――ヤバい、ヤバい……これは、間に合わないかも……
響は焦っていた、登校途中に突然強烈な尿意に襲われたのだ。
今日は梅雨空で夏服では少し肌寒いから、それが原因かもしれない。あるいは朝飲んだ、冷蔵庫で冷やされたオレンジジュースが原因だったかもしれない……原因はどうあれ、それは問題では無かった。
今、1番の問題はこの強烈な尿意だ。これは排泄する事でしか解決出来ない問題だ。だが、トイレはまだ遠い。
「並木道、こんなに長かったっけ……うぅう、このままじゃ漏れちゃうよ」
走れば数分もかからずに校門までたどり着くことも出来るだろう。
しかし、少し内股気味にゆっくりと、それでいて膀胱に刺激を与えない程度に速やかに歩かざるを得なかった。これでは自慢の脚も役には立たない。
尿意と膀胱に神経を尖らせて歩いていたせいで気がつかなかったが、周りには誰も居なくなっていた。
もう始業時間に迫っているのだろう。遅刻はしたくない、だが遅刻を回避する為にお漏らしをしてしまうのはもっと嫌だった。
「響、おはよう。どうしたの?そんなにゆっくり歩いて。もう学校始まっちゃうよ?」
小走りで響に近付いてくるのは奏だった。
突然、後ろから声をかけられたのでビックリして少し漏らしてしまった。
「お、おはよう。奏でこそ、どうしたの?遅刻ギリギリなんて」
動揺を悟られないように、努めてふだん通りに言葉を返した。
「お店のお手伝いをしてたらこんな時間になっちゃって、必至に走ってきたのよ」
よくよく隣に列んで歩き始めた奏の横顔を見てみたら、うっすらと汗ばみ、息は少し弾んでいるようだった。
それは思わず見とれてしまうほど、何やら魅力的だった。
思わずポーっとしてしまったが、今はそれどころでは無かった。尿意が納まる気配は一向に無かった。
「そ、そうなんだ。朝から大変だね」
「そんな事無いよ……それより響、大丈夫なの?何だか体調悪そうだけど?」
気がついたら、2人の距離はだいぶ広がってしまっていた。
振り返った奏はとても心配そうな顔をしていた。
「だ、大丈夫。ちょっと疲れてるだけだよ、心配しないで。それより奏、遅刻しちゃうよ。わたしの事はイイからはやく学校行きなよ」
このままのペースで歩いたら遅刻するのは間違いない。それに奏を巻き込むのはとても心苦しいので先に行くよう促した。
「ホントに疲れてるだけ?何だかそうは見えないけど……心配だから一緒に行きましょ」
そういうと奏は響のペースに合わせて歩き出した。
「そんな、悪いよ……わたしなら大丈夫だから、ホントに。だから先に行ってってば」
「だーめ。ここで響を置いて行って、もし倒れられでもしたら目覚めが悪いじゃない。ちゃんと学校まで付き添ってあげるわよ」
その心遣いはスゴく嬉しかった、だからこそ巻き込むわけにはいかないという気持ちが強くなった。
「ホントにいいってば!自分の事は自分で何とかする!だから放っておいてよ!」
「放っておいてって……そんな言い方ないんじゃない!」
立ち止まった奏はムッとしながらそう言った。
「奏はお節介過ぎるんだよ!子供じゃないんだから、自分の体調くらい自分で分かるって!」
やってしまった……そう思った時には遅かった。
「人が心配してるのに酷すぎるんじゃない――」
不味いパターンにはまってしまった、このままではどちらかが折れるまで言い合いは止まらない。
そんな事をしている場合では無かったが、こうなってしまってはどうする事も出来ない。
「わたしは奏の事を……あっ!」
「ど、どうしたのよ、突然」
言い合いをしている間、忘れてしまっていた尿意だが、いつの間にか限界を向かえていた。
「あ、ダメ……忘れてた……あ、ああああああああ」
蛇口が開き始めていた、意識して閉めるように心がけたが、どうする事も出来そうに無い。
