No.276412

真・恋姫 呉伝 -為了愛的人們-第五十一話

獅子丸さん

第五十一話。


一般とはずれた盆休みが始まりました。
短い休みのうちに何話かけるかなぁ。

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2011-08-17 14:10:20 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:12205   閲覧ユーザー数:10507

 

 

 

 

 

 

― 甘寧Side ―

 

 

 

 

 

重い。

繰り出される攻撃の一撃一撃が。

重い。

それを受け止めいなしている筈の私の体が。

 

 

「オラオラ!!お前の力はそんなものか?甘寧!!」

 

「っく!!」

 

 

この程度の輩に私が後れを取るなど・・・・・・。

このままでは何れ(いずれ)押し切られてしまう。

ここで地に膝を付くわけには・・・・・・。

地を抉る攻撃を何とか避け、体勢を立て直す。

不甲斐ない。

実に不甲斐なさ過ぎる。

何時もの私の速さはどこに行ったのだ!!

こんな奴に追いつかれるほど私は遅くはなかったはずだ!!

繰り出す攻撃は(ことごと)く防がれる。

その度に距離をとり、体勢を立て直す。

また距離をとるほんの一瞬、視界の端に写る戦場。

私の居る左翼と同様に中軍、右翼共に苦戦を強いられているのが見て取れる。

私の居る左翼はまだ良い方だろう。

右翼は(もろ)に五胡からの攻撃に晒されている筈だ。

その五胡の投石は中軍にも届いている。

 

 

「余所見をするとは余裕だな!!」

 

「っな!?」

 

 

油断した。

ほんの一瞬の隙を付かれ、敵将の攻撃を避ける事が出来なかった。

金属が軋む音が聞こえる。

 

 

「往生際の悪い!!!」

 

「くぅ!!」

 

 

私は何とか敵将の攻撃を受け止めていた。

だが、長くは持たない。

獲物の差、力の差は歴然。

この状態からでは私の速さを生かすことなど到底無理。

私はあらん限りの力で攻撃を受け止め続ける。

如何にかこの状況から脱する時間を稼ぐ為に・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― 曹操Side ―

 

 

 

 

 

「・・・・・・それで?」

 

 

幽州陥落の知らせを受け一週間が経った頃、私達が出兵の準備をしている最中に届けられた新たな報告。

 

 

「袁紹軍は既に幽州の(けい)を出立しそのまま青州を攻略・・・そして、既に冀州(きしゅう)に戻り戦力を整えているようです・・・・・・」

 

 

桂花の口から語られたそれに私は(ただ)驚いた。

余りにも早過ぎる・・・・・・。

 

 

「その情報は誰が持ってきたのかしら?」

 

「司馬懿が密かに潜り込ませていた細作から・・・・・・」

 

 

そう言った桂花はチラリと司馬懿の方に視線を送る。

 

 

「私は指示した覚えがないのだけれど?」

 

「申し訳ございません曹操様。しかし、あの袁本初の事・・・注意しておくに越した事はないと思い」

 

「まぁ、いいわ。・・・稟、風、貴方達はどう見るのかしら?」

 

 

脇に控えていた二人に問いかける。

 

 

「そうですね。袁紹殿の動きとしては(いささ)か疑問が残りますが、まず間違いなく攻めてくるかと」

 

「風も稟ちゃんと同じですね~。青州から徐州へ向かわなかったのは恐らくですが孫策さん達と領地が隣接してしまうからかと~」

 

 

なるほど・・・と口にし、思案に(ふけ)る。

確かに風の言っている事は正解かもしれない。

今現時点で雪蓮が治める『呉』と自分の領地を隣り合わせる度胸は麗羽にはないでしょうしね。

『呉』と領地を隣り合わせてしまえば恐らく雪蓮は麗羽達を容赦なく攻めて来るでしょうし・・・・・・。

でも、麗羽がその考えに至るか・・・・・・と言えば有り得ないと断言できる。

となると、麗羽の側近の二人。

これも無いわね・・・・・・。

そもそもあの二人は、幽州を攻める前に麗羽を上手く丸め込んで止めさせる側でしょうし。

そうなると第三者がいると言う事になる。

『呉』はまず有り得ない。

あの『天の御使い』がそう簡単に許す筈も無いでしょう・・・・・・。

それ以外は・・・・・・荊州の劉表、益州の劉焉、徐州の陶謙。

劉表は病に臥せっていてそんな事をする余裕はなさそうね・・・・・・。

劉焉も追い先短い老年でなんと言っても『漢』に対して絶対的な忠誠を誓っている。

怪しいのは陶謙なのだけれど・・・・・・陶謙が治める徐州は『呉』と隣接していて下手な事をすれば孫家が黙っていない・・・。

 

