6月・・梅雨・・・祝日のない毎日・・・・
「カビが生えそうな日々だ」
振り続ける雨の中、傘を片手に今日の献立を考えながらつぶやいた。
「やっと大学にも慣れたし、後は単位をちゃんと取れるようにすれば良いかな」
自分で言うのもなんだが成績は割と優秀だと思っている。全体的に位置付けると・・
「中の上」
・・・・・・・
「普通だな」
自分の相変わらずさに少し呆れつつも気付けばマンションの前まで辿り着いていた。
「後で買出しに行かないと・・な・・?」
独り言が目の前の現状を見た途端言葉をなくした。
入り口のド真ん中に巨大な人型の何かが突っ立っているのだ
ぱっと見サイズは2メートル半はあるだろうか、筋肉質な体系っぽくて横幅も大きい。
空にそびえるクロガネの城の如く、そこを立ったまま動かない。
「なんだこれ・・」
あまり関わると碌なことが起こらない気がしたので直ぐその場を離れることにする、
しかしすぐさま無視できない光景が目に飛び込んでいた。
嵐さんが埋まっている
地面にすっぽり腰まで逆さに埋まっている、犬神家のように足を上に向けて・・
足がバタつかせていたので一応は生きてるっぽい
「どうしたんですか嵐さん、何やってるんですか」
仕方がないので嵐さんを掘り出して話を聞く
「いや、それがな、あのパイルダー・オンできそうなデカイのあるじゃん」
「はい」
「せっかくだから動くかなと思って色々やってみたわけよ」
「はい」
「何しても動かないからさぁ、頭だけもらっていこうと思ってひねったらね、そうしたらね」
「はい」
「埋められた」
「まぁそうでしょうね」
この人はなんでこうも常人の斜め上の考えをしているのか
そうこうしていると誰かが近づいてきた。
見た目は老人、しかし腰は真っ直ぐでかなり健康そうなおじいさんが入り口に立っている巨大な物体に近づいていく。
「おぉ、とびぞおげげへえあずざびこげぜぐぶすれこそぬつはむへもおよわとぴふざぴぜすてよびほもふぽかきいぶぜみらけ、わざわざ待っていてくれたのか、すまんのぅ」
「誰ですかその復活の呪文みたいな名前」
突っ込まざるを得なかった。
「誰って、この子の名前じゃよ、とびぞおげげ・・」
「長くなるんでフルネームはカンベンしてください」
「じゃあトビゾーじゃ」
「割とアッサリ略しやがった!!」
嵐さんのツッコミを横目にまずは一番聞きたいことを聞いてみる
「なんですかこれ?」
「何って、ロボットじゃ、見てわからんか」
ロボットってことはわかってるんだよ、問題はそこじゃないんだよ
「何故こんなとこに置いてあるんですか」
「コイツがワシの家の留守番をしてたんじゃよ、今はバッテリーが切れてるだけじゃ」
このご時世だしロボットという存在はなんら問題も違和感もない
「何でこんなにデカいんですか」
「ポークビッツよりアルトバイエルンの方が良いじゃろ?」
「どういう返しだよそれ!」
思わず声に出た
「まぁまぁ、今さっきバッテリーを調達してきたとこじゃ、お二人さんもコイツが動くとこみたいじゃろ?」
おじいさんが袋から電池らしきものを巨大な物体に装着し始めた
「まぁ、少しは見てみたいと思いますが」
電池らしきものを装着されたその物体、おじいさんは軽く物体の頭を叩く
すると本当にその物体はゆっくりと動き出した。
そして
嵐さんが埋められた。
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ジメジメした6月の梅雨が続く中、平一は大学から帰宅する途中、巨大な物体とマンションの住人らしき老人に出くわす。