No.276776

真・恋姫†無双 十√ 33

kazさん

( ◕ ‿‿ ◕ )<せいぞんせんりゃくー

祭りネタの中マイペースにいつものを投稿

TINAMI変わったなぁ、今まではページを捲る感じで書いたりしてたんだけど

続きを表示

2011-08-17 21:19:55 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:28665   閲覧ユーザー数:18281

「ぬっあああああああああああああああああああああああああ!!」

 

絶叫し机につっぷする一刀、その机には多数の竹簡が置かれてあった、この世界に来たばかりの一刀は言葉は話せ

理解できるものの字を書くことが出来なかったのだ、そんな一刀に夏侯惇こと春蘭、夏侯淵こと秋蘭は早く字を覚えるようにと

勉強用にこの国の物語の書かれた竹簡を多数用意したのだ、しかしそれすらも中々覚えられず苦悩する一刀

 

「大丈夫か一刀?」

 

「あ!、え、ええ大丈夫ですよ”曹嵩”さん」

 

初老の老人は曹嵩といいこの陳留の主、見ず知らずの一刀を保護し、親切に身の回りの世話をしてくれるのだ

その理由は一刀が死んだ息子”曹操孟徳”に似ていると言う理由だった

 

「あはは、ほんと字を覚えるのがこんなに難しいとは思いませんでしたよ、はぁ・・」

 

「ほっほ、まぁ焦らずじっくりやればよい」

 

そう言うとお茶を入れてくれる曹嵩さんに一刀は元の世界の祖父を被らせていた、静かな時間が過ぎ去り

一刀が再び勉強をし始めようとした時

 

「どれ、わしも手伝ってやろう」

 

「え!そ、そんないいですよ!曹嵩さんはお仕事があって色々忙しいのに!」

 

「なに、その辺は春蘭と秋蘭が上手くやってくれるじゃろうて、ささっ、見せてみなさい」

 

そんな感じで言われれば断ることも出来ず一刀は竹簡を差し出す、曹嵩さんはそれを懐かしそうに見て

 

「では今からこれをまず読んで聞かせて、その後追って文字を教えてやろう」

 

「はい!」

 

元気に答える一刀、一刀はこの曹嵩さんが好きだった、元の世界の祖父に似ているのもあるが

優しくて、自分もいつかこんな人になりたいなと想っていた、そして曹嵩さんは物語を読み始める

 

物語のタイトルは

 

 

 

 

 

『胡蝶の夢』

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・

 

 

・・

 

 

 

「はっ!」

 

目を覚ます一刀、そこはギョウの一刀の一室、呉との激戦を終え、あとは蜀との決戦を待つのみという状況

 

久々に見たのは自分がこの世界に来たばかりの頃の夢、生きていた頃の曹嵩さんと過ごした日々

 

 

(ズキンッ!)

 

 

一刀は頭を抱えじわじわと痛む頭痛を堪える

 

 

 

 

 

「胡蝶の夢…か…」

 

 

 

 

 

 

 

-鄴-

 

蜀征成への準備が進む、将兵達は鍛錬を繰り返し軍師達は軍の編成と準備をちゃくちゃくと整えていた

呉との決戦から数ヵ月後、軍師達は一刀に蜀征成の軍の編成などを報告する為に鄴城の玉座の間へ集まる

報告は桂花、稟の順に行われた

 

「現状我が軍が動かせる最大兵力は十五万、もう少し兵を鍛えられる時間があれば二十万は用意できるとは

思うけど今の我が軍は呉に勝利し士気盛んな状況、これを逃せば逆に我が軍の士気が下がり敵を討つのが難しく、

さらに被害も増えると判断したわ、あとここ最近大きな出征が続いてる為民に多くの負担をかけているのも考慮したの、

過度な徴収を控えた補給を考えればこの数字が精一杯ね、まぁ蜀相手ならこれでも多すぎるくらいだけど」

 

「さらに報告いたします、ここ最近北方や西涼に異民族の不穏な動きがあるとの報告があります、特に匈奴は

魏領土への侵攻の構えを見せており注意が必要でしょう、さらに旧呉領の江東でも反魏の蜂起の動きが見られます

いざという時の為にも鎮圧の軍を置いておく必要があると思われます、新兵動員も考えましたが

混乱が起こった場合戦場に慣れない新兵が逆に状況を悪化させる可能性がある事、さらに無用な被害をなくす為にも

呉領内には精鋭を配する必要があると考えます」

 

続いて風、詠が報告をする

 

「ここからは蜀に関する報告をさせていただきます~

細作を放ち情報を収集いたしましたが今の所蜀には特に大きな動きはありません、ですがそれが逆に不気味ですね~、

どこかに決戦の地を決めるなら砦や要塞のようなものを構築し始めると思うのですがそれもありませんし~、おそらく

守るに堅固な益州自体を要塞と考え、我が軍を引き込んで叩く策を考えてるのではないかと~」

 

「劉備は配下の関雲長、張翼徳、趙子龍、黄漢升、そして馬孟起の五人の将に五虎将という称号を与えたそうよ、

この五人の他にも厳顔、馬岱、魏延といった将は油断ならないわ、情報では南蛮の孟獲や呉の三女の孫尚香といった者

もいるそうだけど戦力として考えると未知数ね、ただ南蛮の軍勢から”象”というのを投入された時の対応は必要

だと思うわ、まぁそれでもこちらの勝利は疑いはないとは思うけど」

 

四軍師がそれぞれ報告をする、その報告を聞いた一刀は

 

「益州に攻め込む必要はないよ、南荊州に侵攻すれば蜀軍の主力、いや劉備が必ず出てくる

彼女は荊州を見捨てるような事はしないと思うからね、だから決戦はそこで行われる事になると思う」

 

数で劣る蜀軍は当然山に囲まれた堅固な益州で迎え撃つのが当然と考える軍師達に対し

一刀が示したのは南荊州侵攻、軍師達もそれは考えてはいたが寡兵で守るに難しい南荊州は切り捨てる方が蜀軍としては

上策との判断だった、仮に荊州を守るにしてもその隙に魏軍が北荊州、そして漢中の二方面より益州に攻め込めば蜀軍は

防衛する難しさから荊州は放棄すると思われていたからだ、

 

一刀の意見に桂花達が意見を言おうとした時

 

「それから…、蜀との戦いの兵力、なんとか三十万動員できないかな?」

 

一刀のその言葉にその場にいた桂花、稟、風、詠の魏の四軍師が絶句する

 

「ちょ、ちょっと三十万って正気!?相手は蜀よ!周喩や孫策がいた呉よりも多い兵力を動かせなんてありえない!

