No.228152

楽々・恋姫無双 二.五話

TAPEtさん

外史を書くのをやめるべきなのか深刻に考える今日この頃。

魏には大惨事が、
そして、孫呉には神の祝福が……

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2011-07-15 21:12:51 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:6173   閲覧ユーザー数:4733

前回のあらすじ

 

一刀ちゃんが居なくなった

 

 

「さて、覚悟は出来ているでしょうね、沙和。最後に言い残す言葉は?」

「ちょ、ちょちょちょっと待ってなのー!」

「そう。今警邏中の凪にはそう伝えておくわ。それじゃ…」

 

シャキッ

 

「ひぃぃー!!」

 

ガチン!

 

「待たぬか、親馬鹿野郎」

 

本気で沙和に振り下ろされた『絶』を、馬騰が金属製の腕輪で返した。

 

「何、馬騰。邪魔しないで頂戴」

「させてもらうぞい。まずは文則の言い訳ぐらいは聞いてくれたらどうじゃ。それと妙才、お主も少しは止めぬか」

「……はい?」

 

そう馬騰に言われている華琳の後に居た秋蘭を言うと、もし沙和が避けた場合に自分がとどめを刺すために矢を射ていた。

秋蘭は沙和の報告を聞いた途端、華琳が密かに桂花と共にここに呼び寄せたのだ。

隣の桂花というと、目付きだけでも人を殺さんばかりの勢いで沙和を睨んでいた。

 

「いつも冷静な妙才までこの様か…」

「うわぁーーん、馬騰さま、助けてなの!」

「落ち着かんか。確かにこいつらのやってることはやりすぎじゃが、今お主の罪は極刑にされても文句は言えんぞ」

 

たしかに馬騰の言う通りであった。

国王の生後6週の息子を見失ったのだ。

相手が沙和でなければ、馬騰でも華琳を止めることはなかっただろう。

 

「孟徳よ、少しは落ち着いて文則の話を聞いてはどうだ?文則が態とそうしたとはお主も思わんじゃろ。最後に小僧を見た文則の話を聞かずどうやって小僧を探す」

「っ…確かにそうね。まだ生き残す必要があるわね」

 

言い方は物騒だったが、取り敢えず華琳は絶を下ろした。

でもその殺気は収まらず、全盛期の華琳の姿を再び見ることになった沙和はその覇気を耐えられず尻餅を付いていた。

 

「なら、沙和。話してもらおうかしら。どうして一刀が部屋から居なくなったのかを…詳しく、一片の嘘もなく、全てよ」

「は、はい……」

 

語尾がついてないところから既にいつもの調子を完全に失っている沙和だった。

 

 

 

 

沙和の話はつまりこうだった。

 

一刀ちゃんは華琳様が馬騰様を会いに行ってからして少し過ぎて目を覚ましたそうだ。

久しぶりにその姿を見た沙和は、そのあまりにもかわいい姿に見惚れて最初は何もせずぼおっとしていたらしい。

でも、少し過ぎてからつまらなさそうな顔をしている一刀ちゃんを見て、何かお話をしたそうだ。

そうやってお話をしていたら一刀ちゃんが突然泣き出して沙和はお腹が空いたのかと思って華琳さまが置いていった、哺乳瓶を探すために振り向いてまたそこを向いた途端、一刀ちゃんが寝床から居なくなっていたって話だ。

 

「よし、良いぞ、孟徳、斬れ」

「ええーーー!!沙和本当のこと話したのに!」

 

もう馬騰も沙和を守ってあげる気を失せたようだ。

 

「それはいつのことなの?居なくなって直ぐにここに来たの?」

「最初は、単に寝床から落ちたのかと思ったけど、部屋のどこを探してもいなくて、それから自分だけで探しても無理そうだったから直ぐに華琳さまに……」

「そう…状況を隠そうとしていなかったことだけは褒めてあげましょう。だけど、一刀がなくなったのは紛れもなくあなたの責任。異論はあるかしら」

「…………」

 

