No.228630

そらのおとしもの+  超帝国の新天地(ドリーム)  後編

BLACKさん

この話の時系列は「劇場版そらのおとしもの 時計じかけの哀天使」の後となっています。一応、ネタバレにならないようにはしております。
そして今回の話は「映画ドラえもん のび太と夢幻三剣士」を基にして作られたものです。(正確には先に述べた話をそらのおとしものキャラに加え別作品のキャラ(主にBLACKが書いた作品のキャラ)に置き換えたもの)
また作者(BLACK)の分身となるオリジナルキャラ(秋山総司郎)も出てきます。
そしてこの話で作者(BLACK)が書いた他作品のキャラが数名(今回が初出も)出てきます。

続きを表示

2011-07-18 09:08:37 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:1716   閲覧ユーザー数:1600

「久しぶりだな、俺。そんでイカロス」

 

カメラをぶら下げている青年がオレンジ色の髪をした女性のところにいる青年とイカロスに対して言った。

 

「久しぶり……」

「思い出した! あんた確かあの時いた……北郷一刀!」

「そうだ」

 

カメラを持った青年が北郷一刀と言うことを思い出すニンフ達。

 

「お前、あいつらと知り合いなのか」

「ああ」

「ところでその北郷一刀って人と一緒の顔してるあんた誰?」

「俺も北郷一刀なんだけどな」

「え?」

「同じ名前で同じ顔?」

「どうなってんの~~~~?」

 

アストレアは混乱する。

 

「平行世界の人間……って言えば分かるか?」

「やめておきなさい。デルタ、バカだから」

「それに今はそんな暇ないんじゃないのか?」

「そうだな。後で詳しく教えてやるとしよう」

「それでお前達は何の用だ? 俺はあそこにいるモトナリ、モトチカ、ソウリンを連れ戻しに来たんだけど」

「奇遇だな。俺と美沙緒もそこにいるウィンガーと弘樹を連れ帰りに来たんだ」

「ねえねえ、そっちの一刀」

「なんだ?」

「今あの三人のことモトナリ、モトチカ、ソウリンって言ってた気がするけど…」

「ああ。あいつらは俺達の正史でいう毛利元就に長曽我部元親に大友宗麟に当たる人間だぜ」

「何?」

「戦国武将が女の世界もあるの?」

「ああ、あるんだよな。つい最近行ってきて帰ろうとしたら勝手に付いてきちまったんだよな……」

 

カメラを持つ一刀が頭をかく。

 

「そんであいつらは?」

「俺の教え子で名前はウィンガー・マウザーと吉村弘樹だ。別に普通の奴だぜ。なんの捻りもない」

「あの二人全然起きないから起こしに来たんだよね~」

「そこはお前達も同じか」

「同じってことはあの三人も…」

「ああ、眠りぱなしだ。だから俺がこうしてやって来たってわけだ」

 

二人の一刀と美沙緒が話している隙にソウリンが自身の持つ大砲『弩・佛狼機(ドン・フランキー)砲』で一刀達を撃ってくる。

 

『危ない!』

 

イカロス達が一刀達に声をかける。

しかし美沙緒と一緒に居る一刀がどこからか出してきた剣で大砲の弾を弾き飛ばす!

 

「なっ!?」

「相変わらず重そうだな、そのエンジンブレード」

「エンジンブレードを知ってるのか? お前、どこの俺だ?」

「なんだ気づいてなかったのか。これだよ」

 

カメラを持つ一刀があるものを取り出す。それはある姿が描かれたカードであった。

 

「お前か、ディケイドって奴は」

「そういうことだ」

「ならこの世界に簡単に来れた理由がわかった」

「本当だよ、あたし達ここまで来るのに色々手間取ったのに…」

「そう言うな。まあそれはそうとして、それぞれ用事があるようだからさっさと済ませようぜ。アクセルの俺」

「ああ」

 

ディケイドの一刀はディケイドライバー、アクセルの一刀はアクセルドライバーをベルトにして腰につける。

 

「とりあえずお前達」

 

ディケイドの一刀がイカロス達に声をかける。

 

「オーズまがいのバケモンはお前達に任せるわ。

あそこにいる女三人組は俺がやる」

「そんでもって俺と美沙緒は教え子の二人とやるわ」

「さあ、頑張ろう~!」

 

ディケイドの一刀はディケイドライバーを展開させ、改めてディケイドのライダーカードを手に持つ。

アクセルの一刀はアクセルメモリを手に持つ。

 

「アクセル!」

「「変身!!」」

「カメンライド」

 

ディケイドの一刀はディケイドライバーを正位置に戻し、アクセルの一刀はアクセルドライバーの右グリップ部のパワースロットルを捻る。

 

「ディケイド」

「アクセル!」

 

二人の一刀は仮面ライダーディケイド、仮面ライダーアクセルに変身する。

 

「さて、振り切るぜ!」

「おお!」

「お前達、また改心させてやるよ」

 

二人のライダーと美沙緒が突撃していく!

 

「貴様らーーーー! 舐めた真似を!」

 

ジャリサムが向かってくる三人に対して炎を吐く。

しかし三人は気にせず向かっていく。

三人は無傷で炎を通過していった。

 

「何!?」

「この程度の炎、ダメージにならねえ」

「雑魚いな」

「幻影体にそんなの効かないよ~だ」

 

美沙緒はいつも一緒に居る一刀が異世界で仮面ライダーアクセルに変身すると『幻影体』と呼ばれる半ば幽霊のような存在になる。

『幻影体』になると美沙緒からは物や人に触れることが出来るが、美沙緒の方にやって来る攻撃などは体を通り抜ける。

つまりは美沙緒にとって悪いこと(主に敵の攻撃)は美沙緒の体を通り抜け、美沙緒の攻撃は当たると言う一方的なものになる。(例外はある時はある)

そして変身した二人の一刀にとってジャリサムの炎の攻撃はただ前が一時的に見えなくなるくらいのものにしかならない。

これはジャリサムが弱いわけでなく、二人の一刀が強いだけである。

 

「「邪魔だ!」」

 

ディケイドとアクセルはジャリサムに対して飛び蹴りをくらわせる!

 

「どわあああ!」

 

ジャリサムは派手に吹き飛ぶ。

 

「それじゃあ吹き飛んだ奴の相手よろしく」

 

ディケイドの一刀はモトナリ達の前に立つ。

 

「さてと、お前達が学んだこと、俺達に見せてみな」

 

アクセルの一刀と美沙緒がウィンガー達の前に立つ。

 

 

ディケイドの一刀はモトナリ、モトチカ、ソウリンの前に立つ。

 

「さてと……俺のこと、覚えてるか?」

 

ディケイドの一刀が尋ねる。

 

「誰? あんた」

「この奇怪な奴め」

「蹴散らしちゃるばい!」

 

一気に三人がディケイドの一刀に向かって飛びかかる!