それに荊州が戦場って!もしかしてあれ?蜀軍は勝てないから玉砕覚悟で華々しく散るって考えてるっていうの?」

 

「まぁありえない事ではないかもしれませんが無意味すぎますね、呉は少なくとも勝機があっての戦いでしたが」

 

「戦略的にも益州に篭られての戦いをされるのがこちらとしては一番きついのですが~」

 

「まぁ出てきてくれるってなら楽で良いけど蜀の全軍が出てくるって事はないでしょ、広大な益州の守りも考えると

荊州に配備される兵力はせいぜい五万、どう考えても蜀軍に勝ち目はないと思うけど?」

 

桂花、稟、風、詠がそれぞれの感想を述べる、軍師の誰もが三十万という大兵力の動員に意義を唱える

確かにかき集めれば動員できない数字ではないが軍師達は蜀は呉よりも強いとは思っていなかったのだ

しかし一刀は断言する

 

「世の中には桁違いの存在というのがいるんだ、どんなに戦っても勝てないような相手、そんな奴を相手に戦うには

物量で圧倒するしかない」

 

「あんたの言うその桁違いの存在って何者?」

 

 

『諸葛亮孔明』

 

 

詠の問いに一刀は重い声で答える、しかし軍師達はその名前にいまいちピンと来ない感じだった

しかし稟はある事を思い出す

 

「確か荊州に名の知れた人物鑑定家の司馬徽が語ったとか言う話で”伏龍鳳雛のいずれかを得れば天下を得られる”

という方の一人でしたか、もう一人は同じく劉備陣営にいる鳳統と聞きましたが」

 

「なによそれ、劉備は二人とも得てるのに天下には程遠いじゃない、その司馬徽ってのはとんだ詐欺師ね」

 

「まぁ鳳統という方は荊南四郡攻略や益州攻略で軍才を発揮してましたね~、確かに寡兵でその両方を得た手腕は

見るべきものがあるとは思います、諸葛亮というのは確か徐州で袁術軍相手に采配してたくらいしか

記憶していませんが」

 

「弱兵揃いの袁術軍ならその辺りに転がっている軍師でも勝てるわよ」

 

稟の答えに桂花、風、詠がツッコミを入れる、軍師達は孔明の事はほとんど知らないといった感じだった、無理もない、

この世界では孔明は荊州で魏軍を壊走させた事や赤壁の戦いで曹操を追いつめた事はなく、荊州や益州を安定させた

政治的手腕の方が評価されていたからだ

 

「おにーさんの世界での孔明という方はそれだけの人物だったという事ですか?」

「ああ」

 

風の問いに再び重々しく答えた一刀に軍師達はある人物の事を思い出す

”呂蒙子明”

魏呉決戦において呉の切り札として用意されていた将、その存在は呉の首脳陣さえも直前まで知らされなかった程の人物、

しかし一刀の元の世界の知識によって有能な将と事前に聞かされていた魏軍はその対応によって勝利する事が出来た、

仮にこの事実を知る事ができなかったとしたら魏呉の勝敗は逆転していたかもしれなかったと

 

「呉の大軍師周喩さんと比べたら孔明というお方はどのくらいの人物なのでしょうか?」

「勝負にならない、かな、孔明の前では周喩は敵では無かったよ、まるで大人と赤子のように」

 

「「「なっ!」」」

 

一刀の言葉に軍師達は言葉を失う、桂花達はこう見えても自分達の力量はそれなりに把握はしている、

そしてその上で現在最高の軍師が呉の周喩だという認識だった、その周喩がまったく敵ではないなどと

 

「ま、待ちなさいよ!そんな奴がいる訳ないでしょ!そんな奴がいたら今頃とっくに大陸を平定してるわよ!」

「そ、そうです、そのような人物が何故あの劉備の下にいるのですか!名は同じでもまったくの別人でしょう!」

 

桂花と稟は必死で否定する、しかし詠はしばらく考えた後

 

「あんたはそれを信じてるのね?その化け物じみた奴が蜀軍にいてボク達の前に立ち塞がると」

 

その問いに一刀は小さく頷く、桂花と稟は納得いかないという感じだったが詠と風は何やら考え始める、そして

 

「わかったわ、もう一度対蜀の基本戦略を考え直すわね、兵力も含めて」

「そうですね~」

 

「ちょ、詠!風!あんた達信じるの?こんな眉唾ものの話を!」

 

「信じるわ、あんた達もわかってるでしょ、北郷の知る知識でボク達はここまでこれたのよ、赤壁での戦い

関中での戦い、そして呉との戦い、北郷の天の知識がなかったらボク達はどこかで命を落としてたかもしれなかったのよ」

 

詠の反論に桂花も言葉が出なくなる、稟もまた詠の言葉に何も言葉を発せないでいた

 

「桂花、稟、多分これが最後の戦いになると思う、だからこそ慎重に慎重を重ねたいんだ、ここまで一緒に戦ってくれた

仲間や兵達が新しい国で生きていく為にも」

 

「………ふうっ、わかったわよ、考えればいいんでしょ、その孔明って奴と戦う為の手段を」

「申し訳ありません、あまりの事に自分が制御できませんでした、私は一刀殿を信じると決めていたのに」

 

「まぁあの周喩を赤子扱いなんて言われればそう思いたくもなるわよ、実際戦いづらいったらありゃしなかったしね、

ボクだから何とかなったからいいものの「「「はいはい」」」…ちょっとあんた達ちゃんと聞きなさいよ!!」

 

「しかし孔明さんですか、古の管仲、楽毅のような方なんでしょうかね~」

 

そんな感じで四人の軍師達は再び論議を交わし始める

一刀はそんな四人を改めて頼もしく想うのだった

 

 

 

 

「四人にはほんとに何から何まで頼りっぱなしだったな」

 

 

「何を今更、私達はあんたの軍師なんだからあんたの為に策を出すのは当然じゃない」と桂花

 

「はい、私はこれからも一刀殿の為にだけ策を考えたいと思っています」と稟

 

「おおう、稟ちゃん抜け駆けはいけませんね~、風の考える策も身も心もおにーさんのものですよ~(ぽっ)」と風

 

「まぁあんたの為に出す策がひいてはこの国、そして月の為になるってだけよ、べ、別にあんたがどうなろうと

知ったこっちゃないんだからねっ!」と詠

 

「ありがと、で、そのお礼っていうのも何なんだけど皆に贈り物があるんだけど受け取ってもらえるかな?」

 

そう言うと一刀は小さな箱を持ってくる、一刀の贈り物が何だろうという感じで身構える四人

まぁ桂花と詠は興味ないと言った感じの仕草をしていたが、一刀がその箱から取り出したのは『指輪』

それを取り出すと一人一人に渡していく、最初は桂花に

 

「桂花、君にはほんとに色々助けてもらったよ、俺達が陳留にいた頃から、あの時からずっと俺や春蘭達をを支えて

くれたおかげでここまで来る事が出来た、勢力が大きくなって裏方の仕事ばかりやらせちゃったけど桂花が国をしっかり

守ってくれるから俺たちは安心して戦うことが出来たんだ、ありがとうな桂花」

 

「な、何よ急に!わ、私は適当な仕事が嫌いなだけで…、だ、大体あんた達がだらしないから

私がやらなきゃいけないだけなんだから!言っておくけど私の実力はまだまだこんなもんじゃないから!」

 

と、色々文句を言いながらも指輪はちゃっかり受け取る桂花さん、手を後ろに回して一刀には見えないようにして

合うかどうかを確認していたり、一刀は次に稟に

 

「稟、君にも沢山助けてもらったね、河北での戦いは君がいなければ長期の戦いになって呉や荊州の進攻を許してた

かもしれなかった、その後も俺を補佐してくれたり最前線でよく指揮してくれた、ほんとにご苦労様だったね稟」

 

「そ、そんなっ!わ、私は一刀殿の為に戦える事を光栄に思っています!それに一刀殿の力と知識がなければ

勝てなかった戦いもあります、私なんかがこ、このようなものを頂いてしまっていいのか…」

 

遠慮する稟に一刀は優しく指輪を渡す、いつもの妄想癖も出ないほど稟はその指輪を受け取った事に高揚し

大事そうにその指輪を握り締めていた、次に一刀は風に向き合い

 

