No.273111

異聞~真・恋姫†無双:二十

ですてにさん

前回のあらすじ:一刀の為に全てを投げ打った女性と、今から投げ打つ女性の会話を、お猫様好きの彼女が見ていた。

人物名鑑:http://www.tinami.com/view/260237

これぐらいだったらセーフ?アウト?

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2011-08-14 15:37:24 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:11232   閲覧ユーザー数:7777

「さてと、今は私達の代表も休んでいることだし、穏やかな話し合いと行きたいわね」

 

「そ、そうして頂けるとありがたいです…。あぁ、お猫様が私の膝の上で寝てくれているなんて…」

 

私が『陽』を構えるまでもなく、愛紗は偃月刀をすぐにでも振るえる位置に置きながら、幸せそうに子猫を愛で続けている。

後ろ手に縛られている周泰の膝の上では、眠りに入った子猫が一匹。彼女も顔が緩みっぱなしだ。

 

優秀な間諜なのかもしれないけど、ここまで猫に弱いとは。これはこれで面白いわね。

 

「ふふ、私もそこまで知るわけではないですが、彼女は可愛がりが行き過ぎて、懐かれないことが多いようですね。

その分、余計に猫に傾倒してしまうようで」

 

と、適切な愛で方をしながらの愛紗の弁。なるほど、好き過ぎてなんとやらということか、可愛いじゃない。

 

「うぅ、なんかお見通しなのです…」

 

「顔を見ればわかりますよー」

 

「そ、そうなのですか…!? 優れた洞察力をお持ちなのです…」

 

「はいー」

 

思いっきり嘘八百の風の言葉に、感心しきりの周泰。まさか、元々自分の存在を知っている、とは考えもしないでしょうし。

風は一刀や私から、彼女の能力を聞いていただけだ。まぁ、考えを表情に一切出さない辺りが、交渉事を得意とする彼女らしい。

 

「あなたが、孫呉の将、周泰さんということも~、風にはお見通しなのですよ~」

 

「はぅわ! すっ、すごいのですっ」

 

「なので、どこから聞いていたのか、素直に洗いざらい吐いちゃって下さい。でないと、猫さんの温もりは没収です」

 

「そっ、それだけは…っ!」

 

ものすごい涙目ね。瞳が本当にうるうるして、形が変わったように見えるのは気のせいかしら。

楽しみながらも、やることはきちんとするようだし、ここは風に任せましょう。

 

 

「なるほど、この邑にたどりついてからの桃香たちとのやり取りは、ほぼ見ているのね」

 

「私には難しい話が多すぎました。

ですから、見たありのままを、雪蓮さまと冥琳さ…あ、ええと、孫伯符さまと周公謹さまに報告してます」

 

周泰は桃香たちとの戦いの辺りなら、一部始終を見ていたとのことだった。

予想の通り、あの奔放な呉王さまと大都督はこの村まで来ているらしい。

・・・例の勘が働いて、こんな冀州まで北上してきたのでしょうね。

 

「その、北郷さま、ですか? 妖術使いの方までも味方にし、自らも優れた武をお持ちで、

王たる気迫も持つ在野の方…それでいて、底抜けの優しさを持つ、本当に大きな方だと思います。

だから、孫呉の味方になって下されば、独立どころか天下にすら手が届くと思えますし、

万が一、敵に回れば、これほどの脅威はないと思えます。付き従う方々も、一騎当千や鬼謀の持ち主ばかりに見えますし…」

 

「規格外、よね。一刀は」

 

うん、彼はいろんな意味でこの大陸の尺度では測れない。

王様だろうが、どんな猛将だろうが、一人の女の子としか見なくて、かつ、情を交わした女性を守る為なら、

どんな無茶すらやってのける。自分の命やら、たやすくかけてしまう、本当にある種の螺子が飛んでいる男なのだ。

 

「あ、その規格外の男は、貴女たち孫呉の陣営とも友誼を結びたいと思っているから、当面は敵になることはないわよ」

 

あくまで当面は。一刀が望む全ての者を救う為に、一時的に敵対することぐらいはやってのけるでしょうし。

とことん甘いが故に、取れる手段は何でも取る。

一見、矛盾しているけど、そんな相反した考えさえ飲み込んでいける、そんな柔軟な思考は一刀の武器の一つだ。

 

「そこで、一刀の意識が回復次第、そちらの主人との会合を持ちたい」

 

「・・・蘭樹どの、どうやらその手間は省けたようですよ?」

 

愛紗の言葉と共に向けられた視線の方向─部屋の入口を見る。

そこには、頬が真っ赤に染まり、肩を組み合い上機嫌な呉王と星の姿があった。

その横には、申し訳無さそうに礼をする周瑜の姿。

 

「なんというか、相変わらず苦労してるのねぇ・・・」

 

 

「そんなわけで酒家で意気投合したってわけ~! ね~、星!」

 

「メンマの良さが判る者に悪い者はおりませんからな! さぁ、まだまだ呑みましょうぞ、雪蓮どの!」

 

そう言いながら、さらに杯を傾ける酒乱二人組を目の前に、私と周瑜は揃ってため息をつく。

もちろん、一刀の休む部屋からは強制移動させた。一刀の傍には愛紗についてもらっている。

 

「ほんとうに色々と申し訳ない・・・」

 

「別にいいわよ、こちらの星もなんというか、十分に問題児だし。でも、いいの?

