ある日の夕方。
「智ちゃ~ん」
智樹の家の前でそはらが声をかけてくる。
「マスター、そはらさんです」
「ああ、けどなんでまたそはらが?」
「今日、何かあるんじゃないの? トモキ」
「なんかあったっけ?」
ニンフに言われて智樹は考えるも思い当たらない。
「お兄ちゃん、これじゃない?」
カオスが電源が入っているテレビを見て、智樹に見せる。
『今日はハロウィンと言うことで町ではお化けに変装した子供達が大人達にお菓子をもらうと言う……』
「そう言えば今日はハロウィンだった」
「ハロウィン?」
「なにそれ、おいしいの?」
「なんで食べ物になるんだよ。ハロウィンってのは……」
「智ちゃん!」
そはらが大声で智樹に呼びかける。
「そはらが呼びに来たってことはハロウィンのことなんだろうな~。
とりあえず行ってみるか」
智樹達四人はそはらと出かけるのであった。
そらのおとしもの 『克服せよ! その体験(きょうふ)!!』
五人は商店街にやって来た。
「あれれ?」
商店街の人達はこれと言った変装などしていなかった。
「どうしたんだろ?」
「ようおっちゃん」
智樹が商店街の店のおじさんに声をかけてみる。
「よう智坊」
「おっちゃん、今日はハロウィンなのに変装とかしてないんだな」
「なんだ智坊、知らなかったのか? あれだ」
おじさんが掲示板の方に指を指す。
「うん?」
五人が掲示板に張り出されているチラシを見る。
『ハロウィンの日にハロウィン式肝試しをするので、変装はしないでください。
なお肝試しの場所は例のごとく神社の方でやります』
「これって……」
そのチラシが誰によって作られたのか考えていたら……。
「肝試しよ~」
そこに車の上に乗っている美香子が機関銃を智樹に向かって乱射する。
「どええええええええええ!!?」
「お~ほほほほほ」
智樹は撃たれまいと走って逃げる。
そして逃げた先は神社であった。
「は! ここは!?」
智樹は気づいたが時既に遅し。
「これから~、肝試し大会をするわ~」
智樹の周りには智樹を追いかけていたそはら達だけでなく、商店街や空見町にいる人達がいた。
美香子はマイクを使って皆に説明した。
「でも、ただの肝試しじゃ大会にならないから、参加者にはこれをつけてもらうわ~」
美香子はある機械を見せる。
それは声に反応するもので、その装置を付けているものの大きな声や音を探知した瞬間、透明なランプが赤くなりアラームが鳴るものであった。
「これのアラームを鳴らさずにゴールまでたどり着いた人が優勝よ~」
「それで優勝商品は?」
「今回の優勝賞品はサバイバルゲームの時と同じ、いえ……現金(げんなま)2000万よ~」
美香子が1000万分の1万円の札束を二つ出す。
『おおおおおおおおおおお!!』
「全員が驚きの声をあげた」
「それで今回おばけ役は五月田根家で用意したわ~、皆とびっきりのおばけが出てくるから皆注意してね~」
そう言いながら美香子はその場を去っていった。
そこに五月田根家の人間が参加者を肝試しルートへ案内する。
「それで俺も……」
智樹は当然のことながら強制参加させられた。
それから智樹達いつもの面々以外の参加者が肝試しルートに入っていくも……。
「きゃああああああああ!!」
「ぎいいいいやあああああああああ!!!!」
皆の悲鳴が聞こえてくる。
「なんかすごい悲鳴」
「本物のおばけでもいるのかな……」
「せ、せ、せ、先輩~、私怖くなってきました」
そはらとアストレアがすごく怯える。
その際に二人は智樹に抱きつく。
「ちょ、苦しい……」
「そはら、デルタ、ずるいわよ!」
ニンフも智樹に抱きつく。
「私も」
カオスも抱きついてきた。
「………」
イカロスは無言で抱きついた。
「て、イカロスまで………と、とにかくいくぞ………」
智樹は女の子達に抱きつかれたまま肝試しルートに入っていった。
その様子を後ろから見ていた空見中の男子生徒は全員こう思った。
(爆発しやがれ!)