「いつも優しい風を吹かせてくれる風、君にはいつも心配かけさせちゃったね、その度にいつも俺を癒してくれた、

戦いでは呉からの進攻を食い止めてくれた、ほんとに感謝しているよ、これからも皆を癒してあげてほしい風」

 

「おやおや、なんだか改めて言われると照れてしまいますね~、ですが風はおにーさんを支えたつもりはありませんよ、

風はただおにーさんの傍にいたいだけ、お日様のようなおにーさんにずっとポカポカと優しい光を放って

ほしいだけなんですよ~」

 

そう言うと風は指輪を受け取り大切そうに指にはめる、最後に一刀は詠に向き合い

 

「詠、君には色々苦労をかけさせてしちゃったね、名を奪いやりたくもないメイドをさせたりしちゃって、

軍師の仕事をさせてしまったせいで月と中々会えなくしちゃったし、けど君が軍師になってくれるって言ってくれた時は

ほんとに嬉しかった、君のおかげで赤壁の戦いは全滅を免れる事ができた、関中の戦いでは君の策で敵を瓦解させれた、

呉との戦いでは最前線でよく呉の攻勢を受けきってくれた、君なら必ず大陸一の軍師になれるよ詠」

 

「ふ、ふんっ!まったくよ!あんたのせいで月があんな恥ずかしい格好で給仕をしなきゃならなくなったんだからね!

あと一応言っておくけどボクが軍師になったのは月の為なんだからね!ボクがこの大陸一の軍師になれば月だって

きっともうあんな恥ずかしい格好をしなくて済むって、ほんとそれだけなんだからね!」

 

相変わらずのツンデレ軍師っぷりに周りは呆れるものの指輪はちゃっかりと受け取る詠さんだった

各々反応は違うものの受け取ってくれた事に安堵する一刀、その時風が指輪に書かれた文字に気付く

 

「おにーさん、この指輪の裏には何て書かれているのですか?見たこともない文字のようですが」

 

「ああ、それはまだちょっと内緒かな、まぁ何ていうか”まじない”みたいたいなもんなんだよ、蜀との戦いが終わったら

ちゃんと教えるからそれまでは秘密って事で」

 

気にはなったがそれ以上は答えそうにない一刀に風もそれ以上は追求しない事にする

その後再び軍議を始めた四人を残し一刀は政務の為にこの場所を離れることに、出て行く間際一刀は

 

 

「四人ともこれからも、次の戦いの後もその知を使ってこの国の為に尽くしてくれな」

 

 

その言葉に桂花、稟、詠は当然という感じで答える、ただ一人風だけは三人には聞こえないほど小さな声で

 

 

「おにーさんが…いてくれれば…」と

 

 

 

-鄴城の付近の練兵所-

 

ここでは凪、真桜、沙和の三人が新兵達を鍛えていた、呉との戦いに勝利しあとは蜀を併呑するだけとなった魏では

自分もそのおこぼれに預かりたいという者達がこぞって入隊する騒ぎとなっていたのだった

 

「あ、北郷様!」と凪

「あ、大将やー」と真桜

「北郷様なの~♪」と沙和

 

三人が練兵所にやってくる一刀に気付いて声をかける、しかし護衛もつけずにやってきた一刀に凪からかなり注意されたり

した、一方間近で初めて一刀を見た新兵達はその覇気を漂わす姿に恐れおののき声を失い呆然としていた

 

「お前達、今日はこれまでだ!各々鍛錬を忘れず自身を磨き続ける事、解散!」

 

凪の凛々しい号令で我先にと散っていく新兵達、そんな凪とは対照的に真桜と沙和はそれぞれ一刀の両手に抱きついていた

 

「な!お、お前達何をしているっ!ほ、ほほ北郷様に失礼な事をするんじゃない!」

「大丈夫大丈夫ー、ちゃーんと大将には了解してもろたしー」

「そうなのー、んー♪やっぱり北郷様の腕はとってもがっしりしてて沙和たまらないのー♪」

 

そんな感じで気持ちよく抱きつく真桜と沙和に一刀は仕方ないと言った表情、一方凪は羨ましいやら憎たらしいやらといった

表情で二人を見つめていた、そんな凪を不憫に思ったのか一刀が三人に

 

「調練も一段楽したようだしこれから皆で食事にでも行かないか?」

 

「え!、行く行くーー♪当然大将のおごりやろ♪」

「沙和も行くのーー♪実は前から行ってみたい高そうなお店があったのーー♪」

「お前ら少しは!「いいんだよ凪、今日はなんか奢りたい気分なんだよ、なんていうか今まで頑張ってくれたお礼

みたいな事をしてやりたくてさ」

 

そう言った一刀の言葉に真桜と沙和はさらに喜び凪は大きな溜息をつきながらも一刀と過ごせる事が嬉しかったりした

その後四人はギョウでも高級な店で食事をし、さらに街で買い物などをした、もちろん一刀の奢りで

真桜は特注の工具セットを、沙和には綺麗な洋服を、大喜びする二人とは対照的に凪は戸惑っていた

 

「どうしたんだ凪?何でも欲しいもの言ってくれていいよ」

 

「あ、いえ、私は別に…、私は北郷様に仕えられるだけで幸せですので…」

 

一刀と一緒にいられるだけで凪は幸せだった、望みがあるとするならもっと一刀に甘えたいという想い、しかしそんな事を

ねだる訳にはいかないという想いとの狭間で凪は苦悩していた、すると頭を撫でられる感触

 

「凪はもう少し自分に自信を持った方がいいよ、あともっと正直にならなきゃな、そうすればきっと後悔する事なく

この先進んでいける、もっともっと強くなれるよ」

 

「は、はいっ…/////」

 

このまま時間が止まってしまえと思う凪の想いは真桜と沙和の帰還であっさりと終了してしまう、また抜け駆けしたと

追求され必死で弁解する凪に一刀が

 

「凪、真桜、沙和、三人にあげたいものがあるんだ、受け取ってくれるかな?」

 

もちろん断るはずのない三人、今か今かとそれを待つ三人に一刀は『指輪』を出し一人一人に渡していく

 

「わぁ、すっごい綺麗な指輪なの~♪、これほんとに貰っっていいの?いいの?沙和すっごく嬉しいの~♪」

 

「へぇ~、こら結構ええ作りした指輪やな~、なんか作り手の気合っちゅうもんを感じるわ、ありがとな大将!」

 

「こ、ここここのようなき、ききき貴重なものを、あああありがとうございます!///////」

 

三人が受け取ってくれたのを確認した一刀は

 

「凪、真桜、沙和、次が最後の戦いになると思う、激戦は間違いない、だけど三人には約束して欲しい、

絶対に命を落とさないと、絶対に生きて戦いを終えてくれると、そしてこの先もこの国を支えてくれると」

 

一刀の真剣な言葉に三人は答える

 

「約束するの!沙和だってまだまだやりたい事がいーーーっぱいあるの!」

 

「うちも約束したる、必ず勝って生き残ったる、せやから安心してーな大将!」

 

「約束します!必ず北郷様に勝利の報告を致します!」

 

その言葉を聞いた一刀は笑みを浮かべる、その後一刀達は城まで戻ると凪達は自分の宿舎へと帰る

帰り際、三人に対し一刀が手を振りながら

 

 

「三人とも、ほんとに今までありがとうな!」

 

 

その言葉に三人もまた手を振り返す、しかし凪だけは何か違和感のようなものを感じていた

しかし結局それが何なのかはその時はわからなかった

 

 

 

「季衣、流琉」

 

