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遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-第一章・十九話

月千一夜さん

十九話、更新ですw

今回、いよいよ一人の青年が舞台へとあがります
一章の中で、特に書きたかったシーンですw

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2011-06-12 11:12:46 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:7975   閲覧ユーザー数:6543

 

『ああ・・・』

 

 

声が、響いていく

暗闇の中、深い闇の中

 

広がっていく、光に合わせる様

 

 

『やっと・・・“届いたのか”』

 

 

声が、響いていく

やがて見えたのは、“美しい草原”

頭上の闇は、どこまでも続く“蒼天”へと変わっていた

 

そして・・・

 

 

 

 

『やっと、会えたな・・・“北郷”』

 

 

 

 

その草原のうえ

“彼女”は、微笑を浮かべながら立っていたのだ

 

 

 

 

 

 

≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-≫

第一章 十九話【君を覚えている】

 

 

 

「や~めたっ」

 

 

“一転”

まさに、その一言に尽きる

先ほどまでの殺気も、おぞましい程の“氣”も何処へやら

彼女は振るうはずだった偃月刀を肩に担ぎ、クルリと反転

そのまま、歩き出したのだ

これに、二人は・・・華佗と卑弥呼は、言葉を失ってしまう

 

無理もない

 

今の今まで、自分たちを殺そうとしていたはずなのだ

そんな二人の様子に気づいたのか、彼女は足を止め振りかえる

それから、呆れたようにため息を吐きだしたのだ

 

 

「ウチ、弱いものイジメって好きやないし

それに・・・どうやら、やっと“会えたみたいやしな”

今回は、これで帰ることにするわ」

 

 

言って、ニッと笑う彼女・・・王異こと、“張文遠”

その笑顔に、卑弥呼は表情を歪ませる

 

 

「お主・・・いったい、なにが目的じゃ?」

 

「目的、ねぇ

そんなん、さっきも言ったやろ?

ウチのすべては、一刀を中心にまわっとるってな」

 

「・・・答えになっとらんぞ」

 

「なっとるよ

ウチの今回の目的は、ひとまず達成したしな

大体、ここに残ったんも・・・アンタら、外史の管理者連中がムカつくからや」

 

 

言いながら、彼女は卑弥呼を睨み付ける

その瞳からは、消えたはずの“殺気”が僅かに滲み出ていた

 

 

「アンタ・・・さっきの一刀見て、“信じられない”っちゅう顔しとったろ?」

 

「っ!?」

 

 

彼女の言葉

卑弥呼は、大きく体を震わせる

その姿に、彼女は再びため息を吐きだしたのだ

 

 

「せやから、アンタらは嫌いやねん

どうして、そうやって何でも勝手に決めつけるん?

一刀が“抜け殻”やって、なんでそう決めつけるんや?」

 

 

“抜け殻”

言って、彼女は表情を歪ませる

 

 

「アンタらは確かに、この外史において・・・ウチら何かよりも、何もかも知っとるのかもしれへん

せやけどな、アンタら少し一刀のことを“舐めすぎやで”?」

 

「舐めすぎ、じゃと?」

 

「ああ、舐めすぎや

ほんでちっとも理解しとらへん・・・一刀のことを

そんで、そんな一刀を愛した奴らのことを」

 

 

言いながら、彼女が見上げた空

ポツリポツリと雨が降り始めた空を見上げながら、彼女は微笑んでいた

先ほどまでの殺気など、先ほどまでの“狂気”など

微塵も感じさせない・・・優しげな笑顔を、浮かべていたのだ

 

 

 

「一刀は、好きになった女の子の手を・・・絶対に、離したりはせぇへん

そんでな、そんな一刀が好きやから・・・“ウチら”もその手を、離さないんや」

 

 

“ああ、そうや”

呟き、彼女は自身の胸に手をあてる

 

 

「例え世界がその手を、無理やり離させようとしても・・・それでも、ウチらは抗い続ける」

 

 

“抗い続ける”

何度でも、どんなことがあっても

 

彼女達は、抗い続けるのだ・・・

 

 

 

 

「例え、“最期の一人”になったとしても・・・な」

 

 

 

 

 

緑が生い茂る、美しい草原

彼は・・・気づけば、そこに立っていた

見上げれば、眩いばかりの蒼天が広がっている

 

 

「此処、は・・・?」

 

 

“何処だろう?”

