No.321779

閑話 張郃伝 袁家の日常・後編

青二 葵さん

今回で蒼燕の過去話は一旦終わり。

次は誰かの視点で書くかもしれない。

ぶっちゃけまだ表現の仕方を迷走中。

2011-10-21 20:50:10 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1447   閲覧ユーザー数:1351

 

「はあ?休暇ですか……」

 

昨日の猪々子の一件があった翌日の明け方。それこそ、日が昇り始めるころに静かに扉が開かれた時は賊かと思い剣を手に取り跳び起きたが、入って来たのは沮授こと(れい)だった。入って来た人物に呆気に取られた張儁乂(しゅんがい)こと蒼燕は、剣を置き寝台に腰かける。

起こした事に玲は謝罪したが、入ってくる少し前から起きていたので別に問題はないと言うことを蒼燕は言った。それにこんな明け方に部屋に訪れると言う事は、何かしら用があるのだろうと踏んで尋ねたがどうやら正解らしく、玲は感心した様子で笑みを浮かべる。

気になる玲の用件とは、

 

(そう)ちゃんには少なくとも今日は休暇を取ってもらうっス」

 

と言うものだった。

そして、一番最初の台詞である。

そのことにまたもや呆気に取られているが、すぐに平常心を取り戻す。

 

「突然、またなんでです?」

 

「自覚が無いっスか?」

 

「なにが?」

 

蒼燕が首を傾げるように尋ねる。どうやら、心当たりはないらしい。

 

「(これは重症っス。まさかの無自覚とは、わっちも予想できなかったっス)」

 

呆れるような溜息を玲が吐いたので、蒼燕は呆れる様な事をしたかどうかを振り返る。

 

「(まさか、昨日の件で何か見落とした?自分が仕事で何か失敗したという報告を受けていませんが、政務も全て終わらしましたし……。もしかして、竹簡の記述内容になにか不具合が?玲の呆れ具合からしてかなり深刻そうですが、やはり重大な間違いがあると見てよさそうです。(もや)がかかった様な鈍い頭で夜遅くまで政務をしてましたからね。あれは今から二刻(4時間)くらい前に終わって届けた竹簡ですし、不備が無いと見る方がおかしいですね。とりあえず、何に不備があったのかは玲の口から聞けるでしょう。予想とは違う可能性もあるし、竹簡の整理が終わってない可能性もある訳ですから)」

 

と、玲の言いたい事とは別にずれた思考をする蒼燕。

意を決したように玲が口を開く。

 

「最近の蒼ちゃんは働き過ぎっスよ。それで、今回休暇が出されたっス。出来れば緊急時以外は三日は休んで欲しいところっスが………って蒼ちゃん?」

 

蒼燕があれ?と言った感じで予想が大きく外れたような顔になっている事に玲は気付き、話を止めた。

 

「どうしたっスか?」

 

「いや、てっきり夜に届けた政務に不備があるのかと思ってたんですが」

 

「………………」

 

蒼燕のその言葉に玲は思わず絶句した。

 

「(これもう、重症という段階を通り越して危険っス。それも超が付くほどの。あのまま、気付かなければ過労で絶対倒れてたっス。と言うか、あれ?なんか蒼ちゃんの言い方に思わず涙が出てきそうっス)」

 

「どうしました玲?」

 

本気で涙が出てきそうになったが玲は堪えて、蒼燕を見る。

 

「いや、何でも無いっス。とにかく三日、せめて今日一日は急を要する時以外に働くのは駄目っス」

 

出来る事なら急を要する事態があろうとも休ませたいが、群雄割拠の時代にそんな余裕はない。

 

「働き過ぎですか………別に疲れてはいませんが、好意を無碍(むげ)にできませんし、傍から見ればそうなのでしょう。それに貴方の事ですから、もう既に自分が休めるように手を回しているでしょうし」

 

蒼燕の言う通り、玲は既に昨日三人で決めた時から既に手配しており、配置も決定していた。

取りあえず、これで彼女を休ませる事が出来ると一安心する。

 

「ちなみに鍛錬も警備も禁止っスよ。書物は読んでもいいっスが、政務に関する物は禁止」

 

鍛錬と警備を禁止と言った瞬間に蒼燕がピクンと反応したのを玲は見逃さなかった。

 

「(やっぱり言ってなかったら、やるつもりだったスね)」

 

さすがに韓馥の時からの付き合いである彼女が気付かないはずがなかった。

 

「遠乗りは?」

 

「駄目っス。それにかこつけて、偵察に行かれたら困るっスから」

 

取りあえずと言った感じに蒼燕は聞いたが見事に塞がれた。

 

「……やる事が無いんですが」

 

「じゃあ、ゆっくり寝てるといいっス。最近は(ろく)に寝てもいないらしいっスね」

 

玲の言う事は全て事実であるために何も言い返せない。一日中寝ると言う選択肢は彼女の中には無いらしく、如何にも何をしようか?といった表情である。その際に政務に使う机をときどき見たが、玲の様子から無理だろう悟り溜息を吐く。

 

「(溜息を吐くって、どんだけ仕事したいんスか!?と言うか、仕事や鍛錬以外にやる事ないんスか!?……なんか、そう考えると蒼ちゃんが痛々しく見えてくるっス。あ、涙がまた出てきた。さすがにこれは堪えられない上にしばらく、蒼ちゃんを直視できないっス)」

 

そう思った時の玲の行動は早く、顔を見られないようすぐに蒼燕から背を向ける。

 

「それじゃあ、わっちはもう行くっスが仕事してるところを見たら怒るっスからね」

 