台所で料理をしている流琉とそれを待っている季衣の下にやってきた一刀が声をかけると二人は元気に返事をする

そして一刀は流琉の下にやってくると

 

「流琉は相変わらず手際がいいな、前に教えたピザとかも上手く出来てたし流石だよ」

 

「え、えへへっ♪ありがとうございます兄さま!私兄さまにもっともっと美味しいもの食べさせてあげますね!」

 

「うん、楽しみにしてるよ、でだけどこれ参考になればだけど受け取ってくれるかな?」

 

「これは?」

 

「俺の知ってる限りの天の国の料理の作り方、まぁ完全じゃないけど流琉なら上手く作ってくれるかもって思ってさ」

 

「わぁ♪ありがとうございます兄さま、私大切にしますね!」

 

そんな一刀と流琉のやりとりをムーッとして見てる季衣さん、なんか仲間はずれにされて機嫌が悪くなって

 

「にーちゃん、ボクも料理つーくーるー!」

 

「何言ってるのよ季衣は食べることしかできないじゃない」

 

「そんな事ないもん!ボクだってにーちゃんの書いた作り方の書物があれば作れるもんっ!」

 

なんかこのままじゃ喧嘩になりそうだったので一刀が季衣にも簡単に作れる料理の本をあげるよと約束する

喜ぶ季衣と呆れる流琉の二人の頭に手をやり撫でる一刀、そして懐から『指輪』を取り出し二人に渡す

 

「えっ!こ、この指輪を頂けるんですか、あ、ありがとう兄様!/////」

 

「わー、ボクこーゆーのよくわかんないけど大事にするね、兄ちゃん!」

 

二人は一刀からのプレゼントと言う事で素直に喜び、一刀もまた微笑み返す

しかしすぐに真剣になり季衣達と同じ目線まで膝を屈めると

 

「季衣、流琉、戦いももうすぐ終わる、本当なら二人にはあまり危険な事はさせたくなかったんだけど

もう少しだけ力を貸して欲しい、そしてどんな事があっても生き残って欲しい、いい?」

 

「はい!兄様の力になれるよう頑張ります!絶対に生き残ってみせます!」

 

「はいはいはーい!ボクも死んだりしないから安心してよ!春蘭様や皆もいるから大丈夫だよ兄ちゃん♪」

 

一刀の言葉に流琉と季衣は元気に答える、その答えを聞いた一刀は再び微笑むと二人の頭を撫でてやる

それがとても気持ちよくて、暖かくて、二人は頬を染める、その後三人で食事を作り食べた後一刀は政務へと戻る

別れ際一刀は

 

 

「二人に会えて良かったよ、ほんとに今まで楽しかった、ありがとうな季衣、流琉」

 

 

その言葉に二人は照れながらも元気良く返事を返す、一刀が姿を消すまでじっとその背中をみていた二人

 

「ねぇ季衣、兄様何かあったのかな?」

 

「ん?何が?いつもの優しいにーちゃんだったじゃん」

 

「そう…なんだけど、んー、気のせいかな」

 

 

-鄴城の中庭-

 

可愛い赤い触角がぴくっと動く

 

「ごしゅじんさま!」

 

恋のその言葉にそこにいた霞、音々音、月も恋が見つめる方向を見る、するとそこには一刀

 

「あ、皆ここにいたんだ」

 

「おー一刀、丁度ええ、あんたもこっち来て一緒に酒飲もーや」

 

「霞さん、日の高いうちからお酒というのも、それにご主人様はまだ政務があるかもしれないですし」

 

「まったく、霞は相変わらずだらしないのです!恋殿の爪の垢でも煎じて飲ましてやりたいのです!」

 

「恋の爪…、あんまり美味しくないと思う…」

 

霞、月、音々音、恋が和気藹々と話す中一刀もその中に入れてもらおうと席についていいかを聞く、

音々音は拒否するものの恋の一喝で渋々承諾、月は手際よくお茶を出し、霞は酒の肴を勧め五人は楽しい時間を過ごす

しばらくして月がお茶の代わりと食べ物を持ってくるというので席を離れた時、霞が一刀の傍に擦り寄ってくる

 

「か~ずと~、あんたうちとの約束忘れてへんやろうな~」

 

「当たり前だろ、ちゃんと覚えてるよ」

 

「そっか、ならええ♪にゃははははは♪」

 

一刀と霞との約束とは『大陸が平和になったら二人で羅馬に行く』というもの、二人だけの約束、それをちゃんと

覚えていてくれた事に霞は上機嫌になる、しかしそんな二人に

 

「ごしゅじんさまと霞どこかに行くの?」

 

問いかけてきたのは恋、一刀と霞が何やら楽しげに話してるのが聞こえ物凄く気になったようだ、恋の問いに霞は

 

「え?えーーっと、べ、別に何でもないよー、あ、こ、今度一刀とどっか買い物にって「うそ」」

 

霞が必死で誤魔化そうとするも恋に一発で見抜かれてしまう、じっと見つめる恋の純真な瞳に罪悪感に押し潰されそうに

なっていく霞、一方一刀は言ってもいいんじゃないか?と言う素振りをみせるも霞は二人きりの約束やんかー!って感じで

必死に抵抗する、しかし!

 

「恋だけ…仲間はずれ?」

 

少し寂しげに落ち込む恋に”ぐわしゃあああん”って感じの音が霞の心に聞こえたような聞こえなかったような感じで

ついに霞は降参する、そして語られる一刀と霞の『一緒に羅馬に行く』という約束、その話を聞いた恋は目をキラキラ

と光らせる、嫌な予感がした霞だったが時すでに遅し!

 

「恋も一緒に行く」

 

”ですよねー”という感じで涙を流しながらガクンとうな垂れる霞、もはや恋が付いてくるのは確定事項になってしまった!

で、恋が行くなら当然

 

「恋殿が行くのならねねももちろん一緒に着いて行くのです!」

 

音々音の参戦も決定する、もうこうなったらヤケクソじゃい!という感じでお茶菓子を持ってきた月も巻き込む霞さん

結局霞、恋、音々音、月、詠の元西涼軍の面子で羅馬に行こうという事になったのだった(ちなみに華雄さんは

大事な人がいるからきっと来られないでしょう!///という頬を染めた月の言葉で不参加となる)

そんな感じで和気藹々と話す四人、しばらくして一刀は霞に向き合うと

 

「霞、次の戦いが最後の戦いになると思う、今までとは比べ物にならないほど強い奴がいると思うから油断しないようにな」

「へぇ、そらおもろいやん!強い奴ええねぇ、そーゆー奴倒してこその”最強”ゆうもんや!」

 

霞は強敵と戦える事に高揚しているようだった、一方恋はというとまだ桃香の言葉が気になっているようだった

 

「恋も頑張る…、でもやっぱり、少し頑張れないかもしれない…」

「劉備の事かい?」

(コクッ)

「じゃあ恋、次の戦いは俺の為だけに戦ってくれないかな?」

「ごしゅじんさまの為?」

「うん、他には何も考えなくていい、余計な事なんか考えず俺の事だけを考えて戦ってほしい、そうすれば劉備の事も

考えなくてすむだろ?」

「うん!恋、ごしゅじんさまの事だけ考えて戦う!」

 

と元気に返事をする、音々音などは今にもちんきゅーきっくを放ちそうだったりしたが恋の眼光でとめられしょげてしまう、

その後和気藹々とした様子でお茶会は続く、皆が満足し始めた時一刀はは懐からある物を出し四人に渡す

 