 

彼がそう言おうとした、その直前のことだった

微かだが、足音が聞こえてきたのだ

その音に導かれるかのように、彼が振り向いた先

 

そこには・・・一人の“女性”が立っていた

 

 

 

『此処は・・・遥か彼方、掛け替えのない想いが眠る場所』

 

 

 

稟とした声

彼女は優しげに微笑みながら、彼のもとへと歩み寄る

 

 

『“約束の草原”、とでも名付けようか?』

 

 

言って、彼女はクスリと笑う

吹き抜ける風が、彼女の水のように美しい髪を撫でていく

 

 

「君、は・・・」

 

 

“誰なんだ?”

そう言おうとして、彼は止めた

 

“懐かしい”

そう・・・感じたからだ

 

そんな彼の様子を見て、彼女はまたクスリと笑った

 

 

『どうした?

私の顔に、何かついているのか』

 

「違う・・・ただ、懐かしいって

そう、思ったんだ」

 

『懐かしい、か・・・そうか、懐かしいか』

 

 

呟き、彼女は頬を微かに緩ませる

“懐かしい”と

たった今、彼が言った言葉を繰り返しながら

 

 

「どう、したの?」

 

『いや、なに・・・少し、嬉しかっただけだ』

 

「嬉しい?」

 

 

“ああ”と、彼女は空を見上げた

その穏やかな青空に、彼女は緩んだ頬もそのままに・・・小さく、呟いたのだ

 

 

『“此処”にはな、本当はもっと沢山の“想い”があったんだ』

 

「想い・・・?」

 

『ああ・・・大切な想いがな』

 

 

フッと、彼女はその視線を再び彼へとうつす

それから、微笑を浮かべながら手を伸ばしたのだ

立ち尽くす、彼に向かって・・・

 

 

 

『今はもう・・・私一人しかいないがな

それでも、託されたモノは残っている』

 

 

 

その手を・・・伸ばしたのだった

 

 

 

 

 

 

『私はずっと、お前を“待っていた”

天の御遣い・・・北郷一刀』

 

 

 

 

「待って・・・いた?」

 

 

サァと、吹き抜けていく風

その風が頬を撫でていく中、響いてきた声

“待っていた”

その一言に、彼は“ドクン”と・・・胸が高鳴った

 

 

『ああ・・・そうだ

私は此処で、ずっとお前を待っていたんだ』

 

 

見渡す限り、どこまでも続く美しい草原

見上げれば、遥か彼方まで続いているであろう蒼天

“約束の草原”

そう名付けたこの場所で、彼女は待っていたのだ

彼・・・“一刀”のことを

 

長い間、ずっと・・・

 

 

『お前の“心”の奥深く

失われた“欠片”の一部として

私はずっと・・・此処で、お前を呼んでいた』

 

 

“呼んでいた”

そう言って、彼女は微笑みを浮かべたまま・・・空を見上げたのだ

この草原を照らす、穏やかな太陽が浮かぶ空を

 

 

『やっと・・・届いたぞ、“皆”』

 

 

その言葉は、いったい誰に向けられたものだったのか

一刀にはわからない

だがそれは、とても大切な言葉だと

彼は、無意識のうちにそう感じていた

 

 

『お前は今、“何も知らない”

それは・・・“記憶”は“欠片”となり、散らばってしまったからだ』

 

「欠片・・・?」

 

『ふふ・・・まぁ、今はきっと何も理解できないだろうな

そもそも、理解なんてする必要はないさ』

 

「じゃあ、俺は・・・」

 

 

“どうすれば、いいんだ?”

そう言おうとした、彼の言葉は止まる

彼を見つめる、彼女の瞳

その瞳を彼は、“覚えていたからだ”

 

 

『気づいたか?