 

「桂花、呉は動いたのかしら?」

 

「いえ、静観の構えを見せているようです。動こうにも動けないのかもしれませんが・・・・・・」

 

「そう・・・・・・。確かに呉は動こうとしても徐州や豫州を勝手に通り抜ける訳にはいかないわね」

 

 

麗羽達が徐州に攻め込みさえすれば雪蓮も何かしら動いたのでしょうけど・・・・・・。

今のこの状況からして、次に狙ってくるのは私達で間違いないでしょうね。

これまでの報告から、袁紹軍はその州で一番力のある者が治める土地を狙っている。

そこを落とした後『力』を傘に他の領地の者達を降伏させる。

確か麗羽らしい攻め方。

だからこそ、尚更第三者の存在を疑う。

矛盾するのかもしれないけれど麗羽らしすぎるからこそおかしいのよ。

麗羽なら攻め落とした地で自分の力を、これでもか・・・と誇示する。

だけど、今回はそんな事をする暇もなく次から次に事を進めすぎている。

もしかすれば麗羽は既に冀州から私達に向けて兵を進めているかもしれないわ。

 

 

「稟、戦の準備はどうかしら?」

 

「既に終え、いつでも出陣できます」

 

「そう、では直ぐに将達を集めなさい。官渡で迎え撃ちましょう・・・あの御馬鹿さん達に思い知らせてあげるわよ」

 

「「「「御意」」」」

 

 

そう言い残し、私は部屋を後にする。

覚悟しなさい麗羽。

私のお仕置きはかなり痛いわよ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― 華佗Side ―

 

 

 

 

 

まったくもって大した男だ。

最後までやり遂げるとは思いもしなかった。

 

 

「よし、これで終わりだ北郷」

 

「え?これで終わり?」

 

「終わりだ。俺の知る限り全ての物を使った・・・まさか最後まで耐え切るとは思ってもいなかったがな」

 

「いや、え?もっとあると思うんだけど・・・・・・」

 

 

納得いかないと言う顔をして俺の顔を見る。

『天』には俺が知っている以上の数が存在するのか・・・・・・。

俺は少し複雑な気持ちになった。

 

 

「心配はいらんぞ、ご主人様。ダーリンは嘘をいっとらん・・・この大陸に存在する全てを間違いなく使っておったぞい」

 

「そうよん♪心配する事はないわ、これ以下はあっても今はこれ以上有り得ないからねん」

 

「そっか・・・・・・ありがとう華佗。無理な頼みを受けてくれて本当に感謝してるよ」

 

 

少し生気が抜けたような疲れた顔をしてた北郷が笑顔で礼を言った。

そんな顔で言われたら言いたい事もいえないじゃないか・・・・・・。

貂蝉や卑弥呼は何も聞くなと言う。

北郷も詳しくは話そうとしない。

大方の予想は付いている。

ここまでしたんだ・・・・・・きっと俺が何を言おうと止めはしないだろう。

 

 

「北郷、これだけは守ってくれ。もし、今後体調が優れないようであれば必ず俺を呼ぶんだ・・・何処に居ようが必ず駆けつける」

 

「・・・・・・わかった、約束する。本当にありがとな、華佗」

 

「礼は全てが終わってから言ってくれ。・・・何分(なにぶん)本当に役に立つのかはわからんからな」

 

「そっか。うん、そうだな・・・全部終わってからちゃんと礼をする」

 

 

その言葉に俺は笑って答える。

今の俺にはそうする事しか出きる事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― とある男Side ―

 

 

 

 

 

漢中に着いて少し経った頃、洛陽の弟からの手紙が届く。

曹操軍が袁紹軍と交戦状態に入ったらしい。

余りにも速い展開に驚く。

それ以外には近況がつづられていた。

そして、文面の最後に書かれた内容に私は目を見開いた。

 

 

「そうか・・・・・・」

 

 