沙和の顔は蒼白になっていた。

凪や真桜が側に居たところで、この状況で自分を助けてくれるだろうか。

凪なんて、華琳さまよりも先に自分を殺そうと思うかもしれない。

今日は華琳さまに一刀ちゃんのことを頼まれて、他の二人に嫌味な目つきをされながらも、一刀ちゃんと一日居られることだけで頭が幸せいっぱいだったのに…

どうしてこんなことに……

 

じょろろろ……

 

「………」

 

あまりの恐ろしいその風景に、沙和は座ったまま失禁をしていた。

 

「…最後に聞くわ、沙和。一刀が泣き出す前に話していたっていうのは…何?」

「そ…孫呉から来た明命ちゃんが一刀ちゃんのことすっごくかわいいって言ってたって話……です……」

「そう……沙和。あなたは罰が決まるまで無期限謹慎よ。殺さないだけありがたく思いなさい」

「………あうぅ……」

 

そのまま沙和は気を失ってしまった。

 

「……華琳さま」

「…秋蘭、桂花、一刀の居場所。分かるかしら」

「今の話で……ですか?」

「そう」

 

華琳は何か心当たりがありそうな顔で言った。

 

「なんじゃ、孟徳。何か心当たりがあるのか?」

「……桂花は?」

「…昔の一刀なら……しかし、今のあの子は…」

「沙和の話だとこの事、平凡な方法ではないわ。きっと…」

「…承知しました。直ぐに呉に速達の伝令を…」

「お願い。念のために、街の凪たちにも伝えておきなさい」

「はっ」

 

桂花はいつもよりも冷静さを保った声で速やかに御殿を出て行った。

 

「孟徳よ…まさか、お主、小僧が呉に居ると思っておるのか?」

「…沙和の話を聞くには、きっとそうでしょうね」

「そんなバカなことが…たしかに昔のあ奴はそういった能力を持っておった。だがそれは前世の話じゃし…しかも奴はまだ子供じゃぞ?」

「だからこそよ。それに、昔から一刀はそういった行動をして私たちを驚かせていたもの。今回は度が過ぎてるけど…まだ赤ちゃんなんだし仕方がないと言ったら仕方ないわ」

「まさか、今の一刀にもそういう能力があったとは……」

「私も信じられないわ」

 

前世の一刀ちゃんには、特殊な能力があった。

自分が望む場所で一瞬で行くことが出来る能力。

そして、沙和は一刀ちゃんが消える前に呉の明命のことを言っていたと言う。

それなら、一刀ちゃんが彼女を懐かしんで呉に行った、という仮説も、あながちありえない話ではない。

 

「秋蘭、城を封鎖して万が一一刀が城の中に居るかを確認なさい。必要なら季衣と流琉、親衛隊も全て動員していいわ」

「御意」

 

秋蘭も走るように御殿の外へ向かった。

 

「儂も手伝うかの」

「あなたは沙和の面倒を見て頂戴。私が近づくとむやみに切り落としてしまいそうだから…」

 

冷静そうな顔で桂花と秋蘭に指示をしていた華琳だったが、実際はまだその怒りを収まれない状態であった。

その証拠として、馬騰と、さっきまで華琳と同じく怒りで溢れていた秋蘭と桂花以外、城の周りを護衛していた護りの兵士たちがその覇気によって全滅されていた。

 

「一刀……」

 

華琳は爪が手にはまるほど強く拳を握りしめて、馬騰と倒れた沙和を残したまま御殿を出て、一刀をおいてきた自分の部屋に向かうのであった。

 

 

 

一方、こういう城の状況とは関係なく、街では大騒ぎが起こっていた。

 

つまり、

 

タン!!

