ここは玄朗の本陣。
玄朗は狼狽していた。
「何をしておるのじゃ!」
ダンッ!
その場に机を殴った音が響く。
近くに居た兵士はその音に驚いたが声を掛けることができない。
声を掛ければ胴から上が消えてなくなることが容易に想像できるからだ。
玄朗もこう見えて啓雅達と実力は同等のレベルだ。
だが、玄朗は自分で戦うことは自分の命がなくなるかもしれないということで絶対にしない。
「何故じゃ!こっちは敵の三倍も数を揃えて来ているのじゃぞ!
なのに何故勝てないのじゃ!」
そう、一刀達の圧倒的な武力により三倍近くある戦力も殆ど三国の戦力と同等になってしまった。
「このままではあの若造を殺して儂が次の解放軍リーダになるが……!」
玄朗は啓雅との仲が相当悪かった。
玄朗は主に利益を重要視し助けた民から金を徴収していた。
だが啓雅はそんなことをせずに民は無償で助けていた。
口論をする時は玄朗は『儂等はボランティアでは無いのですぞ!』と言い
啓雅は『俺達は金稼ぎの為に戦ってる訳じゃない!』と言った。
「あの若造にだけは負ける訳にはいかん!」
そう言いながらもこの状況を逆転出来る可能性はほぼ無い。
一刀が居るお陰で三国の武将達の士気が上がり将の士気は兵士にも伝染する。
及川のお陰で伝令兵はほとんど死亡し戦況が分からず
啓雅のお陰で解放軍の兵士の士気が下がる。
解放軍の中で啓雅を尊敬していない者は本当にわずか。
だから大抵の者は戦う前に投降する。
そんなことを悩んでいると于吉が姿を現した。
「おやおや、相当手を焼いているようですね」
「于吉!何とかせい!」
「ふむ……良いでしょう。
少々目を瞑ってください」
「うむ」
言われた通りに玄朗は目を瞑る。
于吉はブツブツと何か呟いていく。
そして……
「身体制御解除!巨大化!」
すると玄朗の体が徐々に大きくなっていく。
その工程を于吉は悲しそうな目で見ていた。
そして限界まで玄朗が限界まで大きくなった時にこう言って于吉はその場から消えた。
「申し訳ありません……」
と。
戦場
「ふっ!……かずぴ~!そろそろ敵さんも退くんや無いのか?」
「分からないな……玄朗は利益を重要視するから俺達をどうしても殺したがるだろうけど……
でも、自分の兵士が減ることも良しとしないんじゃないか?」
「おらぁっ!多分前者じゃないか?あいつは俺を殺して解放軍の次期リーダーになりたがってるからな。
それに兵を減らしたくないんならもっと早くに撤退してるだろ」
喋りなが三人は周りの解放軍兵士を始末する。
解放軍は最初の頃の数は三百万人。
今は百万人。
啓雅の言う通り撤退するならばもっと早くしただろう。
「じゃぁ、全滅させるまで戦わんといけないってか?
きついのぉ……」
「しょうがないって」
そんなやりとりをしていると……
「おい!あれ見ろ!」
啓雅がとある方向を指す。
啓雅が指している方向を見るとそこには一刀が及川が戦った巨人よりも遥かに小さいが巨体の大男が居た。
因みにこの前一刀が及川と戦った巨人の大きさが千メートル。
今回の大男は二十メートルと言ったところだろう。
「前のあれを見たから何かなぁ?」
「そうやな。
それより啓雅はあの程度の大きさの奴が怖いんか?」
「何言ってんだよ。
黒矢……だよな?」
「そうや。
わいの名前は及川祐や!」
及川は親指を立てて自己紹介したが二人は見事なまでに無視をした。
何故なら大男が突進をしてきたからだ。
一刀と啓雅は武器を構えるが……
「ふっ!」
及川の放った矢が大男の足に刺さり大男はそれで止まる。
「どないやねん?」
及川は勝ち誇った様な顔をしていたが大男は脚に刺さった矢を抜いて握り潰した。
「あれ?とんでもないの……」
「及川は後で援護してろよ。
俺達が接近戦で倒すから」
「倒しても構わんか?」
「良いぜ。
一刀、行くぞ」
「ああ。はぁぁっ!」
「おらぁぁっ!」
一刀と啓雅は大男に向かって襲い掛る。
二人の攻撃は普通ならばかわせない攻撃。
だが……
「はぁ!?」
「なっ!」
大男は一瞬でその場から消えて居なくなった。
見ると大男はその場から右に三メートルの所に居た。
「大男のくせにとんでもない速さだな……
こりゃ気功大剣よりも気功剣の方が良いな」
啓雅がそう言うと大剣が剣の形に変わった。
「なぁ、あの首飾りって……」
一刀そう言うと啓雅は一刀が指した首飾りを見る。
それは玄朗がしていた首飾りだった。
「于吉の仕業かもな」
「ま、別に良いけどあの速さは厄介だな。
どうするんだ、啓雅」
「時間差で行くか。
まずは俺、一刀、それでも駄目なら及川に任せよう」
「分かった。
及川!今から時間差攻撃するからもし俺が仕留められ無かったら頼むぞ!」
「分かった!」
及川がそう言うと啓雅が玄朗に向かって襲い掛る。
啓雅は致命傷になる攻撃よりも傷を付けて玄朗の動きを鈍らせる作戦に出た。
「くらえ!」
結果玄朗に攻撃は当たったがあまり致命傷にならなかった。
玄朗はすぐに距離を取る為に移動する。
移動した先には一刀が居た。
一刀は致命傷になる攻撃をする。
「はぁっ!」
玄朗はかわすが、かわしきれずに傷が付いてしまう。
玄朗は一刀からも距離を取る為に移動する。
だが……
「これで終わりや」
移動した先に及川が矢を放った。
その矢は玄朗の胸に刺さり玄朗は即死し元の大きさに戻った。
「「「っしゃぁぁぁぁぁっ!!!」」」
一刀達はハイタッチをした。
そして啓雅は解放軍の指揮を執り始める。
「おら!お前等!今回の一件は完全に無しだ!