私の予想より遥か先まで進んでいるという事か。

もう、私が何をしようと手が届かない所まで行ってしまった。

私は無力感に(さいな)まれる。

やはり私は唯の凡人なのだ。

何を知っていようと何をやろうと、あの男は私の予想の遥か先を一人歩んでいるのだ。

全てが後手後手に回っては、私ではどうする事もできまい。

私は筆を取り、書をしたためる。

一筆一筆、一文字一文字に私のすべての力を込めるように筆を走らせる。

恐らくはもう時間が無いだろう。

全ては、もう動き出しているのだ。

全ての文字を書き終え、最後に宛名を(したた)める。

もしかすればこの書が弟に届く事は無いかもしれない。

私は既にあの男の思惑の中に組み込まれているかもしれない。

全てはあの男の(てのひら)の上で転がされているのかもしれない。

あの男の思惑を止める事ができる人物は私が知る限りたった三人。

一人は私の主である『曹孟徳』。

二人目は名君と名高い『孫策符』。

三人目は皇帝と同じ『天』である『天の御使い』。

この事実を伝える事ができる可能性が高いのは曹孟徳だ。

他の二人は一国の『王』、そしてその家臣である『天』・・・・・・。

私個人が他国の『王』や家臣に個人的な書を(したた)めるのは裏切りや内通と取られかねない。

ここ漢中には監視の目が光っている。

皇位継承権をもつ者は必要な反面、大きな災いにも繋がる。

曹孟徳がその事を気にかけない筈も無く、それを未然に防ぐ為にも劉協様を漢中に封じたのは明白。

漢中に封じ、そして何か起これば瞬く間にその報が洛陽へと届く。

不振な動きでもしようものなら直ぐに取り押さえられる状況に置かれていると予想できた。

書には私の思いが記されている・・・これが無事に弟の手に渡るのであれば弟は気づいてくれるはず。

私は自分の不甲斐なさを嘆きつつ封をする為に蝋を垂らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― 太史慈Side ―

 

 

 

 

 

漢中を抜けたどり着いたのは()郡。

薄っすらと雲に覆われた月の淡い光に照らされた夜道に俺は一人立ち続けている。

徐々に近づいてくる足音。

閉じていた目を空け、聞こえてくる足音の方へと視線を向ける。

淡い月明かりに照らされ、その姿が徐々にハッキリしてくる。

腰まで伸びた淡い紫の長い髪。

思わず息を飲んでしまいそうになる色気を纏う身体。

だが、ぼんやりと見えるその顔には陰鬱さが漂っていた。

その人物は俺を気にかける事無く、生気の感じられない足取りで通り過ぎていく。

 

 

「・・・・・・まったく。何時までそんな顔をしているつもりだ黄漢升」

 

 

名前を呼ばれた人物はピタリとその場で足を止めた。

 

 

「・・・・・・また・・・・・・また私に貴方達の手伝いをしろと言うのですか?」

 

「・・・・・・生憎、人は足りている」

 

「・・・では、私に何の用・・・・・・が・・・・・・・」

 

 

振り返り俺と視線を合わせた黄忠の言葉が止まる。

 

 

「何だ?」

 

「どうして・・・・・・どうして貴方がここに・・・・・・」

 

「どうして?・・・お前に会いに来てやったんだ。そんな事より言う事があるだろう?」

 

「っ!?」

 

 

俺の一言に言葉を詰まらせる。

少しやり過ぎたか・・・・・・。

 

 

「すまん、悪ふざけが過ぎたな。・・・・・・その様子を見れば何を言わずともわかるつもりだ」

 

「・・・・・・なさい・・・・・・ごめんなさい」

 

 

黄忠はゴメンナサイと小さく繰り返し、そのまま地べたに座り込んでしまった。

これは確実にやりすぎたらしい・・・・・・。

 

 

「別に攻め立てに来たわけじゃない。お前に渡すものがあっただけだ・・・・・・」

 

 

俺はそう言って指を鳴らす。

直ぐに黄忠が来た道とは逆の道に停車していた馬車が動き出し俺達の真横に止まる。

黄忠を引き起こし馬車の後ろへ連れて行く。

 

 

「中を見てみろ」

 

「・・・・・・」

 

 

涙に塗れた顔をそのままに、黄忠は言われるまま馬車の荷台を覗く。

 

 

「っ!?」

 

「ばれたくないのなら大声を出すな。・・・・・・直ぐに必要な物をかき集めてその馬車に乗せてここから去れ」

 

「・・・・・・ですけど」

 

 

涙をぼろぼろと零しながら黄忠は言葉を続けようとする。

 

 

「厳顔か?」

 

 

俺がその名を口にすると黄忠は小さく頷く。

まったく・・・・・・手の込んだ事をしてくれた。

まぁ、実の所そちらも抜かりは無いのだが・・・。

 

