秋山の力で智樹達と共に夢の世界に来たイカロス達。
しかしそはらとニンフは智樹達とは少し遠い場所に居り、二人は現在智樹達のところへ向かっている。
そして智樹達は夢の管理者のアドバイスにより「鬼の谷」にいる「モーデン」のところに向かっていた。
「ここが『鬼の谷』か」
「雰囲気からして、そうですね」
「ここからは注意深く進むとしよう」
「そうですね、銅像にされたら困りますもんね」
そしてイカロスを先頭に一同は進む。
「どこにいるんでしょうか?」
「このまま探しても見つからないかもしれないな。イカロス達に飛んでもらって探してもらうか?」
「そうっすね。イカロス、悪いけど少し空飛んでくれないか?」
「分かりました」
イカロスは空へと上がる。
「イカロス先輩~、何か見えます?」
「今のところ、生体反応はない」
「……! 危ない!」
日和が突然智樹達を突き飛ばす!
すると突然一同に向かって銅色のビームが一同の後ろから飛んでき、ビームは日和に当たる。
「風音!」
智樹が日和の名前を叫ぶ。
しかし日和は銅像にはならなかった。
「……大丈夫だよ、桜井君」
「そうか、風音はエンジェロイドだったんだ」
「はい。こういう時には便利ですね」
「しかし後ろから飛んできたな」
「セーフティ解除、Artemis(アルテミス)、フルファイヤー!」
イカロスがArtemisをビームの飛んできた方に飛ばす。
するとビームを放った場所の岩陰から何かが現れ、Artemisをすべて破壊する。
「まさか、銅像にならないとは……」
岩陰から現れたのは頭に日本の角を生やし、棘のついた棍棒を持ち、右目に機械的な眼帯を着けた者が現れた。
「お前がモーデンか?」
「お前達も俺の命を狙いに来たのか?」
「は?」
「そうだ。絶対そうだ。この谷に来る人間は皆俺を殺しに来る」
「違う! 俺達はお前に協力してもらおうと……」
「殺される前に殺す!」
モーデンが棍棒で襲い掛かろうとし、アストレアが自身の持つ剣『chrysaor(クリュサオル)』で棍棒を防ぐ。
「くっ……なんてパワー……」
「なんだこいつは?」
「恐らくは命を狙われすぎて疑心暗鬼になってるんだ」
「疑心暗鬼……」
「だったら、やるしかないわね」
美香子が持っていた銃を握りしめようとするが……。
「待て」
「英君?」
「智樹、お前が奴に勝て」
「は? 俺が? イカロスやアストレアがいるのに?」
「あの二人が戦っても恐らくはだめだ。その金色の篭手を着けているお前がやった方が相手も納得するだろ」
「けど、俺そんな先輩や会長にイカロス達みたいに強くないっすよ?」
「夢の管理者が言ってただろ。信じる心があれば強くなれると。自分を信じるんだ、智樹」
「先輩…」
「桜井君……」
「桜井君、頑張って……」
「会長…、風音……」
智樹は少し間を開けて考えるが、アストレアのことを考えると考える時間はあまりない。
「……分かった。やるだけのことはやってやる」
そう言って智樹は駈け出していく!
「うおおおおおおお!!」
智樹が右の拳をモーデンに当てようとし、モーデンは思わずアストレアとの交戦をやめ、智樹の攻撃をかわす。
「智樹!?」
「マスター」
イカロスが智樹の元に降りてくる。
「イカロス、アストレア、援護頼めるか?」
「はい」
「任せてよ!」
イカロスとアストレアが答える。
「よし、行くぜ!」
智樹が先頭に立って走り出す。
「ぬぉおおおおりゃあああ!」
智樹よりも先にモーデンが棍棒で攻撃しようとする。
「aegis(イージス)=L!」
アストレアの持つ盾、aegis=Lはイカロスのaegisと比べると防御範囲はかなり狭く、長時間の使用は出来ないが、防御力はイカロスのものを上回る。
アストレアのaegis=Lの防御に思わず、モーデンは後ろに吹っ飛ばされる。
「Artemis」
イカロスがArtemisを発射し、モーデンは吹き飛ばさながらも何とか棍棒を振るってArtemisを撃ち落す。
しかしArtemisによりその場で爆煙が舞う。
「くらえええええええ!!」
爆煙にまぎれて智樹が右の拳でモーデンを攻撃する!
