No.230795

Neo名探偵レナレナ 事件ファイル1 雛見沢連続殺人事件解編

書いた本人がすっかり存在を忘れていた名探偵レナレナ解編。
あまりにも易しい推理でしたので全員正解でしょう。
まあ、解けてなかった人は全裸待機ということで。もう、してますか? 失礼しました。


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2011-07-25 12:27:34 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:3127   閲覧ユーザー数:2883

Neo名探偵レナレナ 事件ファイル1 雛見沢連続殺人事件解編

 

 

 名探偵である私、レナレナの元に事件が舞い込んできた。

 発端は右代宮秀吉が何者かにより全裸を撮影されているという盗撮事件。

 しかし、事件はそれだけに留まらなかった。

 2人の尊い人命が失われ、更に4人のどうでも良い者の命が失われた。

 そして背後には更に巨大な陰謀が蠢いている。

 

 盗撮犯人は誰なのか?

 山田さんのおばあさんと鈴木さんのおじいさんを殺害した犯人は誰なのか?

 犯人の1人と思われる魅音は一体どこにいるのか?

 事件の裏に蠢く巨大な陰謀とは一体何なのか?

 黒幕は一体誰なのか? 何が目的なのか?

 

 いまだ事件は多くの謎を抱えていた。

 

 

 

「せめて魅ぃちゃんがこの場にいてくれれば、事件の全体図の一端は明るみに出るのに!」

 名探偵といえども、証拠を積み重ねていかなければ事件を解決することはできない。

 だが事件の真相を知っていそうな人物が次々と死亡、失踪している状況ではそれもままならない。

 

『あのぉ、被害者である秀吉さんに詳しいお話を聞けば犯人がわかるのでは?』

『しっ。男の盗撮なんて気にするような事件でもないし、レナの好きにさせれば良いんだよ』

 

 こんな超重大事件を迷宮入りさせるなんて絶対にできない。

 人類の明日の為にも絶対に解き明かさなくてはならない。

 だから今は何としてでも魅音を捕まえなければならなかった。

「……お姉を逃がしてしまったのは私の責任です。だから私が責任を持ってこの場に連れて来ますっ!」

「詩ぃちゃん?」

 詩音は俯いたまま走り出してしまった。

 さすがはレナレナ探偵事務所の副所長。責任感が強い。

 だけど魅音の逃げ足の速さは天下一。

 果たして詩音は(・3・)をここまで連れて来られるだろうか?

 祈りにも似た感情で詩音の帰りを待つ。

 そして、3分の時が経ち、ソレはやって来た。

 

(・ε・)「ぶっひゃぁあああああああぁっ! この世で最も美しく頭も良くて気立ても良い、悟史のお嫁さんに超ピッタリな偉大な詩音様に追われてるよぉ~」

 

 制服を真っ赤に染め上げたポニーテールの少女が私たちに向かって駆けて来た。

 魅音は私たちの前まで来ると足を止めた。

(・ε・)「ぶっひゃぁあああああああぁっ! 神にも等しい詩音さまの愉快な仲間たちだぁ」

 魅音は私たちを見て驚いた。

「あれ? 魅ぃちゃん? 何かさっきと少しだけ雰囲気が違うような?」

 さっきまで会っていた魅音は空気が読めていなかった。

 でも、今会っている魅音は空気が読めてないフリをしているようにも見える。

(・ε・)「おばさんのどこがおかしいって言うのさっ! おばさんはおばさんだよ!」

「ごめん。勘違いだった。レナレナは魅ぃちゃんを信じる」

 ひぐらしで最も大切なのは信じること。

 人を想う心がなければ事件は解決できない。

「それで魅ぃちゃん。正直に言って欲しいのだけど、秀吉さんを盗撮していたのは魅ぃちゃんなの?」

 “信”の瞳で魅音を見る。

(・ε・)「おばさんが盗撮事件の犯人だってことは、雛見沢が世界に誇る超探偵詩音様に既に見抜かれてしまっているのさ。ぶっひゃっひゃっひゃ」

「やっぱり……魅ぃちゃんが犯人だったんだね」

 詩音の推理の通りだった。

「だけど、何で魅ぃちゃんは盗撮なんてしたの? あんな醜い中年オヤジを!」

(・ε・)「フッ。動機を知りたければおばさんを捕まえてみるんだね。ぶっひゃっひゃっひゃ」

 言うが早いか魅音は私たちを巧みにかわして逃走を再開し始めた。

 まるで混雑時の店内でお客に接触しないように機敏に動くエンジェルモート店員みたいな軽やかな動きだった。

「魅ぃちゃん、待てぇえええええぇなんだよ、だよっ!」

 私も後を慌てて追い駆ける。

 

