No.282841

異聞~真・恋姫†無双:二三

ですてにさん

前回のあらすじ:我らが医者王が仲間になり、記憶を取り戻した雪蓮が参戦し、一刀の夜の戦いはますますヒートアップしていく。

人物名鑑:http://www.tinami.com/view/260237

あれ、冥琳の記憶いつ戻るん?

2011-08-23 17:07:53 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:10708   閲覧ユーザー数:7327

「ううっ・・・反省してます・・・」

 

「申し訳ありません、ご主人様・・・」

「あんな本音を垂れ流しにしてちゃだめだよ。二人とも俺が頼りにしている軍師なんだから、ね?」

 

華佗のお陰で、筋肉痛が残るものの、ひとまず動けるようになった俺が、

最初にしたのは、朱里・雛里へのお説教である。

 

聞き捨てならない発言がぼろぼろ聞こえてきていた為、即、釘を差すべきだと判断したのだ。

 

「はわっ、き、気をつけますっ! こ、今度ともお任せくだしゃい!」

 

「あわわ・・・軽率でした・・・。申し訳ありません・・・。

ご主人様をそのまま登場させるのではなく、ちゃんと架空の人物を描くことにします・・・」

 

「!・・・なるほど、そのままご主人様と華佗さんを描く必要は無いわけだね、雛里ちゃん」

 

「チョットマテ」

 

明らかに間違った方向に反省が向いている二人に、俺は迷わずおしりぺんぺんの刑を執行するのであった。

力は入れる必要は無いが、皆がいる公然の場でのおしおきゆえ、羞恥心を感じる意味で十分に刑の意味は為すだろう。

 

二人は正直、軽い為、まとめて片腕に抱えてのお仕置きも十分に可能です。

 

「はわーっ! ごっ、ごめんなさい、ご主人様ーっ!」

 

「あわわ・・・はっ、恥ずかしいですぅぅ・・・も、もう繰り返しませんから・・・許してくだしゃい・・・」

 

「だーめ、皆におしおきを見られるのも含めての罰なんだから」

 

この光景をおかずに、早速酒盛りを始めた飲兵衛二人組には、華琳と愛紗が迅速に得物を構えて対応してくれているようだ。

 

「あぁ、せっかくのお酒にメンマがっ!」

 

「ぶーっ! 一杯しか呑めなかったーっ!」

 

「貴女たちはいい加減になさいな! しばらく没収!」

 

「二人とも二日酔いのはずだろう! 自重しなくてどうする!」

 

星に雪蓮ェ・・・。君達も自重しようね?・・・無理とは思うけど。

 

「あははっ、一刀さんにかかれば朱里ちゃんたちも娘みたいなもんだね♪」

 

「にしし・・・二人ともお子ちゃまなのだ!」

 

笑顔の桃香と鈴々の突っ込みも入り、ちびっこ軍師たちの顔はますます真っ赤になる。

対照的に、完全な呆れ顔なのが、左慈とか、冥琳に華佗、稟といった面子である。

貂蝉とか、明命なんかは微笑ましそうに笑ってる。

 

風は・・・うん、寝たふりだな。あ、稟の眉が揺れてるから、これは突込みが入るぞ。

 

「寝るなっ!」

 

「おおっ、ついお兄さんの見慣れぬ父親っぷりを見て、現実逃避にうとうとと・・・」

 

「寝ている暇があれば、お茶の用意でも手伝ったらどうなのです・・・そうでなくとも、

一刀殿の周りの混沌ぶりに拍車がかかっている以上、冷静に動ける者が動かなくては何も回りませんよ」

 

稟の理知的な性格が今、なんと頼りに見えることか。

 

「よし、おしおきは終わりにして、まずはいい加減に公謹さんの疑問符を解こう。

せっかく病の元を絶ったのに、このままじゃ胃を痛めることになりかねないしね」

 

「はうぅ・・・まるで子供扱いです・・・」

 