「ぐおあっ!」
モーデンは地面へと叩きつけられる。
「くそ…」
モーデンは棍棒を地面に突きながら起き上がる。
「もう一発!」
智樹がアストレアに抱えられて、モーデンに突撃していく!
「……よし!」
モーデンの右目が開けられる。
「しまった!」
「マスター!」
モーデンの右目から銅像にするビームが放たれそうになる。
しかし……。
「!」
モーデンは突然、頭を地面に向け、ビームは地面に当たる。
「なっ!?」
モーデンだけでなく、その場にいた全員が何が起こったのか分からない。
しかしその答えはすぐに分かった。
何故ならモーデンの後ろにステルス能力で姿を消していたニンフが姿を現したのだ。
「ニンフ!」
「デルタ、トモキ、今よ!」
「はい!」
「うぉおおおおおお!!」
智樹は強く念じる。すると智樹の右手の篭手が変化し始める。
「なんだ?」
すると右手の篭手は右腕を覆う装甲となり、さらに右肩部分にはロケットエンジンのようなブースターが付く。
「こいつは……」
するとロケットエンジンのようなブースターが点火されたかのように火のようなものを吹き出し、智樹とアストレアのスピードを上げる。
「智樹!」
「……とどめのハイマットブリッドーーーーーー!!」
智樹がその場で考えた必殺技の名前を叫び、その必殺技の拳はモーデンの頭部に直撃する!
「ぐおおおおおおおおお!!」
モーデンは強く地面に叩きつけられる。
「はあ……はあ……」
智樹は息を切らす。
右腕を覆っていた装甲は元の篭手へと戻る。
「う……う……」
モーデンは意識がもうろうとしていたものの、生きていた。
「ニンフ、助かったよ。ありがとう」
智樹がニンフの手を握ってお礼を言う。
「……」
「ところでそはらは?」
「そはらなら…」
ニンフが一つの岩を見る。
すると岩陰からそはらが出てくる。その格好は先ほど見た男装している格好であった。
「智ちゃん…」
「そはら、お前記憶が戻ったのか?」
「うん。ニンフさんに会ったら突然……」
「どうやら私達エンジェロイドが会っても記憶は戻るみたいなのよね」
「そうなんだ」
「うううん……」
モーデンはようやく起きる。
「起き上がった!」
智樹達はビームのことを警戒してイカロス達の後ろに隠れる。
「あれ? 俺死んでねえ」
モーデンは気を失っていたのにも関わらず殺されてないことを一番に驚く。
「お前達、俺を殺す気ないのか?」
「最初っからないって言っただろ」
「あれ、本当だったのか」
智樹達はモーデンに会いに来た理由を語る。
「ごめんな」
モーデンが頭を下げる。
「ここに来る人間は皆、俺が鬼だって理由だけで殺しに来るんだ」
「それで人間不信か」
「可哀そうですね」
「いいんだ。分かってくれて……」
「でも銅像にされた人達って元々は現実の世界の人なんじゃ……」
「それだったら大丈夫だ」
モーデンが一度左目を閉じて再び開けるとそこから右目のビームと似ているビームが放たれ、それは岩の方に当たる。
「これを銅像にされた人達に浴びせれば元に戻る。
まあそれは後でするとして、アステヅーマアを倒すための協力だな。
ついてこい……」
モーデンがあるところに連れて行く。
そこは温泉が湧きあがっていた。
モーデンは温泉の水を温泉の近くに置いてあった瓶にすくって入れる。
「これを飲め」
「温泉水を?」
「これはただの温泉水じゃない。これを飲んだら一度だけ致命傷の攻撃を受けても無傷でいられるんだ」
「すごいな、それ」
「汲む物はなんでもいいんだけど、あまりに飲みすぎると腹が痛くなるからな。この瓶一杯が一番適量だ」
「そうか」
そしてモーデンのすくった温泉水を全員が飲んだ。
「それとな、アステヅーマアの城は普段はこの夢の世界でも姿を現さないんだ。
アステヅーマア自身が外に出ようとしない限りは結界が張られてるようで、俺も分からない」
「じゃあどうすれば……」