『……圭一さん、私たちも後を追いましょう』

『ああ。また取調べとかなったら俺たちの新婚生活に支障が出るからな』

 

 圭一と沙都子も私に続いて走り始めた。

 

 

 裏山の木々の中を走り回る魅音を追うのは容易ではなかった。

 1分もしない内に魅音を見失ってしまった。

 それでも諦めずに懸命に探索を続ける。

「きゃぁああああああぁっ!? お、お、お姉っ! しっかりしてくださいっ!」

 すると右手の木々の奥から悲鳴が聞こえてきた。

「あの声は……詩ぃちゃんっ!?」

 副所長のものに間違いなかった。

 あの詩音が大声を上げるとはただ事ではない。

 私は木々の小枝が身体を擦ることも厭わずに必死で詩音の元へと駆けた。

 そして、私は発見してしまった。

「魅ぃちゃん……なんで?」

 物言わぬ躯と成り果てた魅音の姿を。

 魅音は下着姿で全身を包丁で滅多刺しにされ、頭には大きなスタンガンが突き刺さっていた。

「詩ぃちゃん……一体、魅ぃちゃんに何が起きたの?」

 副所長にこの数分で何が起きたのか聞いてみる。

「私と所長に追い詰められたお姉はもはや逃げられないと観念し、自ら全身を100回以上刺し、脳深くまでスタンガンを突き刺してから最大出力でスイッチを押して自殺したんです」

「名探偵レナレナは詩ぃちゃんを信じるっ!」

 魅音は加減の効かないバカだからそれぐらいのことはすると思う。だってバカだから。バカなんだもん。

「これで盗撮の犯人の1人がお姉だとはっきりしました。後は……」

「事件の黒幕を捕まえるだけ、だね、だね」

 よく見ればここは譲治の死体がある地点のごく付近だった。数メートル先に譲治の死体が見える。

 もはやこれが物語っていることなど一つしかなかった。

「だから……いい加減、素直に犯行を自白したらどうかな、悪の黒幕さん」

 そして私は、諸々の事件を影で操っていたに違いない黒幕に呼び掛けた。

 

 

「小娘どもが。我の存在に気付かなければ長生きすることも可能であったろうに」

 声と共に譲治の身体に突き刺さった竹槍の一つがピカッと光った。

 私がその光った部分を鉈でパカッと割る。すると、中から黒いマントを羽織った老人が出てきた。

「やっぱり、今回の事件の黒幕は貴方だったんだね、大魔王牧野っ!」

 私は大魔王に向かって指を突き付ける。

「名探偵の私と破廉恥なことに定評のある推定10人の雛物読者の目は誤魔化されませんよ、大魔王牧野っ!」

 詩音が背後に回りこみながら私と同じく大魔王に向かって指を突き刺す。

 

『なあ、今までの流れのどこに大魔王牧野が黒幕だという前フリがあったんだ?』

『しっ。レナさんもねーねーも頭のネジがぶっ飛んでいる方ですから、きっと2人の頭の中では何か確信があったのだと思いますわ』

 

「フッ、小娘2人がいい気になりおって。だが、どうして我がこの事件の黒幕であると気付いたのだ? その過程を述べてみよ」

 事件の黒幕が名探偵に対して推理の披露を要求している。

 仕方ない。名探偵の義務として推理を披露してあげようと思う。

 

『親切な奴だな、大魔王牧野』

『好感度アップの返答でしたわ』

 