もう一刀のことは諦めろ!
こっちに残りたい奴は残っても良いぞ!」
それを聞いた解放軍達は武装解除を始める。
「啓雅……良いのか?」
「応!その前に三国の王達に謝罪しないとな。
沙紀!」
「ここに」
「ついてこい」
「どこまでも……」
そして一刀達は三国の王達が居る陣へと向かった。
本陣
「まず、今までの件を謝罪する。
あなた方には危険な目を合わせてしまって申し訳なかった」
そう言って啓雅は頭を下げた。
沙紀もそれに倣い頭を下げた。
「皆……啓雅達を許してやってくれ。
今回の一件は啓雅達の協力が無かったら勝てなかった。
だから許してやってくれ。
この通りだ」
一刀はそう言って土下座した。
「「「!」」」
それを見た瞬間及川以外は驚愕の表情を浮かべた。
一刀がそんなことをするなんて思っていなかった。
だが、及川は一刀が土下座をすると分かっていた。
何せ一刀は自分の仲間の命を救えるならば何でもする男だから……
「お、おい!一刀!俺達の為にそんなことをしなくても良いんだよ!
そもそもお前は俺のこと……」
「薄々はお前は傷付きながらも戦ってることに分かってた。
でも……俺は本当に甘い奴だからお前のやってることを正当化したくなかったんだ……
今までお前を最低な奴の様に思っててごめんな、啓雅」
「………」
啓雅は何も言えなくなってしまった。
その場に沈黙が流れる。
それを破ったのは桃香だった。
「私は許しても良いと思う……
ご主人様がここまでしてるのに許さないなんてあまりも酷だよ」
「私も許しても良いと思うわよ?華琳」
「でもね……何かしらの罰を与えないとケジメが付けらじゃない」
「何でもさせる!啓雅に何でもさせるから!
漢女の居る地獄の中にも投げ飛ばすから!
許してやってくれ!」
「一刀?例えがものすごくヤバい感じがするんだけど?
見てみ?あそこに居る漢女の二人が涎を垂らしてるんだけど?」
啓雅は引き攣った顔で貂蝉達の方を指した。
そこには涎を垂らした貂蝉達が居た。
「少々良いかの?」
許子将はそう言って前に出た。
「どうしたのかしら?」
「うむ、啓雅達は悪く無いかもしれんのでな」
「どう言う意味?」
「我等は一刀がこの世界に来てから初めて啓雅と戦った後で啓雅達の世界に行ったのじゃ。
そして政府の要人達を調べたのじゃが……驚くべきことが発覚した」
「何があったのかしら?」
「うむ……政府の要人達は国の治安を良くしようとする者達と
私利私欲に埋もれる者達の二つの派閥があっての。
治安を良くしようとする者達は次々に変死していき
私利私欲に埋もれる者達は全員左慈か于吉と接触している」
「……まさか」
「大体事情が分かったな。
治安を良くしようと思ってる奴等は左慈達に殺され
私利私欲に埋もれる者達には治安を悪くすることを条件に金品を渡す。
そこで解放軍が結束されその中に俺が解放軍に所属するようになる。
本当なら俺を解放軍の中で殺すつもりだったがその前に俺はこの世界に帰って来た。
だから、啓雅を使って俺をこの世界から追い出そうとしたと……
随分回りくどい方法だけど確実だな」
「………」
啓雅は放心している。
まさか、自分が利用されているとは思っていなかったのだろう。
一刀は卑弥呼に聞いた。
「卑弥呼、この世界に左慈達は居るのか?」
「居場所は泰山じゃ」
「何でそこを?」
「ご主人様は覚えていないかもしれないけどとある世界のご主人様はそこで左慈ちゃん達と
戦ったの」
貂蝉達は原点の世界のことを話始める。
一刀が様々な人達と触れ合い王として立派な男になったことを。
「本当はその世界の記憶も移してあげたかったのだけど……
持って来れる記憶が三つまでだったから」
「何でも良いさ。
決着が着けられるならな。
皆、もう少し皆の力を借りるよ」
「「「ええ(はい)(うんなのだ)(うん)!」」」
その場に居た三国の将達全員が笑顔で頷いた。
後書き
皆さんにお聞きしたいのですが無印の方で一刀達が左慈達と戦ったのって泰山でしたっけ?
それよりそろそろこの作品も終わりですね……
多分ですが後五話位ですかね。
まぁ、本編だけの話ですが。
この作品が終わったら予告篇でやった作品をやってみようかと思っています。
では、また次回です。
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こんにちわ~
今回は特に言うことはありません。
では、始まり~