話が別だ」

 

 

そう、俺も自分用の手甲・脚甲を作ったのだ。御前試合のすぐ後に作るといくらなんでも

早すぎると華雄に思われるので少し時間を置いて。

銘は手甲が「風生(かぜうみ)」、脚甲が「土砕(つちくだき)」だ。

自分でも微妙なセンスの銘だと思うが、どっちも目標とする事をそのまま銘にした。

で、約束通り華雄と再戦した。なんとかその時も俺が勝った。前以上の辛勝で。

華雄の奴、作った俺でも素材って木の俸だったか?って位振り回してくるから前以上に

躱し辛かった。しかもその時の遠心力利用して斬撃や殴撃も放ってくるから

威力が恐ろしい事になってた。

一番的確だろう言葉は………振り子ギロチン。

 

閑話休題

 

「けどよ、真面目そうな良い子じゃねえか。それは大将もわかってんだろ?」

「それは勿論」

 

楽進は確かに良い奴だ。この街でも困ってる人間を見かけたら率先して動くし、

少なくとも街の人間の評判は悪くない。行動に打算も無い様だ。本当に真面目で優しい

奴なんだろう。それは店主も同意見だ。

俺が店主とそんな話をしていた時

 

 

 

「盗人だあ!!!」

 

 

 

外から叫び声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

叫びを聞いて俺達が外に出ると一人の男が何かを抱えて俺達のいるのとは

反対方向に走って行くのが見えた。

すぐに追いかけようとした俺だが、おかしな動作をする楽進が目に入った。

まるでサッカー選手のように右足を後ろに振り上げ、その右足が光始めたと思ったら

 

「猛虎蹴撃!!!」

 

シュートする様に脚を振り抜き、その脚から光る球が轟音をあげながら放たれた。

その光球は男の真後ろの地面に着弾し、それによって発生した爆炎で

男が吹き飛ばされた。

その時、男が抱えていた何かも道に投げ出された。…どうやら上等な布生地だったらしい。

なおも逃げようとする男だが、追いついてきた楽進に一発もらい、気絶した。

後は男を兵士に引き渡せば一件落着だ。……普通ならば。

 

「…………真面目な良い子…なんだが」

「真っ直ぐすぎて回りの事が目に入っていない…か」

 

とりあえず俺は男を見下ろしてる楽進に近づき

 

 

 

 

 

その頭に拳骨をお見舞いした。

 

「痛っ!?だ、誰…店主!?」

「『鋼鷹の』店主だ。この街で『店主』単独呼びは特定人物の事になるぞ」

「は、はあ……じゃなくて一体何を」

「まず周りを見てみろ。話はそれからだ」

「周り?…あ」

 

俺が楽進に拳骨をお見舞いした理由。それは…

 

 

 

 

 

 

楽進の放った猛虎蹴撃とやらで発生した爆炎が周りの店や民家にも多大な被害を

出したからだ。

 

 

 

 

「盗人捕縛の協力には感謝するが、ここまで被害を出されて見過ごす訳にはいかん。

 一緒に来てもらおう」

「……はい」

 

爆音を聞いて駆けつけて来た兵士達に、盗みを働いた男と楽進は連れていかれた。

さすがに男の様に縄で縛られたりはしなかったが。

盗人を捕えようとした結果で、幸いにも怪我人はその盗人だけ。盗品も盗人が

壁の役割を果たして無事。民家や店の人間も気にするな、とは言ってたが、

いくらなんでもそれだけで済ませるには被害がでかすぎた。

 

「……はあ」

「何か考え事か?大将」

「楽進の事でちょっと……」

「嬢ちゃんか。大変だよなあ、この街の人間じゃないから簡単に

 釈放されねえだろうなあ…。当分は牢屋の中かもなあ…」

「……」

「釈放されてもあの嬢ちゃんの事だから、弁償するとか言って

 いろいろやるだろうしなあ…」

「……」

「ああ、持ち金を全部弁償に使っちまいそうだ。若い女の子が宿にも泊まれずに

 寒空の下で野宿とはなあ…」

「……」

「で、嬢ちゃんが何だって?大将」

「わざとらしく訊かないでくれ、店主」

「はは、悪い悪い。けど大将だってそのつもりだったんだろ?」

「……さてな」

 

とりあえずは周りの片付けの手伝いだと、俺達は行動を開始した。

 

 

 

~後書き~

本当はこの後も続く予定だったのですが、あまりに長くなりそうなので

切りました。たぶん早ければ明日にでも続きを投稿できるかと。

真也は何をしようとしているのか!?まあ、もうバレてるんですけどね(笑

 

 

 


 
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