 

「あ~あ、俺が好きだから付いてきたのに忘れられてるなんて……ショックだな!」

 

ディケイドの一刀はそれに対抗するようにジャンプする!

 

「いっけ~~~~! 弩・佛狼機砲!」

 

ソウリンが弩・佛狼機砲を発射させる!

 

「よっと」

 

なんとディケイドの一刀は発射された弾を踏み台代わりにして踏んでいく。

 

「なっ!」

「てゃあ!」

 

ディケイドの一刀はソウリンを叩き落とす!

 

「うぁああああ!」

「ソウリン! でゃああああ!!」

 

次にモトチカが斧でディケイドの一刀に対して振るが……。

 

「うりゃああああ!!」

 

ディケイドの一刀はソウリンを叩き落とした時の勢いを利用し、斧の攻撃を避け、後ろ回し蹴りをモトチカにくらわせる。

 

「がはっ!」

 

モトチカも地面へ落ちる。

 

「黒葬の舞!」

 

モトナリが黒葬の舞の衝撃波をディケイドの一刀にくらわせる。

しかし……。

 

「全然効かねえな」

「なっ!」

「はあっ!」

 

ディケイドの一刀はライドブッカーをソードモードにして、刃の部分でモトナリを地面に叩き落とす!

 

「きゃっ!」

 

モトナリも落ちて言った二人と同じ場所に落ちていく。

 

「「「ううう~~~」」」

 

三人は重なって倒れている。

 

「お前達、あの時と比べて弱いな。どうしたんだ?」

 

ディケイドの一刀が戦ってる頃、アクセルの一刀と美沙緒、そしてウィンガーと弘樹の戦いが行われていた。

 

「やるじゃねえか。俺の教えた通りの動きが出来てるな」

「これは俺とこいつで編み出したもの! 貴様に教えられてなど……」

「…だけどな、だから読みやすいんだよ!」

 

アクセルの一刀と美沙緒が横に並ぶ。

 

「「『乱黄龍』!!」」

 

アクセルの一刀がエンジンブレードで地斬疾空刀を使い、そして地斬疾空刀で生み出したエネルギー刃と美沙緒のエネルギー波が混ざり合い、黄色のエネルギー体の龍を生み出す。

そして放たれた龍はウィンガーと弘樹に襲い掛かる!

 

「「ぐあああああああ!!」」

 

二人は上空へと飛んだ後、地面に落ちてくる。

 

「いつものお前達なら簡単に避けれただろうに……」

「記憶がないんだね」

「そういうことだな」

「で、あっちは大丈夫かな?」

 

美沙緒がジャリサムと智樹達の方を見る。

 

 

「でゃあああああああ!!」

 

ジャリサムが智樹に向かって大きく拳を振るい、智樹はその振るわれる拳を装甲に覆われた右腕の拳をぶつける!

 

「くうううううう!!」

「ぬぁあああああ!!」

 

ジャリサムは押され気味だが、見た限りでは智樹の方がつらい。

 

「マスター!」

「ダメよ、アルファー! 今Artemisを撃ったら、トモキを巻き込むわ!」

「……!」

「じゃあどうすればいいんですか~」

「信じろ」

 

秋山がモニターで現れる。

 

「信じろって…トモキなのよ! 私達エンジェロイドならともかくただの地蟲(人間)の智樹じゃ……」

「大丈夫だ。あいつの持ってることは信じることで応えてくれるものだ。

それはお前達とて例外じゃないだろ。だったら信じてやれ。

そうすればあいつが諦めることはしないだろうし、あいつは負けない。

今度はお前達があいつを励まして信じてやる番だ」

「私達が…」

「あいつを……」

「マスターを…信じる……」

「そうだ。まあ一口に信じると言うより頑張れとか言ってやりな。そうすれば信じてもらってるって分かるだろうからな」

「はい」

「分かったわ」

「智樹!」

 

智樹が声をかけられてイカロス達の方に目をそらす。

 

「頑張りなさいよ!」

「負けたら承知しないわ!」

「マスター! 負けないでください!」

「あいつら……」

 

智樹はイカロス達の言葉を聞いて思わず笑みを浮かべる。

 

「何がおかしい!?」

「いや、あいつらに励まされたことなくてな……。それが嬉しいんだよ! だったら俺も信じてやらないとな! 俺の持ってるこの力を!」

 

智樹がイカロス達に応えようと思った時、変化していなかった左手の篭手が光りだす。

 

「なんだこの光は!?」

「これって……」

 

すると左手の篭手は右腕のように左腕を覆う装甲となり、左肩には今の右肩と同じようなロケットエンジンが付く。

 

「これならいけるぜ!」

「させるかーーーー!」

 

智樹が左肩に付いたロケットエンジンを点火させ、突進力を高め、左腕の拳を当てようとし、ジャリサムは残っている拳で智樹の左手の拳とぶつけあう。

 

「ぐぬぬぬぬぬ!!」

 

先ほどとは逆にジャリサムの方が押され気味であった。

 

「智樹!」

「マスター!」

「いっけええええええ!!」

「うおおおおおおおお!! ダブルハイマットブリッドーーーーーーー!!」

 

智樹の二つの拳がジャリサムの二つの拳を砕き、ジャリサムの体に到達する。

 

「がはっ!!!」

「いっけええええええ!!」

 

ダブルハイマットブリットはロケットパンチのような拳の氣を作り出し、その拳の形をした氣はジャリサムを上空へと飛ばす。

 

「ぐおああああああああああ!!!」

 

ジャリサムは遥か上空へと飛ばされた後、爆発した。

 

「はあ…はあ……」

 

智樹の両腕は元に戻り、金色の装甲も元の篭手へと戻る。

 

「マスター」

 

イカロス達が智樹の元に駆け寄る。

 

「トモキ、大丈夫?」

「大丈夫だ」

「バカのくせに無茶しちゃって…」

「お前が言うなよ……」

 

智樹が疲れていながらも笑って答える。

 

「そういえば…都の方に急がねえと……そはら達が…」

「ああ、それなら問題ないぞ」

 

智樹達のところに変身を解いた二人の一刀と美沙緒がやって来る。

 

