No.271252

真・恋姫†夢想 魏√ 桂花EDアフター その六

狭乃 狼さん

桂花アフター、その続き。

今回は一刀と桂花の、現代での初デートの様子をお送りします。

今回の作品について、私作者から言えるのは一言だけです。

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2011-08-12 19:16:20 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:16639   閲覧ユーザー数:12952

 この世界に来てから、初めての一刀とのデートの日の事は、今でも鮮明に覚えている。……以前居たあの世界では、彼と二人っきりで出かけて遊ぶなんてこと、私には絶対にありえないことだと、そう信じて疑っていなかった。

 

 「~♪~♪~♪」

 

 そう。こんな風に鼻歌交じりで、前日の夜からしっかりと準備して、その日の夜も次の日が楽しみで全然眠れず、起きたら起きたで、目一杯力を入れておめかしする。……な~んてことは絶対にありえなかった。……徹夜しての落とし穴作りなら、何度かしたことはあったけどね。

 

 「桂花~?もう準備できた~?……その調子だと昼になっちゃうぞ~?」

 「あ、ご、ごめんなさい!もう出来たから今いく!」

 

 ……支度に手間どってでえとをフイにしたんじゃあ、それこそ本末転倒という奴だもんね。いけないいけない、浮かれるのもほどほどにしておかないと。

 

 そうして、今の季節にふさわしい、半そでのふりふりとした可愛い服と、青色のぷりーつすかーとっていうのを胡蝶さんから借り、同じく胡蝶さんから借りた小物入れの鞄…はんどばっぐ…だったかな?それを肩からかけて、玄関で待っている一刀の下へと駆け寄る私。

 

 「お待たせ!さ、早く行きましょ!」

 

 満面の笑顔でそう言いつつ、彼の腕に思いっきりしがみつく。でえとか~。うふ、うふふ、うふふふふふ。何処連れてって貰えるのかな~?……今日は良い一日になりそ♪

 

 「……」

 「……な、何?……ど、どこか変…だった?」

 「いや。桂花って……こんなキャラだったかな~と。……こっち来てからさ、随分その、つまり…可愛らしくなったな~と」

 「そ、そう///……ん?でもちょっと待って。それって、要するに、向こうにいたときの私は可愛くなかったって、そういいたい訳?」

 「(ぶんぶんぶん!)違う違う!向こうにいたときももちろん可愛かったってば!そうじゃなくて、こっちの世界に来てからの桂花って、だからその~……あ!やべ!もう映画の時間が始まる!よし!さっさと行こう!うん!」

 

 だだだーっと。思いっきり何かをごまかすように、一人駆け足になる一刀。

 

 「あ、こらー!ちょっと待ちなさいってばー!!ちゃんと最後まで話を続けなさいよー!!」

 

 そんな彼を慌てて追いかける私。……まあ、ね?彼の言いたい事は何となく分かってはいるわよ?だって、向こうにいたときの私は、さっきみたいに自分から彼にしがみつくなんてことはおろか、それこそ毎日殺すだの死ねだの言っていた訳だから、今の私の態度に違和感を持つのは分かってる。

 

 (……でもこれが、今の荀文若…いや、若文桂花である私の、北郷一刀に対する想いの表れ。素直な心の表現方法。一人の恋する少女として、彼にうんと甘えると決めたこの私の……ね?だから)

 

 「うりゃっ!」

 「うおっと!?」

 

 がしっ、と。“わざと”ゆっくり走り、そして適当な距離の開いたところで立ち止まっていた彼の背に、飛びつくようにして抱きつく。

 

 「ふふー。つーかまーえた♪さ、さっきの続きを、きりきり話してもらいましょうか?……えいがかんまでこのままの状態でね?」

 「……マジですか?」

 「おおまじ♪」

 

 仕方ないなと言いつつ、笑顔のまま歩き出す彼。そんな彼に背後から抱きついたまま、同じく歩き出す私。……もちろん、ほんとにこのままだとさすがに恥ずかしいから、途中で背中から離れはしたけどね。

 

 

 

 「……大きいわねえ~。ねえ一刀?えいがってのは、要するに部屋にあるてれびの、もっと大きいもの……なのよね?」

 「まあ、ありていに言えばな。けど、その分迫力は全然違うぞ?」

 

