No.220991

七乃と一刀

k.nさん

k,nです。
七乃メインの話です。

2011-06-05 22:23:21 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5318   閲覧ユーザー数:4780

「か~ずとさんっ。今日お部屋に行ってもいいですか?」

 

感極まりない申し出なのだが、まず一刀は疑うことから始めた。

 

「う~ん。いいんだけど、仕事も溜まっててね。どんな用?」

 

それを聞いた七乃は顔を膨らませ、拗ねた表情になる。

 

「乙女にそんな野暮なこと聞くんですか~。

女の人が男の人の部屋に行く意味なんて、もうアレしかないじゃないですか~。」

 

七乃が言うアレを一刀は瞬時に把握したが確信が持てない。

何の前触れもなく、しかもあまり交流がない七乃が言っていることだからだ。

 

「あ~あ。せっかく一刀さんが買ってくれた『なーす』服を着てこうと」

「じゃあこの後の会議が終わったら俺が七乃の部屋3回叩くからそれが合図だと思って俺の部屋に来てくれ。もちろんナース服持参で。着替えて来てもいいし、こっちで着替えてもいいから。」

 

現金な男、北郷一刀。

運命には抗えるが、己の欲望には抗えない一国の領主であった。

 

 

 

会議後。

 

華琳や蓮華からかなり痛い目線を食らったが、この男は今はどんな事でも耐えられた。

この男をそこまで突き動かすもの。顔をにやけさせるほどのこと。

その存在がもうすぐ拝める。それだけが一刀の動力源。

予定通り、七乃の部屋を3回叩き、自分はすぐに部屋に戻った。

 

「あぁ~。七乃のナース姿かぁ。きっと現役の娘よりも似合うんじゃないか?」

 

「まだかな。おれどうやって待ってよう?

横になって、あ、アレの調子がおかしいんですけど?とか言う準備してようかなぁ。」

 

「遅いな。ん~。恥ずかしがっててドアの向こう側にいるのか…。」

 

待ちくたびれた一刀はドアノブを回し廊下の様子をみた。

誰もいない。

だが、何かが置いてあった。

 

 

「薬?…はは~ん。さてはより雰囲気を出すために、この薬を飲めと。

しかし肝心のナースさんがいないんだが…。」

 

一刀は薬の裏に何かが書かれているのを発見した。

 

「“これをのめばげんきがでます”…。

七乃。本気だな。これは期待していいんだな?よし俺はこれを飲むぞ!」

 

一気に蓋を開け、勢いよくそれを飲んだ。

途中何か体に痛な感覚が流れたが、一刀はお構いなしに飲みほした。

 

「ふぅ。最近、夜連続だったからかなり疲れていたんだけど、これは有難いな。」

 

さすが天下の種馬である。

効果にはしばらく時間がかかるのだろうと思い、寝室へと戻っていく。

 

「後は七乃が来てくれれば…。」

 

と思った矢先、ドアが開く音がした。

そして一刀はベットに横になり七乃が来るのを待った。

 

「一刀さ~ん。いますかぁ~。」

 

そして一刀はベットから上半身を上げ七乃を見た。

 

「ここだよ。なな…!?」

 

一刀に電流が走る。体が火照り、心拍数が上昇する。

鳴りやまない鼓動。上がり続ける体温。

今の一刀はまるで、初恋をしたかのようなそんな状態。

一刀はこの状況を実感していなかったが、本能的には理解していた。

 

一刀は七乃しか見えていないのだ。

 

「…一刀さん?どうされました?」

 

「七乃。滅茶苦茶綺麗だ。一瞬、女神が舞い降りたのかと思ったよ。」

 

いつものような口説き文句とは少し違ってキザっぽい。

 

「あ…え~っと…(美羽様、逃げましたね…)、そ、それでは私はこれで~。」

 

帰ろうとした七乃の腕を掴み、強引に引き寄せた。

そして両腕で七乃の体を抱きしめる。

 

「可愛いよ七乃。体も細くて、凄く抱き心地がいい。

…ん?この香り。前に二人だけで町に行った時に買った香水の匂い。つけてくれたんだ。」

 

「あっ……。」

 

少し七乃が照れる。

そして一刀のマシンガン口説きは続く。

 

「それにこの髪飾りも。あ。首飾りもそうじゃないか。

そんなに俺のこと想っててくれたんだね。それに気がつかなかったなんて、俺は…最低だ。」

 

「…ぁの。違うんです。本当は私ではなく美羽様が。」

 

美羽という言葉を聞いた瞬間、一刀は少し抱擁に力を入れた。

 

 

「美羽がどうかしたの?

…そうか。やっぱり七乃は俺よりも美羽の方が好きなんだね。

でも、そうだとしても、俺は諦めない。君の一番を俺にしてみせるよ。必ずね。」

 

一刀がこのようになった事情を知る七乃は、一刀が言う事は本当ではないと分かっている。

だが、こうもアプローチされると悪い気が起きるはずもなく、火照る顔を伏せた。

 

「前から思ってたんだ。実は、俺にかまって欲しかったのかなって。

だから、いつも俺を困らせて、注意を向けていたんじゃないのか。

そうとは知らずに…。ごめん。だけど、もう大丈夫だ。

これからはずっと、七乃を見てるよ。好きだって何度でも言う。

だから七乃も、できるだけ俺を見てほしい。誰よりも。」

 

本心からではない。

実を言うと、七乃が用意した薬は一種の惚れ薬のようなもの。

神経をマヒさせて幻覚作用を作り、飲んだ後に見た最初の人に恋愛感情を使用者に持たせる。

それを美羽に手渡し、一刀に飲ませて惚れさせるという七乃の計画は、失敗に終わった。

 

抱きしめられている七乃は、そうとわかっていながらも、一刀に身をゆだねる。

 

「…一刀さん。あの、ですね。

た、確かに私も…その…一刀さんのことは…好意的に思っています。

いつも優しくしてくれてますし、一緒にいると、楽しいですし。

私のこと気遣ってくれてるのも、すごく嬉しい…です。

それに、私は、美羽様のことは好きです。けど、私の性別は女ですから…。

困らせているのは…、…そうですね。一刀さんの言う通りです。かまって欲しかったのかも。

でも、私なんかが、貴方を一時でも独占しようなどと…少し気が引けたんです。」

 

次々と自分の想いを吐露していく。

七乃は薬を飲んでいない。故に、本心からである。

 

「…………あ、アハハ。何ででしょう。

私、こういう私的なことは心にしまって置くことにしてるのに。

……馬鹿…ですねぇ。無能と言われるのも…仕方がないことです……。

…………一瞬。…この時だけでいいから、貴方を…独占していたい。

…許してくれますよね?…一刀さんは…優しいですから………。」

 

副作用でとっくに寝ている一刀の胸に顔を擦り寄せ、自らも目を閉じた。

温かな温もりを感じながら、少女は夢に入っていく。

自分が思い描く、幸せな夢の世界に…。

 

 

ーーーーー……。

 

…しばらくして、七乃は目をゆっくりと開けた。

随分と眠っていたので、もう外は真っ暗である。

だが、まだ夢の世界とまったく同じ状況だったので、七乃はもう一度目を閉じた。

 

 

「………七乃。滅茶苦茶綺麗だ。女神が舞い降りたのかと思ったよ。」

 

薬の効果は3~4時間ほどで切れる。

 

「……好きだよ。

だから、ずっと、俺を困らせてくれ。

俺はそんな七乃が…大好きだから。」

 

「……………ふふ。当然ですよ。一刀さん♪」

 

七乃の夢の世界は続く。

いつまでも、いつまでも…。

 

 

 

 


 
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