「風の噂だとあいつの軍は都の方に向かってるらしい」
「都とは……」
「私が最初に出てきたところです」
そはらが説明する。
「ここから北の方ですけど、どのくらいかかるどうか……」
「少し待ってろ」
そこに秋山のモニターが現れる。
「秋山」
「ここからだと約50キロだ」
『50キロ!?』
一同が驚く。
「安心しろ。この近くに都の川に繋がるが流れている。
少し急だが、時速5キロの速さでその都に行ける」
「単純計算で10時間かかると言うことね」
「この船を使え」
モーデンがどこからともなく大きな船を出す。
それは少し小さめの屋形船のような船だった。
「でけえ」
「これなら人数分運べるし、結構安定性もあるし、屋根もある。雨に降られても大丈夫だ」
「ありがとうございます、モーデンさん」
「いいんだ。あいつがいなくなれば俺も安心して暮らせるようになるからな」
そしてモーデンから船をもらい、モーデンと別れ、川の方へと向かった。
「頑張ってくれ……」
モーデンは静かに智樹達を見送った。
智樹達は谷の川へとたどり着く。
「確かに勢いがあるな」
「このまま船を浮かべたら流されて行っちゃいそうね~」
「……イカロス」
「はい」
「皆乗った状態でこの船、川に運べる?」
「出来ます」
智樹の質問にイカロスは簡単に答えた。
そしてイカロス、ニンフ、アストレア以外の面々が船に乗り込み、イカロス達三人は船を川へと浮かべる。
それから三人は船に乗り込む。
「このまま問題なく行けそうですね」
「もう夜だな」
「寝るとするか」
「夢の世界で寝るなんて変ですね」
「とりあえず寝ないと明日までに体力が持たない」
「それじゃあおやすみなさい」
こうしてイカロス達エンジェロイド以外は全員眠ることにした。
そして8時間後、全員が目を覚ます。
「そういえばお腹すきましたね」
「何か持ってる?」
「何も……」
「では魚釣りでもしよう」
「イカロス、頼むわ」
「はい」
イカロスが智樹に言われてArtemisを川に向かって発射させ、魚を大量に手に入れる。
「でも火は……」
「あ、ここに暖炉がある」
船には便利なことに暖炉らしきものがあり、火をつけることが出来、魚を焼いて食べた。
「さてと、そろそろ都につくはずだ」
そして一同は都近くの川で船を降り、都に入る。
「なんで都で直接降りなかったんですか?」
「このまま進めば不審者扱いされる可能性がある」
「まあこんなのがいますもんね~」
智樹が思わずイカロス達を見る。
「失礼しちゃうわね」
ニンフが機嫌を損ねる。
「まあまあニンフさん」
「智ちゃん! もっとデリカシーっての考えて!」
「ちょっとそはらさん! ぎゃああああ!!」
そはらが智樹にいつものチョップをくらわせる。
「何だ?」
「一体何事だ!」
「むっ! 死んでいる!?」
「貴様! なぜ殺した!?」
「ええええええ!?」
そはらにとってはいつものことだが、この夢の世界ではとてつもなくいつものことではない。
「貴様ら! 連行する!」
「え? なんで私達も!?」
「貴様らが止めていればこんなことにならなかったんだ!」
『えええええええ!?』
こうして一時的に死体となった智樹とその智樹を殺したそはら、そしてイカロス達は城へと連行された。
「うわっ!? こいつ生き返った!?」
生き返った智樹を見て驚く兵士達。
「いや、これいつものことだから……」
「うん? 初めて見るな、その篭手」
「あ、これか?」
智樹が手についている篭手を見せる。
「……もしかしてこれって………」
「どうしたんですか?」
「すぐに国王に知らせろ! この者は選ばれし者だ!」
「ちょっ!? 選ばれし者って……」
「国王ー! 国王ーーーー!!」
兵士達はすぐに騒ぎ、智樹達は国王と謁見の間へと連れて行かれる。
(本当に竹原だよ……)
(ところでそはら、お前堂々と顔出して大丈夫なのかよ?)