と、言って出て行った。最後あたりに涙声になりかけたがそこは何とか我慢できた。

一人部屋に取り残され朝の光が入り込む窓を見ながら、蒼燕は今日何をして過ごすかを考えるのだった。

 

 

一方、蒼燕の部屋から出た玲はすぐに麹義こと(ゆい)の部屋へと向かった。そして、彼女の部屋に近づくにつれて足取りは速くなり遂には走り出した。そのまま、結の部屋の扉を認識するとそのままの速度で扉を開け放ち、結本人かも確認せず人影に飛び込んでいった。

 

「うわ!?ちょっとなによ玲。今着替えてる途中なん…だ……から?」

 

人影は結であったが、玲の様子がおかしい事に気付き(いぶか)しげに彼女の顔を覗く。

 

「うぅ…ぐすっ……グス」

 

抱きつくように結に(すが)りついた玲だったが結にはその表情は見えた。

 

「(泣いてる……。蒼ちゃんに朝一で休暇の報告をするって昨日言ってたから、もう報告はすませてあるんでしょうけど一体何があったのよ……)」

 

聞こうにも玲本人が多少落ち着くまで待たなければいけないし、あと着替えも済ませたかった。さすがに下着姿で話をする趣味はない。

とにかく玲をどこかに座るように促し、そして着替えをさっさと済ませ、寝台に腰かける玲に対面するように座る。

 

「で、何があったのよ?まさか、休暇を蹴ったなんて言わないわよね?」

 

結の問いかけに玲は力なく首を横に振る。

そのことに取りあえず、結は安堵した。もし、首を縦に振っていた場合は斗詩辺りと協力して物理的に眠らせてでも休ませる予定だった。まあ、人の好意を無碍にする人柄ではないし、働き過ぎと言われたらそうなのだろうと、納得してくれる人物だから休暇を蹴る事はないだろうとも思っていたが。

 

「グズッ……順を追って話すっス」

 

涙声になりながらも事の顛末を詳細に話すあたり、やはり玲は軍師であり文官なのだろう。

話の途中で嗚咽(おえつ)が大きくなりかけた部分があるが、それでも話を続けた。

 

「もう、蒼ちゃんが痛々し過ぎてしばらく直視できないっス」

 

「呆れるわね」

 

玲から蒼燕の様子を聞いたが、呆れると同時に玲の言う通り痛々しい。玲から聞いたからこそ一言で済ませられたかもしれないが、蒼燕から直接聞けば結も同じ心境になった事だろう。

 

「あの様子からして、しばらく仕事から離さないと余計ひどい事になりそうで怖いっス。………さすがに、こんな所で倒れては欲しくはないっス」

 

「そうね。そこらの文官よりかは頭は切れるし、武や戦術に関しても猪々子や私よりも一枚上手だわ。天下に必要な人材かもしれないわね」

 

そう言ったところで沈黙し、ときどき玲のぐずる声が聞こえるが部屋の中に何とも言えない静寂が訪れる。が、そんな雰囲気を変えるように結はすぐに立ち上がり、自分の武器である"猿落とし"を手に取り肩に乗せる。そして、シニカルな笑みを浮かべる。

 

「さて、そろそろ仕事に行った方がいいわね。じゃないと、蒼ちゃんも安心して休暇なんて過ごしてくれないでしょうし」

 

「そう……っスね。ついでに一度、蒼ちゃんの様子を見ておきたいっス」

 

「あんた、蒼ちゃんを直視できないんじゃなかったの?」

 

「だから、結に頼むっス」

 

少し目元に涙がまだ見えるがそれでも泣き止んだ玲がニシシ、と言った感じに笑う。

 

「全く調子いいわね。なら、さっさと行くわよ」

 

上手いこと乗せられた感じがしないでもないが、結自身も気になってはいたのでその事には何も言わずに部屋を出る。

 

「え?ちょっと待って欲しいっス~!!」

 

そして、部屋に置いてかれた玲はパタパタと言った感じに袖をはためかせながら結の後ろを追いかけて行くのだった。

それから二人は、蒼燕の部屋へ向かう。玲からすれば先程の道を戻るだけだが道中はどこか落ち着かない様子だった。恐らくちゃんと休んでいるかどうかと言うことを懸念しているのだろう。

 

「(心配する必要はあまりないと思うんだけどね………多分)」

 

ここで、絶対と言えないあたり蒼燕がそれだけ重症と言うことだろう。以前なら別段、心配することなどなかったのだが。

そんなことを考え、部屋に向かう途中に何人かとすれ違い挨拶を交わしながらも部屋の前に辿り着く。

 

「じゃ、様子を見て来るけど。先に行ってる?それともここで待つ?」

 

と、結は玲に問いかける。先程も話した通り、おそらく玲は蒼燕を直視できないだろう。だからと言って扉の隙間から覗こうにも彼女は曲がりなりにも武官。だから見破られる可能性が高い。ならばと思い、堂々と様子見に来たと言えば怪しまれる事はないだろう。

信用ないか?とか言われそうだが。

 

「一応、待ってるっス。ちゃんと休んでるか気になるっスから」

 

「分かったわ」

 

そう言って、結は扉を開ける。出来れば政務なんてしている姿を見ない事を願いながら、目に入った光景は。

 

「……貴方も様子を見に来たんですか?」

 

政務の机の椅子に横向きに座りながら剣の手入れをしている蒼燕の姿だった。

取りあえず、懸念していた事と外れて内心では安堵する。が、蒼燕の表情はあまり変化が無い様に見えるが複雑そうだ。

 

「"も"ってことは私以外にも誰か来たのね?」

 

「ええ、審配(しんぱい)に高覧に顔良。貴方で四人目ですよ。そんなに信用ありませんか?」

 

