No.304273

子守唄に、想いをのせて

月千一夜さん

どうも、お久しぶりです
色々あって一か月

今回はリハビリ作品
過度のご期待はご遠慮ください

2011-09-20 21:12:11 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:6599   閲覧ユーザー数:5362

「夏だなぁ・・・」

 

「夏だねぇ・・・」

 

 

“夏”

そう呟き、俺こと“北郷一刀”は中庭の日陰の部分に寝転がっている

そのすぐ隣には、蒲公英も同じようダルそうに寝転がっていた

 

“本日もまた、晴天なり”

とは、よく言ったものだ

 

ここ何日かずっと、こんな天気が続いている

おいおい太陽よ

たまには休んだっていいいんだぜ?

こんなことを、心の中で何度呟いたことか・・・

 

 

 

「あっちぃ・・・」

 

「うん・・・あついね」

 

 

俺もだが、蒲公英も相当に参っているようだ

ついさっきまで一緒に“麗羽のクロワッサンを明太フランスにする遊び”をしていた時はまだ元気だったのだが

麗羽から逃げ回ってるうちに、すっかりこんな調子になってしまった

 

 

「ご主人様~、天の御遣いの力でなんとか出来ないの?」

 

「無理

俺に出来ることって、皆を孕ませることぐらいだし・・・」

 

「・・・蒲公英、まだ孕んでないんだけど?」

 

「もう一作

せめて萌将伝の続編で“艶乳亞厨(エンパイアーズ)”とかが出た暁には必ず・・・!」

 

「わけがわからないよ」

 

 

“あはは”と二人で笑い合い、再び我に帰る

駄目だ、あまりの暑さに“メタとかそんなんどうでもいいじゃん”とか思ってる自分がいる

ていうか、何もする気力が起きない

 

 

 

「なんか、動く気力も起きない」

 

「蒲公英も~・・・」

 

「このまま、ここで寝ちゃおうかな~」

 

「あ~、いいねソレ」

 

 

うん、そうしよう

こっちには、クーラーとかはないんだ

こんな暑苦しい日、こうやって日陰で寝るに限る

 

 

「そんじゃ、おやすみ」

 

「ふぁ・・・うん~」

 

 

そうと決まれば

俺は重くなった瞼を閉じ、意識をゆっくりと手離していく

 

そうだよ

俺が頑張んなくったって、“他の人が創った外史の中の俺が頑張ってくれるはずだ”

だから、問題ないよな

 

俺一人くらい、寝てたって・・・

 

 

 

 

 

 

「ご主人様ぁぁぁあああああ!!!!

今日もまた“政務をサボって性務ですかごるあぁぁぁあああああああ”!!!!

今日という今日は、その下半身にぶら下がってる“暴れん坊将軍”を切り落としてくれましょうかああああ!!!!???」

 

「蒲公英っ!!」

 

「合点承知!!」

 

 

 

うん、サボりはよくないよなやっぱり

そんなわけで俺と蒲公英は素早く起き上がると、一目散に中庭を後にしたのです

 

 

 

 

 

 

 

 

≪子守唄に、想いをのせて≫

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「あっづ・・・」

 

 

暑い

さっきよりも確実に、倍以上に暑い

いや、原因はわかりきったことなんだが

 

 

「ご主人様、蒲公英暑すぎて溶けちゃいそうだよ~」

 

「俺もだよ・・・はぁ」

 

 

参ったなぁ

愛紗から逃げてきたはいいものの、走った分かなり暑くなってしまったぞ

 

 

「あら、一刀じゃない」

 

 

そんな俺たちの前に現れたのは、クルクル金髪の女の子

曹孟徳こと華琳だった

彼女は暑がる俺たちとは対照的に、随分と涼やかな表情を浮かべている

流石は曹操だと、俺と蒲公英は唾を呑みこむ

 

 

「随分と、この暑さに参っている様ね」

 

「ああ、そうだよ」

 

「もう、死にそうだよ~・・・」

 

「ふふ、確かにここ最近は特に暑いものね」

 

「とか言うわりには、随分と余裕じゃないか」

 

「覇王たるもの、この程度の暑さどうということはないわ」

 

 

マジか、すげぇな覇王

こんな暑くても、問題ないのか

あ~、俺も覇王になろうかなぁ・・・って、オイ

 

 

「いかん・・・なんか、脳が正常に働かなくなってきたんだが」

 

「ていうかご主人様、顔色も悪いよ?」

 

「マジ?」

 

「まじまじ」

 

 

言われ、俺は華琳を見る

華琳はというと、蒲公英と同じ意見だったのかコクンと頷いて見せたのだ

 

 

「まさか、熱中症とかか?」

 

「“ねぇ、チュウしよう”?