「へぇ、綺麗な指輪やなぁ、何これくれんの?ありがとーなー、大事にするわ一刀~♪」

 

「ゆびわ(ポッ)うれしい…////」

 

「あ、有難うございますご主人様、えと、大事にしますね///」

 

「何かよからぬ事を考えてるのではないですか?ま、まぁくれるというなら受け取ってやるのです!」

 

一刀から渡された指輪を嬉しそうに見つめる四人を優しく見つめる一刀、そして

 

 

「いつか必ず皆で一緒に羅馬に行こうな」

 

 

「ん? ああ、せやな!」

 

一刀の言葉に少し違和感を感じたものの霞は元気よく答える、一刀はその後政務の為にこの場を離れていく

一刀の姿が見えなくなるまで手を振る恋、しかし見えなくなったしばらくして恋がぽつりと

 

「ごしゅじんさま、何か寂しそうだった…」と

 

 

 

鄴城の中のある一室をノックする一刀、しかし返事はなくもう一回ノックすると

 

「だ、誰だっ!」

 

と中から秋蘭の珍しい怒った声が聞こえてくる、それに返事した一刀に対し秋蘭はしばらく待つように伝え

何かドタバタと部屋の中から聞こえてくる、何事かと思い扉に手をかけた時

 

「待たせたな」

 

と少し怖い感じの秋蘭が扉を開ける、一刀は少したじろぎながらも部屋の中に入るとそこには寝台で横になる春蘭

 

「春蘭どうかしたのか?」

 

「い、いや、ちょ、ちょっと風邪気味でな、ごほんごほん(棒)」

 

なんか咳がうそ臭い感じがしたが一刀は心配して寝台に近づこうとするも秋蘭がその間に割って入り

 

「大丈夫だ北郷、姉者は私が責任を持って看護する、北郷は何も気にせず安心してくれ「いやでも…」」

 

「だ、大丈夫だ北郷、す、少し寝ればすぐ回復する!」

 

「そ、そう、ならいいけど…」

 

結局春蘭に近づくことすらできない一刀さんだった、何か変な空気の中話し始めたのは秋蘭

 

「ところで北郷、ここに来たのは何か用だったんじゃないのか?重要な事なら後でこちらから伺うが」

 

「あ、いやそんな大層な事じゃないんだよ、なんていうか二人と話がしたいなって思ってさ」

 

「なんだ急に?」

 

突然の一刀の言葉に少し疑念を抱く秋蘭に一刀は微笑むと

 

「そんなたいそうな事じゃないよ秋蘭、実は今朝曹嵩さんの夢を見たんだよ、まだ俺がこの世界にやってきたばかりの頃の

何も知らない頃の夢、曹嵩さんが俺に物語を読み聞かせてくれて文字を教えてくれた頃の夢をさ」

 

「なんだそういう事か、しかし曹嵩様の…、そういえば、お前と出会ったからもう随分と経つな、あの頃はまさかこんな事に

なるとは思わなかったが」

 

「俺もだよ、でも曹嵩さんの墓前で誓った以上それをないがしろにする気はなかったけどね」

 

そう言いながら一刀と秋蘭はあの時の事を思い出す、一方春蘭は布団の中で聞き耳を立てていた

 

「秋蘭、それから春蘭にもだけど受け取ってほしいものがあるんだけどいいかな?」

 

そう言うと一刀は『指輪』を差し出す、それを受け取った秋蘭は

 

「ほお、中々見事なしつらえの指輪だな、見た事のない造形だが、これはお前の世界の?」

 

「まぁね、これから蜀との決戦だろ、きっと激戦になると思うから持っていてほしいんだ、何があっても

皆は一人きりじゃない、俺たちはずっと一緒にいるって感じてほしいから」

 

「相変わらず蜀、いや劉備を評価しているのだな、だがそうだな、ここまできて下手を打つわけにはいかんしな、

大切にさせてもらうさ、何よりお前からの贈り物だしな」

 

「ありがと」

 

そんな風にいい感じの一刀と秋蘭を布団の中から羨ましげにムズムズしてる春蘭さん、しかしある理由でやはり布団から

でる訳にはいかなかった

 

「春蘭にも直接渡したかったんだけど体調が悪いようなら仕方ないか、悪いけど秋蘭から渡しといてくれるかな?」

 

「ああ、わかった、姉上にはちゃんと渡しておくから安心しろ」

 

そう言うと指輪を渡すと一刀は秋蘭と春蘭の入っている布団を見て

 

 

「秋蘭、春蘭、二人と過ごした時間を俺は絶対に忘れないよ、二人がいてくれたから今の俺があるんだ

だから何があっても俺は二人のことを忘れない、絶対に」

 

 

その言葉に秋蘭は一刀の何かしらの決意のようなものを感じたがこの時はそれほど追求する事もなかった

一刀が部屋から出て行った後秋蘭は春蘭に声をかける

 

「姉者、やはり北郷に言った方が良いのではないか?」

 

「ダメだ!絶対に!言えばあいつは絶対私を戦場に出さなくする!そんなのは絶対に嫌だっ!

もうすぐこの戦いも終わる、その時にあいつの傍にいられないなんて絶対に嫌なんだ秋蘭!」

 

春蘭の言葉に秋蘭は何もいえなくなる、この時春蘭の身体にはある異変が起きていた、しかしそれを一刀が知れば

きっと春蘭の事を心配し戦場に連れて行かないと思っているのだ、秋蘭も春蘭の身体の事を心配はしていたが

大切な姉からこうまで頼まれれば断る事はできなかった、そしてこの時一刀の言葉を軽く受け流してしまった事に

二人は後々まで後悔する事になる

 

 

 

 

それからしばらくして魏軍は南荊州進攻の軍を整える

 

その総兵力は二十万

 

一刀が三十万の数字を出し軍師たちも編成を急いだのだが様々な事情から二十万しか集められなかったのだ

申し訳ないと言う軍師たちに対し一刀は優しく労う、精一杯尽くしてくれたのがわかっていたからだ

 

「主様頑張ってくるのじゃぞ~」

「早く帰ってきてくださいね、北郷さんがいないと色々やれないんですから」

「皆さんどうかご無事で」

 

美羽、七乃、月が出征する皆を見送る

 

「一刀」

 

一刀を呼び止めるのは雪蓮、実は事前にこの出征に付いて行きたいと何度も申し出たのだが一刀に断れていた

 

「雪蓮、留守を頼むよ」

「どうあっても私を連れて行かないのね」

「ああ、もし連れて行ったら雪蓮は魏に尻尾を振ったと思われて呉の人達から恨まれるかもしれないからね、それに

これは魏と蜀の戦いだ、雪蓮の出番はないよ、それに君にはまだ大事な役目がある、だからそれまでは大人しく待っててよ」

「大事な役目って?」

 

その言葉に一刀は答えない、しかしその背を見つめる雪蓮は改めて何か嫌な予感のようなものを感じていた

 

「じゃあ行って来るよ雪蓮」

 

「一刀!」

 

一刀を呼ぶ雪蓮の声は行軍する兵士達の足音にかき消される

 

 

 

 

 

-益州・成都-

 

成都城の玉座の間には蜀の王劉備玄徳こと桃香と蜀軍の主だった将帥が集まっていた

その中から軍師諸葛亮孔明こと朱里が魏軍の動きを報告する

 

「魏軍が兵を動かし始めたとの報告が来ました、目的地は荊州、その動員兵力はおよそ… 二十万!」

 

朱里から放たれた魏軍総兵力二十万という大軍に蜀の面々は…

 