予想通りの台詞を吐かれたが、実際どう返していけばいいのだろうと考え、思わず返事に詰まる。

その様子に蒼燕はクスリ、といった感じに微笑んだ後、剣を鞘に納める。

 

「でも、心配されて悪い気はしませんね。それよりも、早く持ち場に就いたらどうです?じゃないと仕事しますよ」

 

悪戯っぽく言われて、思わずムッとなる結。あと少し顔が熱い気がするが気のせいだろう。

 

「分かった、分かったわよ。さっさと行くからあんたはちゃんと休んでなさい」

 

と、少し突っぱねた感じで言うが蒼燕は"はいはい"と、まるで子供を諭す母親の様な言い方で返した。そして結は後ろを向き扉を開けた瞬間。

 

「ああ、玲にもよろしく言っておいて下さい。ありがとう、とね」

 

蒼燕がそう言ったので一瞬扉を閉めるのを止めたが、結は何も言わずに再び閉めた。

 

「て言うことらしいわよ」

 

部屋から出た所で結のすぐ隣、扉の脇にいる玲に声を掛けたが反応はない。

これまたどうしたのだろうと思い、玲の顔を覗きこむと滝のように涙が流れている。

 

「あんたねえ……………」

 

呆れて何も言えず、頭を抱える。

 

「だって、あんなの反則っスよ~。…グスッ……こんなんじゃ、持ち場行けないっス」

 

「あ~、ここで泣かれても困るからさっさと移動するわよ」

 

何故か感極まっている玲を宥めながら彼女達は蒼燕の部屋を離れるのであった。

 

一方、部屋で武器の手入れをしていた蒼燕だが、結が出て言った後にすぐ終わってしまい本格的にやる事が無くなってしまった。

目の前には机、しかし今日一日は仕事は来ないだろうし竹簡を持ってくる人物も来ないだろう。したがって、筆を用意する必要もない。

はてさて、何をすればいいか思いつかないがこのまま部屋で過ごすとか寝ると言うのは、彼女の選択肢にはなかった。そうして、なんとなしに部屋から外の景色を見る。天気は良い、出かけるのには打って付けの天気だ。しかし、遠乗りは禁止されている。

と、考えた所で彼女は思いついた。

 

「(そう言えば、警邏以外で街に出掛けていませんでしたね)」

 

思いつけば早速行動。久しく空けていない棚を開けながら目的の物を探す。そして、一つの棚を開けるとようやく目的のものが見つかる。

蒼燕は妙にずっしりした感じのする袋の中を目的の物か確認すると銅銭が大量に入っていた。とりあえず、目的の物であると確認も取れたので腰に括り付け剣を左右二本ずつ腰に挿し部屋を出る。

その道中で(たる)んだ兵士に喝を入れたりした。しかし、これは仕事に入るのか?と思わず考えてしまったが別に問題はないだろうと自分で結論付けて城の回廊を歩いているとそこで、目の前に見覚えのある姿を確認する。その人物は烏帽子のような物を被り竹簡が頭の位置まであるのを抱えているのにもかかわらず、平然とバランスも崩さずに運んでいる。

 

「(ああ、蕾雪(れいしぇ)ですか)」

 

真名を蕾雪、姓は田、名は豊、袁家の軍師筆頭である。たびたび、直球過ぎる発言をして謹慎処分を受けたりしても治らない剛直さを持つ者である。

竹簡を持っているからか、歩く速度は遅い。すぐにでも追いつけ横に並びそうになった所で、

 

「「あっ……」」

 

横から風が吹き、竹簡が横倒しに倒れかける。

 

「おっと」

 

倒れかけたところを蒼燕が見事に支えたため崩れる事はなかったが、蒼燕の姿を確認した蕾雪はタレ目を細めて何か言いたげな表情をする。当然、横から支えているから隔てる物など存在せず、視線には気づく。

 

「何ですその眼は?気になるでしょう」

 

「今日は休暇じゃねーですか?」

 

「休暇ですよ」

 

「仕事の手伝いも駄目じゃねーですか?」

 

「駄目でしょうね。ですが、誰も運ぶとは言ってないでしょう」

 

「なら良いです」

 

と言って歩きだすのかと思えば、竹簡を持ったまま蒼燕を見上げながらじっと見つめている。真正面から見られればさすがに気になるので尋ねる。

 

「今度はなんです?」

 

「街に行かねーですか?」

 

流石は軍師と言ったところか、この回廊の行く先は街へ出る道と執務室のある道しかない。おそらく無理やり休ませたと言うのも玲か結あたりに聞いたのだろうから、執務室に向かう道はないと判断したのだろう。一応、この田豊も沮授と麹義と張郃同様に韓馥の配下であったのだから、多少の面識ぐらいはある。

 

「行きますよ」

 

「なら、なんで先に行かねーです?」

 

「危ないところ見たんですから、放って置けるわけがないでしょう」

 

と言ったところで、何故か蕾雪に視線だけを横にずらして溜息を吐かれた。

 

「(なぜ?)」

 

その様子に一つの疑問に支配される蒼燕。なぜ、呆れられているのか皆目見当がつかない。

対して蕾雪は、

 

「相変わらず真面目な女郎です。玲や結、他の将にも心配掛けられるのも無理ねーです」

 

と真正面から堂々と言った。

 

「……臆面もなく言いますね」

 

むしろ清々しいくらいに堂々としているが、ここまで馬鹿正直に言えるのも彼女くらいのものだろう。韓馥にいた時には驚かされたが、今では慣れたものだ。

 

「分かりましたよ。せめて、分かれ道まで。それならいいでしょう?」

 

