「これが初手! 麻婆豆腐!」
「くっ!」
「続けて、二の矢! 乾焼蝦仁!」
「こ、この私が圧されていると、いうの・・・っ!」
「続けて、汁物で攻めてあげるわ・・・担担麺!」
「ぐ、ぐぅ・・・」
「これで、とどめ! 酸辣湯!」
「・・・ひとめまひょう、ふぁたしが悪かったわ。だから、もう勘弁してちょうらい・・・」
・・・おーい、支援者になって貰う為の料理なのに、やっつけてどうするんですか。華琳(黒)さん。
腕のヒビも調理には影響しない程度になって、ものすごい張り切っていたと思ったら、なにこのドS。
自分が辛いのを苦手なのを知っていて、さんざん挑発して逃げられないように追い込んでから、
四連続の辛味料理って、ほんま鬼やで・・・(褒め言葉)
「涙目の華琳さまは可愛過ぎる・・・! あぁ、部屋に持って帰っちゃだめか、秋蘭!」
「だめだ、二人で閨に連れ込まないと。抜け駆けは認めんぞ、姉者」
・・・夏候姉妹も桃色状態かよ。というか、本音ダダ漏れの会話、やめません?
むしろ怒る所じゃないか? 華琳が華琳を苛めてるように見えるから、倒錯が加速したのか?
華琳(金)は余裕なくて聞いてないみたいだけど。
「孟徳さん、水じゃその痛みは引かないよ。逆に刺激してしまう。はい、これ。俺がまず毒見するから、その後食べてみて」
「・・・こりゅれはなぁに?」
「舌が回らないほど痛いんだよな、ごめんな。これはアイス。牛の乳と卵の黄身を混ぜて、作ったお菓子さ。
こっちの方が痛みが引くと思う。ん・・・うまく出来たほうかな」
瞳を潤ませつつ、舌足らずな覇王様の言葉に、あの姉妹が性的に興奮しているが、ガン無視で対応する。
うん、可愛いのはよぉ~くわかるけどな!
俺も援助を得るために冷静を手を打つために切羽詰まって無いなら、
思い切り抱きしめて頭を撫でてあげたい衝動と闘ってるだろう、間違いなく。
この状況を、御遣いの華琳は意地悪く微笑んでいるから、俺が籠絡するのが一番良いと踏んでいるとみた。
だから、厨房の隅でアイスを作っていても、何も言わなかったんだろう。
竹筒に煮沸した乳と、卵の黄身、塩と砂糖を入れて、氷の中に筒を突っ込んで、ひたすら回すこと20分ぐらいで、作ったやっつけ仕事。
まぁ、毒見は真っ先に華琳(黒)がやってるんだけどね。
あの辛味四品にしたって、俺や星、春蘭、秋蘭、稟に風・・・が、毒見と称した、
天界の調理法を会得した華琳の料理に順繰り順繰り舌づつみをうっていたという裏話がある。
「・・・! 甘くて、なんて優しい味なの・・・」
ちょっと蕩けた感じに相好を崩した笑顔の華琳(金)に対し、その後ろで、ものすごく悪者の笑顔の華琳(黒)。
それはなんだか勝利宣言の笑顔に見えて、俺は思わず頭を抱えるのだった。
「筋書き通りといったところじゃない?