「まず、第一の手掛かりは盗撮の対象がよりにもよって秀吉さんだったことだよ、だよ」

 額に『肉』の文字を書き加えた秀吉の写真を取り出して大魔王に見せる。

「こんな気持ち悪い生物の全裸写真を撮る。それはインターネット上で写真を全世界に発信して、阿鼻叫喚の地獄絵図を作り上げる凶悪なサイバーテロ計画に他なりません」

 詩音が言葉を続けた。

「つまり、秀吉さんの写真を盗撮した犯人の黒幕は世界の転覆……世界征服を企んでいる人物に違いないんだよ、だよ」

 大魔王に向かって再び指を突き刺す。

「知恵先生の証言から大魔王牧野、貴方が世界征服の野望に燃えていることは明白でした。出題編をきちんと読んでいる読者なら誰だってこの真実に至りますよ。至らないのはお姉と同等の知能しか持っていないことになりますね」

 詩音がニヤリと笑う。

 

『どう見ても憶測とこじ付けじゃねえか』

『しっ。巻き込まれるのはごめんですわ』

 

「なるほど。さすがは雛見沢が世界に誇る2大名探偵。非の打ち所のない完璧な推理だ。じゃが、盗撮犯人と我の関係を証明できぬ限り、我を捕まえることはできんぞ」

 鼻を鳴らし返す大魔王。

 だが、大魔王が反論を試みることなど既にお見通しだ。

 

「では続きを述べますと、盗撮の実行役に破廉恥ヘタレケダモノボインマスターメガネ、略して破ヘケボメの譲治さんとお姉を選んだのは失敗でしたね、大魔王」

 更にニヤリと笑い返す詩音。

「なんだとっ?」

 大魔王がムッとした顔を見せる。

「譲治さんは色々あって無類のボイン好き。ボインのことしか考えられない人です。まるでエロさには絶対の自信を持つ雛物読者のようです。そんな譲治さんに大魔王はこう話を持ち掛けたのでしょう。お姉のボインをタッチさせてあげるから秀吉さんの全裸写真を撮って来いと」

「クッ」

 大魔王が苦い顔をした。

「だけど譲治さんは大魔王の思惑を超えて頑張りすぎてしまったんだよ、だよ。その結果、秀吉さんは盗撮に気付いてしまい、レナレナたちの所に捜査の依頼が来た。それで真相がばれて世界征服の野望が妨げられると考えた大魔王は譲治さんを暗殺することにした」

「クっ!」

 大魔王の眉が吊り上がる。

「一方で大魔王が用意した譲治さんの身代わりとも言うべき犯人がお姉でした。お姉が捕まろうが、死刑になろうが誰も関心を払いません。だから、事件の裏側には誰も関心がいかないと考えたのでしょう。でも、お姉は空気が読めなさすぎでした」

「魅ぃちゃんの怪しい言動は逆にレナたちにこの事件には大きな裏があると確信させたんだよ、だよ」

「チッ。譲治と(・3・)なら2人まとめて楽に処分できると思い、我としたことがリスクを軽視してしまったか」

 大魔王が忌々しげに舌打ちする。

「大魔王牧野、貴方はお姉に報酬のうめぇ棒を3本やるとか高給を餌に言葉巧みに裏山に誘い出し、ボインを求める譲治さんを間接的に裏山に誘い込んだ」

「大金に目が眩んだ魅ぃちゃんは裏山に向かい、譲治さんもまた裏山に辿り着いた。そして、沙都子ちゃんのトラップに偽装する形で譲治さんを殺害した」

 

『よし、これで沙都子の無罪が証明された。この推理はもう絶対だぜ』

『何も言えませんわ……』

 

「そして魅ぃちゃんも殺そうとしたのだけど、その前に魅ぃちゃんは罪の重さに耐えかねて自殺してしまった。今回の件はそういう流れなんだよ、だよ!」

「いや、(・3・)の死は──」

「自殺なんですっ!」

 詩音は力強く断言してみせた。

「見事だ名探偵の小娘どもよ。貴様らの推理には間違いがない。(・3・)の死因の真相など、有効期限が過ぎたサービス券よりも意味のないものだからな」

 そして大魔王は自身の犯行を認めた。

「出題編を読んでさえいれば誰にでも至れるビギナー用の推理に過ぎませんよ」

「簡単すぎて正答率99%は固いよね、よね」

 それでもこんな簡単な推理で間違える人は紳士・淑女スタイル(全裸)で土下座しながらインターネットした方が良い。私はそう思う。

「さあ大魔王、お縄についてください。私と悟史きゅんの破廉恥すぎる新婚生活の為に」

「はぅううぅ。レナレナは圭一くんとアバンチュールな一時を旅先で過ごすんだよ、だよ」

 私と詩音は自信を持って大魔王を包囲する。

「やれやれ。所詮は小娘どもか。推理は出来ても、肝心な部分が見えておらんようだな」

 だが、大魔王はこの期に及んで余裕の笑みを浮かべていた。

 