 

「少ないな」

 

 

と、予想外といった反応を示す

 

「朱里が予想していたのは三十万だったと思うが」

 

「はい、北郷さんが桃香様の言うとおりの人物であるなら私たちを倒す為に三十万の兵を動員すると考えていました、

実際無理を通せばその数は十分整えられるはずですし、ですがおそらくここ最近の大規模出征の連続による民の疲弊を考慮

さらに北方の異民族や呉の反乱分子を抑えつける為にその兵力を抑えたとみるべきでしょう」

 

「ふむ、こちらの動ける兵力がせいぜい五万と予想してそれだけで十分と判断したというのは?」

 

「それもあるかもしれませんね、もし私が魏の軍師であったならやはり十万から二十万の兵力で十分と

判断していたと思います、魏軍は呉を破り士気も高いというのもあってその勢いのまま攻め込みたいと考えるでしょうし」

 

星こと趙雲の言葉に朱里は冷静に分析する、しかし

 

「ですがそう考えていてくれるのであれば今度の魏との戦いは私達の描くとおりの結果を得られると思います」

 

「「では」」

 

「はい、桃香様が目指される願いを叶えられると思います」

 

朱里のその言葉に蜀の面々は桃香を見つめる、桃香は何も答えずただ俯いて何かを考えていた

 

「桃香様?」

 

「あ、ごめんなさい、ちょっと色々考えちゃって、私の我侭の為に皆を危険に合わせてしまう事や沢山の兵士の人達に

辛い思いをさせてしまうって考えたらやっぱり…、ね」

 

「我らはすでに桃香様の夢の為に進む事を決めております、何もご心配する必要はありません!」

「その通り!相手がどんなに多かろうと桃香様の邪魔立てはさせません」

 

桃香の心配に対し愛紗、焔耶が擁護する、もちろん他の面々も桃香を糾弾する様な者は誰もいない、すでに進むべき道

は示されている、桃香の決意も皆は全てわかっているからだ

 

「ありがとう皆、うん、そうだよね、私もっとしっかりしなきゃね!、

よぉし!いざという時の為に今から身体を鍛えるぞー!そうと決まったらさっそく…あっ!」

 

どたっ!と玉座から転げ落ちる桃香、すぐさま駆けつける愛紗達に涙ながらに大丈夫という桃香、相変わらずのその光景に

玉座の間は笑い声に包まれる、蜀という国はいつもどこかで楽しげな笑い声が聞こえてくる

 

しかし誰しもがこの楽しげな時間の終焉が間近なのを感じていた

 

そして、蜀の面々は来るべき魏との決戦の日に備え様々な想いを浮かべる

 

 

 

-成都にある屋敷-

 

ここには袁紹こと麗羽、顔良こと斗詩、文醜こと猪々子が一緒に暮らしていた、河北で一刀に敗れた三人は流れ流れて

行き着いた先で桃香に拾われ世話になっていたのだった、魏との戦いが近づいたある日、麗羽は斗詩と猪々子の二人を

呼び出していた

 

「急にどうしたんですか麗羽様?」

「ふあー、あたしもう寝ようと思ってたんで用事なら早めにお願いしますねー」

 

「え、ええ…、その…、ふ、二人には今までく、苦労をかけさせてしまいましたわね」

 

と、今まで一緒にすごした中でも他人の事なんか気遣った事なんてないような人がしおらしくなって自分達に謝った

事にど肝を抜かれる二人

 

「そ、そんなに驚かないでくださらない?わ、わたくしだってこ、こういうのは苦手なのですから!

ま、まぁよろしいですわ、こんな事を言いたい訳ではありませんから」

 

そう言うと麗羽は一呼吸して自分を落ち着かせると

 

「そ、その、斗詩さん、猪々子さん、二人には今まで苦労をかけさせてしまいましたわね、貴方方ならば

どこに行っても一角の将として雇ってもらえるのにわたくしの我侭でここまでつき合わせてしまって、

ですがもうわたくしの所に無理をしている必要はありませんわ、二人は好きなように「「麗羽様っ!!!!」」…ひっ」

 

麗羽が言い終わる前に斗詩と猪々子が一喝する、その表情は今まで麗羽に見せた事がない程怒りに満ち満ちていた

 

「怒りますよ麗羽様!!私達が嫌々麗羽様に付き従ってきたと思っているんですか!」

「そうだよ!うちらは麗羽様が好きで一緒にいるんだぜ!大体麗羽様の面倒なんかうちら以外の人間にできる訳

ないだろ!」

 

「と、斗詩さん、猪々子さん…」

 

今までとは立場が逆になって何も言えなくなってしまう麗羽

 

「何で急にそんな事言い出したのか聞かせてもらえますか麗羽様」

 

「……わ、わたくしはただ、蜀の方々と一緒に魏と戦おうと思っただけですわ、ですけど相手は私たちを河北から

追いやった本能さん、もし貴方方の身に何かあったらと思うとわたくしどうしていいかわからなくて…」

 

その言葉に斗詩と猪々子は驚きを隠せないでいた、今までの麗羽ならば即座に逃げ出してそうなのにあの一刀と魏と戦おう

などと言うのだから、と同時に自分達の事を大切に想っていてくれる事に嬉しくなったり

 

「まーったくどんな理由かと思ったらそんな事かよー、心配しなくてもうちらも蜀の人らと一緒に戦う事は決めてましたって

こんな面白そうな戦いめったにないですからね!」

「そうですよ、でも意外ですね、麗羽様が戦うって言い出すなんて、勝てる見込みはほとんどないんですよ?」

 

「そう…かしら?わたくし何故かはわからないのですけどあの桃香さんは本能さんに勝てるような気がするんですの

何故かと聞かれてもよくはわかららないけど、あのお方なら…と」

 

麗羽の言葉に二人は

 

「あ、麗羽様もですか、実は私もなんだかそんな気がして…」

「あたしもー、なんていうか桃香様ってさー、うちらにはない力を持ってる気がするんだよねー」

 

そんな感じで共感する三人、しばらくして何故か笑いがこみ上げてきた三人は改めて共に魏と戦い共に進んで行く事を

誓い合うのだった、その後三人は出陣まで共に過ごすことを約束し部屋へと帰っていく、帰り際斗詩が

 

「あ、麗羽様、何度も言ってますけど本能さんじゃなくて北郷さんですよ」

 

と言った後麗羽の顔が見る見る真っ赤になっていくのを斗詩と猪々子は楽しげに見つめるのだった

 

 

 

-成都城の中庭-

 

そこでは馬岱こと蒲公英、魏延こと焔耶が模擬戦をしていた、結果は三本勝負で三本とも焔耶の勝利で終わる

疲れきった蒲公英はそのまま地面に倒れこみブーブーと文句をたれる、一方の焔耶はまだやれるぞという感じで余裕で剣を

振り続ける、いつもの光景、そのはずだったが

 

「ねぇ、焔耶は怖くないの?その…魏の大軍と戦うの」

 

「当たり前だ!私は桃香様の為に命を捨てる覚悟は出来ている!どんな相手だろうと「ほんとに!ほんとに怖くないの?」」

 

焔耶が言い終わる前に蒲公英が言葉を遮る、蒲公英は真剣な顔で焔耶を見つめていた、その顔には恐怖のようなものも

感じられた

 

「そういえばお前は奴らと戦った事があるんだったな」

 

「うん、魏の奴ら凄く強かった、蒲公英や翠姉さまや韓遂おじさん達が本気で戦っても勝てなかったんだよ、

しかも今度は凄い数でやってくるし、強そうな将も沢山やってくるって言うし」

 

「私達が魏の奴らに勝てる訳がないとお前はそう思うんだな」

 

焔耶の問いに蒲公英は小さく頷く、そんな蒲公英に焔耶は少し声を荒げ

 

「なら今すぐここから逃げ出せばいい!誰も咎めはせん、桃香様は戦いの前に言われただろう、戦いたくなければ

戦わなくてもいい、逃げてもいいと!戦う気がない者はいるだけ邪魔だっ!」

 

「逃げるわけないでしょ!姉さまがいるし、大切な桃香様や蜀の皆を残して蒲公英だけ逃げれる訳ないじゃん!