と蒼燕が妥協案を出したが、相変わらずジト目のままの蕾雪。しかし、一応は承諾したのか歩き出したので蒼燕も後ろに付いて行く。

結果から言うと道中に何もなかった訳だが、別れた後に蒼燕が別の場所に行かないかどうか蕾雪が彼女の後ろ姿が見えなくなるまで見ていたのは余談である。

 

 

そして、別れた蒼燕はと言うと彼女は宣言通り街に出た訳だが、書店に寄ったり、武器屋に寄ったり、後は昼食に屋台に行ったり、気に入った菓子屋に寄るぐらいで特筆する

 

ような感じはなく過ごしている。

しかし、ある店に通りかかった所で変化が訪れる。

 

「(服の店……ですか)」

 

そう、服屋である。軍人なうえ、休暇を無理やり押し付けられたことから考えてほとんど彼女が仕事に一辺倒なのは容易に想像できるだろう。

結論から言うと、そう言う嗜みが無いのだ。

 

「(そう言えば女の子してるのって幼少まででしたね。せっかくの休日ですから、有意義に活用させてもらいましょうか)」

 

と、思いながら服屋に入って行った。

数分後、その服屋に近づく二つの影。蒼燕は未だに店を出ていない。そして、その二人はそこに自分の上司が休暇を楽しんでいる事を知らずにどんどんと近づいていく。

 

「ねえ、文ちゃん。早く戻って、仕事した方がいいんじゃ……」

 

不安げに呟くのは顔良こと斗詩。

 

「大丈夫だって。別に多少遅れたって、今日は蒼燕様は休暇中だし怒られる心配もないし」

 

根拠もなく堂々と言い張るのは文醜こと猪々子。斗詩はその根拠のない自信には相変わらず溜息が出る。が、無理に止めないあたり早速斗詩は諦めたようだ。渋々と言った感じに猪々子と共に服屋に入っていく。勿論、蒼燕が入って行ったのと同じ店である。

 

「お~、また珍しい服があるね~」

 

「早くも気付かれましたか将軍様。これは、かの天の御遣い様が考えられたと言う意匠でして、名を『せーらー服』と言うものだそうです」

 

猪々子が呟いたのを聞きつけて、ひょこひょこと言った感じ出てきた店主が説明する。その説明に猪々子は感心した様子でセーラー服を見つめる。

 

「なあ、斗詩~。早速着て見ようぜ~」

 

「文ちゃんってば!さすがに見るだけだよ。蒼燕様が抜けて、軍関係の仕事がこっちに回って来てるんだから」

 

「でも、あたいは斗詩が可愛い服を着た姿が見たいんだからさ~。ね、お願いだよ斗詩~」

 

「もう、せめて城に戻ってからにして――――――」

 

と、猪々子からそっぽを向いた矢先。その視線の先の光景に思わず冷や汗が出てくる。

 

「いきなり黙り込んじゃって、どうしたんだよ斗詩?」

 

自分から背を向けた斗詩が急に黙り込んだので、彼女の横を通って顔を覗きこむ。表情は如何にも"終わった"と言う感じだ。猪々子は斗詩の視線を追ってみれば、一人の女性

 

へと行き着いた。その女性は藍色のチャイナドレスに身を包み、髪型はいわゆるお団子ヘアで同色系である蒼色の髪と見事に合っているのが印象的だ。

 

「たまには、こう言うのも良いですね」

 

と言って開いた扇を口元に当ててご機嫌そうに微笑むのが猪々子には、鏡を介して見えた。

 

「すみませんが店主、これを―――――」

 

振り向き"下さい"と言う言葉は続かず。思わず、口を(つぐ)んでしまう。

 

「蒼燕さ……ま?」

 

ある程度後ろ姿で予想が付いていた斗詩だが、本人かどうか疑問に思うほど別人だった。

 

「誰のことかよ?」

 

そして蒼燕は普段は表には出さない方言で知らないフリを決め込んだ。せっかくの休暇だ。余計なお説教はしたくないし、この格好を見られて恥ずかしいと言うのも無きにしも(あら)ず。あとで道草を食っている事についての理由は聞き出すだろうが。

また、この状況は斗詩に取っても都合が良かった。知らないフリをしてくれているのなら間違いだと言って他人のフリをして立ち去れる。休日の事は玲から聞かせられているため、余計な苦労を掛けたくないと言うのもある。

 

「あ、すみません。人違いだったみたいです」

 

お互いに見なかった事にして少し距離をとる。ちなみに猪々子は蒼燕と聞いて少し挙動不審になっていたが周りを見て、いないと分かり安堵する。実際はいるのだが、気付いていないだけである。

 

「何だよ斗詩~。蒼燕様って言って吃驚(びっくり)したじゃん」

 

「ゴメン文ちゃん。あそこの人が蒼燕様に似てたから」

 

自然な感じに誤魔化しの理由を言う。一応、本人なので普通に面影はあるのだが猪々子は気付いていない様子。

 

「あの無愛想で、仕事一辺倒で、オシャレにも男にも縁がなさそうな蒼燕様に似てる?あそこの前の人が?それはないない」

 

右手を軽く振りながら否定しいつもの調子で言う猪々子だが、注意して言っておこう。目の前の人が本人だと。しかし、本人は全く気付かずに話すものだから斗詩は冷汗をダラダラと垂らす。その際に蒼燕の方を見たが、見なければよかったと後悔した。蒼燕はこちらを見てチャイナドレスの後ろ側の腰辺りに両手を回しているのだが、鞘から少し出ている刃が目についた。剣の柄を握っている手が小刻みに震えている事から一応、(こら)えているようだ。