 

「キャーーー!!」

「助けてーー!」

「くははっー!こいつはすげーぜ!」

「おら、逃げろ、逃げろーー!くへへ」

 

街に盗賊の群れが出現。

連中は現在蜀にて開発中とされていた、轟天砲を小型化した武器『貫天砲』という最新式銃を持っていた。

大型で正確度が低くかった轟天砲を量産するために、真桜と一緖に蜀の朱里が提案し、両国を渡りながら作っていたものが、途中盗賊に盗まれ、今彼らがこの許昌にて暴れていたのだ。

 

「あいつら正気なん!?あんなもの街でウチやがって……!」

「話は後だ!真桜、街人たちの避難は?」

「ほぼ終わったで、せやけど…これからどうするん?」

「………」

 

報告を聞き現場に速やかに出動した凪と真桜は状況の深刻さを自覚した。

まずは周りの街人たちを射程距離外に離せて、奴らが暴れている当たりを包囲したが、奴らは勢い余って『貫天砲』を連射していた。

 

「あのまま弾が切れるまで待つというのは?」

「報告ではあの中に、かなりたくさんの弾丸があったらしいわ。あいつらの消費していく様を見ても、後一刻はこうして暴れていられうぐらいは……」

「……静まるまで待っては、被害は多すぎる」

「せやけど無理やり突っ込んだところで、こっちの被害もはんぱないで。…いっそのこと、ウチと凪ちゃんだけで突っ込んじまう?」

「それは最後の手段だ。一歩間違ったら私たちが大怪我でもしたら、包囲網もまた崩れかねない」

「せやな……今取り敢えず城の方に話入れといたけど…」

 

 

 

「凪!真桜!!」

「! 桂花さま?」

 

真桜がそう言った途端、桂花が駆けてきた。

思ったより早かったことと、筆頭軍師の桂花自ら来たことに凪は驚いた。

 

「桂花さま、話は聞きましたか?」

「はぁ?何?知らないわよ」

「へ?」

「っていうか、大変よ。一刀が行方不明よ」

 

ガチッ

 

その時、凪の時間が凍った。

 

「ちょっ!それってどういうことなん?!」

「どうもこうもないわよ!あんたらの仲間が目他のところにおいてた隙に居なくなっちゃったのよ」

「……!沙和は今?!」

「今それが大事?!イイからあんたたちも早く一刀を探すの手伝いなさい」

「……一刀が……居なくなった?」

 

そして、

 

少しずつ、

 

時間が動き出す。

 

「いや、でも、こっちも大変ちゅうねん!今銃を持った盗賊の連中が街で大暴れ……」

「そんなのちゃっちゃと片付けなさい!早くしないとそのうち一刀に何が起きるか……」

「んなむちゃくちゃな……たしかに一刀ちゃんのことも心配やけど……」

「……真桜」

「凪!お前からもなんか言ってやって……!」

「退けてろ」

「へ?」

 

その時、

 

時は動いた。

 

「はぁああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

「ちょっ!」

「なっ!」

 

桂花と真桜は凪から湧いてくる凄まじい気圧に息詰った。

いつもの戦ってる時の凪のそれを遙かに越えている気の流れ。

それはまるで全身を爆発させるかのようにその勢いをどんどん増していた。

 

「はあああああああああああああああああ!!!!」

「ちょっ、凪!今その気圧で猛虎蹴撃飛ばすつもり?!街ごと吹っ飛んじまうて!寄せ!」

「いいえ、やっちまいなさい、凪!今はそれが一番早いわ『桂花!』」

「はぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

どかあああああああああああああーーーーーんん!!!!

 

「うわぁあああああーーー!!!」

「ぎゃあああーーー!!」

「キャーーー!!!」

 

 

凪の猛虎蹴撃(いつもの何十倍)を食らった盗賊の群れは、そのまま塵になって消え去っていった。

同じく、周囲にあった街並までもがその勢い余りにその姿をどんどん失っていく。

 

どかーーん!!

 

ドッカーーーン!!