蒲公英だって死ぬ事は全然怖くないよ!怖いのはっ…、怖いのは大好きな人達が死んじゃう事なんだよ!」

 

そう言うとポロポロと涙を流す蒲公英、関中での戦いで蒲公英は多くの仲間を失った、その中には家族のように過ごした

者達もいたのだ、きっとその事をダブらせているのだろう、焔耶はそんな蒲公英に

 

「誰も死にはしないさ、桃香様も、翠様も蒲公英も」

 

「何でそんな事言い切れるのさ」

 

「皆強いからだ!私もお前も皆も!、誰かの為に戦い、誰かの為に生きる強さを桃香様は教えてくれたではないか!

皆で助け合い、皆で共に国を支え生きていく、それを成すまでは桃香様の為にも死ぬわけにはいかんだろう!」

 

きっぱりと言い放つ焔耶に蒲公英は少し呆然としたものの笑みがこぼれ笑ってしまう

 

「もうっ、何よそれ、訳わかんないよ、でもそうだよね、皆強いんだもんね、魏の奴らなんかに負けるわけないよね」

 

「おうともよ!まぁ蒲公英はもう少し鍛えなきゃいけないとは思うがな、今のままじゃ足手まといだぞ!」

 

その後怒った蒲公英が再び焔耶に模擬戦を挑みどうにか一本取ったりする、さすがに焔耶も疲れたのか蒲公英と共に

地面に倒れこむ、空には満天の星空、それを見つめながら蒲公英は焔耶の手を握り、そして

 

「ねぇ焔耶…、この戦いが終わったらさ、私たちもっと仲良くなろうね」

 

「そうだな」

 

二人はしばらく手をつなぎ星を見つめ続ける

 

 

中庭のそんな二人を見つめるのは黄忠こと紫苑、厳顔こと桔梗、二人は酒を飲みながら語らう

 

「焔耶ちゃんも蒲公英ちゃんも仲がいいわねぇ」

 

「そうじゃな、しかし焔耶にもようやく友人と呼べる者ができたのう、昔は喧嘩ばかりしおっていつも一人で誰とも

仲良くするような事もなかったというのにのう」

 

そうしみじみと語りながら杯の酒を飲み干す桔梗、しかしその目は優しさに満ちていた

 

「寂しいんじゃないの?娘のように可愛がってた焔耶ちゃんを蒲公英ちゃんに取られちゃったのが」

 

「馬鹿を言え!わしはお主ほど耄碌はしておら「何か言ったかしら?(ゴゴゴゴゴゴ)」」

 

と、そこまで言って桔梗は紫苑から発せられる邪悪な気を感じ取って言葉を遮る、以前賊が現れた時に紫苑に向け

”このババァ!”と言われた後にこの気を纏った紫苑がたった一人で賊をなぎ払い、その一帯を焦土にするところを

愛紗、鈴々、翠の三人がかりでようやく止める事ができたとの話を聞いていたからだ

 

「こ、こほん、まぁそれはそれとして娘といえばお主は璃々はどうするんじゃ?」

 

「あの子は大丈夫よ、孫尚香ちゃんや南蛮の皆もいるし、私がいなくなっても寂しい想いはしないわよ」

 

「親はなくとも子は育つ、か、あまり璃々を大人扱いするのもどうかと思うがな、今が一番甘えたい盛りじゃろう」

 

「あら、今日はやけに優しいわね、少し飲みすぎたんじゃない?」

 

そんな風に仲良く語り合う二人、しかし魏の話となると

 

「魏は大軍できよるの、いよいよワシも年貢の納め時かもしれんのう」

 

「あらあら、貴方とは思えない弱気ねぇ」

 

「何、ワシはお主ほど腹芸はできんのでのう、じゃがワシはもう死んでも良い年じゃが焔耶までは死なせる訳にはいかん、

何があろうと、どんな事をしてでも守ってやらねばな」

 

そう言い放つ桔梗は蒲公英と焔耶を再び見る、その眼は親が愛しい我が子を見るようにとても優しかった

 

 

 

「若い子達にはこの先の未来を進んでほしいものね、私達の分まで…」

 

 

 

 

-成都城の一室-

 

そこには蜀の頭脳とも言える孔明こと朱里と鳳統こと雛里が目をこすりながらも対魏の戦略を考え続けていた

 

「魏の動きは私たちの予想の範疇を超えてないね、朱里ちゃん」

 

「うん、でも油断はできないよ雛里ちゃん、北郷という人は私たちがどういう戦い方をするかにもう気付いてるかもしれない、

どんなに策を講じても看破してる可能性もある、私たちはそれを凌駕しなくちゃいけない、桃香様の為にも」

 

地図を見ながら必死に策を考える朱里と雛里、しばらくして少し眠たそうな雛里を見た朱里は小休止を取る事にする

 

「疲れた、雛里ちゃん?」

 

「うん、ちょっとだけ、でも大丈夫だよ、朱里ちゃんが頑張ってるんだもん、雛里もがんばるよ」

 

そう言って朱里の手を握る雛里、二人は荊州では名の知れた水境先生の下で共に学んだ学友である、天下国家について語り、

そして共に桃香の為に知を尽くそうと誓い合った仲、それは今も変わらない二人の誓い

 

「ねえ、雛里ちゃん」

 

「なに?朱里ちゃん」

 

 

 

「大好き」

 

「わたしも、朱里ちゃんの事大好きだよ」

 

そう言うと二人は微笑み、身体を寄せ合う

 

 

 

 

-成都城の城壁-

 

そこでは趙雲こと星、馬超こと翠がメンマをつまみに酒を酌み交わしていた

 

「いやまぁ、いつもの事とはいえ酒の肴がメンマだけっていうのはわびしいというか何というか」

 

「何を言うか!メンマがあれば他の肴などいらぬであろう!さらに言えばこのメンマは今までとは違う銘柄のもの!