"何とかしなければ"そんな使命感にも似た感情が斗詩に芽生える。そして、咄嗟に口を開こうとしたが猪々子が思いついたように言い放つ。

 

「そう言えば、斗詩。さっき城に戻ってからって言ったよな?城に戻ったらいいってことだろ?」

 

「う…まあそうだけど」

 

「だったら、ちゃっちゃと城に戻ろうぜ。おじさん、これ下さい」

 

「へい、まいど」

 

先程のセーラー服を気前よく購入する猪々子だが、斗詩は肝心な事に気付いた。

 

「文ちゃん……お金持ってるの?」

 

「ん?ああ、ないよ。でも、給金前借りすれば何とかなるっしょ」

 

あっけらかんと言い放つ猪々子。ちなみに蒼燕はと言うと、鞘から剣身がほとんど出ているような状態でまだ堪えている。表情はあまり変化していないが、怒気がひしひしと伝わる。店主もその様子に気付き"ぎょっ"としたが、触らぬ神に何とやらである。彼女を刺激しないようにセーラー服を持ち、脇を通り抜けて行く。

 

「なあ、斗詩?さっきから様子が変だけど………どったの?」

 

「べべべ、別に何でも無いよ!それよりも文ちゃん。料金は私が払うから給金前借りは止めて、ね?以前にも何回か前借りしたから、もうそろそろさせて貰えないと思うし」

 

「え~~。あたいとしては、贈り物にして上げたいんだけどな~。斗詩が買ったら、あたいからの贈り物にならないじゃん」

 

不満そうに呟く猪々子だが、そんなことを言っていられる状況でもない。彼女の後ろには今すぐ頸を刎ねたい衝動に駆られている鎌を持った死神がいるのだから。

しかし、ここで予想外に蒼燕が静かに剣を鞘に納める。そして、斗詩たちに近づいたかと思うと

 

「お金にお困りかよ?」

 

と"いい笑顔"で方言を再び用いて聞いてきた。

 

「ん?さっき斗詩が蒼燕様に似てるって言ってた人」

 

猪々子が少々驚きのような声音で言ったが、蒼燕はそれを無視する感じで本題を切り出す。

 

「お困りなら、あしが出してあげるきよ」

 

「え?マジで!?」

 

「(蒼燕様の事だから、絶対裏がある。うぅ……恐いよお)」

 

猪々子は棚から牡丹餅とばかりに喰いついたが、斗詩は心底不安だった。絶対になにかあると。

 

「ほんまぜよ。給料の前借りをそう何度もやられると困るきね」

 

「へ?」

 

「店主、これくれや」

 

「へい!」

 

猪々子からすれば気になる事を言われて一瞬首を傾げたが、彼女はすぐに会計へと向かってしまった。意味を問おうとしても、会計のためか一度来ている服を脱ぐために仕切りの向こう側に行ってしまった。さすがに見ず知らず(と猪々子は思っている)の人の着替え中に質問するのはさすがに気は引けるので、とりあえず猪々子は隣にいる人物に尋ねる事にした。

 

「なあ、斗詩。さっきのどう言う意味………なにしてんの?」

 

そこには、膝をがっくりと落とし四つん這いになって頭を垂れる斗詩が居た。

 

「文ちゃんのバカ……………」

 

「お~い、斗詩~?あたいが何かしたか?」

 

突然、バカと言われた理由が分からずしゃがみこんで斗詩に尋ねるが、本人は何にも答えない。

 

「なに落ち込んでんのさ?別に――――――」

 

「お待たせしましたね。文醜将軍」

 

「そうえんさ……まに…バレ……た?」

 

突然、響く聞きなれた凛とした声に少しずつ声を出しながら振り向く猪々子。"蒼燕様にバレた訳じゃないし"と言う風な台詞を言うつもりが本人登場で疑問形の台詞に変わる。

想像していた人物がいない事を祈ったが、目の前の光景に呆然とする。

呆然とせざるを得ない。

 

「さて、ここで説教しても仕方ありませんし。一度城に戻りましょうか」

 

有無を言わさない威圧感を纏いながら、いつもの無愛想な表情。いつもの口調で蒼燕は言い放った。なお、衣服については城に届けて貰うように言っているあたり、周到である。

 

道中は終始無言。気分は牢獄に連れて行かれる賊のようである。猪々子と斗詩は賊ではなく将軍であるが……。

そんなことはさて置き、結局蒼燕の部屋に辿り着いてしまった。

 

「さてと………」

 

椅子にどっかりと座る事なく、静かにそれでいて丁寧に座る蒼燕。一体どんな事を言われるのかと二人は生唾を飲む。

 

「まず、先に言わせてもらうと仕事があるのに寄り道をするな。次に、文醜将軍の給金前借りは今回もした場合四度目になると記憶していますが?」

 

「え~~~~と……そうでしたっけ?」

 

とぼける様に言う猪々子だったが、それがいけなかった。少し、また蒼燕の方から怒気と殺気が漏れる。相変わらず、表面上に変化は見られないがそれでも曲がりなりにも武官である二人は機敏に感じ取り、冷や汗が出る。

 

「で、です。最初は寄り道しても、服を買ってすぐに戻るならと見逃す事を考えていましたが………給金前借り、しかも四度目はさすがに困るのでね。おかげでせっかくの休日に要らない時間を取る羽目になりました」

 

「えっと、それって……つまり。あたいが原因?」

 

「文ちゃん……いい加減博打止めたら?今朝も……あっ」

 

口を滑らせるとは、このことを言うのであろう。斗詩はすぐに気付いて口を閉じるが、時すでに遅く。

 