 

街のあっちこっちから壊れる音がして、数十秒が経って衝撃波が収まった頃には、空から見ると、街のど真ん中を中心にヘドロン砲でも打ったかのように衝撃波の向き先には何も残っていなかった。

その先には城の外壁だけがやっと形を保ったまま残っていた、それ以外にその先に残っているのは何もなかった。

 

「「( ゚д゚)ポカーン」」

 

凪の技は、自分の気を外にだして爆発させる技で、これほどの気が人一人の体の中にあるとも思えないし、あったところでこれほど出したら絶対死ぬ。

死ぬが……

 

「……これで良いな」

 

この凪は、それだけ言って

 

「一刀ーーーー!!」

 

と叫びながらどっかへ行ってしまった。

 

この事件は、後ほど『許昌爆発事件』という名で歴史に残された。

その場でその光景を見ていた真桜は『あの時の凪ならきっと春蘭さまにも勝てただろうなー』と残し、

桂花は『……私もまだまだね』というイミフな言葉の残し、この事件のありえなさを告げた。

 

 

 

 

はて、許昌の様子はこれほどにしておいて、一刀ちゃんが居るところに向かおうと思う。

流石に母親と言ったところか、華琳の予想は外れてはいなかった。

ただ、少しずれたことがあるとしたら……。

 

 

 

孫呉、蓮華の私室。

 

「はぁ……」

 

ちゃら

 

「……どうして私がこんなものを……」

 

蓮華が見ていたのは政に関しての書簡ではなかった。

それは、以前冥琳から届いた、蓮華の旦那になる者候補。

その後冥琳にお願いして、数を数人まで減らしてもらったは良いものの、蓮華はどうしてもノリ気にならなかった。

それもそうだ。

ちゃんと会ってもない男といきなり政略結婚せねばならないのだ。

自分の血をこれほど恨みたくなる時もなかった。

 

「人たちは楽しいはずのお祭りなのに、私は日が近づく度に地獄としか感じられない……」

 

しかも、第一回三国同盟記念祭り似て旦那になる者を発表しなければならない。

祭りまであと6週。

蓮華は一日近づく度に生地獄を味わっていた。

小蓮はまだ幼くて、傍若無人に街をめぐっていると言うのに、自分は王という理由だけでこんなところで……

 

「…何か方法はないのかしら」

 

ぶっちゃけ、自分から誰か一人作ったらいいわけだが、そんな相手いるはずもない。この外史だと。

というわけで、おとなしく自分の旦那を冥琳が絞った中から選ばなければならない。

とかいって、冥琳が決めたその候補たちが豪族の中で有力者というだけでブサイクだとか性格が間違ってるとか年離れすぎるとかそういうものでもない。

皆美男者に、才もあって、名がある者たちばかりだった。

蓮華もいつか目にした者たちも居た。だけど、それでも自分の旦那にしたいと思うような人物はなかった。

 

何にせこの蓮華、少女漫画(この世界じゃないが)みたいな恋をしたいと思っている乙女なのだ(そういう設定なのだ)。

でなければ……

 

「………」

 

今蓮華の手にあるものは、明命からもらってきた一刀ちゃんの写真であった。

これが二週で撮った写真だから、今見るとまた大きくなっているだろうなぁとか思うと、あの時魏に行けなかった自分を恨む蓮華がそこに居た。

 

「いっそのこと、恋人は居なくてもいいから、一刀みたいな子供が育ててみたいな」

 

前回の桃香に続いてとんでもないこと言う蓮華さまであったが、今日は思春もついてないので突っ込みが皆無だ。

 

「……雪蓮姉さま…私、どうしようかしら……」

 

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とにかく、元々明命のところに向かおうとしていた一刀ちゃんですが、ここはあまりにも蓮華さまが可哀想だったので、自分が少し小技を使って、一刀ちゃんの向き先を弄ってみました。(あ、自分ですか?紹介は後でもいいんじゃありませんか)

と、素が出てしまいました。

それでは、

 

スッ

 

 

トン

 

「…へ?」

「……うぇ?」

 

 

一刀ちゃんの写真を見ていた蓮華の上に、いきなり現れた一刀ちゃんは蓮華の膝に着地、そのまま蓮華と目と目が会いました。

 

「……かず……と?」

「……うぅ?……ぅぅぅ……えああー!♡」

 

 

 

 

次回につづく

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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