プライドを揺さぶって、美味しいけど辛い物を立て続けに食べさせて、種馬の甘い笑顔とデザートで陥落。
あの華琳には、一刀が天の救世主に見えたでしょうね、ふふふ」
「そりゃ俺の評価は上がるだろうけど・・・あれはちょっと可哀そうだったよ」
「未来の私が過去の私を鍛えることに何か異存があって?」
「無いんだけど、無いんだけどね・・・まぁ、支援者になるって確約がもらえたから、いいよな」
夜、陳留城の客室。
俺は背中から抱き抱える姿勢で柔らかな双丘の感触を服の上から楽しみながら、
華琳はそんな俺に心地よさそうに背中を預けながら、艶っぽさもへったくれもない内容のやり取りをしていた。
なんで、触れていると、心が洗われ満たされていくのか。もう一年以上も毎日触れているのに、飽きが来ることが無い。
女性の身体ってなんで、こんなに男を満たしてくれるんだろう。
「さて、どこから回るの?」
「まずは、幽州かな。公孫賛や、うまくいけば劉備さんたちにも会えるだろう。
その後は、涼州、益州と回って、揚州方面かな」
「馬一族、黄忠に厳顔、そして孫一族、ね・・・んっ・・・」
語尾が艶の混じった声に変わってしまったのを聞いて、俺は手の動きに力が入っているのを自覚した。
だめだ、華琳のこの声は、たやすく俺の何かを踏み越えてしまう。
「華琳・・・」
「・・・待ちなさい、一刀。邪魔が入ったようよ」
「・・・はい、本当に空気を読まずに申し訳ないのですが、少し時間を頂きますよ」
部屋への突然の侵入者。先ほどまで気配のかけらも無かった。あれば、真っ先に華琳が気づくだろう。
ただ、姿を見れば、納得はできた。
長身の黒髪に、眼鏡をかけた男。
かつての外史で「剪定者」とのたまい、終端へと無理やり導いた原因。
「・・・于吉!」
緩んでいた感覚が一気に覚醒する。傍に置いていた模擬刀を手に取り、いつでも抜刀できる体勢に移行。
突如姿を現した原因はわからなくとも、排除するべき相手ということは判り切っていた。
「久しぶりですね、北郷一刀。そして・・・曹孟徳。いや、今は安蘭樹とお呼びするべきか」
「・・・何の用かしらね。一刀が初めて経験した外史以外で姿を見せなかったお前が、今さら姿を見せるとは」
「ふむ・・・お二人とも、武威、技量ともに、以前とは比べ物にならないようだ。では、早速本題に入りましょう」
于吉が少し身を横にずらす、と同時に後ろに見える、一人の少女の立ち姿。
瞳からは完全に生気が失われ、自意識が欠片も感じられない・・・金髪が力無さげに垂れている、もう一人の華琳。
「人質、というわけ」
「こうでもしなければ話を聞いて頂けないでしょう? 声を上げられてもたまりませんからね」
「・・・要求はなんだ」
「蘭樹どのに、一度『縛』と『操』の術をかけさせて頂きたい。この離れた位置からで結構ですので」
~CMもどき~
俺と愛紗は相乗りでひたすらに馬を走らせる。上党へ向かって。
昼は愛紗。夜は俺。
休むことなく、ただひたすらに。
「蓮華・・・!」
思春からのメッセージ・・・「ヤンファ」。なぜだろう、その響きに絶望しか感じなかったのは。
初めて聞く言葉なのに、俺の全身が危機だと叫んでいた。
「頼む、無事でいてくれ・・・! 嫉妬力を膨張させた戦士の末路は、悲惨なものでしかないんだ!」
奉先さんたちの機転で、一定距離の詰所ごとに替馬が用意してあったのは僥倖だった。
俺たちの体力が持つ限り、ただひたすらに駆け通すことが出来る。
「ご主人様、私も一歩間違えれば、蓮華殿のように嫉妬力に囚われてしまうのでしょうか」
次回、『正史と外史の狭間で』第11話~膨張する嫉妬力~
「あの肥大する嫉妬のオーラ力・・・私では、もう止められない・・・。北郷、早く・・・!」
「ふふふふふ、一刀。決してもう離さないわ。
貴方の象徴を切り落として、未来永劫私と過ごすの・・・」
coming soon?
動画の予告を書いてみましたが、無いわ・・・こんな展開いややぁあああああああ。
大乱さんの因子が悪いんや・・・他の外史にもすぐに混入しやすいネタなんが悪いんや・・・。
・・・さて、動画の物語とこっちの話がこんがらがり始めて危険なこの頃です。
似たような世界観で二本を書き分けるなんて、最初から死亡フラグだったんやね・・・。
さて、今回も短くて申し訳ありませんが、次回またお会いしましょう。
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前回のあらすじ:種馬の絶対的魅了笑顔が炸裂。いろいろ精神的に虜囚にしたとかしないとか。