(さっき秋山さんが言ってたけど、私の記憶が戻ったから私の存在がリセットされてるみたいだから、気づかれないみたい)
「お主らがこの世界に平和をもたらすと言う伝説の勇者『金色の拳士』とそのお仲間だったとは…」
「なんっすか? その『金色の拳士』ってのは……?」
「ああ。一人の少女が教えてくれたんだよ。修道服を着た小さい女の子が…」
「修道服を着た女の子?」
「あの、その女の子って黄緑色の長い髪の毛で首にこの人達みたい首輪をつけてませんでした?」
「髪の毛はそうでしたね。首の方は言われてみればそうだったような………」
「やっぱり…」
「カオスね」
「あの子がそんなことを言って回ってるんですね」
「それでその子は今どこに?」
「それがその話をしてすぐにどこかへと…」
「そうですか」
一同はカオスがどこかに去ったことを知り、少し寂しそうな顔をする。
「カオスさん、どうして行っちゃったんだろ」
「カオスのことだから残ると思ってたんだけど……」
「恐らくは秋山に何かを言われて動いているんだろう。智樹の噂を流すよう指示したのも秋山の指示だな」
「まあ考えがあるんなら別にいいか」
「それであなた様方にお願いがあるのです。我々と一緒に『ネガミス帝国』と戦ってください!」
夢の世界の王様である竹原が頭を下げる。
「奴らの軍が明日の朝にはこの都へと近づいてくるのです!
ここを落とされたら、もう我々には絶望しかないのです!
どうか、お願いします!」
いつもは学校の先生の竹原が王様として頭を下げてるので戸惑う智樹達。
「どうするんすか?」
「アステヅーマアを倒さなければこの世界に平和が訪れないからな」
「戦うしかないわよね~」
「まあなんかあったらイカロス達に頼めばいいし」
「……」
「はい」
こうして智樹達は一緒に戦うことになった。
アステヅーマアの城では智樹達が都入りした情報が既に入っていた。
「奴らは都へと入ったか」
「はい」
「ちょうどよいな。軍を派遣したところに来てくれるのだから……」
「せやけど、相手は夢の管理者が力を与えた者」
「簡単に倒せないんと?」
アステヅーマアの元に訛り言葉を話す三人の女性と二人の男がやって来る。
「何故そう思うのだ?」
「仮にも夢全体を管理していたものが力を与えたのだ。警戒するのは当然であろう」
「だが、今都に向かっている軍は我が『ネガミス帝国』でも屈強の戦士にして我の右腕でもある」
「『ジャリサム』やろ?」
「そうだ。そして連れている兵士達も人間どもがどうあがいても倒すことは出来んものばかりだ。
いくら奴らが管理者の力を得たとしても倒すのは不可能だな」
「それならええけど」
「不安なんですか? 私が力を込めて作った兵達が?」
ズモーが不満を申す。
「不安って言うか、用心しろって話」
「そうだな。油断していると足元をすくわれる」
「ではどうしろと?」
「我々が援軍としていくとする。そうすれば我々の不安も消えるからな」
「吉報を待っときな」
男達と女達は言いたいことを言って城から出て行った。
「ふん、奴らめ。私達の力を見くびっているようですな、アステヅーマア様」
「よいではないか。あ奴らの好きにさせればな……」
アステヅーマアは不敵な笑みを浮かべる。
そして翌日、都のすぐ側まで『ネガミス帝国』の軍が近づいていた。
「思ったより少ない数だな……」
智樹達は都を守る外壁から敵兵達を見ていた。
「でもなんかすごいですね。あの兵士達……」
そはらが言うすごい兵士達と言うのは体が金属の完全鎧兵や体が炎で出来た炎兵士や炎とは対極の水の体で出来た水兵士などが数十人単位でいた。
「まあイカロス達がいればちょちょいのちょいで……」
「いくらなんでも簡単には無理よ」
ニンフが意見する。
「ニンフ?」
「ここからでも分かるわ。あの体、並のもので出来てないわ。アルファーとデルタがどう頑張っても簡単に倒せる相手じゃない」
「じゃあどうしたら……」
「トモキのその篭手でどうにかすれば?」
「ちょ!? いくらこれでも簡単には……」
「忘れたのか、智樹。その篭手はお前の信じる力があればお前に力を与えてくれると。モーデンの時がそうだ」