ご主人様ったら、大胆~~~~♪」

 

「違う、断じて違う

熱中症っていうのはさ・・・こう、“熱くなれ、もっと熱くなれよ!”とか“諦めんなよ、応援してる奴の身にもなってみろよ”とか“お米、食べろっ!!”とか、無意味に叫んじゃう病気かな?」

 

「なにそれ暑苦しい」

 

 

蒲公英の言うとおりだ

いくら凄いテニスプレイヤーだからって、目の前でそんなん叫ばれたら暑苦しくて蹴とばしてしまう

 

いや、うん

実は俺もどんな病気だか正確には覚えてないんだけどね

ただ、酷くなれば中々シャレにならないような病気だったのは覚えてる

 

 

 

「酷くなれば、けっこうマズイことになった気がするし

とにかく、何処か涼める場所を探しに行こうかな」

 

「蒲公英も一緒に行くよ」

 

「ああ、ありがとう

それじゃ華琳、おれ達はこれで・・・」

 

「ええ

愛紗には、“一刀は体調が悪いみたいだったから、休むよう言っておいた”と伝えておくわ」

 

 

そう言って、ヒラヒラと手を振り歩いていく華琳さん

なんだろ・・・今日の華琳さん、マジ女神なんですけど

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「というわけで、いつか“蒲公英がコッソリ武術の鍛錬をしていた森にある川原に到着~~~”」

 

「到着~~~」

 

 

はい、そんなこんなでいつか行った川へと到着です

因みに俺の台詞の詳細を知りたければ、いますぐ恥ずかしがらずに【萌将伝】を買ってプレイするんだっ!

 

 

「あ~、やっぱ川の近くだと涼しい~~」

 

 

言いながら、俺は木陰に寝転がる

うん、風が涼しいです

 

 

「蒲公英も~~~」

 

 

そんな俺の隣、蒲公英が同じように寝転がった

彼女もまた、心地よさそうな表情を浮かべている

 

 

「ご主人様、気持ちいいね~~?」

 

「うん、そうだね」

 

 

蒲公英の言うとおりだ

そう思い、俺は目を閉じる

瞬間、ゆっくりと俺の意識は浮かんでいく

 

 

「ご主人様、眠いの?」

 

「ん・・・少しだけ」

 

「そっか、じゃぁ寝ちゃいなよ

蒲公英が、起こしてあげるから」

 

「ありがとう・・・蒲公英」

 

 

“どういたしまして”と、笑う声

俺はそれに微かに笑みを返し、意識をそっと手放したのだった・・・

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

何か、聴こえた気がしたんだ

 

優しくて

温かくて

心地よくて

 

どこか・・・懐かしい

 

そんな“唄”が、聴こえた気がした

 

 

 

 

『知ってるよ・・・』

 

 

うん、知ってる

俺は・・・この“唄”を、知っている

 

ずっと、今よりもずっと

俺が、小さかった頃

まだ、外の世界を見たことがない頃から

 

ずっと、聴いていたんだ

 

 

『俺は、この唄を知っているんだ』

 

 

どんな時も

いつだって

俺のことを、包み込むような愛と一緒に

その唄にのせて、唄ってくれていた人がいたんだ

 

 

 

 

『これは・・・“子守唄”だ』

 

 

 

 

“泣かないで”

そう言ってくれた時もあった

 

“もう、おやすみなさい”

そう言ってくれた時もあった

 

“愛している”

そう言ってくれた時もあった

 

 

だから俺は、こうして・・・ここまで来れたんだ

 

 

 

『ありがとう・・・母さん』

 

 

 

 

~俺の背中を、押してくれたんだね~

 

 

 

 

段々と、遠のいていく子守唄を背に

俺は歩き出す

 

見つめる先

溢れ出す光に向け

 

真っ直ぐと・・・手を伸ばしながら

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「あ・・・起きたんだね」

 

 

開いた瞳に映った、美しい少女の姿

いつの間にか俺は、蒲公英の膝を枕にして眠っていたようだ

 

 

「うん・・・ありがと、蒲公英」

 

「ううん、気にしないでよ

ご主人様の寝顔も見れたし、役得って感じだったし♪」

 

 

“なんだよ、ソレ”と、俺は笑う

それにつられ、蒲公英も笑っていた

 

 

「あ、それと・・・唄も、歌ってくれてたんでしょ?」

 

「っうぇ!?