「あわわ・・・でも、ご主人様、まるでお父様みたいだった・・・」

 

「では、そのお父さんの言う事を聞いて、皆にお茶を振舞ってくれるかな、雛里」

 

笑顔を向けて、もう怒ってないよと示すと、雛里は綻ぶような笑みを見せて、心地よい返事をくれた。

 

「はいです♪」

 

「ふ・・・やっと、この疑問から解放されるようで何よりだよ」

 

「お待たせしました、本当に」

 

「・・・お前には、私も明命も不思議な既視感を感じている。

それに私自身が気づいてもいなかった、体内に潜む病を見通し、見ず知らずのはずの私を救ってくれた。

雪蓮はその理由をもう聞いているのだろう?」

 

「・・・その通りです」

 

「礼を言うのが無論筋とは思うが、どうか先に聞かせて欲しい。お前が私たちを慈しむような瞳で見る訳も共に」

 

冥琳の鋭い双眸に戸惑いが少し混じっていたのは、俺の気のせいではなかったのかもしれない。

 

 

「端的に言ってしまえば、俺はこの世界を三度体験しているんだ。今回が四回目になる。

一回目はそこにいる桃香・・・劉玄徳の立場で。王としての貴重な経験をさせてもらった。

次に、二回目は孫呉の地に降り立った、天の御遣いとして。

内政とか軍師の補佐とか、文官としての基礎はとことん鍛えられたかな。

三回目は魏の曹孟徳の元で、首都の警備隊長をやってた。

他には、非常時の部隊の指揮官とか、まぁ軍師以外の仕事では何でも屋みたいな感じ・・・だったよね?」

 

「基本、なんでもやらせたものね。実際には、桂花や稟、風の補佐もしていたし、

街の区画整理やら、生活向上の為の開発も真桜とやっていたから、秋蘭並みには多忙だったんじゃない」

 

「おお、よく考えたら、結構こき使われていたんだなぁ、俺」

 

「もともとサボり癖さえ無ければ、ご主人様は優秀です。蘭樹どのはその辺りをうまく制御なされていたのでしょう」

 

「・・・ははは、確かによくサボってたから返す言葉がございません」

 

華琳と愛紗の指摘は的確で、正直耳が痛い。

 

「ほえ~、改めてちゃんと聞くのは、私も初めてだけど、一刀さん、色んな立場を経験してるんだねぇ・・・」

 

「・・・そもそも、その話をあっさりと信じる貴女もどうかと思いますよ、劉玄徳どの」

 

「んー、でもね、公謹さん。一刀さんの能力って、恐ろしく高いよ?

今の話が前提にないと、どんな超人だと思うぐらい。一刀さんが天に帰らずに済むのなら、私たちの代表として、

すぐにでも立ってもらいたいもん」

 

「・・・ふむ、そこまで優秀と。確かに立ち振る舞いに隙があるように見えて、なかなかどうして、な」

 

「たぶん、私も全力でかかったとしても、助けが来るまでは巧みに時間を稼がれる気がします・・・」

 

「いやいや、変に期待値あげられても困るから。桃香も俺に夢見すぎだよ」

 

最初に与えた印象が強烈過ぎただろうか、桃香は俺に色眼鏡をかけ過ぎている気がする。

二人の言葉を受けて、明命なんか、変に萎縮しちゃってるじゃないか。

 

「ふん、玄徳。『靖王伝家』を北郷に貸してやれ。面白いものが見れるぞ」

 

「ふぇ、私の宝剣を? う、うん、わかったよ…」

 

「ちょっと、左慈ちゃん…」

 

「貂蝉、奴が謙遜するのは勝手だが、自分の置かれた立場を自覚してもらった上でだ。北郷、その剣を抜いてみろ」

 

「何が始まるというのだ」

 

「周公瑾、諸葛孔明、鳳士元、郭奉孝、程仲徳…そして、安蘭樹。お前達なら、見れば感づくはずだ」

 

「?…ごめん、桃香、借りるね…!?」

 

鞘から抜いた瞬間から、刃が淡く黄金色の氣に纏われていく。まるで、婆ちゃんが『陽』を構えた時のように。

ただ、その光は比べればあまりに弱弱しくて、懐中電灯と提灯ぐらいの差があった。

 

でも、なぜ? これは俺の氣に反応してるのか?