複数の女の子に抱きつかれながらルートを歩く智樹。
「お前ら、いい加減離れてくれ……」
「で、でも……」
「何が出るか分からないし……」
「そはらはともかく、エンジェロイドのお前達が怖がるなよ」
「だって~」
そんな時であった。木の方から何かが現れる。
「ぶわーーーーーー!!」
「「「きゃああああ……」」」
最初は悲鳴をあげたものの、それを見た瞬間悲鳴をあげるのをやめた。
「な~んだ、ただの着ぐるみのおばけじゃない」
「え?」
「マスター、排除しますがいいですか?」
「イカロス、やめてくれ」
「はい」
イカロスは戦闘態勢を解く。
そして着ぐるみの中から五月田根家の人間が現れる。
「ほとんどの奴はこれでも十分驚いて失格になるんだが、あんた達の装置はまだランプは赤くないな」
男に言われて全員が装置を見てみるが、ランプは赤くなっていなかった。
「まだ続行可能ってこと?」
「ああ、この先はもっと怖い奴がいるから用心してくだせえ、イカロス姐さん!」
「分かりました」
(まだ子分関係続いてたんだ)
智樹達は奥へと進んでいく。
しかし奥へと進んでいくたびにイカロスやカオスが立ち塞がる障害としておばけに化けた五月田根家の構成員達を倒していってしまい、最終関門へとたどり着く。
「つ、ついに来たね」
そはらは緊張していた。
それはどんなおばけが出てくるのかと言う恐怖によるものではなく、賞金を手に入れた時のことを考えての緊張であった。
しかしその緊張はそはらだけではなかった。イカロスにニンフも同じであった。
お金の使い道がよく分かっていないアストレアと純真であるカオスにはあまり関係なかった。
そして智樹達の前にある茂みから物音が聞こえてきた。
「来るぞ……」
全員が身構えると……。
「おーーーーほっほっほっ!」
「!」
なんとそこから現れたのは機関銃を持った美香子と守形であった。
「どしぇえええええええ!!」
智樹は大声をあげながらすぐさま逃げて行った。
「待ちなさ~~~~い」
美香子は機関銃をぶっ放しながら、智樹の後を追っていった。
「マスター…」
「まああれはいつものことでしょ」
「それにしても先輩、見かけないと思ったらこんなところにいたんですね」
「ああ、美香子に頼まれてな。しかしお前達は驚かなかったんだな」
「まあなれたと言いますか……」
「アルファーが反応しなかったもん。怖いものじゃないって分かったわ」
「それもそうか」
「ところでこれで私達の優勝ですか?」
アストレアが目を輝かせて尋ねる。
「いや、本当の最終関門はまだあるぞ」
「本当の…」
「最終関門?」
そんな時上空から何かしらの反応が現れる。
「なにこれ!?」
「ニンフさん、どうしたの?」
「今まで感じたことない何かがこっちに来る!?」
全員が上を向くとそこには得体のしれない何かが姿を現した!
『きゃあああああああああああ!!』
ニンフやアストレア、そはらは悲鳴をあげる。
しかしあまり恐怖を知らないイカロスとカオスは悲鳴はあげなかった。
「よっと」
得体のしれないものは変身した。と言うより得体のしれないものに変身していたのだ。秋山が……。
「秋山さん」
「お前ら、自分にとって怖いものに見えるようなものを見せていたのに何にも言わないんだな」
「え、秋山あんた……」
「「「あの時のカオスだったんじゃ…(怖いおにぎりだったんじゃ……)(ゾンビだったんじゃ……)」」」
ニンフとアストレアとそはらの言ってることが違った。
「あれ? おにぎりだったんじゃないんですか?」
「最初に会った時のカオスじゃ…」
「ゾンビだよ、ゾンビ!」
「どれも正解だ」
秋山が笑いながら答えた。
「今言ったろ、俺の変身したのは見る人によって見えるものが違う存在に変身したんだ。そんで見えるものとはそいつにとって一番怖いとされるものだ。
ニンフだったら最初に会った時のカオス、アストレアだったらよく分からんおにぎり、そはらはゾンビと俺がそう見えたんだ。
イカロスもカオスも俺が何に見えたかはこいつらと違うだろ」
「はい、私は腐った巨大スイカに見えました」
「私はよく分からなかったけど、見ただけで怖かった…」
「カオスの場合は自分でも怖いものが分からないから心の奥底に存在する恐怖を無理矢理引き出す存在が見えたんだな」
「だがカオスは悲鳴をあげなかったぞ」
「心の叫びを叫んだことはあっても悲鳴をあげたことがないから悲鳴の叫び方が分からなかっただけだろ。
まあこの肝試し大会のルール的には悲鳴さえあげなかったらいいから、イカロスもカオスも優勝になるな」
「とりあえず美香子を呼び戻す必要があるが……」
「で、肝心の美香子会長さんはどこいったんだ?」
秋山はそう言うが、秋山はその気になればすぐに分かる。
美香子はと言うと……。
「おーーーーーほっほっほっほっ!!」
マシンガンやらどこからか振って来たバズーカを持って智樹を追い回していた。
「ひぃいいいええええええええ!!」
「待ちなさ~い、桜井く~~~~~ん」
マシンガンの弾やバズーカは智樹に当たっているも智樹は倒れない。
「もうハロウィン肝試しなんて嫌だーーーーーーー!!」
智樹は泣き叫ぶのであった。
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10月31日にあるハロウィンを元に作者が過去に書いてきたシリーズ作品でハロウィンネタをやろうというものです。
今回でハロウィンネタ最終回であり、最終回は『そらのおとしもの』シリーズになります。
また作者の分身となるオリジナルキャラ(秋山総司郎)も出てきます。
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