「はじめまして凡田平一くん、俺がこのマンションの大家です。」
こんなことが有り得るのだろうか
多少常識離れした隣人や住人はいるだろうと来る前から覚悟はしていたが・・
大 家 が 一 番 常 識 離 れ し て い る ッ
その顔面はネコに近いマスクというべきか
フルフェイスどころかフルすぎて完全に顔全体がマスクで包まれている
そしてネコミミのようにとんがった頭に二つあるでっぱり
顔の部分には眉毛と筆で一筆したような糸目
そして万遍の笑みを見せる口
それが大家さん、ここ「マンション花畑」の大家さんだった。
「そうだ嵐くん、今の内に家賃を徴収したいんだけどつむじちゃん今いる?」
「い・・いえ・・つむじは今テレビで「笑ってええやん!増刊号!」を見てる最中で・・」
「それじゃだめだな・・仕方ない、じゃあ平一くん」
何が仕方ないのかはわからない
「はい、なんでしょうか・・?」
「平一君が代わりに払ってくれ」
自然と右ストレートが大家さんの顔面にクリーンヒットした。 ちなみに饅頭を潰したような感覚だった。
「あ、すいませんつい感情に任せて右腕が」
「多少ツッコミが返ってくると思ったけど予想以上にクレイジーだなお前は!」
そう言って嵐さんはいつにもなく脂汗を流して大家さんの方を見る。
左こめかみあたりが拳サイズへっこんでるが大家さんは少し楽しげに起き上がり
「フフフ・・いいパンチ持ってるじゃないか・・これは世界を狙えるレベルだぜ・・」
と笑いながら何事もなかったかのようにへこんだ箇所も元に戻る、人間なのかこの人・・?
「そうだ大家さん、お土産持ってきたんですよ」
そういや持ってきてたんだった、と手に提げていた袋を大家さんに手渡す。
「おぉ、ありがとう」
そう言って大家さんは袋の中身を取り出す、すると大家さんは急に無言で震えだした。
「・・・・・・」
なんかカタカタしている
「おい・・いったい何を渡したんだよ・・」
不安な顔をしながら言い寄る嵐さん。
「いや・・ただティッシュを・・」
「土産にティッシュは何か違うだろ!」
よく考えてみればそりゃそうか、なんで俺ティッシュなんか選んだんだろう。
大家さんの震えは次第に大きくなっていく
「こ・・・こ・・これは・・・」
「お前・・ワタシを・・・」
震えがぴたりと止まる
「無類のティッシュ好きと知っての土産かァーーッッ!!」
しらんがな
「このティッシュ・・天道町では既に売ってない・・よほどのド田舎じゃないともう手にはいらない・・このカサカサのティッシュ・・・すばらしい・・この手がずるむけそうなカサカサ感!」
褒めるか貶すかどっちかにしてくれ
「ま・・まぁ喜んでいただけて光栄です」
「家賃はティッシュ・・と・・」
嵐さんがメモをとっている、だいたい予測できるが指摘するのも面倒だし放っておく
その後、ちょっとした雑談をして3人で楽しんだ。
途中嵐さんは家賃の準備をするとかで帰っていった。
「平一くん」
「はい、なんですか?」
嵐さんが自宅に戻るところを確認して大家さんが質問を振ってきた。
「日常、とても楽しいかい?」
おかしなことを聞く・・
「えぇ、少なくとも今はとても楽しいですよ」
少なくとも今は楽しい、これは俺の本心
続くかはわからない、今後今以上に燃え上がるかもしれないし急に冷めるかもしれないが
「この1年間、それが君の人生の転機だな」
「転機?」
意味深そうなことを言う大家さん、この一年間で人生が決まるということか?
「よくわからないですが後悔がないように過ごすつもりですよ」
「うむ、後悔しないようにエンジョイするんだぞ」
そういって俺は大家さんの家を後にした。
外れた扉はあとで治すと本人が言っていたので放っておく
人生の転機
この言葉を完全に理解するのは何時になるのだろうか・・。
ちなみに次の日、ティッシュの吹雪と共に大家さんの怒鳴り声と嵐さんの絶叫がマンション中に響きわたった。
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大家さんに挨拶しに来た平一とついでの嵐さん。しかし初めて会う大家さんは常識とは離れた格好で・・・