 お屋敷のある所から、電車に揺られる事三十分。一番近い繁華街までやって来た私達は、到着した駅のすぐ近くにある映画館って所の前に立っていた。……周りの喧騒が凄い。ちょっと辺りを見回しただけでも、人、人、人、の黒だかり。大きな通りにはそれこそ途切れる事無く、四方八方に車が行きかっている。夏の日差しがさんさんと照りつけ、私のむき出しになった肌を焼く。……う~、暑い……日本の夏って、どうしてこんなに暑いんだろう……早く涼みたいです……。

  

 「……まあ、とりあえず、暑いし中入るか。……桂花の服がその……汗で少し透けてて、目のやり場に困るし」

 「……え///もう!何処見てるのよ、いやらしいわね!」

 「あ。前の桂花が出た」

 「……///」

 

 はい。ちょっと感情高ぶると、すぐに昔の口調が出てしまうんです。……多分、その頻度は恥ずかしさに比例するんだと思います。

 

 ま、まあそれはともかく、いい加減暑さで溶けそうになっていたのは一刀も同様だったらしく、二人揃って早速中に入りました。

 

 「……あ~、天国……」

 「同感……と、そう思ったらトイレ行きたくなってきた。ごめん、桂花。ここでちょっと待ってて」

 「あ、うん」

 

 と、一刀が一人厠…おトイレに走っていって、ほんのちょっと入り口のところに一人ぽつんと突っ立って居た、その時。

 

 「おろ?ねえちゃん一人か?なあなあ、わいと一緒に映画見いへんか?」

 

 そんな私に声をかけてきた、一人の男性が居たわけで。……まあ、この時点で?誰なのかの見当は、皆さんついてると思いますが。

 

 「……あによ、あんた。あたしになんか用?」

 

 ……男がだいっ嫌いなのは、基本、前と一緒なわたし。ぎぬろ、と。向こうに居た頃、誰かさんに対して散々向けていた“その”視線を、ソイツに向かって思い切り冷たく低い声とともに浴びせた。

 

 「う゛。そ、そんないきなり、汚物を見るような目を向けんでもええやんか~。わいはただ、映画館なんかで一人寂しく立ってる子がおるから、ち~っと声かけただけやのに」

 「……それはどうも。だったら御心配無用。連れならちゃ~んと居ますから。じゃ、そういうことで」

 

 ふい、と。ソイツから思いっきり視線を外し、一刀が走っていった方を見やる。ったく、何処の世界でも男っていったらこんなのばっかり。はあ、一刀、早く戻ってこないかな?……なんて風に、一人思考をめぐらせていたら、再び背後から、ソイツの声が聞こえてきたわけで。

 

 「ふ~ん。一人やないんか~。なあなあ、その連れの人ってやっぱ女の子だったりとか?せやったらやっぱ、わいもご一緒させてえな。なんやったら、この後おいしいご飯でも」

 「……うるさいわねえ。とっととどっか消えてくれない?はっきり言って目障りなんだけど。あ、後声も耳障りね。だからもう口も開かず私の傍から消えてちょうだい。それから一応言っておくけど、私の連れは男だから。じゃ、そういう事でもう二度と会うこともないでしょうから、はい、しっしっ」

 

 ひらひら、と後ろは一切振り向かず、手だけでソイツを追い払う。……ふつう、こういう態度に出られた男が出る行動ってのは、すごすごと引き下がるか、逆に頭に血を上らせて掴みかかってくるかのどちらかなんだけど。後者についての心配は、これだけの人ごみの中なんだからまずその心配はしていなかったので、てっきり前者の行動を取る……と思っていたんだけど。

 

 

 

 「ううん、そんな冷たい態度で、しかもわいを犬みたいに……そんなことされたらわいは、わいは……!」

 「?……な、なに?」 

 「……ほれてまうやろおおおおおっ!!」

 「ひっ?!」

 「……お前はいっぺん死んどけえええええっっっ!!」

 「ま、幻の左ストレートぉっ!?」

 

 どがあっ!!

 

 ごろんごろん、ぼてっ。と、そんな感じの効果音でも出していそうな感じで、ソイツは不意に現れた彼の一発をまともに食らって、その場にひっくり返りました。

 

 「か、一刀?」

 「……ったく。どこから湧いて出たんだ、こいつは?……桂花、何もされていないか?」

 「あ、うん。わたしはなにも」

 「あだだだだ……いきなりなにすんねん!顔面に左ストレートはごっつすぎるやろ!?……って、あれ、かずぴー?」

 「映画館の中でなんて、ナンパなんかしてんじゃないっての。……お前アホだろ?及川」

 

 真っ赤になった鼻を押さえつつ、自分に一撃を放った彼に抗議をし、でもってそれが一刀だった事に気づいて呆気に取られる、一刀に及川と呼ばれたその男。……知り合い、なのかな?