「今朝…の続きはなんです?まあ、言わなくても大方予想できます。いい加減博打は止めろと言ってるでしょう文醜将軍」

 

呆れる様に蒼燕は咎める。対して、猪々子は斗詩を少し恨めしそうに見る。

給金前借りをしている理由。それは猪々子の博打癖がそもそもの原因。一発逆転などと、彼女は浪漫に溢れることに悦を見出している節がある。確かに一発逆転と言うことに浪漫はあるだろう。が、蒼燕は邪道だと考える。兵法書を読んでいる者たちからすれば、策を弄し、万端を期して、手段が尽きるその時までは運には頼らない。全てを尽くしてなお、負けた時は運が悪かった。天命だとするのである。逆に勝てれば、運が良かった。それも天命である、と割り切れるだろう。運に頼り過ぎると勝てる戦いも勝てない。孟子曰く、天の時は地の利に如かず。地の利は人の和に如かず。と言っている。つまり、いくら絶好のタイミングで攻めても地の利には勝てないし、いくら地の利があっても人の団結が無ければ勝てない。この三つがある時に初めて勝てる要素が揃ったと言えるのである。

 

「(それをこのバカは、ほとんどを天運に頼っている節がある。将としては、二流もいいところですね)」

 

心の中で呟く蒼燕だが、恐らく言っても治らないだろう。これは、猪々子の性分と言うべきものだ。

 

「顔良将軍に関しては、一つだけ注意しておきます。猪々子を無理してでも止めるときには止めなさい。でないと、取り返しのつかない事になりますよ?」

 

「うっ……善処します」

 

一応、止めなきゃと言うことを斗詩は分かっているのだが、猪々子や麗羽に関しては最初から半分諦めている。あと、麗羽は恩人。猪々子は友人と言うことで、どこか強く言えないのだろう。

 

「(さすがに蕾雪みたいに直接的に言えとは言いませんがね)」

 

さて、言いたいことも終わったとばかりに息を吐く。そして、硯と墨と筆を取り出す。勿論、その行動に疑問を持った斗詩。

 

「あの、蒼燕様……」

 

「なんです?」

 

「今日は休暇で仕事はさせて貰えないんじゃ……」

 

「そうは言ってられませんよ。貴方達の報告書を見なければならなくなったんですから。ちなみに猪々子は出来なかったら更に減俸」

 

「え"っ!?」

 

「『え"っ』て、なんですか。将としての自覚が無いからやるんでしょう?あと、そちらの仕事をいくつか持ってきて下さい自分が処理しますから」

 

その言葉に話を聞いた二人はお互いに顔を見合わせ申し訳なさそうに言う。

 

「その、さすがに仕事を回すのは……」

 

「あたいも玲様に、蒼燕様に仕事をさせるなって言われてるんで回したらなに言われるか………」

 

斗詩はともかく猪々子の場合は既に問題点を持ってきたので、怒られるのは確定しているだろう。斗詩の場合は、多少強引に付き合わされたのだから非はあまりない。あるとしても猪々子を止め切れずに一緒に道草食ったぐらいだ。仕事はともかく既に説教してしまったし、蒼燕にとっては今さらという感じだった。

 

「二人が仕事を終えなければ報告書は書けないし、報告書を先に書くにしてもそれよりもやらなければいけない重要な案件もあるでしょう?どちらにしても、さっさと報告を書

 

いて貰わなければいけないんです。なら、自分がやるしかないでしょう?さっさと終わらせてもらえれば、引き続き休暇を取れるんですから。分かったら、早く行きなさい」

 

こうなれば、蒼燕は動かないであろう事を二人は知っていた。なので、渋々と言った感じに彼女から背を向け歩き出す。彼女は少しため息を吐き。

 

「駆け足っ!!!!」

 

「「はいっ~~~!!!」」

 

威圧感を込めて言うと、二人は物凄い速さで部屋を出て行った。

両手を組んで机に肘を付き、組んだ手に頭を乗せる。

 

「(やってしまった……………せっかく用意してくれた休暇なのに、ほんと何してんでしょうか……自分)」

 

一人、自嘲するように心でつぶやいた。

 

 

そのまま、淡々と案件をこなしつつ二人の報告を読むころにはちょうど日が沈むころだった。どうやら、先に報告の方を優先したらしい。なんだかんだで気を遣ったのだろう。もし、報告ではなく案件の方を優先していれば夜になっただろう。

そんなことを考えながら、窓の方を見た。

夕暮れの赤と夜の青が混ざって、紫っぽい空だ。

数秒ほど見ていると、扉の方に気配が近づいてくるので目をそちらに向ける。

 

バンッ!!

 

両手を大きく開き、扉を開け放ったのは沮授こと玲だった。一目で分かるのは、明確な怒り。

それもそうだろう、せっかく用意してくれた休暇なのにそれを無碍にしたのは休暇を取った本人だ。いや、"取った"と言うより"取らされた"休暇と言うべきだろう。

そのまま、ずかずかと蒼燕の机まで行き大きな音を立てて机に両手を打ちつける。

 

「どうしてっスか?」

 

なにが?とは言わない。分かり切った事だ。

 

「すみません。見逃せなかったのでね」

 

申し訳なさそうな顔をしながら玲に謝るが、逆に玲は顔を(しか)めさせた。

 

「なんで、もう少し自分を労わってくれないんスか?」

 

「今日は充分休めましたよ。言いつけを破ったのは、確かに悪かったですが――――」

 

「そう言うことを言ってるんじゃないっス!!!」

 

大声を出して否定する。

涙ぐんでいるのが、うっすらとだが分かってしまった蒼燕は罪悪感を多少なりとも覚えた。

そして、玲はかねてからの疑問を口にする。

 

