No.209582

恋姫無双 ~天が地に還るまで~三章

くらのさん

さて、お久しぶりです。ついに還ってきた一刀! けれど彼の前には……。コメントもしてくれますと「やったね、パパ!明日はホームランだ!」って叫んどきます。それではケロリとお楽しみください。

2011-04-02 19:05:51 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:7333   閲覧ユーザー数:5628

気が付いたらそこは懐かしい場所、色んな仲間と共に過ごした川辺だった。

 「帰って来たんだ……」

 言ってから自分言葉がおかしいことに気が付いた。

帰って来た。ここで生まれたわけではないのに、そう思えてしまう。そんな事を考える自分がおかしくて、どこか誇らしく、嬉しかった。

自分がこの世界に生きていると思えて。

「母さん、父さん、爺ちゃん。ごめん」

 俺は天、空に向かって頭を下げた。深く、深く。この全ての想いを込めるように。俺が目を覚ました時、母さんは泣いてくれた。父さんも泣いて、喜んでくれた。爺ちゃんは修行が足りない。って泣きながら怒ってくれた。

そんな人達の想い全てを踏みにじってここに来た。だけど、

「後悔してないから。俺、こっちで大切な人達と幸せになるから。許してなんて言えない! だけど、どうか見守って下さい! 本当にごめん!」

 そう言って顔を上げた時、風に乗って声が聞こえた気がした。

 頑張りなさい、と。それは母さん達の声だった気がした。ふと、顔を上げても姿なんてないけど。嬉しかった。涙が出そうになるのをこらえようと空を見上げた時、何故だか、あいつの顔が浮かんだ。

「かずピーの裏切りもん! そっち可愛い娘達といちゃいちゃするんやったら、あの時に会った二人の女の子のメアドを教えてや!」

 涙が引っ込んだ。

「及川! そこでそれかよ!」

 気のせいだと分かっていても突っ込まずには居られなかった。というか、あいつなら言いかねないから余計に達が悪い。

 その時、後ろの茂みから音がした。誰かがこっちに来る。

 振り向かなくても分かった。

「華……誰?」

 違った。幼稚園生ぐらいの女の子がこっちをじっと見つめていた。

「璃々は璃々だよ!」

 ひまわりのような満面の笑みを浮かべて仰った。

 

つまんない。お母さんはずっとお酒を飲んでるし。お姉ちゃん達は他の人達と遊んでる。

 璃々だけ誰も遊んでくれない。

「つまんないなー」

 戦いが終わって毎年やってるけど、毎年つまんない。

 でも、少しだけ嬉しい。だって、一人でどこかに出かけても怒られないもん。

 いつもはお母さんやお姉ちゃん達が危ないから、とか言って一人でどこかに行かせてくれない。璃々、そんなに子どもじゃないもん。

 「~♪~♪♪」

 でも、誰も言わない。だから、いつもだったら怒られそうな森に入っていく。

 誰もいないと思ってたのに、川の側に知らないお兄ちゃんが立っていた。

「華……誰?」

「璃々は璃々だよ!」

 

「えっと、璃々ちゃん?」

「なにー?」

 何が嬉しいのか、璃々ちゃんは楽しそうに笑顔を浮かべて俺の隣で座っていた。岸辺にある岩に座り、プラプラと足をぶらつかせて。

「お母さんとかは?」

 聞いた途端、つまんなさそうに口を尖らした。ご丁寧に頬まで膨らまして。

「お母さん、お酒飲んでる。桃香お姉ちゃんや他のお姉ちゃんも他の人達と話してる。璃々だけ誰も遊んでくれない」

 途中から寂しくなったんだろう。涙ぐんで泣きそうになっていた。

「じゃあ、お兄ちゃんと遊ぼうか!」

「うん!」

 先ほどまでの表情は何だったんだろうか、と言うぐらいまでにころりと表情を変える幼女に俺は苦笑を向けてしまう。

 それからは肩車、おままごと、水きり、おとぎ話。一生懸命に遊んだ。

「ねえ、お兄ちゃん」

「ん?」

 気が付けば、真上にあったはずの太陽が傾き始めていた。そんな太陽を二人揃って寝転んでいると、璃々ちゃんは嬉しそうに笑った。

「璃々ね、こんなにずっと一緒に遊んで貰ったの初めて! お母さんはいつも忙しくて、中々遊んでくれないけど、お仕事だから仕方ないのはわかるの。お姉ちゃん達も忙しそうにしてるのに、璃々と遊んでくれる。でも、こんな一緒に遊んでもらったことなかった」