 

「え、え、えーっ! なんで光ってるのー!? 私が持ってもこんなこと全然無かったよ!?」

 

「はわー、綺麗なのですー」

 

素直な感想の桃香と明命に際し、左慈はなんだが物足りないという顔つきだ。

 

「…いささか拍子抜けだな。北郷、剣に氣を注ぐような感覚を持ってみろ。

華佗に教えられた体内を巡る氣を感じるやり方の延長みたいなものだ」

 

「実際、出来るわけじゃな…って、うわ、眩しっ!」

 

ちょっとイメージしてみただけで、なんということでしょう…! あっという間に剣が光輝き始めたではありませんかっ…!

…加藤みどりさんっぽく言ってみたかったんだ、口に出してないからいいだろ?

 

「ついでだ。注ぎこむ氣の量を調節してみろ。その剣だったらやり易いはずだ。いい練習にもなる」

 

「お、おぅ…。俺、でもこんなうまくできるはずないのになぁ…」

 

一人困惑しながら、せっかくなので、光の強さの調整がてら、意識を強めたり弱めたりしてみる。

ただ、ちょうどいい強さに出来ず、強くなり過ぎたり、弱くなり過ぎたりする。これはなかなか難しい…。

凪とか、こんなの調節して放ったりしてるんだな…。う~ん、やはり、この大陸の女性は半端ないぞ。

 

「お前と相性がいいようだな、その剣は。そこまで氣の大きな負担にならずに制御の修練になるだろう」

 

「そっか、でも、これすげー難しいぞ…って、あれ、皆どうしたの。黙り込んで」

 

俺が取った剣の発光を見て、軍師'sプラス華琳が完全に押し黙ってしまった。

 

「これ、そういう曰くつきなの、左慈?」

 

「察しが早いな、曹操」

 

「蘭樹と呼びなさい。ややこしくなるんだから。で、他の智者たちも答えに辿り着いたようね?」

 

「は、はいっ、古来より漢皇家に伝わる品々に武器の類があることは承知していましたが…!」

 

「まっ、間近に見れるとは興奮しましゅ! 桃香さまの武器の正当性がこうして証明されるなんて!」

 

興奮気味のちびっこ軍師二人に、何やら合点のいった顔の華琳。

 

「しかし、一刀殿はその血筋ということですか。まさしく『天の御遣い』ということなのですね」

 

「お兄さん、全然そんなこと風たちに話してくれてなかったのです。風は怒ってますよ~」

 

…いや、俺もよく判ってないんですが? とりあえず、風が怒っているのはよく判るので、やることは一つ。

 

「ごめんな、風」

 

「理由がわかってないのに謝らないでほしいのです。つ~ん、です」

 

あっさり見透かされてるし…でも、なんで怒ってるんだよ~。

左慈は多分、全部判ってるし、華琳も想像が付いているようだ。あとは貂蝉か?

 

「あのさ、貂蝉…」

 

「大丈夫よん、ご主人様。理由の説明は今から、周瑜ちゃんがやってくれるわん。

だから、雪蓮ちゃんももうちょっと我慢してちょ~だい」

 

「あー。うん、なんかむず痒い感覚だったから、早く答え合わせしてくれると助かるかなー。というか、イライラしてるの出てた?」

 

「ダダ漏れというやつだ、雪蓮よ」

 

「あー、うん。付き合いの浅い星に見抜かれるようじゃ駄目ね~。って、なに、一刀に愛紗、何か言いたいことでも?」

 

「ナンデモアリマセン」

 

「ご、ご主人様の言う通りだ! 何でもありません!」

 

君はいつも漏れまくりじゃないか…って、突っ込み入れようと思いながら、愛紗と共に生命の危機を感じ、思い止まったというどんまい。

雪蓮、そんな殺気込みの覇気を簡単に発しないで下さい。慣れてるとはいえ、怖いものは怖いんです。

 

「…どうにもこの場景に既視感が拭えないのだが、まずは説明が先か。さて、私の推論を話しても良いかな?」

 

うん、俺もぜひ知りたいです、風の怒りの原因の元を。安全な一日を過ごす為にも!