その“矛盾”こそ、お前がすべきことの答えだ』

 

「矛盾・・・」

 

 

呟き、彼は瞳を閉じる

気付いたのだ

彼女の言う・・・その“矛盾”という意味に

 

 

「ああ、そうだ・・・」

 

 

“何も知らない”

全てを失ったハズなのに・・・もう、“何も残っていないはずなのに”

 

 

 

 

「俺は・・・“君を覚えている”」

 

 

 

 

“知っていた”

目の前で微笑む、この女性のことを

彼は、“知っていた”

“覚えていた”

 

 

『私は、お前の記憶・・・そして、微かに残った“最期の欠片”

散っていく欠片の中、お前の心の奥底に残った

“最期の想い”』

 

 

風が、二人の間を吹き抜けていく

 

“覚えている”

 

揺れる、彼女の髪も

あの、微笑みも

全部・・・覚えている

 

 

『お前が今までの生活で感じた“既視感”や“懐かしさ”

それは全て、“私との記憶”を通して感じたものだ』

 

「君との、記憶・・・」

 

『ああ、私とお前の“記憶”

お前が覚えていてくれた・・・“共に過ごした日々”』

 

 

ふと、見つめた先

眼の前で微笑む彼女

その体から・・・淡く、白い光りが発せられていた

 

 

『その“記憶”が・・・お前に残された、“最期の想い”

そして、全てを救う為の“力”だ』

 

「全てを、救う・・・“力”」

 

 

言われ、見つめたのは自身の手

その手も、白く光を発していた

 

 

『たった一人で・・・ずっと、此処で待っていた

消えていく“皆”の想いも背負い、ずっとお前を待っていた

何度呼んでも、何度手を伸ばしても・・・お前に届かない

それでも、此処でずっと待ち続けた』

 

 

ゆっくりと、強くなっていく光

温かな“白き光り”

 

 

『そして・・・“やっと会えた”』

 

 

その光りが、“繋がっていく”

彼の手と、彼女の手を通じて

 

“繋がっていく”

 

 

『さぁ、今こそ“託そう”

この残された“記憶”を・・・“想い”を

そして、“思い出せ”』

 

「思い、出す・・・」

 

『ああ・・・お前は確かに、限りなく“空っぽ”に近かった

だがしかし、だからこそ“私はお前と共に在れる”』

 

 

ソッと、繋いだ手

“温かな手”

その手を、その温もりを

“彼は思いだす”

 

 

『お前は、一人じゃない

ここで出来た、大切な家族がいる

そして・・・これから先は、私がお前の“力”となる』

 

 

その笑顔を、その声を

“彼は思いだす”

 

 

『思い出せ・・・私はいつでも、お前と共に在る

そして、“呼び覚ませ”

お前の中に眠る、“この私を”』

 

 

頭の中、胸の奥

広がっていく、温かな“想い”

懐かしい、“彼女”と過ごした日々

 

 

『これから先、どれだけ辛いことが待っていようとも

“私は、お前を見守っている”』

 

 

やがて、強くなっていく光の中

彼女の姿が、徐々に消えていく

光りに、融けていく

 

 

『さぁ、“目を覚ませ”

お前が守りたかったモノを、一緒に守ろう』

 

「ん・・・」

 

 

頷き、見つめる先

消えていく・・・彼女

彼女は、涙を流していた

 

その涙の意味が、彼にはわかった

“悲しいんじゃない”

 

 

『皆・・・約束は、果たしたぞ』

 

 

“嬉しいんだ”

そう思い、彼は握った手に微かに力を込める

 

そして、今できる限りに・・・微笑んだのだ

 

 

「一緒に、行こう」

 

『北郷・・・ああ、そうだな』

 

 

その微笑みは、きっと彼女が知っている微笑からは程遠いかもしれない

それでも、微かには“面影”は感じられるはずだと

彼は、精一杯に微笑んだ

 

そして再び、言葉を紡いだ

 

 

「一緒に、行こう」

 

『ああ、一緒に行こう』

 

 

思い出した、“大切な人の名”を

 

 

 

 

 

 

「そして、一緒に戦おう・・・“秋蘭”」

 

 

 

 

 

 

共に、この風にのせて・・・

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「つまらない・・・」

 