 懸命に笑っている璃々ちゃん。俺は何かおかしい気がした。

璃々ちゃんはまだまだ幼い。それこそ遊びた盛りで、甘えたがりな筈なのに。それなのに皆に迷惑をかけたくないと、懸命に背伸びをして良い子であろうとしている。小さい子はそんなのを気にする必要はないはずなのに。

「我儘言っていいんだよ? 」

「でも、言ったらお母さんきっと困るもん」

「なら、俺になら我儘言っていいよ? 俺は何も困らないから」

「でも」

「でも。は無し」

 ポム、と頭に掌を載せて撫でる。

「璃々ちゃん。お母さんと一杯遊びたい?」

 うつむいて、小さく。けれどしっかりと頷いてくれる。

「なら、言ってごらん。『遊びたい』って。我儘を言うのも子どもの仕事なんだよ」

「でも、お母さんの困る姿見たくないよ……」

 ああ、ほんとにこの子は。

「よっと」

「わぁ」

 突然、自分の体が浮いたことに驚く璃々ちゃんに笑いかけて、肩車をする。

「でも、我儘言ってあげないとお母さんもつまんないかもよ」

「ほんと?」

「きっとね」

 そう、俺もあの時、我儘を言えば良かった。一緒に居たいと。去りたくないと。皆に言えば良かった。全てを話した上で言えば、また、なにか違った今があったんじゃないんだろうか。

そうすれば、凪も自分を責めないで済んで。桂花達も泣かないで。華琳も自分を押し込めない。そんな今があったかもしれない。俺が意地を張ったから。格好を付けたいなんて思ったから。

 皆を泣かせたくない。そんな想いなんか捨てれば良かったのに。そのせいで彼女達は苦しみ続けてしまった。

「……いいのかな」

 まだどこか迷っている璃々ちゃんの背中を押すために。

「いいんだよ。もし、一人で言いづらかったら一緒に言ってあげるから、ね」

「うんっ!」

 元気よく返事をしてくれた璃々ちゃん。俺はそれを感じて、どこか寂しさを感じた。もし、あの時誰かに相談していたらこんな風に背中を押してくれたのだろうか。意味もない考えだけどつい思い浮かべてしまう。

「あ、やっと笑顔になった。やっぱり璃々ちゃんは笑って方が可愛いよ?」

「ほんと?」

「ほんと。お兄ちゃんは嘘は言わないよ」

「へへ、ねえお兄ちゃん」

「うん?」

「璃々が大きくなったらお嫁さんにしてくれる?」

「ああ、こっちからお願いしたいくらい。きっと璃々ちゃんは美人さんになるぞ」

 女の子は同世代の男子よりも成長が早い、っていうけど。この年で年上に憧れるなんてませてるなぁ。

 とはいえ、まさか俺がその憧れる年上役になるとは思いもしなかった。どこか嬉しいけど、照れる。

「うん! お母さんもおっぱいが大きいから璃々も大きくなるんだよ! そうなったらお兄ちゃん嬉しい?」

「あ、ああ。お兄ちゃん嬉しいなぁ……」

 早熟すぎる気がする。それに何でこんな小さな子に、自分は胸が大きい子が好きだとか言っているんだろうか。そんな自分に呆れて空を見上げたけど、空は青かった。

 

 

はい、皆さん。お久しぶりです。遅筆、適当、無計画で有名なくらのです。いかがお過ごしでしょうか。

 さて、ついに一刀が帰ってきました。それで最初に会ったのは……璃々ちゃん! ということで。ちゃんと理由ありますからね? 大事な伏線なんです! 決して幼女を書きたかったというわけでは……。

 さて、そろそろ物語も終盤。というか多分次で終焉ですかね。……多分。

さぁて次回の新作は……!

 一刀です。この間、師匠に言われて一人で修行していたんですが、変な光に包まれたと思ったら見知らぬ土地に立っていました。漫画みたいなことってあるんですね。

 これから大変な目に遭うような気がしますが、流派東方不敗の名に懸けて頑張っていきたいと思います。

 次回新作、「G一刀始動! 一刀三国の大地に立つ!」の一本です!

  

 

 


 
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