「問題ないって…」

「あいつらなら俺達がとっくに片づけたぞ」

「いつのまに…」

「お前達がジャリサムと遭遇した時だ」

「あの時にもう…」

「それとジャリサムの兵士達は俺達三人でやった」

「え? てことは、あの煙は……」

「これ使ったんだ」

 

アクセルの一刀がエンジンブレードを取り出す。

 

「エンジン」

 

エンジンメモリをエンジンブレードに挿入し、トリガーを引く。

 

「スチーム」

 

するとエンジンブレードから蒸気が噴き出される。

 

「蒸気ってそれから出てたのね」

「しかし驚いたな。あの時まさかお前もいたとは…」

「俺だって驚きだ。俺があの兵士達を倒そうとしたとたんに急に煙があいつら包んだんだからな。まあ好機だと思って思いっきり倒しに行ったんだが……」

「こっちだって驚いたぜ。俺達以外に誰かが兵士達を倒してると思ったらお前だったしな」

「ほんとほんと」

「まあ今はあいつらだな」

 

二人の一刀が後ろで倒れているモトナリ達やウィンガー達を見る。

 

 

そして智樹達は後ろにいたそはら達と合流する。

 

「この人達って……」

「この二人は俺と美沙緒と同じ世界の住人だ」

「そんでこの三人は俺の世界に居候中だ。しかし、微妙に納得できないな」

「何がだ?」

「こいつらとは一度、こいつらが元居た世界で戦ったんだが、こいつらこんなに弱くなかったぜ。

いくら現実世界の記憶がないと言ってもここまで弱くなるのか?」

「そういえばこの二人も俺の教導通りの動きはしてたが、力が弱かったな」

「なんでだろう?」

「そりゃ、ここが夢の世界であいつらが精神体でお前らが生身だからだよ」

 

そこに秋山がモニターで現れる。

 

「秋山だったか。どういうことだ?」

「あいつらは夢の世界に囚われた人間だから力が現実世界通りにはならないんだ。

だけどお前達は直接この世界に来ただろ?

だったらお前達は囚われてない。それどころか生身のせいでこの世界にいる奴らとレベルが違いすぎるんだ」

「どのくらい違うんだ?」

「そこで倒れてるそいつらのレベルが100だとしたら、お前達のレベルは1000だ。さっきのバケモン、ジャリサムのレベルは150。さっき攻撃されても全然痛くなかったのはそのせいだ」

「そんなに差があるのか」

「ただ、アステヅーマアって言うこの世界の支配者のレベルは俺も知らんけどな」

「そうか…で、こいつらはどうすれば起きるんだ?」

「一度囚われた以上、アステヅーマアを倒すしかないな。まあ現実世界の記憶だけなら俺がどうにかしてやるけど……」

「どうした?」

「一応、使いは出してるんだけどな」

「使い?」

「お兄ちゃ~~~ん」

 

するとそこにカオスが飛んでやって来る。

 

「カオス」

「あ、あの子!」

 

美沙緒がカオスを見て指差す。

 

「カオスを知っているのか?」

「だってあたし達の結婚式に来てくれた子だよ」

「秋山」

「なんだ?」

「お前が以前カオスと二人だけで異世界に行ってた時に会ったのは……」

「そこにいる北郷一刀と美沙緒が元居た世界さ」

「……ちょっと待て、そこの俺」

 

ディケイドの一刀は何かが引っかかったようにアクセルの一刀に尋ねる。

 

「なんだ?」

「今そいつ、結婚式って言ったけど、誰と誰の何だ?」

「誰って……俺と美沙緒の結婚式だ」

「はっ!?」

 

ディケイドの一刀は驚きの声を上げる。

 

「お前達…結婚してたのか」

「そうだよ。そんでもって今こっちに来てるカオスって子と秋山って人があたし達の結婚式に参加してくれたんだよ」

「そうか、結婚してたのか」

 

ディケイドの一刀は地面に膝をつき、手をつく。

 

「どうした?」

「俺、結婚は愚か、まだ彼女すらできてないのに……」

「いや、彼女候補いっぱいいるんじゃね?」

「いるけどさ……」

「てか、そこで倒れてる三人はお前の彼女候補じゃないのか?」

「そうなんだろうか?」

 

今のディケイドの一刀には状況分析力が欠けていた。

 

「まあそれはそうとして、あの子が使いってどういうことだ?」

「とりあえず本人が降りたら話す」

 

そしてカオスが智樹達のところに降りてくる。

 

「お兄ちゃん」

 

カオスが甘えるように智樹に抱きつく。

 

「えへへ」

「カオス、早速で悪いが、記憶戻しの薬を出してくれ」

「うん♪」

 

秋山に言われてカオスは液体が入った瓶を取り出す。

 

「それは?」

「この世界に捕えられた人の現実世界の記憶を呼び覚ますための薬だ。

とりあえずその薬をそこに倒れてる連中に飲ませろ」

 

そして薬を倒れているモトナリ、モトチカ、ソウリン、ウィンガー、弘樹に飲ませた。

それから倒れていた5人は目をさまし、現実世界の記憶を取り戻した。

 

「そんなことが……」

「わりいな、一刀」

「構わん」

「そういえばお前達はどういう経緯でこの世界に来たんだ?」

 

守形が一刀達に尋ねる。

 

「ああ。そうだな……」

 

二人の一刀と美沙緒は語る。

 

 

まずはアクセルの一刀と美沙緒の話。

アクセルの一刀は美沙緒は軍人であり、新生部隊「ムーン・ロック」と共にかつて一刀と美沙緒が訪れた外史に赴任した。

そしていつものように「ムーン・ロック」の教導をアクセルの一刀はしようとしていた時であった。

 

「おい、ウィンガーと弘樹はどうした?」

 

時間になってもウィンガーと弘樹がいないのでアクセルの一刀は他の隊員に聞いてみた。

 

「はあ、それが部屋に行ってもなんにも反応がないんです」

「反応がない?」

「はい」

「じゃあ部屋に行ってみるぞ」

 

そしてアクセルの一刀は隊員達と一緒に二人の部屋に行ってみた。二人は相部屋であった。

 

「おい、起きろ」

 

アクセルの一刀がドアをノックしても反応がない。

 

「開けるぞ」

 

アクセルの一刀が部屋のドアを開ける。すると部屋には寝ている二人がいた。

 

「寝てるな」

「ウィンガー、起きろ!」

「弘樹! いい加減にしろよ!」

 

隊員たちが寝ている二人の体を揺らすも起きる反応がない。

 