あっさり真名をやり取りしているようだけど」

 

「全て筒抜けなのだろう? なら、いいさ。それに私としては、こうして話す場を持ってもらえただけ、ありがたい」

 

「こっちにも利点があるから、それはお互い様。詳細は貴女と話した方が良さそうだしね」

 

酒飲みは放っておこうと暗に含め、苦笑交じりに周瑜は頷く。

 

「さて、桃香も揃ったことだし、本題に入ってしまいましょう。今日は色々あり過ぎて、早めに休みたいから、そのつもりで。

諸葛亮や雛里なんて、船を漕ぎかけているしね、ふふ」

 

「・・・! は、はわわ、こ、子供扱いしないで下さい!」

 

「・・・あわ・・・これが魔法の杖ですか・・・ぁ。ご主人様・・・」

 

「あやや、雛里ちゃんは既に夢の中のようですよー。これでは風が寝れないではありませんか~」

 

「・・・私としては、そちらが良ければ明日でも構わないが?」

 

「そちらの時があまり無いと思ったのだけど、大丈夫なの?」

 

「一応、出てくる時に、北の珍しい蜂蜜を手に入れるという名目で来ている。一日ぐらい、どうということはない」

 

なるほど、袁術ならそれで納得もするか。私たちの交易品の買出しの際に、一緒に手に入れてしまった方が良さそうね。

 

「では、自己紹介だけにとどめますか。桃香、悪いけど、明日改めて時間を取ってくれる?」

 

「は~い、わかりましたよ~。あ、えっと、私は姓を劉、名を備、字は玄徳です。宜しくお願いします♪」

 

「私は、姓を周、名を瑜、字を公謹という。早速、迷惑をかけているが、どうかご容赦願いたい。

あちらで機嫌良く杯を空けているのが、孫家の長、孫伯符だ」

 

「次は私かしらね。姓を安、名を蘭樹。字は無し」

 

こうして、星と雪蓮、姿を消している管理者たち以外は、お互いの自己紹介を交わし、

私たちは激動の一日をやっと終えることになったのだった。

 

 

馴染んだ彼の匂いを感じながら、閉じた瞼の上から日の光を受けて、ゆっくりと目を覚ます。

 

・・・今日もしっかり熟睡できたようだ。

彼の傍で腕に絡みつくように眠る癖がついてから、朝というものをいつも清清しく感じる。

大好きな匂いをいっぱいに吸い込んで、昨日の疲れから未だ眠ったままの彼の頬にそっと口付ける。

 

たったそれだけで満たされていく自分の心と身体を、我ながら現金なものだと思いながら、ゆっくりと身を起こす。

彼の体の反対側では、愛紗が浅い眠りにいるのか、幸せそうな寝顔のまま、わずがに身動ろいていた。

 

「あぁ、私、こんな顔をして寝てるのね、おそらく。なんか恥ずかしいけれど、幸せってこういうことなんだわ」

 

ちなみに・・・。

愛紗にはまだ告げていないのだが、記憶が戻ってからの一刀は色んな分野で、能力が数倍増しとなった。

記憶を取り戻すと同時に、忘れていた経験値が一気に加わったようなもので。

それは、夜の営みにおいても当然例外ではない。

端的に言うと、毎晩失神に追い込まれるほど、私は気をやってしまうほどで・・・。

 

一途に思ってもらえるのは本当に幸せなのだけど、

時に彼を満足させきれないままに私の意識が途切れることも度々出てきていた為、

正直、愛紗の存在がきっかけになるのは悪くないと考えていたりする。

 

毎晩、私自身が完全に満たされてなお、今の一刀には、ありあまる余力があるのだ。

愛紗には悪いが、毎晩同衾してもらうのは、私の中で決定事項だったりする。

 

「・・・愛紗、これから本当に大変よ。絶対に離れられなくなるんだから。心だけじゃなく、身体まで絡め取られて」

 

意識は無くとも、彼の息子は今日も自分の存在をしっかり主張していた。

 

「本当に元気ね。あなたは・・・」

 

呆れ口調に言いながら、私は愛しい彼の分身をそっと撫で、『いつものように』手のひらと唇で包み込んでいく。

いずれ吐き出される、彼の生命力の強さの象徴を、嚥下するのに慣れ、幸せにすら感じるようになったのは何時だったか。

今の私はかつての覇王から見れば、一人の慾に塗れた卑しい女にしか見えないだろう。

 

ただ、覇王は知るわけも無い。本当に心も身体も満たされる日々って、この上ない極上なのよ。

他の生き方なんか、これっぽっちも浮かばない。そんな自分に、私は大変満足しているのだから。

 

「んっ・・・愛紗が起きたら、びっくりするでしょうけど、異常な日常にも慣れてもらうとしましょうか。

本当に底なしになってしまった『ご主人様』を知ってもらわないとね」

 

焦りと羞恥と色んなものが混じった感情を見せるだろう、愛紗の表情や振る舞いを想像しながら、

一刀の分身への熱心な奉仕を続けるのだった・・・。


 
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