「モーデンの時……」
智樹はモーデンの時のことを思い出す。
「それに夢の管理者はお前に力を託したんだ。お前が応えなくてどうする」
「そりゃそうですけど……」
「マスター……」
イカロスが声をかけてくる。
「イカロス」
「大丈夫です、私がマスターを守りますから」
「イカロス……」
智樹はこの時ふと思った。イカロスは自分の知らないところでカオスと戦い、自分を守っていたことを。
智樹は思い出す。イカロスと初めての秋祭りの時も体がぼろぼろなのを隠していたことを…。(後々でニンフと戦ったことをイカロスとニンフから聞いている)
「(イカロスは今まで俺を守ってくれてたんだ。
ダメだな、俺。
せっかく力があるのに使おうとしないでイカロス達に頼ろうとしてたなんて……。
この世界だけでも……)イカロス」
「はい」
「俺がお前、守ってやるからな」
智樹の思いがけない言葉にイカロスだけでなく周りの皆も驚く。
「あら~、どういう風の吹き回しかしら桜井君」
「どういう風って……別にいつも守ってもらってばかりだからたまにはイカロス達にいいとこ見せてやろうって思っただけっすよ」
「桜井君…」
「智樹…」
「トモキ……」
「マスター……」
「それじゃあ、行ってくる!」
智樹が下へと降りて、都の外へと行き、敵兵達の前に立とうとする。
「たまにはいいとこ見せてやらないとな……」
智樹の右の篭手がモーデンと戦った時と同じような装甲になる。
「よし! 行くぜ!」
智樹が突っ走ろうとしたその時、突然周りに煙が立ち込める。
「な、なんだ!?」
智樹達は戸惑う。
「何? あの煙?」
「あの煙は……ただ蒸気みたい。特に害はないけど……」
「マスター!」
イカロスが智樹の身を心配して飛び出していく。
「イカロス先輩! 待ってください!」
アストレアもイカロスの後を追って飛んでいく。
「アルファー! デルタ! 待ちなさい!」
ニンフが二人を追う。
「智ちゃん……」
城壁から智樹達を心配するそはら。
その智樹はと言うと……。
「一体なんなんだ?」
智樹が警戒しながら歩いているとなぜか倒されている敵兵達がいた。
しかも全員全滅していた。
「一体なんだってんだよ………」
智樹は自分が何かをお願いしたわけでもないのに敵が倒されていることに戸惑う。
しかしその戸惑いはすぐに捨てた。なぜなら自分の目の前には何やら怪物の影があったのだから。
「貴様ー、よくもこのジャリサム様の部隊を全滅させたな」
ジャリサムと名乗った怪物。頭が鷹で足がチーター、胴体はゴリラで腕が鷲のような姿であった。
「ちょっと待て! これは俺じゃ……」
「その黄金の篭手が証拠だろ? 叩き潰してくれる!」
ジャリサムの鷲の腕で智樹を切り裂こうとすると……。
「でぇい!」
アストレアがchrysaorでジャリサムの攻撃から智樹をかばう。
「アストレア!」
「Artemis、フルファイヤー!」
後ろからArtemisが飛んでき、ジャリサムを襲おうとするが……。
「でゃあああああ!」
ジャリサムは口から炎を吐き、Artemisを撃ち落す。
その間に智樹の元にイカロスとニンフもやって来る。
「なによあいつ」
「あいつがこの部隊のボスみたいだぜ」
「で、この有様、トモキがやったの?」
「俺なわけないだろ。あんな奴らをこんな短時間で倒すなんて…」
「じゃあいったい誰が……」
ニンフがあたりを調べてみるが、自分達や目の前にいるジャリサム以外反応が見られない。
「レーダーに反応なし。いったいどういうことよ……」
「ふん! 4人がかりでこのジャリサム様とやろうと言うことの身の程を知れ!」
ジャリサムはものすごいスピードで智樹達に襲い掛かる!
ジャリサムは拳を振るい、アストレアが何とかaegis=Lで防ぐも、勢いがあるジャリサムの拳に押され、後ろに吹き飛ぶ!
「「「アストレア(デルタ)!!!」」」
「よそ見をしている場合か!」
ジャリサムが智樹の目の前に来て、再び拳を振るおうとした。
「ぐおっ!」
しかしその拳よりも先に智樹の拳の方が早く、ジャリサムの腹部に命中し、ジャリサムは吹き飛ぶ!