 

「名探偵の小娘どもよ。何故我が貴様らの前に姿を現したのか、その理由を考えておらなかったようだな」

 大魔王はニヤソ笑いを浮かべる。

「観念したから……じゃないの、の?」

 その顔を見て私の額に一筋の汗が流れる。

「観念? とんでもない。我の世界征服の準備が全て整ったからこうして姿を現したに過ぎん」

 額の汗が二筋に増える。

「秀吉の全裸写真は手に入り、サイバー攻撃の準備は整った。後は物理攻撃による征服だが、雛見沢の守護星たちは既にいない。我の覇道を止める者はおらぬ」

「雛見沢の守護星?」

 聞き慣れない単語だった。

「未来の宇宙から来た超能力者である我が世界を征服する為に最も邪魔になるのが、戦闘民族雛見沢人の存在じゃ。だが、その長である古手梨花は収監中であり、古手梨花の全力を引き出す為に必要な生贄妖怪シュー舐めもおらぬ」

「もしかして、村人たちを誘導して2人を裁判に持ち込んだのは……」

「勿論我じゃ」

 しまった。登場人物紹介欄をもっと詳しく読んでおくべきだった。

 作中に出て来ないということで軽視してしまった。

「じゃが、まだ雛見沢には梨花の不在を守る2人の守護役がおった。それが──」

「山田さんのおばあさんと鈴木さんのおじいさんだったのですね」

 詩音の指摘に大仰しく頷いてみせる大魔王。

「あの鬱陶しい2人を病死に見せかけて毒殺するのには骨が折れたぞ」

「まさか、そんな裏があったなんて、て……」

 流行り病と思って、詳しく調査しなかったのは私の判断ミスだった。

「これで我と互角に戦えるものはいなくなった。じゃが、雛見沢にはそれでも対我用に特化して強大な力を発揮する光の聖戦士なる存在がまだおった」

「その戦士とはもしかして……」

「うむ。光の聖戦士メガネとぽっちゃりじゃ」

 まさかレナレナ探偵事務所の雑用で名前さえ登場したことがないあの2人がそんなに大きな宿命を背負っていたとは。

「じゃが、その光の聖戦士も何故か今日死におった。これで、ワシの世界征服を邪魔できる者はこの世のどこにもいなくなったのじゃ」

 

 大ピンチだった。

 そう。

 私と詩音が普通の雛見沢人なら大ピンチだった。

 

「小娘ども、何を笑っておる?」

「大魔王も意外と大した情報力を持っていないのだと思いまして」

「レナレナたちの力を舐めないで欲しいんだよ」

 詩音と2人でニヤリと笑う。

「昨今の探偵はですね……」

「バトルも出来なきゃ生き残れないんだよ、だよっ!」

「「うぉおおおおおおおおおぉっ!!」」

 私と詩音の気が急激に膨れ上がっていく。

 