この今までとは違う風味、食感!今までのものとは比べ物にならない所にメンマ職人の心意気というものがっ「はいはい」」

 

なんかメンマについて語り出すと一日中話し続ける星を知っている翠は慣れた様子で途中で遮る、星は不満げだったが

翠から「美味いメンマを食べずに放っといたら可哀相だろ」と言われてはメンマの為にも機嫌を直すしかなかった

 

「いよいよだな」

 

「何がだ?おお、もしかしてとうとう懐妊「ちげぇよ!」…何だ違うのか、つまらんな」

 

「私はまだそういった事はしてねーっ…ってなんでこんな話になってんだよ!私が言ってんの魏との決戦だよ!」

 

「おお、そうだったのか、それならそうと言ってくれねばわからんではないか」

 

「はぁ、もういいよ、星は余裕があるっていうかなんていうか、決戦だってぇのに全然変わらないからいいよなぁ

あたしなんか…」

 

「怖いのか?」

 

「魏は強いからな、韓遂叔父さんも、関中の名だたる将達もあいつらの前では敵じゃなかった、しかも北郷ってのは

あの呉の小覇王孫策を一騎討ちで破ったって言うじゃないか、あたしらと戦った時より強くなってるかもしれないんだぜ」

 

そう言うと翠はくいっと杯の酒を飲み干す、一方の星はそんな翠の言葉を聞きながら

 

(強くなられるとは言ったが、よもやあの孫策を破るとはな)

 

「翠よ、確かに魏は強く精強な兵も多い、だが戦いはそれで決するものではない、次の戦いは特にな」

 

「ああ、そうだな…、次の戦いは、なんとしても桃香様の夢を叶えさせてあげなきゃな」

 

そう言うと翠はぐいぐいの酒を飲む、かなり飲んでふらふらになってきた翠

 

「なぁ…、メンマって…、すっげー美味いな…、大陸一の食べ物なんじゃないか…」

 

「おお、やっとそれに気付いたか!そうよ、メンマとはまさに食の最高峰!これを越える食べ物はこの世にはない!」

 

「ほんと星ってメンマ好きだよな…、私はさ…、そんなお前と食べるメンマが、好き…なんだ…ぜ」

 

こてん、と倒れるとすーすー眠り出す翠、まるで告白のような事を唐突に言われさすがに面食らった星ではあったが

ぐっすりと眠りこける翠を見てクスクスと笑い出してしまう

 

「おーい、そんな無防備に寝てると顔に落書きするぞ~」

 

「うー、やーめーろーよー」

 

なんか寝言で抵抗する翠が可愛くてしょうがない星、そんな翠の寝顔を見ながら星は再び杯の酒を飲む

 

「確かに一人で食すメンマより、気の合う仲間と食すメンマこそがどんなメンマよりも格別やもしれぬな…」

 

吹き寄せる風を心地よく感じながら杯を進める星だった

 

 

 

 

-成都城・玉座の間-

 

「桃香お姉ちゃんお待たせなのだー」

「姉上このような時間に何の用…、って警護の者もつけず無用心ではありませんか!」

 

「あ、鈴々ちゃん愛紗ちゃん、えへへ、ごめんね、ちょっと三人だけでお話がしたかったから」

 

そう言うと桃香は玉座から立ち上がると二人の元へ歩み寄る、愛紗が桃香の眼が赤い事に気付くと

 

「北郷の事を考えておいででしたか?」

 

愛紗の問いに桃香は小さく頷く

 

「一刀さんはきっと私のやろうとしてる事を許さないだろうなって思って、あの人は優しいからきっと凄く怒ると思って、

でも私はそれをしなきゃいけない、でなきゃみんなの笑顔を守れないから」

 

「桃香様はもう少しご自分の事を考えられるべきです、いつもいつも他人の事ばかり考えて、その上敵の事まで!

いずれ考えすぎて身体を壊してしまいますぞ!」

「そ、それはダメなのだ!桃香お姉ちゃんが身体を壊したら鈴々は凄く心配しちゃうのだー!」

 

「くすくす、鈴々ちゃんに心配をかけさせちゃダメだよね、でも大丈夫だよ、私の元気の源は皆がいてくれる事だから、

皆が平和に、そして楽しく笑ってくれてたらそれだけで私は元気になれるから」

 

桃香の言葉に安堵する鈴々とやれやれと言った愛紗、ずっと歩み続けてきた三姉妹、血は繋がってはいないがその絆は

とても固い、それはある誓いによるもの、ずっと心にあって何よりも大切な誓い

 

「そ、それでね、二人を呼んだのは他でもないの、その、とーっても重要な話があって」

 

「はてさてなんでしょうか?」

「なんなのだー?」

 

問う二人に桃香は俯いて何かをずっと考えていた、しかし決意すると二人を見つめて

 

「……あ、あのね、私、二人との姉妹の誓いをなかった事に「姉上!」「桃香お姉ちゃん!」」

 

言う前に愛紗と鈴々は怒った声でその言葉を制す、一方の桃香は二人の迫力に圧倒され直立不動の状態

 

「姉上!何を言い出すかと思えばそのような事二度と言われますな!」

「そうなのだ!鈴々は愛紗も桃香お姉ちゃんも大好きなのだ!二人はずっと鈴々のお姉ちゃんでいてほしいのだ!」

 

「じゃ、じゃあ約束してくれる?私が死ぬような事になっても二人は「それは聞けませんな」愛紗ちゃ~ん!!」

 

「もしこの世に姉上がおらねば私には生きている意味がありません、どのような世になったとしても!

姉上がおらぬ世界で生きたいとは思いませぬ!」

「り、鈴々もなのだー!鈴々も桃香お姉ちゃんがいなかったら寂しくて死んでしまうのだ!愛紗がいなくなっても

同じなのだ!二人がいなくなったらもっともーーっと寂しくて耐えられないのだー!」

 

桃香が言おうとしたのは『桃園の誓い』の事、”生まれた日は違えど死ぬ時は同じ日同じ時を誓わん”

三姉妹の誰かが死んだ時、残りの二人も共に死ぬ事を誓うもの、桃香はそれが耐えられなかった

 

「愛紗ちゃん、鈴々ちゃん、私の我侭なんだよ、そんな事に大切な二人を付き合わせたくないの、だから」

 

「ならば生き続けられればよろしかろう、そうすれば我らの事を心配する必要はありますまい」

「おお、愛紗賢いのだー、桃香お姉ちゃんも生きていればいいのだー♪」

 

そう言われると何も言えなくなる桃香、そんな桃香に近づき愛紗と鈴々はそっと寄り添う

 

「姉上、我らは一心同体、生きる時も死ぬ時も同じです、誰も一人きりにはさせませんししてもいけない」

 

「そうなのだ!、三人共ずっとずーーっと一緒なのだ、これからもずっと、ずーーっと!」

 

「……うん、そうだね、うん、ずっと一緒に…愛紗ちゃんも鈴々ちゃんも私の大切な大切な妹だもんね」

 

 

 

三人は改めて互いの大切さを知る事となる

 

 

この先どんな運命が待ち受けようとも

 

 

 

彼女達が離れ離れになる事はもうないのだと

 

 

 

 

 

そして北郷一刀自らが率いる二十万の大兵力が荊州に入る

 

 

対する蜀軍も桃香自らが率いて迎撃の為の軍を発す、しかしその兵力はわずかに四万

 

 

誰の眼にも勝敗は明らかに映っていた、しかし蜀はそれでも魏との戦いを選ぶ

 

 

魏と蜀の決戦が近づく

 

 

蜀軍はある地に陣を張る、魏軍は細作の報告からその地を目指し進軍を続ける

 

 

魏蜀決戦の地

 

 

その地の名は

 

 

 

 

 

『魚腹浦』

 

 

 

 

 

 

あとがきのようなもの

 

次は涼しくなる頃…、いや、寒くなるぐらいに更新予定…

 

そういや鰻食ってないなぁ

 

 

『魚腹浦』の解説

 

●夷陵の戦いで大敗を喫した劉備は白帝城へ逃走、陸遜はこれを追うがこの地に孔明が仕掛けてあった

『石兵八陣』という罠によってこの地で迷ってしまうがある人物の導きで命からがら脱出した。

陸遜は諸葛亮の周到さに驚き、魏の侵攻の恐れもあって追撃をあきらめる、

それがこの魚腹浦であります


 
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