「……、おい」

「はい」

「美沙緒を呼んで来い。それと目覚まし用の拳銃も持ってこさせろ」

「分かりました」

 

そして美沙緒がやって来る。

 

「やっほ~」

「来たか、銃は?」

「ほい」

 

美沙緒が目覚まし用の拳銃をアクセルの一刀に手渡す。

 

「サンキュー」

 

アクセルの一刀は寝ている二人の耳元でその拳銃の引き金を引く。

するとその拳銃から銃声だけが出る。

耳元で大きな音が聞こえれば普通は起きる。

しかし二人は起きるどころか反応がなかった。

 

「起きないね」

「それどころか反応がない」

「おかしいね」

「美沙緒、こいつらきちんと看てみる必要があるな」

「そうだね」

「お前達」

 

アクセルの一刀が後ろにいる隊員達に向かって言う。

 

「今日は凪達に教導してもらえ」

『わかりました!』

 

隊員達はその場を後にする。

アクセルの一刀と美沙緒は寝ている二人を医務室まで運び、機械で現在の二人のことを調べたのだ。

 

「なにこれ?」

「どうした?」

「この二人、精神が別の世界に行っちゃってる」

「別の世界って…」

「ちょっと待ってね……」

 

美沙緒が機械をいじるとその世界の座標が映し出された。

 

「ここみたいだね」

「初めて見る座標だな」

「一刀はまともに見たことないでしょ。どれどれ……なにこれ?」

「今度はなんだ?」

「あたしも初めて見る。正史でも外史でもない座標…」

「具体的には?」

「精神しかない世界……って言えばいいのかな? 正直、あたしも分からない」

「寝てて精神しかない世界……夢の世界って奴か?」

「確証はないけどそうかも……」

「仕方ないな…」

「行くの?」

「当たり前だろ? 教導官として教え子を見捨ててはおけんだろ」

「じゃあ、あたしも行くね。こんなかわいい奥さんおいて行くなんて許さないから♪」

「まったく……とりあえず華琳達に行くこと伝えておくか」

 

そしてアクセルの一刀と美沙緒は華琳達に色々伝え、次元跳躍器を用いて夢の世界へとやって来たのだ。

 

 

変わってディケイドの一刀の話。

 

「う~ん」

 

詠がいつもの写真館の仕事場にやって来る。

 

「どうしたんだ?」

「あんたが連れてきた、モトナリ、モトチカ、ソウリンのことよ」

「あいつらが勝手についてきたんだ。それであの三人がどうしたんだ?」

「全然起きないのよ」

「は?」

 

ディケイドの一刀は何のことを言ってるのかさっぱり分かってない。

 

「全然起きないってどういうことだ?」

「言葉の通りよ。何しても起きないの。しかも無反応」

「……あいつらのイメージからして起こそうとしたら、何かしら反応あると思うけどな……」

 

そんな時であった。

 

「いらっしゃい……管輅さん」

 

月が応対した相手は管輅であった。

 

「またお前か。今度の用事はなんだ?」

「はい。夢の世界が支配されようとしています」

「は?」

 

管輅がディケイドの一刀に秋山が智樹達に説明したのと同じ説明をした。

 

「あの三人が起きないのって、そんな理由があるのね」

「このままじゃ、別の外史にいる俺にも影響があるかもな。仕方ねえ」

 

ディケイドの一刀が椅子から立ち上がる。

 

「行くとするか」

「それでしたら、これを」

 

管輅がディケイドの一刀に夢の世界に行くためのカードを投げ渡す。

 

「悪いな。それじゃあ」

 

そしてディケイドの一刀は夢の世界へと行った。

 

 

「「と言うわけだ」」

「随分迷惑をかけてもうたな」

「「北郷教導官、申し訳ございません!」」

 

五人がそれぞれの一刀に謝る。

 

「別にいいの、いいの」

「悪いのはアステヅーマアだからな」

「そうだな」

 

二人の一刀と美沙緒は納得する。

 

「ところで、秋山」

 

ディケイドの一刀がモニターの秋山に尋ねる。

 

「なんだ?」

「なんでその子がお前の使いなんだ?」

 

ディケイドの一刀がカオスの方を見る。

 

「この間その夢の世界で干渉しすぎたからな、だから今回はサポートに徹するつもりだ。

ってもある程度干渉できる奴が欲しいと思ってな。夢の世界に普通に行けるカオスに頼んだんだ」

「こいつも生身なのか?」

「うん♪」

「俺としたら、ディケイドやアクセルのお前が来てるのに驚きだぜ。

まあお前達なら生身で行けるのは分かってるけどな」

「ふん」

「それでお前達はどうするんだ?」

 

守形が一刀達に尋ねる。

 

「俺達がそのアステヅーマアを倒しに行ってもいいが、その夢の管理者がそこにいる桜井智樹に頼んだ以上、俺達がでしゃばるわけにはいかんな」

「え?」

「と言うことで智樹、頑張って行って来い!」

 

秋山達によって勝手に智樹を行かせることになった。

 

「とは言ってもお前だけじゃ不安と言うか力不足だろ。それに確実にイカロス達がついて行くだろうからな」

 

そして智樹、イカロス、ニンフ、アストレア、カオスがアステヅーマアの城に行くことになった。

 

「でもアステヅーマアの城ってどこか分かるの?」

「お前達、分かるか?」

 

ディケイドの一刀がモトナリ達に尋ねる。

 

「すんまへん。どうもその時の記憶が……」

「お前達もか?」

「「はい」」

 

ウィンガー達も同じ反応であった。

 

「なに、それなら大丈夫だ」

 

モニターの秋山が言う。

 

「大丈夫って?」

「あいつらは遠くから来てるようで実はすごく近くにいる」

「すぐ近く?」

「ああ。カオス、俺が渡した結界破壊爆弾を出してくれ」

「うん」

 

カオスは手榴弾を取り出す。

 

「手榴弾!」

「手榴弾の形をした爆弾だ。こいつでアステヅーマアの城に張られてる結界を壊す」

「結界って…」

「そもそも城の場所がどこにあるのか…」

「智樹」

「今度は俺?」

「その篭手をさっきのあの装甲にしろ」

「へ?」

「いいからしろ」

「ああ」

 

智樹は秋山に言われて右手の篭手を装甲に変える。

 

「変えたぜ」

「それでカオス、その爆弾を智樹に渡せ」

「うん。はい、お兄ちゃん」

 

カオスが爆弾を智樹に渡す。

 