 全身を黄金のオーラが包み込み、髪の毛が逆立ちながら金色に染まる。

「伝説のスーパー雛見沢人」

「それがレナレナたちなんだよ、だよっ!」

 長期に村外に滞在した経験を持つ雛見沢人のみが辿り着ける境地。

 雛見沢人を超えた雛見沢人。

 それが伝説のスーパー雛見沢人。

 雛見沢でもごく少数しか変身することができない最強の存在。

「フム。2人とも戦闘力4億2千万か。部下に欲しいぐらいじゃぞ」

 だが、大魔王はスーパー雛見沢人2人を前にしても全く怯む様子を見せなかった。

「ちなみに我の戦闘力は53億だ。しかも3回変身して強くなるぞ」

 それどころか笑っていた。

「出鱈目言ってるんじゃありませんよっ!」

「そう、だよ! だよ!」

 詩音と2人、一斉に大魔王に襲い掛かる。

 伝説のスーパー雛見沢人が2人、負ける筈はなかった。

 しかし──

「ぬるい攻撃じゃな」

 私と詩音のパンチは牧野に易々とかわされ、手首を捕まれてしまった。

「「まだまだっ!」」

 腕を捕まれた状態から一斉にキックをお見舞いする。

 私が上段、詩音が中段に狙いを定めて蹴る。

 大魔王は私たちの手を掴んで身動きが取れない状態。

 これで決まり、の筈だった。

「おなごたる者、そんな短いスカートで不用意に足を上げるものでないぞ」

 けれど、大魔王は私たちの手を放すと両腕で完璧なブロックを取ってキックを防いでいた。

 足を捕まれては厳しいので、詩音と2人でジャンプしながら距離をとる。

 まだ戦い始めたばかりだけど、大魔王との力の差は歴然としていた。

 スーパー雛見沢人なのに……。

 

「やれやれ。女の子が戦いでケリを着けようとするからおかしなことになるんだぜ」

 そう言いながら前に出てきたのは、私の未来の夫前原圭一だった。

「圭一さん?」

「黙って見てろ。ここは俺が決めてくる」

 圭一は自信満々に私たちの前に立つ。

「大魔王牧野っ! 貴様の相手はこの宇宙一ビッグな男前原・ビッグ・圭一様が果たしてやるぜっ!」

 圭一は大魔王に向かって人差し指を堂々と差す。

「貴様が我の相手、じゃと?」

「へっ。大魔王、お前が何て言うかぐらいはわかってるさ。こう言うんだろ? 計測しなくてもわかる。俺の戦闘力は65億以上だって。だがな、それに対して俺は更に言うのさ。瞬間的に出せる力はまだまだこんなもんじゃねえってな」

 圭一は何か言っている。

 でも……

「ほぉ。随分とでかい口を叩きおるな。どれ、貴様の戦闘力は……」

 大魔王が圭一をジッと見た。

「戦闘力たったの5。ゴミめっ」

 大魔王は右手の指をクイッと曲げた。

「うっ、うおぉっ!?」

 圭一の体が空中に浮き上がる。

 そして──

「沙都子ぉおおおおおおおぉっ!?」

 圭一は空中で大爆発した。

 そりゃあもう見事に大爆発して吹き飛んだ。

 

「……汚い花火ですね」

 詩音は爆発の評価を述べている。

 けれど私が聞きたいのはそんな客観的情報ではなくて。

「お前たちも木っ端微塵にしてやろう。あの口だけの男のようにな」

 そうだ。

 この場面、私に必要なのは、愛しい人を失った悲しみから新たなる力に覚醒すること。

 主人公らしい覚醒。

 それだっ!

「口先だけの男?」

「口先だけの男!? 圭一さんのことですのぉおおおおぉおおおおおぉっ!」

 私が将来の夫を失った悲しみからパワーアップを果たそうとした瞬間だった。

 背後の沙都子から強大な気が迸り始めた。

「うぉおおおおおおおぉですわぁあああああああああぁっ!」

 沙都子の戦闘力が尋常でないほどに膨らんでいく。

「フッ。雛見沢人はバカの一つ覚えの様にスーパー雛見沢人になれば我に勝てると思い込んでおる。嘆かわしい」

 溜め息を吐いて沙都子をバカにする大魔王。

 だが、私に言わせればバカは大魔王の方だ。

 何故なら。

「スーパー雛見沢人? 違いますわ。今のわたくしはスーパー雛見沢人を超えたスーパー雛見沢人。スーパー雛見沢人2ですわっ!」

 黄金に輝く沙都子から放出される気の強さは、少し悔しいけれど私や詩音とは次元が違ったのだから。

「なんじゃとっ!? そんな存在がおるとは我は聞いておらん。こうなったら3回変身じゃっ!」

 3回変身して額に『肉』と書かれた筋肉モリモリバージョンに変わる大魔王。

 しかし──

「うわぁああぁ。勝てないぃいいいいぃっ!」

 もはや大魔王は沙都子の敵ではなかった。

「さあ、とどめですわっ! プ・リ・ティー・波っ!」

 沙都子は大魔王に対して必殺の高エネルギー波を放った。

「バカなっ!? この未来の宇宙から来た超能力者にして地球を征服するに最も相応しい人物である我がこんな小娘に負けると言うのかぁああああああぁっ!? うぎゃあぁあああああああああぁっ!」