 

 「ううん。かずぴーのいけず~。別にわいがどこでナンパしようが勝手やん。……にしても、なんや、その子の連れってかずぴーやったんか?」

 「……ね、一刀。ソイツ……知り合い?」

 「全然」

 「んなバッサリ否定せんでもええやんか~。親友に向かってそれはないやろ~」

 「お前と親友になった覚えは無い」

 「がーん。……かずぴーってば、ひどいわあ~……」

 

 ……うん。どうやら知り合いではあるみたいだ。……仲がいいのか悪いのかは、正直よくわかんないけど。

 

 「で?この娘だれ?……まさか、かずぴーの彼女…なんてこと」

 「……そだよ」

 「……///」

 

 彼女、だって。それってつまり、私が一刀の恋人だって、そう言ったってわけ……よね?……嬉し///と、私が一刀の台詞で顔を赤らめた時、及川っていうらしいソイツは、私とは顔を真逆の色にして、こんな風に、

 

 「うそやあああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 

 ……大絶叫しました。

 

 「……どういう意味の絶叫だ?それは」

 「だってだって、かずぴーわいと誓ったやんか!大人の階段昇るんは一緒にソーp」

 「右フック」

 「ほべらばっ!?」

 

 あ。また転がってった。でもって止まった所で、のの字書きながらいじけてる。

 

 「かずぴーのあほ~。うらぎりもの~。……明日学校でみんなに言いふらしちゃる……」

 「……どうするの、あれ?」

 「ほっときゃいいよ。さ、もう映画も始まるから、早いとこチケット買わないとな」

 「……そうね」

 

 さよなら、及…なんとか。あんたの死は無駄にしないから、草葉の陰で一人寂しくしててね。

  

 

 

 で。映画も無事に見終わって、私達は昼食をとることになったんだけど、いつかの買い物の時みたいに、またはんばーがーが食べられるのかな?なんて思っていたんだけど、一刀が今回選んだのは、看板が橙色をした吉…なんとかっていう、ぎゅうどんって物を食べるところでした。

 

 「……ね、これって、何のお肉?」

 「牛だけど?……あれ?向こうでは牛肉って食べた事無いんだっけ?」

 「……うん。豚は食用であったけど、牛は食べた事ない……かも」

 

 【作者注:原作で牛肉食べていたかどうか、作者の記憶が曖昧につき、その点、スルーしてくださいw】

 

 結論だけいうと、はっきり言ってとっても美味しかったです。で、あとで一刀から聞いたんだけど、例のはんばーがーってのも、実はパンの間に挟まっていたのが、牛のお肉だったそうです。……調理方法が違うだけで、こうも味が変わるのね。料理ってほんと、奥が深いわね~。

 

 昼食後はそのまま街を散策しての、一刀いわく、うぃんどうしょっぴんぐ……ようするに、何も買わずに店の中だけを覗いて回る、っていうのをする予定だったらしいんだけど、ちょっとした誤算が生じたらしい。つまり、

 

 「……暑い」

 「……わよね」

 

 ただいまの気温、三十七度。……止まっているだけでも汗が出るその暑さに、私も彼もたまらなくなってしまったわけです。

 

 「……この暑さじゃ、ちょっと外を歩き続けるのはきつい…な。あ、そだ」

 「……な~に~?」

 「ゲーセンいこう」

 「……どこでもいい~。早く涼みた~い~……とけちゃう~……」

 

 というわけで。半分溶けかかってる私を連れて一刀が向かった先は、とあるビルの地下。……うん、とっても涼しいです。くーらーもがんがんに効いているので、一気に汗も引いたんだけど。ただその代り。

 

 「……ここ、うるさい」

 「まあ、気持ちは分かるけどな。ま、要は慣れだよ、慣れ。ほら、どうせだから遊んでこう?」

 「う、うん」

 

 げーせんっていう、その場所の騒音に紛れながらも、私は初めて経験する、様々な遊戯機…げえむ、だっけ?それを一刀に教わりながらいくつかやってみました。

 

 まずは、目の前の画面に出てくる矢印どおり、足で同じ印を踏んで、そのたいみんぐの良さとかを競う奴。一刀はD○Rって言ってたかな?……結果?……すこあっていうのなら、一番下になってましたけど?ってこらそこ笑わない!しょうがないでしょ、始めてやったんだから!

