朝、思春を見つけ、前から考えていた考えていた事を実行することにした。
ズバリ、思春と二人で出かける!
仕事の関係上、2人でいることは多いが、最近はあまり一緒に出かけることもなくなった。
そこで事前に用意していた劇の券を理由に街に誘おうと考えたわけである。
朝食の時に劇を見にゆこうと伝えると、思春は劇はあまり好きではないと答えた。
その時は少し焦った。
どうにか説得し、約束をこぎつけることに成功した。
思春を待たせないようにと待ち合わせ場所に少し早く行って待っていると、少して思春がやって来た。
見るといつもと同じ服装でやって来た。
これはいけない。
今日は特別な日にするのだから。
俺は思春の手を取ると、街の服屋へと向かって歩いた。
店では俺が思春に似合いそうな服を選び、それを思春に着てもらうことにした。
最初の服は動きにくいということで却下されたが、2つ目の服を着てもらったとき正直驚いた。
店の店員がそこに薄手の肩掛けを足し合わせた。
あまりににもきれいで思わず見入ってしまった。
いつもの思春とは違う、別人のように感じた。
それほどその服は思春の魅力を輝かせるものだった。
服は俺が金を払い思春に着せたまま店のそのへと出た。
服を買い終え、その後2人で食事をとることにした。
少し高めのところだったが余分に金を持ってきたので大丈夫だったのだが、先程の服でのことで引き目があったのか思春は自分も払うといい、金を出してきた。
これでい思春は少し頑固なところがあるので、仕方なく割り勘で払うことにした。
腹もいっぱいになり時間も丁度いい時となり、本日の目的である劇を見に行くことにした。
題目は項羽と劉邦で、漢王朝の礎を築いた劉邦を主人公として物語が進んだ。
絶対的な力を持ち、戦に連戦連勝を重ねる項羽。
片や負け続けるが、人を引きつける魅力を武器に有能な仲間を集めた劉邦。
この2人は華琳と劉備に似ているな。
覇道を歩む華琳と夢に近い理想を持つ劉備。
そう考えると2人が相反するのは当たり前なのかもしれない。
やや劉邦びいきに感じたが内容は面白かった。
隣を見ると思春も楽しんでいるようで、垓下の詩の処では少し目が潤んでいた。
ここまで楽しんでもらえるとは思っていなかったので、正直嬉しかった。
劇が終わると日は沈みはじめていた。
「どうだった?」
「ええ、思ったより楽しめました」
「最初は乗り気じゃなかったからね。
楽しんでもらえてよかった」
俺達は帰るため城に足を向けた。
もうすぐで2人だけの時間が終わる。
そう思うとまだ離れたくないと思った。
「なぁ、少し城壁に行かないか」
別にどこでもよかったが、遠回りをするため城壁に向かうことにした。
城壁から街を眺めると、夕日に照らされとてもきれいであった。
「綺麗です……」
隣で思春がそうつぶやいた。
「ああ、これが俺達が守っている民たちが住むところだ。
この風景を守るために俺達は戦っているんだ」
「…………」
思春は黙って街を眺めていた。
その横顔も夕日で燃えるように赤く照らされていた。
しばらく街を眺めていた思春がしゃべり始めた。
「……今日はとても楽しかったです。
このようなきれいな服を買ってくださったり、美味しいものを食べに連れてくださったりして。
興味のなかった演劇も面白いと感じました」
ぽつりぽつりと思春は語り始めた。
「それはよかった。誘ったかいがあるというものだ」
「しかし何故私なのですか?」
俺は思春の言っている意味が一瞬わからなかった。
「今日はすごく楽しかった。だから勘違いしてしまいます!
でもあなたに思いを寄せる女性はたくさんいる!
だから私だけ抜け駆けするのはずるいのではないかと思いました。
しかし、今日一緒にいてやはり思いました!」
目に涙を浮かべ、ほとんど叫ぶようにして言ったあと、思春は大きく息を吸いこちらを見た。
「だから言います。
私はあなたのことが「待ってくれ!」ー―!?」
「待ってくれ。それは俺に言わせてくれ」
そう言い俺は思春と向き合い、肩に手を置いた。
「俺は思春が好きだ。何故誘ったかって、最近一緒にいる時間が減ったと思ったからだよ。
だから劇を口実に一緒に過ごそうと思ったんだよ。
……好きな人と一緒に居たいと思うのは当たり前だろ」
そう言い終えると思春の目から涙が一筋落ちた。
「私は……私も一刀様が好きです。だから言おうと決めたのに台詞を取るなんてずるいです」
涙をぬぐいながら思春は微笑んだ。
「思春……」
涙を拭き終えた思春の顔に自分の顔を近づけてゆく。
「ん……はぁ…」
軽く触れるだけの口付け。しかし心臓が破れそうなほど緊張した。
そのまま思春は俺の胸に頭をあずける形で抱き合った。
お互いの温もりを感じあっていると思春が、
「一刀様……あの、今日はこのまま離れたくありません……」
そう言い顔を俺の胸に押し当ててくる。
え?
「それって……」
「その!勘違いしないでください!誰にでも言っているわけではありません!
むしろ初めて…というか……」
思春は顔を真赤にしてうろたえた。
「……わかったよ。今日はずっと一緒にいよう」
抱きしめ、思春の頭に顔を埋めながらそう答えた。
夜になり風が出てきて肌寒くなったので俺達は城壁を降りることにした。
俺達はそのまま手をつなぎ俺の部屋に一緒に入っていった。
部屋に入ると、またどちらからともなく口付けをした。
先程のとは違う、体がぴったりとひっつくまで抱き合い、激しく互いに求め合う。
そのまま寝台に思春を寝かす形で覆いかぶさり、再び顔を近づけると、
「っあ、あの……一刀様…その、私、こういうことは初めてで……」
思春は真っ赤になり、いつもとは違う弱々しい様子で言う。
「なので……その…優しくしてください……」
限界でした。
その言葉を聞いた瞬間、頭の中がぽぉとなった。
「~~~!思春っ!!」
「か、一刀様!?だ、駄目です!買ってもらった服が……」
その後2つに分かれていた影は一つとなり、夜の闇に溶けていった。
翌朝、目が覚めると隣に思春の穏やかな寝顔が見えた。
解かれた長い髪が顔にかかっていたので手でのけてやると、少し身じろいだ。
「…起きた?」
「ん~……一刀様?どうしてここに……」
思春は寝起きのぼぉーとした声で聞いてきた。
「覚えてない?昨日のこと」
「きのう?昨日……はっ!」
昨夜の事を思い出したらしく、思春は勢い良く体を起こした。
そして自分が生まれたままの姿、裸であることに気付き、急いで上掛けで体を隠した。
「お、おはようございます……」
うつむきながら挨拶をする思春が可愛らしく、そっと頬に手を添える。
「おはよう、思春」
「あ……」
そのまま顔を近づけ、目をつぶる思春に優しく口付けをする。
俺達の新しい関係が、ここから始まる。
はずかし~~~!とうとう書いてしまいました一刀と思春のファーストアタック(?)!
もっと色っぽく書けたらよかったのですがこれが作者の限界でした。
勘弁して下さい。
一刀君はもてますが、もちろん初めてですよ。言わせんなよ、恥ずかしい……
次回は拠点も終わり新章に突入します。
ゲームだと次はとうとうあの場面!どうなるのでしょうか…
では、また!
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合間11後半です。
一刀視点で話は進みます。
やってしまった!でも後悔は無い!