「ぐううう…」
智樹の装甲に覆われて右の拳が強力でジャリサムは腹部を押さえる。
「おのれー……」
ジャリサムが腹部の痛みを無視して、再び走り出して智樹に襲い掛かろうとするが、智樹の肩に付いているブースターに火が付き、智樹はブースターの勢いを利用して回転しながら襲い掛かろうとするジャリサムに向かう!
「うおおおおおおお!!」
「どぅおおおおおお!!」
二人がそれぞれの拳を振るおうとする!
「ハイマット……」
「獣打……」
「…の舞」
突然二人の間に黒い衝撃波が飛んでき、二人を吹き飛ばす。
「「ぐおあっ!」」
「マスター!」
「トモキ! ……レーダーに反応がないのに攻撃された?」
「あかんな~、そんなものに頼って~」
そこに現れたのはアステヅーマアの城から出てきた三人の女性と二人の男であった。
「レーダーなんか適当にごまかせるわ」
二人の男が持っていた小型のコンパクトのようなものを取り出す。
「こいつがあればレーダーとかに映らなくなるんでな」
「心配で見てきてよかったな~」
「ニンフ先輩……」
戻ってきたアストレアがニンフに尋ねようとする。
「なに?」
「あの人達、人間ですよね?」
「ええ。見た目は完全に人間ね」
「もしかして操られてるとか……」
「可能性はなくはないけど、相手はあんな化け物や兵士達を持ってる存在。人間の姿にして油断させてるだけかもしれないわ。
あいつらの持ってるあれのせいでレーダーがまともに働かないから何とも言えないけど……」
「お前らがここにいると言うことは……」
「ああ。『影の月』部隊を都に行かせて、今攻めているところだ」
『なっ!?』
智樹達は驚く。
「こいつら囮かよ!?」
「いや、俺達の介入は元からの作戦に入っていない」
「そこの金色の篭手してるお兄さんのこと警戒してな~、うちらが勝手に来ただけや」
「アステヅーマア様には行くとは伝えてあるけんどな」
「余計なことを……」
「けど、おかげで死なず済んだとちゃうん?」
「それもそうだな。そこは感謝しよう」
ジャリサムは薄ら笑いをする。
「さて、これで形勢逆転だな。諦めたらどうだ?」
ジャリサムが先ほどまで以上の強気になる。
「そうだな」
「諦め」
男と女達も諦めるように促していると……。
「俺はそんな風に脅せとは教えた覚えはないけどな」
どこからともなく男の声が聞こえてくる。
「誰だ!?」
「性格悪くなっちゃってるね~」
今度の女の声が聞こえてくる。
「これもアステヅーマアって奴の仕業か」
「まったくせっかく改心させてやったのにまた悪女になるなんて俺、泣いちまうぜ」
智樹達やジャリサム達の左から現れたのは、黒いTシャツに黒い長ズボンに首に2眼のトイカメラをぶら下げた青年。
そして右側からはその青年と顔が同じであるが格好は薄い白色の上着を着て、黒いTシャツに青い長ズボンを穿いた青年と白衣をまとっているオレンジ色の長髪の女性であった。
「あんた達は……」
「あれ? この人、どこかで……」
「久しぶりだな、俺。そんでイカロス」
カメラをぶら下げている青年がオレンジ色の髪をした女性のところにいる青年とイカロスに対して言った。
後編予告(?)
アステヅーマア「私に逆らうことは死を意味するのだ!」
智樹「イカローーーーース!」
イカロス「はい!」
智樹「これが俺の全力だーーーーーー!」
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この話の時系列は「劇場版そらのおとしもの 時計じかけの哀天使」の後となっています。一応、ネタバレにならないようにはしております。(極一部の場面が映画で出てきた場面をほぼそのまんまの表現にしています)
そして今回の話は「映画ドラえもん のび太と夢幻三剣士」を基にして作られたものです。(正確には先に述べた話をそらのおとしものキャラに加え別作品のキャラ(主にBLACKが書いた作品のキャラ)に置き換えたもの)
また作者(BLACK)の分身となるオリジナルキャラ(秋山総司郎)も出てきます。
今回の話は前編、中編、後編の構成です。