きききききき聴いてたの!!!?」

 

 

俺の言葉

蒲公英は、顔を真っ赤にしてしまう

そんな彼女の様子に、俺は声をあげて笑っていた

 

 

「恥ずかしがらなくっても、いいのに

凄く、綺麗な唄だった」

 

「そ、そうかな?」

 

 

“そうだよ”

言って、俺は彼女の頬にソッと触れる

 

 

「おかげで、俺も“覚悟”が決まったから」

 

「“覚悟”・・・?」

 

 

キョトンとする彼女

そんな彼女もよそに、俺はポッケからあるモノを取り出す

そしてそれを彼女に手渡した

 

 

「コレ・・・なに?」

 

 

ソレは、“小さな箱”

白く、とても地味な箱

 

 

「開けてみて」

 

 

彼女はそれを不思議そうに見つめた後、そっと開ける

そして、息をのんだ

 

 

「ご、御主人様・・・こ、これって・・・・・・」

 

 

震える、蒲公英の声

そんな彼女の言葉に、俺はフッと笑みを浮かべ・・・言ったのだ

 

 

 

 

 

「結婚しよう・・・蒲公英」

 

 

 

 

白い箱

中から見える、美しい“指輪”

その指輪にポタリと何かが落ちるのと同時に・・・彼女は、俺に抱き着いてきたのだった

 

 

 

「ご主人様・・・いきなり、すぎるよ、こんなの」

 

「ごめん・・・ビックリさせたくて」

 

 

俺の胸の中、大粒の涙を流しながら・・・蒲公英は笑う

その手に、俺が渡した指輪を握り締めながら

 

 

「ご主人様、こんなことして・・・私、知らないよ?

後で、皆に凄い怒られちゃうよ?」

 

「皆が好きだって言った手前、覚悟はしてるさ」

 

「私よりも可愛い人、一杯いるよ?

料理なら流琉ちゃんの方ができるし、お仕事なら朱里ちゃんのほうが凄いよ?」

 

「そんなの、関係ないよ

俺は、そのまんまの蒲公英が好きなんだ」

 

「・・・私、お漏らし属性なんてないよ?」

 

「そこは・・・まぁ、ノーコメントで」

 

 

ポリと、頬を掻き

俺は、クスリと笑いを零す

そんな俺のすぐ目の前・・・ボロボロと涙を流しながら、蒲公英も笑った

 

 

「んで、そのさ・・・返事は、どうかな?」

 

「そんなの、決まってるよ」

 

 

 

 

 

 

~私は、ご主人様・・・うぅん、一刀さんの、奥さんになりますっ♪~

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「それにしても、まさか蒲公英とはねぇ・・・油断していたは、本当に」

 

 

そう言って美しい月の下、笑うのは華琳だった

その彼女の隣、苦笑を漏らすのは愛紗

 

 

「私は、何となくそのような気はしていました」

 

「あら、そうだったの?」

 

 

“はい”と、愛紗は酒を飲み干す

そんな彼女の顔を見つめた後、華琳は深くため息を吐き出した

 

 

「仕方ない、か

“第一夫人”は、あの子に譲りましょう」

 

「・・・は?」

 

 

華琳の言葉

愛紗は、空になった杯もそのままに声をあげる

そんな彼女の様子に、華琳は笑みを浮かべながら杯を傾けた

 

 

「仕方ないから・・・“二番”で我慢してあげるわ

蒲公英に免じてね」

 

「華琳殿・・・まさか、まだ諦めていないのですか?」

 

「あら、ならば貴女は諦めきれるのかしら?」

 

「うっ・・・それは、その・・・」

 

 

“ほら見なさい”と、華琳は再び溜め息を吐き出す

それから見つめた空

美しい月に杯を向け、ニコリと微笑む

 

 

「“皆が好きだ”といった責任は取ってもらうわ

けれど、今だけは祝ってあげましょう」

 

「そうですね・・・」

 

 

見つめた先

胸の奥・・・灯る想い

 

彼女達は、世界は祝福していた

一人の男と、一人の少女

 

その、記念すべき刻を・・・

 

 

 

 

 

 

≪子守唄に、想いをのせて≫

  Fin♪

 

 

 

★あとがき★

 

どうも、お久しぶりです

約一か月ぶりですね

月千一夜です

 

ここ一か月間に色々とあり、このような事態となりました

うん、色々とね・・・ふぅい

 

 

今回はリハビリ作品です

カオスに見せかけた、ホッコリ作品

以前に書いたssの蒲公英が可哀想あったから彼女にスポットを当ててみましたWW

 

 

さて、添付は“江南陸家伝”の一話について

こちらも、あと一ページでひとまずは完成

長らく待たせてしまいましたが、もう間もなく公開できるでしょう

 

 

それでは、またお会いしましょう♪


 
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