「蒼ちゃんは、なんでそんなに今の君主に仕える事が出来るんスか?」

 

「そうですね、一応あんな君主でも今は一番天下に近い人です。それに、中央腐敗の根源であった宦官を一掃したりと名家を鼻にかけながらも気骨はあります。あと、河朔(かさく)を平定したことにより進むべき場所は南しかありません。自分の記憶が正しければ、これはかの光武帝と同じ進軍経路。つまり、彼女は真面目に天下を取ろうとして居るんだと思ったんですよ」

 

「買い被り過ぎじゃないっスか?」

 

「まあ、なんとなく進んでいる可能性もありますが天下に近いのは事実です。なればこそ多少の無茶は我々が補えば、割と天下は早く見れるのではないかと思うんですよ」

 

「嘘っスね」

 

きっぱりと切り捨てる玲。しかし、予想通りとばかりに蒼燕は笑みを浮かべると椅子に座る。

 

「なぜそう思うんです?」

 

「理由としては嘘か真かは分からないっスが、それだけが理由じゃないはずっス」

 

「じゃあ、貴方の頭脳で当てて見せて下さい」

 

仲簡(ちゅうかん)殿」

 

玲にある人物の(あざな)を言われて、蒼燕は思わず反応してしまった。しかも即答に近い速度で言い当ててきたので動揺も大きかった。

 

「図星っスね」

 

「…………まさか」

 

「悪いっスが、お二人が愛を囁き合う仲と言う事は知ってるっス」

 

思わず両手で顔を覆ってしまった。顔が段々と熱くなってくる上に恥ずかしい。

 

「どこで知りました?」

 

指の間から眼を覗かせ、尋ねる。が、玲の顔は意地の悪い笑みへと変わっていた。

 

「言う前に両手をどけて欲しいっスね」

 

ニヤニヤとしながらこちらを見る玲。おそらく、言いつけを破った仕返しのつもりだろう。

心の中で少し悪態を吐きながらも両手を少しずつ顔から離し、腕を組んで顔を少し反らす。

 

「おやおや、これは珍しい事に蒼ちゃんが真っ赤ス」

 

さらに、したり顔をする玲に多少なりともイラついてくる。

 

「早く……言って下さい。恥ずかしいんですから」

 

「そうっスね。あれは、三か月ほど前――――――」

 

「もう分かりましたから言わないでください」

 

三か月ほど前と言って心当たりがあるのか、いきなり話を止める蒼燕。対してつまらなさそうな顔をする玲だが、すぐにいい事を考えたとばかりにまた意地の悪い笑みに変わる。

 

「いや~、蒼ちゃんがあんなに激しいとは思わなかったスよ」

 

「―――ッ!?………見ましたね」

 

ビクンと肩を震わせる。先程までは動揺しても表に出さなかったが、今度は表に出てしまうほど動揺した。

見たと言うことに玲は頷き肯定を示す。

 

「だって、回廊で口づけした上に"アレ"っスからねえ。気になるに決まってるっス」

 

「~~~~~ッ!!」

 

声にならない言葉を発しながら机に突っ伏す。かなり悶えている。

 

「さてと、それじゃあ交渉といこうっス」

 

交渉と聞いて突っ伏していた顔を上げる。ただ、顔は真っ赤だが。

 

「なにを交渉するんです……」

 

「そうっスね~。わっちが知ってる蒼ちゃんの嬉し恥ずかしの話を聞かされたくなかったら……明日こそ、ゆっくりと休んでもらうっス」

 

玲の腹黒さを感じながら、蒼燕は頷くしかなかった。

 

「(どこまで知っているかは知りませんが、もし、ここ一ヶ月のことを話されたら……羞恥でおかしくなりそうです)」

 

当然、心の中の呟きは聞こえない。

 

 

「とまあ、それからというもの度々その話を持ち出されては無理やり休ませられる破目になりましたよ」

 

「あなた、時々馬鹿だとか言われたりしない?」

 

一通り、昔話を終えた蒼燕にどこか呆れたように華琳は疑問を投げかけた。

 

「ありますね。今にして思えばあれは、仕事馬鹿と言うことだったんでしょう。ところで、いつの間にこんなに人が集まったんですか?」

 

蒼燕が辺りを見回して言うと、なぜか興味津々でいつの間にやら人垣が出来ていた。

 

「いや~、つい聞きいってしもうてなあ。まあ、ウチとしてはその休まさせられた原因の話に興味があるなあ」

 

霞が一言そう言うと同意とばかりに張三姉妹の長女と次女が話に乗った。

 

「そのお話。お姉ちゃんも聞きたーい」

 

「私もよ」

 

「もう、姉さんたちは先にやる事があるでしょ」

 

そう言いながら人和は眼鏡をつまみ上げながら呆れる様に言う。

それに対して、駄々をこねる天和と地和から広がってラウンジの中が段々騒がしくなる。

その平和な光景に蒼燕は、戦場で剣を振るった日がさらに遠くになる事を感じる。が、今はやるべき事があるとばかりに気持ちを切り替えてあまり考えないようにした。

ちなみにちゃっかりその話を聞いていた猪々子と斗詩はどこか後ろめたさがあるのか、蒼燕が目を向けられると顔を反らしたのは全くの余談である。麗羽は一人首を傾げていたが。

 

ともかく彼女達が新しい日々を過ごすのはもうすぐだろう。

 

 

~あとがき劇場~

 

は~い、蒼です。

 

なんで小説書いてるうちに段々とこう文章が無駄に長くなるんでしょうか?