「それでこれをどうするんだ?」

「智樹、お前のその肩についてるエンジンで目の前に向かって思いっきり投げろ」

「なんで?」

「いいから投げろ!」

「分かった」

 

智樹の右肩のブースターに火が付く。

 

「うおおおおおおおお!!!」

 

勢いが付き、爆弾は思いっきり目の前で何かにぶつかり爆発する。

 

『きゃっ!』

『くっ!』

 

一同が思わず目を閉じる。

そして一同が目を開けると目の前に大きな城があった。

 

「なんじゃこりゃああああああ!!」

「なんで目の前に!?」

「レーダーにも反応がなかったわ。それなのに…」

「簡単な話だ。あいつは結界でレーダーにも反応しないようにしてたのさ。

しかも目の前にあるのは簡単に都を攻めれる様にするためだ」

「秋山、お前気づいていたのか?」

「最初に来た時から分かっていた。だけど何度も言ってるように干渉しすぎてはいけないからな。

まあ頑張ってこい。それと一刀達」

「うん?」

「お前達は都で待機してろ」

「今回はそうさせてもらうか」

「智ちゃん、頑張って!」

「ああ」

 

こうして智樹、イカロス、ニンフ、アストレア、カオスがアステヅーマアの城へと突撃して行く。

 

 

智樹達がアステヅーマアの城に突撃したことはアステヅーマアの耳に届いていた。

 

「アステヅーマア様!」

「うろたえるな、ズモー」

「ですが……」

「奴らを私自らが葬ればよいだけのことだ」

「……ならば私が出向きます」

 

ズモーがアステヅーマアに報告し、その場を去って行った。

 

「うおおおおおおおお!!」

 

智樹を先頭に五人は敵兵士達を倒していく。

 

「ジェットマットブリットーーーーー!!」

「Artemis」

「どっせええええええい!!」

 

ニンフがArtemisをコントロールし、アストレアのchrysaorとカオスの羽と協力して横から襲い掛かってくる敵兵達をなぎ払っていき、智樹の装甲を覆った右腕を一番前にして敵兵達は吹っ飛んでいく!

 

「オラオラオラオラ!!」

 

智樹達の勢いは止まらない。

 

「待て!」

 

ズモーが智樹達の前に立ち阻む。

 

「ここから先は通さんぞ!」

 

ズモーの手から強力な魔導波が放たれ、それは智樹目がけて飛んでくる。

 

「aegis、展開!」

 

イカロスがaegisで自分達を囲んで、ズモーの攻撃から智樹を守る。

 

「なっ!」

 

ズモーが驚いたのは防がれたことではなく、守っていながらも変わらぬスピードで突き進んでいく智樹達を見たからである。

 

「うおおおおおお!!」

 

智樹は左手の篭手を装甲に変える。

 

「ダブルハイマットブリットーーーーーーーー!!!」

 

智樹が両手を前にし、両拳はズモーの体を完全に貫き、ズモーが気づいた時には智樹達は既に自分の後ろにいた。

 

「なっ……」

 

ズモーが恐る恐る自分の体を見る。すると自分の体が完全に貫通し、穴が開いていることに気づく。

 

「な、なんじゃとーーーーーーーー!?」

 

智樹達の姿がなくなると同時にズモーはその場で爆発を起こした。

智樹達は未だに突撃していく。

 

「アステヅーマア! どこだぁ!」

「ここだぁ!」

 

すると突然自分達の足場が崩れて、智樹達の体勢が崩れる。

 

「うわっと……」

 

智樹達はその場で止まる。すると目の前にはアステヅーマアの姿があった。

 

「あいつが……」

「アステヅーマア!」

「…レーダーに生体反応あり。本物ね」

「思ったより小さいね」

 

アステヅーマアの大きさは全長2.5メートルと思ったよりも小さい。

見た目はよくRPGものであるように魔王的な薄紫色のローブをしていて、顔たちは少し年老いた魔物の顔であった。

 

「ふん、貴様のようなわっぱや小娘など私一人で十分だ」

 

アステヅーマアは力を入れると、アステヅーマアからどす黒いオーラが流れ出す。

 

「さすが、世界をしようとしてるだけあるぜ…」

「気を付けてください、マスター」

「ああ。イカロス達も援護頼む」

「ええ」

「うん!」

「うおおおおおおおおお!!」

 

智樹がアステヅーマアに突撃していく。

 

「塵と消えよ!」

 

アステヅーマアが突撃していく智樹に向かって手からビームのようなものを放つ。

 

「うおっと!」

 

智樹は肩のブースターを駆使して、アステヅーマアのビームを避ける。

そして智樹の後ろからニンフがハッキングして操るイカロスのArtemisとカオスの羽が飛んでくる。

 

「ぬううううん!!」

 

アステヅーマアがビームを放った手とは別の手から衝撃波を出し、Artemisと羽を撃ち落したりして防ぐ。

 

「でゃああああああ!!」

 

智樹は飛び上がり、アステヅーマアに向かって右手の拳を振るう!

 

「ハイマットブリットーーーーーーー!!」

 

智樹のハイマットブリットはアステヅーマアが最初にビームを放っていた手で受け止められる。

 

「ぐおおおお!」

「うおおおおおおおおおおお!!」

 

智樹が何とか左手を使おうとするが……。

 

「させんぞ!」

 

アステヅーマアが空いている片方の手から衝撃波を出し、智樹を後方に吹き飛ばす!

 

「うわああああああ!!」

「智樹!」

 

アストレアが飛ばされる智樹を抱き留める。

 

「大丈夫? 智樹」

「なんとか」

「消え失せよ!」

 

アステヅーマアがビームを放ち、アストレアは智樹を抱えながらもアステヅーマアの攻撃を避ける。

 

「くっ! 思ったより早い……」

「ちょこまかしよって!」

「あのままじゃいつかはデルタに当たる……」

「マスター……」

「お兄ちゃん!」

 

カオスがアステヅーマアに向かって突撃していく!

 

「カオス! ダメよ!」

 

ニンフの静止を無視するカオス。

 

「ふん」

 

アステヅーマアが片手の衝撃波をカオスに浴びせる。

しかしカオスは怯まずにそのまま突撃していく。

 

「何!?」

 

アステヅーマアは少し驚く。

 

「貴様まさか…生身か!?」

 

カオスは他の面々と違い、生身でこの世界に行っているため一刀達と同じでレベルが高いのだ。

 

「ええええい!!」

 

カオスは羽をさらに尖らせ、その羽でアステヅーマアの手首を貫く!

