華琳との話を終え、自陣に戻った俺達は雪蓮姉さんに報告を行った。
「と言う事で今回の戦い、曹操と手を組むことになった」
「そう、わかったわ。…それにしても曹操とね…」
「私はさっき会ったが、奴の覇気と言うか、相当の野心を感じた」
冥琳は華琳に会った感想を述べた。
「優秀な武将がおり、資金も豊富。
これから私たちが力を付けていく上で、一番の強敵だな」
「でも、今回は仲間だし、その力利用させてもらいましょ。
…ところで一刀。あなた曹操のこと知っているんでしょ?」
「ああ。私塾時代のね。彼女は冥琳の言うとおり大きな野心を持っている。
でも俺の知っている華琳は普通の女の子だよ」
姉さんの疑問に答えると、
「ふ~ん。真名を呼ぶ仲なんだ…」
と睨まれた。
「それより、次の戦いどうする?曹操たちは前曲で俺達は後曲。
どうやって戦う?」
機嫌を損ねた姉さんがこれ以上追求しないように、俺は次の戦いについて冥琳に聞いてみた。
「そうだな…虎牢関を守るのは先の戦いで撤退した張遼と飛将軍と謳われている呂布だ。」
前漢時代に活躍した猛将・李広になぞらえて飛将軍の異名を持つ呂布。
その力は黄巾党三万の敵をひとりで倒したと言われるほどだ。
「袁術ちゃんの軍は中曲よね。じゃあ私たちで押して前曲まで行ってもらいましょ」
俺を睨むのをやめた姉さんが手を上げ言った。
美羽の軍は曹操の後ろ、中曲にある。そして俺達はその後ろ。
「曹操に道を開けてもらい、我等が袁術を前衛に押し込む。
…悪くは無いな」
「じゃあ決まりね。早速曹操に連絡しましょ。
誰かある!」
姉さんは伝令を呼びつけると、要件を伝え華琳の陣へと向かわせた。
「…袁術の方はお願いね、一刀」
姉さんは俺の方を向くと、真剣な顔をして言った。
「…分かっている」
次の戦いの方向性も決まり、会議は解散となった。
俺は天幕を出たその足で美羽のところへと向かった。
彼女の天幕の前には七乃が立っていた。
「久しぶりだね、七乃。ちょっと話があるんだけど」
七乃に次の戦い、袁術軍を前衛に押し込むことを伝えた。
「……わかりました。これも美羽様の『願い』のためですね…」
「ああ」
俺の話を聞くと七乃は暗い顔をした。
「いくらお嬢様の願いのためとはいえ、兵隊さんの命を捧げるのにはやっぱり罪悪感を覚えます。私はとんだ悪者ですね…」
この作戦で袁術軍の兵の多くの命を散らすことだろう。
そのことに七乃は心を痛めている。
「七乃は優しいね。今の時代、自分の為なら他人を利用するのは当たり前だ。
それなのに七乃は兵の事を気にかけている」
「でも!利用しているのに変わりありません…」
「それに七乃ひとりで抱え込まなくても良い。その重み、俺も一緒に抱えるよ」
下を向いていた七乃は、顔を上げ俺を見た。
俺は七乃の頭に手を乗せ、
「大丈夫だよ。きっとうまくいく」
「…ありがとうございます…」
「それより、美羽の顔でも観て行こうかな」
「ふふふ。美羽様に会ってまた膝の上に乗せ、その体を堪能するんですね~」
俺が話題を切り替えるように言うと、七乃もいつもの顔に戻り俺をからかってきた。
「…なぜそれをしている?美羽と話すときはいつもふたりきりなのに」
「それはひ・み・つです」
美羽に会いにゆくと嬉しそうな顔をし、俺に飛びついてきた。
その後俺は、美羽、七乃の三人で他愛のない話をして陣へ引換した。
陣に帰ると俺のところに思春が走ってきた。
「一刀様!汜水関で捕まえた華雄が脱走しました!」
「華雄が?」
「ええ。治療室に運ばれて手当をしたあと目を覚ましたらしく、一瞬隙をつかれ逃げたとのことです」
「そうか。けが人とかは出なかったかい?」
「はい。衛生兵が気絶させられましたが命に別状はなく、ほかも無事です。
…どうしますか?」
思春は華雄の処置について聞いてきた。
「…あの傷だ、彼女は戦えないだろう。ほっておいても何も出来ないだろう」
「わかりました…」
その後、一応捜索隊を出したが結局華雄は見つからず、俺達は次の戦場、虎牢関に向かうこととなった。
今回は汜水関と虎牢関の間での出来事でした。
袁術軍の布陣が原作と違い中曲となっております。この話では、美羽(七乃)と孫呉は繋がっているのでこっちのほうがやりやすいと思い変えました。
ぶっちゃけ後ろまで敵を引っ張ってくるなんてめちゃくちゃ難しいですよ!?無茶をせず、自軍の損害をできるだけ抑えないと…それに華琳様の軍も協力してくれますし…
あと違いといえば、原作の呉ルートでは孫権(蓮華)は反董卓連合に参加してなかったのに気が付きました!その時、祭と建業で独立の準備に向かっていたようです。
なのでこの話では祭さんにひとりさみしく建業に向かってもらいました。
反董卓連合という大きなイベントに主人公不参加は駄目ですからね。
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第7話です。
今回は汜水関と虎牢関の間の話。
虎牢関での策、七乃の悩みが語られます。
気軽に見ていってください。