剣を鞘に収め、力いっぱい頷いてみせると、冥琳は楽しそうに笑みをこぼし、説明を始めてくれた。

 

「まずは、漢皇室に伝わる宝の中に、武器の類というものがある。その中にも『靖王伝家』も含まれているわけだ。

ただ、劉氏の系譜と自称する者は数多くあり、『靖王伝家』に対する過去の記述も少ないこともあってな、

正直、現存している可能性が低いというのが、大方の士大夫の間での定説だった」

 

「偽物が多かった、という解釈でいいのかな?」

 

「うむ。その玄徳どのが持つ宝剣についての姿形についての伝承が少ないということもあってな。

かの高祖から代々伝えられ、皇家の者が持つ氣に反応して黄金色の輝きを放つ…というものだった」

 

「待った。でも、俺は高祖の子孫じゃない」

 

だって、婆ちゃん、始皇帝だし。

 

「ふふふ、話には続きがあるのだ。高祖は始皇帝から平和裏に禅譲を受けたと語られているが、

その際に、始皇帝の夫が、いくつかの贈り物を贈ったという逸話があってだな…。『靖王伝家』のくだりもあるのだ。

まぁ、その贈り物の中に、実は『子供』も含まれていると噂もあるんだが、私の予想が正しければ、色々と面白い結論が出てきそうだな」

 

「・・・・・・」

 

は? 子供?

待って、華琳。なんでそんな諦めがついたような顔してんの!?

 

「衝撃を受けているようだが、私の推論をまとめよう。

北郷どの、貴方は高祖の血筋を引いている為、靖王伝家の正偽を結果的に見極める力を持っていた、ということだ」

 

ちょっと…。

 

「ちょっとまてぇえええええええええ!!!!!! あのじじい! 婆ちゃん以外にもしっかり胤残していたってことかよ!

じゃあなにか! 桃香の先祖は俺の爺ちゃんなのか!」

 

爺ちゃん、あんたもしっかり種馬じゃねえかぁあああああ!

 

「ふむふむ、玄徳殿の遠い先祖が北郷どのの祖父と?」

 

「爺ちゃんは確かに婆ちゃん以外に、劉邦や項羽とも誼を結んだって言ってたけど、子供まで残して元の世界帰ったってことだろ!

婆ちゃん一筋のふりして、人のこと言えないじゃねぇかあああああああ!!!!」

 

「それだと、お婆様とは始皇帝ということになるが?」

 

「そうだよ、だからショック受けてるんだ! どの顔で『儂は婆さん一筋ぢゃ!』なんて言ってたんだよ!

絶望した! ドヤ顔していた爺ちゃんに絶望した!」

 

「意味が判らない言葉が混じっているが、なるほどなるほど、北郷どのの秘密の一端が見えてくるな。別の疑問も生まれてきたが」

 

へ…? あれ、俺、錯乱した勢いでなんて言った…?

 

「馬鹿一刀…、収拾どうつけるのよ?」

 

「忘れて下さい…ってのは?」

 

「無理だな」「無理でしゅ」「無理ですね~」「無理です」「無理~♪」「阿呆か」「むしろ根掘り葉掘り聞かせてもらえねば」

 

自分の迂闊さに俺は全力でorzのポーズを取るしかなかったのだ…。

左慈の、左慈の陰謀に見事に引っかかった俺の馬鹿ぁあああああああああ!!!


 
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