 

 次にやったのは、画面の中の車を、はんどるっていうのを動かして操り、順番を競う奴。……げえむの名前は見てないので、そこは分かりません。

 

 「え?え?なに?み、みんな反対に走っていくんだけど?!」

 「いや、あの。それ桂花が逆に走ってるんですけど」

 

 ……ごおるどころか、時間切れで終了……こんなんで、そのうち車の免許なんて取れる……のかな?もちろん、実際の運転とは違うんだろうけど。

 

 ちなみに、この日始めてやった中で、一番私がはまったのは、透明な箱の中に入っている人形を、くれーんっていうので掴む奴だった。……胡蝶さんに貰ったお小遣い、それでほとんど使っちゃった。てへ♪なお、それでも自力で取れたのは、たった一個だけという結果でした……え?取ったのはどんな人形かって?

 

 ……なんとなく。ほんと~に、なんとなくよ?……ちょっとだけ、一刀に似ている…かな?うん///

 

 

 

 ……楽しい時間はあっという間に過ぎるもの。

 

 「……もうこんな時間、か。そろそろ帰らないとまずいか、な?」

 「……そうね。名残惜しいけど、またこうして遊びに来ることは、これからいつでも出来る……わよね?」

 「当たり前だろ?……俺はもう、こうしていつでも、桂花の傍にいるんだから」

 「……うん///」

 

 時刻はすでに、夕方の五時。……ほんとはもうちょっと、一刀と遊んでいたいけど、今日出来なかったことはまた、次のでえとの時にすれば良い。

 

 そう。

 

 たとえ今日という日が終わっても、明日もまた、私は一刀の傍に居続けられる。明後日も。明々後日も。そのまた次の日も。

 

 来年も、再来年も、その次の年も、二人で一緒に、年をとっていけるのだから。

 

 日がどんどん傾いていき、やがて朱色に染まっていくその過程を、電車の窓から彼と一緒に、そして彼のその手を握り締めたまま、だんだんと夕日色に染まって行く、その流れる景色を見つめつづける。

 

 「……なあ、桂花」

 「……なに?」

 「……今夜の飯、おれ、カレーが良いな」

 「……いいけど。何でまた急に?」

 「……この景色見てたらそう思った」

 「あのね……」

 「だってしょうがないだろ?そう見えたんだからさ」

 「はいはい。ったくもう。いい雰囲気台無しじゃない」 

 「……ごめん」

 

 ぽりぽり恥ずかしそうに頭をかく一刀に、ちょっとだけむくれた顔を向ける私。けど、そんなやり取りもまた、彼とともにあるがゆえに出来ること。とりあえず、今夜のご飯は一刀の言うとおり、かれーにしておこう。……まあ、かく言うわたしも、彼とおんなじ事を思っていたのは、ここだけの秘密だけどね。

 

 

 

 そして。

 

 翌日から再び、彼と私は日常の生活へと戻っていく。彼は学校に通い、来年の受験に向けての猛勉強をし、私は私で水花さんと風花さんにメイドの指導を受けつつ仕事をこなし、同時に大学検定、そして、その後の受検のために日々猛勉強を重ねる。

 

 そんな、せわしくも穏やかで、幸せな日々は瞬く間に過ぎ去っていき、ついに、私が大学検定の試験へと望むその日がやって来た。まずはこれに受からなければ、その先の本番―大学受験を受けることすら出来ないから。……合否の確立は家庭教師の先生いわく、五十%ぐらいだろうとのことだった。……この世界の文字すら書けなかったこの私が、わずか三ヶ月でそれだけの可能性を得られたことだけでも、十分驚嘆と賞賛に値すると、先生はそうおっしゃってくれた。 

 

 でも、私にとっては、検定試験はまだ通過点でしかないのだ。

 

 その先の、一刀が受けるのと同じ大学に、一緒に合格することが、今の私が一番望むことなのだから。

 

 夜、寝る間もいちゃいちゃも惜しんでの、一刀と二人での補習も、それこそ毎日がんばった。だから後は、先生や一刀が張ってくれたヤマが、どれほど当たるかに期待し、私はそこに全力を注ぎ込むだけ。

 

 さあて!気合入れて行くわよ桂花!……ここで決めなきゃ女がすたる!な~んてね♪

 

 

 ~続く~


 
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