 

そんなことを疑問に思います。方言が間違ってないかも気になる。

 

さて、今回はオリキャラ紹介。

 

前回からのオリキャラを纏めて紹介しちゃいます。

 

玲「あいあい。まずは、わっちからっス」

 

姓:沮 名:授 真名:玲(れい)

 

身長:約155cm

 

目:少し釣り目

 

瞳:茶色

 

髪:茶髪のツンツン髪

 

胸:風と同じくらい

 

一人称:わっち

 

武器:穿爪(せんそう)……投擲武器で分類としては飛刀と言う投げナイフのような武器。

 

性格:どちらかと言えば真面目な方でいてアクティブ。

 

特徴:語尾に~ス、というのが付く。袁家筆頭の軍師の一人。若干、子供っぽい節があるがそれでも魏の三軍師に引けを取らない知力を持っている。文官の割にそこらのゴロ

 

ツキには負けない程度の武力はある。しかし、武器の所持数と元々は文官であることから体力的に数十人程度しか相手にできない。ちなみに武の手ほどきをしたのは蒼燕。普

 

段は割と飄々(ひょうひょう)としているが、物事の切り替えは早い。割と涙腺は緩い方なので泣き虫と言われることも。

 

紫雨「次は私かしら」

 

姓:高 名:覧 真名:紫雨(しう)

 

身長:約175cm

 

目:糸目

 

瞳:紫

 

髪:すみれ色で一つの大きめなお団子ヘアー、どちらかと言うと居酒屋の若女将のような髪型である。

 

胸:桃香並み

 

一人称:私(わたし)

 

武器:砕月(さいげつ)……長さ三メートル弱はある狼牙棒、柄に髑髏がある。

 

性格:おっとり、スローペース

 

特徴:仕事以外の行動は大体おっとりしているが戦闘時には季衣と並ぶ怪力で三メートルはあろうかと言う狼牙棒をブンブン振りまわす。普段は糸目である。玲曰く、ある意

 

味冗談が通じない人で苦手だと言う。恋姫メンバーの中では長身で本人はその事を少し気にしている。若干影が薄く目立たない節があるがそこはあまり気にしていない。

 

蕾雪「出番少ね―です…もっと寄こすです」

 

姓:田 名:豊 (あざな):元晧(げんこう) 真名:蕾雪(れいしぇ)

 

身長:約135cm

 

目:タレ目

 

瞳:エメラルドグリーン

 

髪型:三つ編みのサイドツインテールで色は銀色。長さ的には胸より少し下の位置まである。

 

胸:斗詩と同じぐらい

 

一人称:私(わたし)

 

武器:なし

 

性格:剛直でいて愚直

 

特徴:"ね"が付くと大体は伸ばし語尾に"です"を付ける口癖がある。例えば、知らねーです、言わねーです、やらねーです、と言った感じで基本棒読みの様な気の抜けた話し

 

方をする。玲と並び袁家の軍師筆頭だが、歯に(きぬ)着せぬ言い方をするので度々謹慎処分をくらう。烏帽子的な物を頭に被っておりまた、六角形のフレームの眼鏡を掛

 

けている。体系的には所謂ロリ巨乳であるが本人はその体系がバランス的に悪くないかと気にしている。余程の事情や味方が不利になる情報などが無い限りは基本的に馬鹿正

 

直なので、心を抉るような事を平然と言う毒舌家的な傾向がある。

 

玲「にしても、一週間じゃ終わらなかったスね」

 

蕾雪「出来もしない事を言うのは馬鹿のすることでねーですか?」

 

紫雨「相変わらず厳しいわねえ蕾雪ちゃん」

 

蕾雪「事実を言ってるだけです。私の出番も少ねーですし」

 

玲「そこ、一番気にしてるっスよね」

 

まったく、作者置いて話を進めないでください。

 

蕾雪「本編の話を進めやがれです」

 

耳が痛い。

 

しかし、若干マンネリ来てるんでしょうか?取りあえず、文章を書いてると浮かぶには浮かぶんですが速度が異様に遅いんですよね。

 

玲「いいんじゃ無いっスか?趣味でやってるんスから書かなきゃいけない義務もない。書きたいから書く、そういう場じゃないんスか?」

 

まあ、そうですけどね。逆にいえば書きたい話があるから早くそこに行き着きたいって言うのもあるんですよね。

 

蕾雪「傍から聞けば言い訳にしか聞こえねーです」

 

ぐふ!!

 

蕾雪「このやり取りも所詮自演でねーですか?被虐趣味でもあるですか?」

 

ごはあ!!

 

紫雨「あらあら、完全に打ちのめされちゃったわね」

 

玲「紫雨さん、なんで微笑ましく見てるっスか」

 

紫雨「ん?こう言うのを見てると平和に感じない?」

 

玲「いや、哀れにしか思えねえっス。もう、締めた方がいいっスよね。作者が打ちのめされてるっスから」

 

蕾雪「それでは、再見(ザイジィェン)です」

 

勝手に締めるな。

 

玲「あっ、復活したっス」

 

言い忘れてた事がありますからね。今回は名前だけですが淳于瓊(じゅんうけい)と審配は男ですんで。あと、紫雨の武器はめだかボックスに出てくる暗器使いが使ってる狼牙棒を想像して下さい。

 

玲「"今回は"と言う事は、今度は蒼ちゃんの逢瀬から始まるんスね」

 

察しが良いですね。ただ内容はどうしてもネチ〇ネ〇ョしちゃうので書きませんけどね。

 

蒼燕「人の逢瀬を覗く自体、どうかと思いますけどね。それでは、今度こそまた次回。と言っても次は自分の妹の話になるでしょうけど」

 

それでは、今回はこれにて閉幕。

 


 
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