 

「ぬおっ!」

 

アステヅーマアは一瞬怯む。

 

「(今ね!)パラダイス=ソング!!」

 

ニンフがパラダイス=ソングを放ち、攻撃はアステヅーマアに命中。

その場で煙が立ちこめる。

 

「おのれ……」

 

アステヅーマアにはあまりダメージがなかった。

 

「今よ! トモキ! デルタ!」

「はい! いっけええええええ!」

 

アストレアが智樹をアステヅーマアに向かって投げ飛ばす!

 

「うおおおおおおお!!」

「ぬっ!?」

 

アステヅーマアの目の周りはまだ煙が張れていなかったため、アステヅーマアには智樹の正確な位置がつかめてなかった。

アステヅーマアがようやく周りが見えそうになった時には智樹は既にアステヅーマアの懐にいた。

 

「ダブルハイマットブリットーーーーーーー!!」

 

智樹の二つの拳からなる必殺技がアステヅーマアの体に直撃する。

 

「ぐぉおおおおおおおおおお!!」

「うおおおおおおおおおおお!!」

 

智樹の両肩のロケットがさらに勢いを増す。

 

「ぬぉおおおおおおおおおりゃあああああああ!!」

 

ロケットパンチのような拳の氣が智樹の手から繰り出され、アステヅーマアは城から上空へと吹き飛ばされる。

 

「おおおおおおあああああああ!!!!」

 

アステヅーマアは上空で大爆発を起こし、爆煙が舞う。

 

「やった!」

「いや、まだだ!」

 

 

秋山のモニターが現れ、喜んでいたアストレアに注意を促す。

秋山の忠告通り爆煙から姿の変わったアステヅーマアが地上へと降りてくる。

アステヅーマアの姿はRPGゲームでよくある魔王の第2形態のような化け物の姿になり、背中から2対の翼が生え、頭には4本の角が生え、顔も先ほどの魔物よりも魔物らしく悪魔に近くなっていた。

しかも大きさは先ほどよりも大きく、10メートル近くになっていた。

 

「この姿にまで追い込んだのは褒めてやる。だがそれは間違いだと知るだろ」

「間違いですって!?」

「ふん!!」

 

アステヅーマアが軽く手を振る。

 

「避けて!」

 

イカロスに言われて、ニンフとカオスも空を飛んで避け、イカロスも降りていた智樹を抱えて飛ぶ!

全員が飛んだあと城の方を見ると、城は消えてなくなり、城のあった周辺の地面に突然穴が空く。

 

「なっ!?」

「これは……」

「これが私の真の力だ」

 

アステヅーマアが片手に強力な炎を溜める。

 

「でゃあ!」

 

アステヅーマアが炎を投げる。一同はその炎の攻撃を避ける。すると炎は地面に落ちたと同時に炎の柱を作り出し、近くにいたアストレアの体を燃やしかける。

 

「熱っ!」

「デルタ!」

「なんて炎…」

「今のは『レアモーザ』だ。よそ見をしている場合か?」

 

アステヅーマアが両手を智樹達の前に広げる。

 

「くらえ! 『アニゾウン』!」

 

アステヅーマアが呪文の名前を唱えるとアステヅーマアが手を広げた目の前の空間が突然爆発を起こす!

 

『きゃあああああ(うわああああああ)!!!!』

 

アステヅーマアの目の前が空間の爆発の煙でたちこめる。

 

「ついでだ。『ヘルサンダー』!」

 

アステヅーマアが指を頭上にやるとイカロス達のいるところに黒く巨大な雷を落とす!

 

『!!!!!』

 

黒い雷によって煙が張れるとそこにはaegisを張ったイカロスとaegis=Lを張ったアストレアが自分達や智樹を守っていた。

 

「やはり防がれていたか。ならばこれならどうだ? 『テラネイッシュ』!」

 

アステヅーマアがイカロス達に向かって、爪を鋭く立て、強力な刃の氣を爪に纏わせ、イカロス達に向かって放つ!

 

「マスター!」

「お兄ちゃん!」

 

イカロスとカオスが智樹の前に立ち、アストレア、カオス、イカロス、ニンフ、智樹の順でアステヅーマアに近い状態になった。

そしてアステヅーマアの『テラネイッシュ』は強力であり、イカロスを囲んでいたaegisだけでなくアストレアのaegis=Lを完全に切り裂く!

 

『きゃあああああああ(うわああああああああ)!!!!』

 

全員が地面へと叩き落とされる。

 

「いててて……」

「アルファー、デルタ、大丈夫?」

「私は何とか……」

「! イカロス! カオス!」

 

智樹がイカロスとカオスの方に駆け寄る。

アストレアは盾を持っていたために見た目はなんともなかったが、後ろにいたカオスとイカロスはまともに食らってしまい怪我をしてしまう。

イカロスは自己修復機能が高いため、短時間でも怪我の回復は可能。

カオスも自己修復機能は持ってはいるが、イカロスよりは性能が下のために回復には時間がかかる。

しかもイカロスは短時間で怪我を完全回復できるとはいえ、イカロスの負った傷は今までのものと比べると遥かに深い。

その上、夢の世界で精神だけで来ているために自己修復機能は生身のカオスと変わらないものになっていた。

さらにはモーデンのところで飲んだ温泉水も致命傷でなければ意味がないが、イカロスの傷は致命傷と認識されてなかったため、温泉水の効果が働かなかった。

 

「二人ともこのまま死ぬことはないけど、簡単には回復できそうにないわ」

 

ニンフが二人の様子を見て、冷静に分析する。

 

「もう駄目なのか」

 

智樹が両膝をつき、両手を広げて地面につける。

 

「ふふふ、とうとう観念したか。ならば今度こそ死ね! 『テラネイッシュ』!」

 

アステヅーマアが地面にいる智樹達に向かって先ほどよりも早い『テラネイッシュ』を放つ!

