No.215167

悲恋姫無双~風のむくまま雲は流れて~重なる世界でお花見を 10

Nightさん

ねこじゃらしさん、GWおバカ企画にお付き合いいただきありがとうございました。
そして、お疲れさまでした。楽しかったです。

また機会があれば、こう言ってユーザー企画を出来るといいですねぇ

2011-05-05 17:23:17 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:4375   閲覧ユーザー数:3901

 

 なんだかんだと言いながらも、結局最後は文句を言いつつ、片付けを勝手でてしまう詠。

 幽でさえ、あれ程警戒心をむき出しにしていたのに、結局は雰囲気に流され、酔いつぶれるほどに飲んでている中。

 僅かに頬を桜色に染めた詠が飲んだ酒は、あくまで適量。

 もう一人の普段と言動のまったく変わらない人物に比べれば、いつもよりは酔いが回っているのだろう。

 

 七乃に至っては、顔色にまったく変化はない。

 

 といっても、七乃さんは普段から酔っパレってるような人だしなぁ・・・

 

 内心で呆れたようなひとりごとを呟きながらも、寝ている少女二人を任せると

 てきぱきとゴミを纏め

 桜の木に寄りかかって寝入っている二人を起し

 三人の酔っ払って眠る少女に、のしかかられ苦しんでいる悠を救い出し

 

 それぞれに、やや強引に茶のはいったカップを手渡し

「ほら、もう宴はお開きだから帰る準備しなさいよ。

 幽もいつまでも寝ぼけてないでキリキリ片付け手伝いなさい」

 

「ふぁ~い・・・って、『魔王』様、何時から飲んでるんですかこれ」

「あ、はいはい、お手伝いしますよ」

 詠に命じられるままに、二人のユウが片付けを手伝い始め・・・

 

 動きを止めると

 

 それぞれが自分を指さし、顔を見合わせる。

 

「どっちでも良いからさっさとやる。

 それとも、このザルみたいな二人に付き合って、明日の朝気を此処で迎えるつもりなのアンタ達」

 ぴしゃりとそう言われ、はいはいと、疑問を差し挟むこと無く手を動かす。

 

 並んだ大徳利の山の中味は、結局一滴も地に吸われること無く、二人の男の胃の腑に落ちた。

 

「結局、何を話していたんですかお二人は。

 終始難しい顔をしていたのに、随分とお話は弾んでいたようですが」

 そう声をかけてきた七乃の感性もかなり変わっている。

 難しい顔をして、突き放すような物言いをする二人が、話が弾んでいるなどと・・・

「どちらがいい男か、張り合っていたのですか、もしかして」

 

 軽く肩をすくめ、小さくため息を付き、徳利に残っていた最後の酒を比呂から受ける。

「森羅万象、全てを知って尚、届かぬ真理について」

 鋼のような声で、低く答える一影に、比呂が薄く笑って同意のしるしに頷いて見せる。

 

 結局話していた内容など、最初こそ難しげなことであったが

 お互いのそこを探り合うのも馬鹿馬鹿しいと直ぐにも止め

 一体どちらが酒が強いのかという、くだらない男同士の意地の張り合いに姿を変え

 それすらもが、くだらないとすぐに悟るや、自然・・・内容は低きに流れる。

 

 要約して説明するならば・・・

 

 惚れた女がツンデレだと、お互い苦労する。

 

 ・・・というような程度。

 それでも、互いを慰めあうのではなく、互いの健闘をたたえ合うというあたりが、二人の性格ゆえか。

 一息に一影が杯を空け、空いた杯を伏せて置く。

「どうやら勝負つかずということで、決着はいずれまた」

 顔色ひとつ変えずに、そう言ってのけた一影は、引き下げていた襟巻きで口元を覆う。

 

「兄との酒であれば、何時なりとも。

 いずれ会うその時までに、真理に一歩でも近付いていることを」

 紅潮した顔をしながらも、はっきりとした口調でそういう比呂に一影が僅かに目を細める。

「互いに」

 

 

 ふらふらと夢遊病のように歩く袁家の姫と二枚看板にその副官を、羊飼いのようになんとかかんとか苦労しながら引っ張っていく悠の後ろ姿を見ながら。

 比呂は背負った少女のあまりの軽さに、驚いていた。

 小さな手がぎゅっとその肩を握り・・・

 そのあまりの小ささに、酒が回った頭が、罪悪感を山積みにしていく。

 

 ・・・こんな小さな少女に、手を出したのか・・・俺は。

 

 これは、もしや犯罪に近い・・・いや、犯罪そのものではないのか。

 

 

 

 足元のふらつく幽に、身長と体力的な問題から詠ではなく七乃が、にこやかに文句を言いながら肩を貸し

 詠は詠で、片付けた宴会の荷物を背負い、えっちらおっちらと苦労しつつも、一影の隣を歩いていく。

「本当に・・・大丈夫なの一影」

 心配そうに掛ける声、何時ものように腕に少女を抱き上げ立ち上がるときに、珍しく一影がよろめいたのだ。

 

 一影が既に目が見えていない、という事実を知る詠だけに・・・

 

 酒が回って足元がおぼつかない、という心配を隠れ蓑に、素直に心配を言葉にしてきていた。

「少し、飲み過ぎたようだな」

 肩をすくめて見せる一影の態度は何時も通り・・・

 酔っ払って、眼を閉じて歩いているような現状を考えれば、寧ろ歩けている方がおかしい。

 

「なんにせよ、無事に宴会が終わってよかったわ。

 始まりが始まりだっただけに・・・一体どうなるのかと心配したけど」

 三つ編みの上についた桜の花びらを、首を振って払い落とす詠。

「桜の樹の下には、死体が埋まっている・・・故にこれ程美しく咲き

 儚く散るのだと聞いたことがある」

「そういう物騒な話は後でゆっくり聞かせて頂戴。

 それよりも早く帰るわよ、皆が心配するから」

 

 詠にかかってしまえば、風情のある話も、物騒な話扱いか

 

 漏れそうに鳴る苦笑を噛み締めて、腕の中で眠る少女を抱えなおすように

 わずかに力を込めて、湯するように持ち上げると、腕の中の少女が小さく声を漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・へうっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
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