 

「既に手は打ってある。心配なのはわかるがお前には守るべき者がいるだろう?」

 

「・・・・・・」

 

「詳しい話はその男に聞け。・・・・・・そう言うわけだ、後は頼んだぞ影」

 

「御意」

 

 

影は振り返る事無くそう応える。

視線を黄忠に戻す。

黄忠は涙に塗れた瞳でじっと俺の事を見ていた。

 

 

「貴方は・・・貴方はどうして・・・・・・」

 

「さぁな。『天の御使い』が考えた事を俺が実行している・・・・・・それだけだ」

 

「・・・・・・是非、お礼を」

 

「死んだ人間にどうやって礼をするつもりだ?」

 

「っ・・・」

 

 

黄忠は視線を下げ唇を噛んでいた。

さて、そろそろか・・・・・・。

 

 

「では、俺は行くとする。やる事が多いのでな・・・・・・」

 

「・・・・・・あ」

 

 

俺はその場を後にする。

黄忠が何か言いたそうだったがあえて無視した。

さてと、次は成都か・・・・・・。

面倒な事になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― 凌統Side ―

 

 

 

 

 

あらかじめ調べておいた道を抜け南中との境に立つ小屋に到着した。

 

 

「俺はここまでだ。後はそこの小屋にいる人間に聞け」

 

「ありがとうございます」

 

「礼なら一刀様に言うんだな。・・・・・・『天』に向かってでも言えばそのうち届くだろうよ」

 

「そう・・・・・・ですか」

 

 

女は、雲が晴れた天を見つめながらそう呟いた。

 

 

「さっさと行け。日が昇れば動きづらくなる・・・・・・」

 

「・・・・・・はい」

 

 

そう言って女はかき集めてきた幾許(いくばく)かの荷物と小さな子供を優しく抱きかかえ馬車を降りた。

 

 

「そう言えば・・・・・・あの方は」

 

「太史慈殿か?・・・・・・今頃は何処かの宿でお休み中だろうな」

 

「そうですか。では、伝えて下さい・・・・・・ありがとうございました・・・次に会う事があれば必ずお礼を・・・と」

 

「それは一刀様に言えと・・・「今の言葉はあの方にです」・・・・・・わかった」

 

 

そう言って女は小屋へ向かって歩いていった。

まったく女って奴はなんでこんなにも強情なんだ?

気持ちはわからなくも無いが・・・いらないと言われたのに。

・・・まぁ、仕方ない・・・・・・か。

さて、そんな事よりも俺も戻るとするか。

次の仕事は・・・・・・。

少々骨が折れそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがきっぽいもの

 

 

おかしいな 計算すると 破綻する 獅子丸です。

 

あのですね・・・・・・。

未来と現代と分けて書いていますよね?

それが一つの時間軸で繋がる予定だったんです。

ですが、このまま行けばどちらかが話数的にオーバーしてしまう可能性が(ぁ

このままでは流れが破綻してしまうかもしれないので誰かの話を端折る可能性が高いです(ぇ

 

ってな訳で時間軸。

 

未来→現代→現代→現代→未来→未来

 

となっています。

 

ってな訳で未来はすっ飛ばし。

最初は曹操さん。

 

展開早!!

まぁ・・・・・・いいよね?

『からけ』の人の手際の良さに何かを疑う曹操さんの話。

幼馴染なら疑ってもおかしくない程の手際のよさなんでしょうね。

『からけ』の人は考えもしないでしょうけど、そこはやっぱり曹操さんですから。

そんな事よりも、注目すべきはお仕置き方法(違

まぁ、そんなお話ですw

 

 

お次は華佗さん。

 

 

なにやら終わったらしいです。

生気が抜けたような顔・・・・・・。

いったい一刀とナニをしたんだ?華佗さん・・・・・・。

そんなお話です(ぇ

 

 

んで、とある男さん。

 

 

ん~・・・・・・。

なんだろう?

何が起こっているんだろう?

何を書いたのか気になる・・・・・・。

手紙は届くのか?

それとも届かないのか?

なんか色々とめんどくさい位置にいる人ですね・・・・・・。

そんなお話。

 

 

さてと、なんだか未来もめんどくさい事になっていそうです。

何がどうしてこうなったのか・・・・・・。

読みながら予想していただければ嬉しい限りです。

では、今回はこの辺で。

 

 

次回も

 

 

生温い目でお読みいただければ幸いです。

 

 

 

 

 


 
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