 

「!」

「ダメ! かわせない!」

「トモキ!!」

 

『テラネイッシュ』の斬撃波が智樹達に到達しようとした時であった。突然その場にいた智樹達の姿が消える。

 

「何!?」

 

アステヅーマアが目を疑った。智樹達が消えたこともそうだが、智樹達の代わりに一人の男が『テラネイッシュ』の前に立っていた。

その男とは秋山であった。

 

「『ギガスラッシュ』!!」

 

秋山が刀を召喚し、その刀から放たれた『ギガスラッシュ』が『テラネイッシュ』を相殺した。

 

「くっ! 貴様! 闇の魂の…」

「来れないと思ったか? 来なかっただけだ。しかしお前達が来るとはな」

「「悪いか?」」

 

秋山が見た先には智樹とニンフとアストレアを抱えているディケイドカブト、重傷のイカロスとカオスを抱えるアクセルトライアルがいた。

そう、智樹達が消えたのはディケイドカブトのクロックアップ、アクセルトライアルの高速移動で智樹達を運んだだけであった。

 

「まったく、とんでもない奴だな」

「どっちのこと言ってるんだ?」

 

秋山が一刀達に尋ねる。

 

「どっちもだな」

「俺はお前だな」

「ふん。おい智樹、腑抜けてる暇があったら戦ったらどうだ?」

「させると思うか!」

 

アステヅーマアが次の攻撃に入ろうとしたが、突然金縛りにあう。

 

「何!?」

 

アステヅーマアが下を見ると秋山が自分に対して片手を広げていた。

 

「少しおとなしくしてろ」

 

秋山が智樹の方に駆け寄る。

 

「イカロス…カオス……」

 

地面に寝かされたイカロスとカオスを見て涙を流す。

 

「智樹、俺はこれ以上干渉する気はないぜ。この二人にもこれ以上やらせる気はない。

だからお前が戦え」

「俺に戦えだって? どう考えてもあんた達の方が強いだろ! だったらあんた達が戦えよ!」

「智樹、俺は言ったはずだ。干渉しすぎるとこの世界が崩壊するってな」

「だったらそこにいる一刀って奴がやればいいんじゃねえのか!?」

「最初はそのつもりだったが、事情を聞いて、その気が失せた」

「俺は元々自分の部下を取り戻しに来ただけだ。あいつと戦う気はない」

「けど!」

 

すると智樹は平手打ちをくらわされる。その平手打ちをくらわしたのはなんとニンフであった。

 

「ニンフ…」

「トモキのバカ!」

 

ニンフの目からも涙が流れていた。

 

「アルファーとカオス、それにデルタが怪我をしたのは誰のためだと思ってるの!?」

「それは……」

「トモキのためよ! あいつを倒すことが出来るのはトモキだけだって信じてるからよ!

それが分からないの!?」

「信じられてもよー」

「バカ!」

 

今度はアストレアが智樹に対してバカと言い、アストレアの目からも涙が流れていた。

 

「イカロス先輩もカオスもどんな気持ちであんたを守ったと思ってるの!?

私がバカでも分かるわよ! あんた、私以上のバカよ!」

「バカって言うな、バカ!」

「バカはあんたよ! バーカ! バーカ!」

「「……マスター(お兄ちゃん)」」

 

すると倒れていたイカロスとカオスが智樹に声をかける。

 

「私は…マスターを信じています……」

「お兄ちゃん…勝って………。私、お兄ちゃんなら…勝てるって……」

「「信じてる(ます)……」」

 

イカロスとカオスはボロボロになりながらも智樹を信じていた。

 

「お前達……」

「今度はお前だな」

「俺?」

「ああ、お前が自分を信じるんだ」

「俺が俺を信じる?」

「夢の管理者が言ってただろ。信じる力があればその篭手が力をくれるって…」

「……そうだったな」

 

二人の一刀と秋山にも励まされ、智樹は涙を拭う。

 

(俺は……イカロス達が信じてくれた俺を……信じる!)

 

智樹が強く心に信じるように念じると金色の装甲は輝き始める。

 

「これって……」

「パワーアップ……来たか」

「ああ」

「もっと念じな。そいつがもっと力を引き出してくれるはずだ!」

「うおおおおお!!」

 

智樹自身が光り始め、光が周りを包む。

そして光が止むとそこには金色の鎧に身を包んだ智樹がいた。

 

 

その鎧は頭にライオンの鬣のような兜、背中には4対の羽が出来ていた。

 

「これが……」

「名前でも考えな」

「これは……こいつの名は『スーパーブリット』だ!」

「『スーパーブリット』…」

「いいんじゃないのか?」

「「マスター(お兄ちゃん)…」」

「イカロス、カオス……ニンフ、アストレア、そこで待っててくれ。

俺があいつを倒してきてやる」

「良い顔だな」

 

秋山が再びアステヅーマアの方に手を広げる。

するとアステヅーマアは再び動けるようになる。

 

「ハンデありじゃつまらんだろ」

「ふざけおってーーーーーー!」

 

アステヅーマアが『レアモーザ』を放とうと、炎を溜めようとするが……。

 

「うりゃああああ!!」

 

アステヅーマアの攻撃よりも先に智樹がアステヅーマアの懐に入り、アステヅーマアの体に拳をぶつける!

 

「がはっ!! 『アニゾウン』」

 

アステヅーマアは両手を広げて智樹の周りを大爆発させる。しかし智樹にはダメージらしいものは見当たらず、智樹はそのまま拳のラッシュをアステヅーマアに当てる。

 

「ぐおぐおぐおぐおぐおっ!!」

 

アステヅーマアの口から血が吐かれる。

 

「ダブルハイマットブリットーーーーー!!」

 

両手の拳を当て、そこから拳の氣がアステヅーマアを吹き飛ばそうとする。

アステヅーマアは何とかこらえる。

 

「ぐうううううう」

「こいつで決めてやる!」

「ならばこれで死ぬがいい! テラヘルビックバンマダランテ!!」

 

アステヅーマアの両手から強力なエネルギーが瞬時に溜まり、その溜まったエネルギー波が智樹に向かって放たれる!

 

「うおおおおおおおおおおお!! フルブリットバーーーーーースト!!!」

 

智樹は力のすべてを右手に込めるかのように力を溜め、背中の羽の先端からロケットエンジンが出現し、全ての羽のロケットが点火し、その勢いで智樹はアステヅーマアの放ったエネルギー波の中心へと飛んでいく!

