劉琮の降伏によって最前線で孤立する事となってしまった劉備。
これを好機と見た曹操はすぐさま夏侯惇に新野攻めを命じた。
だが、それは諸葛孔明の采配で見事に撃退。
ならばと今度は曹操自らが五十万の大軍を引き連れて出撃。劉備はやむをえず江夏・夏口方面へ逃げることになる。
だけど、劉備を慕い従う人民が付き従ったために、移動がままならない。
曹操は、それを好機として五千の精鋭騎馬隊を編成し、長坂という場所で追いついてしまうのだった。
第三話
『長坂の戦い 前編』
趙雲は探した。
劉備と同じ立場である王、北郷を。
「主っ! 主―――っ! どこにいるのですか!?」
逃げ惑う民達の顔を見ながら名を呼ぶ。しかし、返事は民達の叫び声しか返ってこない。
「おいっ! こっちに劉備軍の武将の趙雲がいるぞ! 殺せっ!」
劉備を追いかけてきた数名の曹操軍の騎馬隊が趙雲を見つけるが否や、殺しにきた。
「ちっ! 失せろ!」
それを趙雲はいとも簡単に首を刎ねる。
「おのれ!」
さらに追いついた騎馬隊が仲間の仇を取ろうと趙雲に向かう。
「はぁ――――っ!」
それも大声と共に簡単に首を刎ねる。
「きゃ――っ!」
「うわっ!」
でも、そうしてる間にも他の騎馬隊が民を殺す。
「………くっ!」
ぎりっと唇を噛み締める趙雲。
できない。
今は北郷を助けることだけで精一杯で、悔しがる以外民達に何もできない。
「星っ! こっちだ!」
声の聞くまま視線が向く。
そこにいたのは血にまみれた北郷が、赤子を抱えて戦っていた。
「主!」
趙雲が呼ぶと同時に、北郷と対峙している敵兵達が動く。
剣は頭上、槍は右腹へ。
「くっ……!」
カキンと護身の剣が頭上の剣を流す。
「がああああああ――――っ!!!」
でも、槍は命中して北郷は奇声を上げた。
「主―――――――っ!」
張雲の足が動き、持っている槍を投げて、敵兵達を串刺しにする。
「しっかりしてくださいっ!」
駆け寄る趙雲に、北郷は笑顔で迎えて赤子を渡した。
「……こ、これを……桃香のいる所にいる母親に……」
「何を言っている!? 主も一緒に来るのです!」
血にまみれた北郷の右手が趙雲の頬を触れた。
「……お、俺は……もう、駄目みたい……なんだ。だから……かわりに」
張雲は北郷をおんぶして、赤子を紐で縛りつける。
「断る。絶対に桃香様の所に連れて帰りますぞっ!」
「………はは。でも、それは困るなぁ……」
北郷は無理矢理趙雲から離れて、傍にあった井戸に身を投げた。
「あ、主ぃぃぃ――――――――!!!」
趙雲の声は無償にも井戸の闇へ響くが、何も変わることはなかった。
「………っ」
「どうかしたの、一刀?」
曹操に尋ねられた男は、少し胸を押さえ込む。
「いや……問題ない」
だけど、しばらくして男は何もなかったかのように笑顔で返事を返した。
「はぁぁぁぁぁ――――――っ!!!」
趙雲は赤子を抱えて白馬で走っている。赤い水が顔や体、馬にもかかるがそれでも構わず進んでいた。
「くっ! これ以上、仲間を失わせるものか!」
楽進が、趙雲に立ち塞がり拳を放つ。
「……っ!」
でも、趙雲はそれを避けて彼女の右肩に深い傷を残して進む。
「え―――い―――!」
「うりゃ――!」
今度は飛び道具が武器の許緒と典韋が向かうが、避けて負荷でを渡して走り去る。
「すごいわ、あの趙雲……」
「感心するのはいいけど、欲しいとか言わないでくれよ。関羽の二の舞にするつもりかよ?」
「ああ……そうだったわね」
曹操は自分の不注意に笑みを浮かべながら、右手を上げ、すぐに降ろした。
「殺せ」
趙雲に張遼、夏侯惇の二人が襲う。今度は完全なる殺気を含めて。
井戸は趙雲が壊した。荒らされないために。
でも、それは無駄だった。
井戸は掘り起こされ、中から男が見つかた。
「……お役目ごくろう、『導きの北郷』」
彼は、その男に触れると取り込まれるように消える。
「さて……次はどんな北郷が必要かな?」
微笑を浮かべながら、彼はその場を後にした。
第四話に続く……
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前回のお話
劉琮の降伏によって最前線で孤立する事となってしまった劉備。
これを好機と見た曹操は動く。