 

男の呟き

それに合わせる様、聴こえたのは・・・“誰かが倒れる音”

 

男の視線の先

倒れる、四人のもの

 

 

「これが“圧倒的な差”だ

力を得た儂と、一度消えた貴様らとの・・・な」

 

 

この言葉

倒れる彼女達にはすでに、反論する力さえ残されていなかった

だがそれでも、彼女達は男を睨み続ける

どれだけ痛めつけられようとも、それでも彼女達はまだ諦めていなかったのだ

そのことが男を、苛立たせていた

 

 

「気に食わんぞ」

 

 

一言

たった一言そう言うと、男は槍に黒く禍々しい渦を纏わせる

 

 

「弱いまま、無様に足掻くその姿が

気に食わんのだ、弱者どもよ」

 

 

やがて、纏った渦は今までとは比べ物にならないほどに“巨大”で

そして・・・“恐ろしい”

 

 

「これで、終わりにしよう

もう、楽になるがいい・・・」

 

 

その“氣”が、その“渦”が

一気に放たれた

一直線に、ただ真っ直ぐに

彼女達の“存在を消し去る為に”

 

彼女達のすべてを、飲み込むために・・・

 

 

 

「闇よ・・・全てを、消し飛ばせ」

 

 

男は、闇を放ったのだ

 

 

 

“おかしい”

男は思う

自分は今、確かにトドメをさそうと・・・あの黒き渦を、彼女達に向け放ったはずだ

なのに、何故だ?

 

 

「何故、“消えている”!?

このワシの力が・・・あの、黒き渦が!?」

 

 

消えていた

飛ばしたはずの渦も、自身の槍に纏っていた渦も

“全てが、消えていた”

 

 

「何故!?

何が、何が起こったというのだ!!?」

 

 

叫び、彼は気づいた

自身の腕

槍を持つ腕に刺さる・・・一本の矢の存在に

 

 

「な・・・」

 

 

“何だ、これは?”

 

その言葉が、出る前に

気付いたのは“視線”

彼の前・・・ボロボロになった四人

その視線が、自身の“後ろ”へと向けられているのだ

 

 

「っ・・・!!」

 

 

そのことに気づき、慌てて振り向いた先

彼は、“見た”

 

 

 

 

彼の視線の先・・・一人の“青年”の姿を

 

 

 

 

 

「そん、な・・・馬鹿な」

 

 

呟き、彼は無意識のうちに一歩引いていた

 

“見えたのだ”

 

微かだが、確かに見えたのだ

 

彼の体を包む・・・“白き光り”が

 

 

 

「これが・・・“俺と君の力”」

 

『あぁ・・・そうだ』

 

「皆を助ける為の・・・“白き光”」

 

 

 

そんな男の様子など、知らないまま

彼は、拾った“弓”を・・・再び構えた

 

 

 

「行こう・・・秋蘭」

 

『ああ・・・行くぞ、北郷』

 

 

 

その姿が、“重なった”

 

青き髪を靡かせる

一人の“女性”と

 

 

 

 

「『一矢一殺』」

 

 

 

 

そして、紡がれる“言葉”

 

繋がっていく心

重なっていく想い

 

そのすべてを、彼は・・・そして、彼女は

手に持った弓に

 

そして・・・“白き光”へとのせていく

 

 

 

 

「『我が弓の前に、屍を晒せ』っ!!」

 

 

 

 

今、舞台に再び

“白き光”が、強く輝きを放ったのだ・・・

 

 

 

★あとがき★

 

どうも、月千一夜ですw

十九話、更新です

 

 

ついに、一刀君が舞台へとあがりました

手に入れたのは、大切な記憶

そして・・・託された想い

 

これでようやく、服装と武器以外はイラスト一刀と一致しましたww

 

次回、戦いは終盤戦

黒き光と、白き光

最後に勝つのは・・・・・・

 

 

 

 

 

『あぁ・・・美しくなったな、“白蘭”』

 

 

 

 

 

次回

第一章 二十話

【望んでいた結末】

 

 

 

それでは、またお会いしましょう♪

 


 
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