 

「なっ!? ぬおおおおおおおお!!」

「うおおおおおおおお!!」

 

智樹とアステヅーマアの力と力がぶつかり合う。

そしてその力のぶつかり合いは智樹が勝利し、智樹はそのままエネルギー波の真ん中を突き進み、智樹の右手の拳はアステヅーマアの体に到達する。

 

「ぐああああはっ!」

 

アステヅーマアはダメージを受けるもまだ倒れようとしない。

 

「もっとだ! もっと! もっと輝けーーーーーー!! フルブリットバーーーーースト!!!!」

 

そして智樹の拳はアステヅーマアの体を完全に貫通し、智樹はアステヅーマアの体を完全に通り過ぎていた。

 

「がはっ! バカな……この私が……夢の世界の支配者であるこのアステヅーマアが…」

「そんなことほざいてる奴に限って負ける」

「それが世界の理だな」

「支配したって面白くないことに気づかない奴はさっさと消えてろ」

 

二人の一刀と秋山にぼろくそに言われるアステヅーマア。

 

「俺の……勝ちだ……」

「ぐぉおおおおおおおおああああああはあああああ!!」

 

アステヅーマアは大爆発を起こす。

アステヅーマアのいた周りのどす黒い空が晴れる。

 

 

「………」

 

アステヅーマアの消滅を確認すると智樹の体は元の状態になり、装甲も篭手へと戻る。

そして智樹はそのまま地面へと落ちていく。

 

「トモキ!」

 

ニンフとアストレアが智樹を抱き留めようと動こうとしたが、それよりも先に二つの影が智樹の元に飛んでいき、智樹を抱き留める。

その二つの影とは怪我をしていたはずのイカロスとカオスであった。

 

「イカロス…カオス……お前達、怪我は…」

「大丈夫…です」

「お兄ちゃん…頑張ったんだもん。私もこれくらい頑張りたい……」

 

イカロスとカオスによって地上に降りる智樹。

 

「よく頑張ったな智樹」

「なんか体力一気に持ってかれた感じだぜ」

「慣れてないことするからだ」

「まあ今回に至っては無理ないか。俺達が手伝えばよかっただけだしな」

「笑って言うなよ…」

 

ディケイドの一刀に言われてツッコミを入れる智樹。

 

『一刀(さん)!』

『智樹(智ちゃん)(桜井君)!』

 

そこに智樹や一刀の連れの全員がやって来る。

 

「皆」

「智ちゃん、大丈夫?」

「何とか……」

 

すると周りのものが突然消滅し始める。

 

「これって……」

「あいつが消えたことでこの夢の世界がまた個別のばらばらのものになろうとして、ひとまずは崩壊しようとしてるんだ」

「あれ?」

「うちらの体が……」

 

モトナリ、モトチカ、ソウリン、ウィンガー、弘樹の体が消え始める。

 

「お前達はこの夢の世界に囚われてたからな。この世界と一緒に自然消滅する。

なに、安心しろ。ただ現実世界で目が覚めるだけだ。害は特にない」

「せやか」

『じゃあ一刀(北郷教導官)』

「先に帰ってるわ」

「ああ」

 

そしてモトチカ達は消滅していった。

 

「ところで俺達はどうなるんだ?」

「そういえば消滅しないわね~」

「お前達は夢の世界に囚われてたわけじゃないから消滅しないぞ。特に俺とカオスとお前達」

 

秋山が二人の一刀と美沙緒に対して言う。

 

「俺も含めてお前達は生身だからな。俺はともかく、お前達はさっさと帰らんとこの世界ごと消滅するぞ」

「それは大変だ」

「ええ~と、元の世界の座標は……」

 

美沙緒が次元跳躍器で元の外史への座標に合わせる。

 

「これでよし!」

「それじゃあ帰るぜ!」

 

アクセルの一刀と美沙緒は次元跳躍器で元の世界(自分達のいた外史)に帰る。

 

「それじゃあ俺も帰るわ。もしかしたらまた会うかもな」

 

ディケイドの一刀の前に銀色のオーロラの壁が現れる。

 

「しかし……」

「?」

 

ディケイドの一刀が日和を見て、智樹を見る。

 

「お前も大変そうだな」

 

ディケイドの一刀は笑いながら壁を潜り抜け、ディケイドの一刀がくぐり終えると一刀とともにオーロラは消滅する。

 

「さてと、次は俺達か」

「え? 俺達どうなるの?」

「大丈夫だ」

 

秋山が智樹達に向かって手を広げるとそこからオーラのようなものが智樹達を包む。

すると智樹達の体が消滅し始める。

 

「これでお前達もこの夢の世界から目を覚ます。

さてと、カオス、俺達も帰るか」

「うん」

 

秋山がゲートを召喚し、秋山とカオスはゲートをくぐり、二人がくぐり終えるとゲートは消滅する。

智樹達の体も消滅し、智樹達が消えるとアステヅーマアの作り出した夢の世界も完全に消滅した。

 

 

アステヅーマアを倒し、現実世界では元の日常に戻っていた。

 

「本当に元に戻ったんだな」

 

通学路を歩く智樹達。昨日までは眠っていたために人が外に出ていなかったが、今は元の通り普通に人が外に出ていた。

 

「よかったね、智ちゃん」

「ああ」

 

智樹は思わず右手を見ながら握りしめる。

 

「マスター、どうしたんですか?」

「いや、あの力、現実でも使えたらな~とかさ」

「秋山が言ってたけど、あれはあの夢の世界限定のものだからもう消滅してるって」

「それに使えたってどうするのよ? このおバカ」

 

アストレアにバカ呼ばわりされる智樹。

 

「そうだな~……。

……っ! 手が勝手に……」

 

智樹の手は大きく広げられ、その手はそはらの胸をつかむ。

 

「……智ちゃんの……」

 

そはらはいつものチョップをする状態になる。

 

「待てそはら! これはこの手が勝手に……」

「バカーーーーーーーー!」

「へぶし!」

 

いつものようにそはらのチョップを食らう智樹。

 

「大丈夫ですか? マスター」

「相変わらず懲りないわね、トモキ」

「いててて……」

 

こんな日常でも智樹は楽しくイカロス達と過ごすことを幸せだと思うのであった。

 

 

 

 

 

                      映画的キャスト

 

 

                      桜井智樹

 

 

 

                      イカロス

 

 

 

                      見月そはら

 

 

 

                      守形英四朗

 

 

 

                      五月田根美香子

 

 

 

                       ニンフ

 

 

 

                      アストレア

 

 

 

                       カオス

 

 

 

                       風音日和

 

 

 

 

 

 

 

                      ダイダロス

 

                        竹原

 

                       モーデン

 

                      ジャリサム

 

                       ズモー

 

 

 

 

 

 

 

                       兵士達

 

 

 

 

                    ウィンガー・マウザー

 

                       吉村弘樹

 

                        董卓

 

                        賈駆

 

                       毛利モトナリ

 

                      長曽我部モトチカ

 

                       大友ソウリン

 

                        管輅

 

 

 

                      北郷美沙緒

 

 

 

                      北郷一刀

 

 

 

 

                     アステヅーマア

 

 

 

                      夢の管理者

 

 

 

                      秋山総司郎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                          完

 

 

 

 

 

 


 
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