 

(・3・)「やれやれおじさん、やっと生き返ったよ。おじさんはこの物語のメインヒロインなのに出題編のラスト部分から死にっ放しで終わるなんてのは恥だからね。残機はもう1しかないけれど、ちゃんと見せ場の一つも作らないとおじさんのファンが納得し……ぷっぴゃぁあああぁ……」

 

 そしてプリティー波は悪しき野望に燃えた大魔王をその体ごと吹き飛ばしたのだった。

 何かと一緒に。

 

 

「終わりましたね、所長」

 沙都子のプリティー波の威力で半分吹き飛んでしまった裏山を見ながら詩音が話し掛ける。

「そうだね。でも、大魔王の野望の為にあまりにも多くの人命が失われてしまった」

 将来の夫である圭一を失ったのはあまりにも痛い。

 結婚前から未亡人になってしまうなんて。

 これからは妖艶未亡人探偵を名乗ろうかなとも思う。

「それなら心配ありませんわ」

 沙都子が近寄って来た。

「こんなこともあろうかと、事前に準備しておきましたの」

 沙都子は胸の谷間からある物を取り出して見せた。

 それはオレンジ色をした小さな玉だった。

 7つあった。

「この竜の玉を使ってトカゲの大きいのを呼び出せば、大魔王に殺された人たちを全員生き返らせることができますわ」

 沙都子はニッコリと微笑んだ。

「沙都子、その玉どうしたんですか?」

「圭一さんは口先だけの小物ですから、いつ死んでしまうかわからないと思いまして用意しておいたのですわ。備えあれば憂いなし、ですわ♪」

「事件解決だね、だね♪」

 こうして、世界の存亡を賭けた事件は幕を下ろした。

 

 

 

 

「今回の事件ではうちの愚息が犯人だったとは。名探偵レナレナさんにはほんにお世話を掛けもうたわぁ」

「いやぁ、つい、ボインタッチの誘惑に負けて悪の道に走ってしまったよ。この正真正銘のインテリメガネであるこの僕がとんだ恥ずかしい真似を」

 秀吉が破廉恥ヘタレケダモノボインマスターメガネ、略して破ヘケボメの譲治の頭を押さえ付けながら謝罪する。

 私としては報酬さえ支払ってもらえれば後は右代宮家の問題なのでどうでも良い。

 というか、鬱陶しいのでさっさと帰って欲しい。

「今回の事件の不始末、こりゃぁ報酬を支払うだけではワシの気が収まりませんわ。裸踊りを利子として付けさせてくださいですわ。股間の所をよ~く注目してくださいわ」

 そう言って急に脱ぎ出す変態似非関西人。

 秀吉は見ないで窓の外を見る。

 お金を稼ぐって本当に大変だ。

「そう言えば圭一くん、今日はどこに行ったんだろう?」

 昨日、竜の玉の力によって圭一は確かに生き返った。

 けれど、今朝前原家を訪れたら圭一は旅行に出掛けたのだという。

 何でも、心魂だか神魂だかという奇妙な名前の旅行らしい。

 そう言えば沙都子も今朝から旅行に出掛けていていない。

 たまたま2人が偶然同じ日に旅行に行ってしまっているので今日の私は退屈だ。

 まあ、圭一が戻ってきたら、今回の報酬を元に2人で婚前旅行に出掛けるのも悪くないかもしれない。

 名探偵にも心の休息は必要だ。

「さあ、名探偵レナレナはんっ! ワシの裸踊りを見てくだされぇっ!」

「おっとっ! そんな醜い脂身だらけの体じゃなくて、この逞しい僕の肉体を見て欲しいな」

「ああ、僕はボインちゃんのおっぱいが見たいよぉおおおぉっ!」

 全滅した方が良い右代宮家の面々は放っておいて再び空を眺める。

 

 

 雛見沢の綺麗な青空に生き返し忘れたメガネとぽっちゃり、それから(・3・)が笑顔でキメていた。

 

 

 

Neo名探偵レナレナ事件ファイル1 雛見沢連続殺人事件   ―完―

 

 

 

 


 
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