「響、響ったら!どうしちゃったのよ。ホントに体調悪いんじゃないの?」
奏が腕を伸ばした。
細い指が、肩に触れた。
それが、合図だった。
「ら、らめえええええええええ」
溜まりに溜まった尿は勢い良く吹き出し、パンツを濡らし、太ももをつたい足下に水たまりを作っていった。
それとともに、ものスゴい快感が押し寄せて来て、立っている事が出来なくなってしまった。
ほとんどの尿を排泄し終わると、水たまりの上にペちゃんと尻を付いて座り込んでしまった。
突然の出来事に目を白黒させながらも、奏は出来る限り冷静に、親友のあられもない姿を見続けていた。
「ひ、響……おしっこ、我慢していたの?」
何とか絞り出した言葉に、響は力無く頷いた。
「おしっこ我慢してたから、ゆっくり歩いてたんだよ。そんな理由で奏を遅刻させる訳にもいかないから……う、う、ひっく」
さっきまで喧嘩していた事も忘れて、響は涙ぐみながらどうしてこんな事になってしまったのか説明し始めた。
「……ゴメン、こんな事になっちゃって。ホントは最初に素直に説明すればよかったんだろうけど、恥ずかしくって」
涙を流しながら、俯き、謝罪する親友の姿を見て、奏は心が苦しかった。
「私こそ、ゴメンね……まさか、おしっこ我慢してるなんて思わなかったから」
「イイよ、そんな事分かる人、きっといないもん……」
気まずい沈黙がふたりの間に流れた。今までで1番気まずい沈黙だ。
「と、取り敢えず、奏は学校に行きなよ。わたしはこんな恰好じゃ学校行けないから、1度家に戻ってそれから行くよ。遅刻するって先生に伝えておいて」
沈黙を破り、ふらふらと立ち上がった響は力無くそう言うと、学校とは逆の方向に向かって歩き始めた。
スカートも靴下も、尿でびしょびしょに濡れていた。
遠ざかっていく背中は、とても悲しそうに見えた。
「ま、待って響!」
このまま響を行かせては行けない、奏は強くそう思った。
響が振り返ったのを確認すると、奏はスカートの中に手を差し込んだ。
「ちょ!奏、何してるの!?」
スルリと自分のはいていたパンツを脱ぐと、羞恥で顔を真っ赤にさせながら響に突きつけた。
「親友がこんな恥ずかしい思いをしてるのに、ただ見送るだけなんて出来ないよ!せめて、せめてこのパンツを履いて!」
「か、奏……ありがとう……」
響はそのパンツを受け取ると、尿で濡れた自分のパンツを脱ぎ、奏が今さっきまで履いていたパンツに脚を通した。
「あったかい……奏の温もりだ……」
「もう、響……恥ずかしい……」
ふたりは間違いなくパニック状態だった。冷静そうに振る舞ってはいるが、頭の中はぐしゃぐしゃで通常の判断をする事が出来なくなっていた。
「じゃあ、すぐ学校行くから!待っててね!」
「うん、待ってるから、早く学校に来てね!」
そういうと、響は自宅に向かって走っていた。
数分後、自宅にたどり着き冬服に着替えようと制服を脱いでパンツを見て、先程の奏とのやりとりを冷静になった頭で思い出してしまい響はベッドの上で下着姿のまま悶絶する事になった。
同じく奏は、ホームルームに少し遅れて教室に入り、カバンを置き席に着いた瞬間、自分が今ノーパンである事実を思い出し、顔から火が出る程に真っ赤になる事になった。
響が学校に来たら、間違い無く大喧嘩になるだろう……でも、今朝の出来事は口にはしない、だってふたりだけの秘密だから……
-完-
あとがきのようなもの
久々の投稿になります
またしてもお漏らし小説です
ホント、進歩が無いというか、好き者というか…
まぁ、そんな感じです
取り敢えず、かなひび最高だと思うのです
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『スイートプリキュア』の響と奏のイチャイチャお漏らし小説です
…イチャイチャ?