<蜀>
<一刀>
「…ぅ…う~ん…。」
オレは、薄暗い中目を覚ました。
あまりよく眠れなかったな…。
「……知らない天井だ。」
なんて言ってみた。
食堂で寝ているのは覚えていたけどさ…。
いつもと違う天井を見ると一回は言ってみたいよね!
…はぁ。身体が痛い。椅子がけっこう固かったからな。
寝相はいい方だから椅子から落ちなかっただけでも良かったか。
ま、野宿を考えればかなりマシだよな。
贅沢を言える立場じゃないし。
昨日のあれだって歓迎会みたいなもんだろ………多分。
…まったく違う気がしなくもないが、皆気にかけてくれているのは伝わる。
嬉しいもんだよな…。
話を聞くにオレは魏の人間だったはずなのにな。
…やっぱり魏に行くべきなのかな。
でも、お世話になっている義理もあるし、少しだけでも恩を返したい。
魏には落ち着いたら行ってみるか!
なんか、騒がしいながらもこの世界を知るのが楽しみになりつつあるな。
さて、城の人が目を覚まして食堂に来てしまったら邪魔になるだろうから、ちょっと早いけど起きるか。
オレは見張りの兵士さんに挨拶をして、顔を洗いに行くことにした。
この城は、兵士さんも侍女の人も、他の人もみんな気さくで良い人そうだ。
初対面の人は見かけるたびに挨拶をするオレに驚いていたようだけど、当たり前のことだよな…?
顔を洗って身だしなみを整え考える…。
これからどうするか…。朝食にはまだ早い。街に出ても同じだ。
服は…持っている絶対数が少ないため、寝ているときに着ていたものも城内をうろつく分にはさほど問題ないからいいかな…。
着替えるとしたら部屋に戻らなければいけないしな。
…あの部屋に戻るか?
否!断じて否である!
部屋に戻ると、“なにか きけん な におい が する。”
飲んだ次の日って、女性なら起きぬけの顔なんてあまり見られたくはないだろうしな。
大分深酒していたみたいだし、大丈夫かな?……一部以外。
う~ん…散歩がてら中庭にでも行くか。
ほどなくして目的地に着いた。
「今日もいい天気になりそうだ。」
ようやく顔を出し始めた太陽に向かって伸びをする。
空には朝焼けが広がり、雲も少ない。
空気がうまい。東京とは比べるまでもないし、鹿児島に比べてもこちらの方が上だ。
…数日ぶりに、静かな朝を経験できたな。
軽く体操で身体をほぐす。
よしっ。爺ちゃんとの修行でしてた瞑想でもするか。
最近は心が乱れてばかりだったし、ここらで精神修養しとこう。
オレは座禅を組み、精神を統一させるため、瞑想に耽り始めた。
・・・・・・・・・・・・・・
………どれだけ時間が経ったのだろう。
太陽はすっかり顔を出していた。
初夏の柔らかな日差しが心地よい。
ぐぅ~
…腹減ったな。朝飯でも食べに行くか。
オレは再び食堂へと歩き出した。
「………お…い……と…かぁ~、どこに…ったんだよ~。」
…ん?
歩いていると、誰かを探しているような声が聞こえてきた。
目を向けると、程よく長い赤い髪をポニーテールにした、白と淡い赤を基調とした鎧のような服と黒いスカートの女性がいた。
…何か困っているみたいだな。
声をかけてみるか。何か力になれるかもしれないし…。
「あの~、どうかしたんですか?」
オレは近付いて声をかけた。
「…うん?えーと…誰だ?」
そんな答えが返って来た。当たり前だな。
……普通に可愛い娘だな。まともそうだし。
「すいません。申し遅れました。オレの名前は北郷一刀って言います。」
「おっ。お前が天の御遣いとか言われてる北郷か~。私は公孫瓚。字は伯珪だ。よろしくな。」
「こちらこそよろしくお願いします。公孫瓚さん。」
握手を求めると朗らかに笑って応えてくれた。
…触れた途端少しぴくっとして、顔が赤くなった。
ここの女の子は皆純情なんだな…。
アレか?古き良き世界って奴か??
あと儒教とかも絡むのかな…?いや、この世界じゃ分からないけどさ。
「……あぁ、それと公孫瓚さんって言いにくいだろ?お前良い奴みたいだし、私の真名を預けるよ。私の真名は白蓮って言うんだ。それと、別に敬語じゃなくていいからな。」
少しのフリーズの後、彼女は真名を預けてくれた。
…真名ってこんな軽いもんで良いの?
オレが真名に対する感覚ずれてるのは分かるけど…。
あ、でも皆が預けているって聞いた皆への信頼も大きいんだろうな。
「ありがとう。真名大事に預からせてもらうよ。オレは真名は無いけど、強いて言えば一刀が真名に当たると思うんだ。良ければ、白蓮も一刀って呼んでくれよ。(ニコッ)」
「うっ…。わ、わかった。よろしくな…その…かず…と。(ぽっ)」
「まあ、呼びにくければ北郷でも構わないけどさ。」
「い、いや。そんなことはないんだ。か、一刀…うん。」
「ところで、白蓮は何してたんだ?」
「それが、桃香にちょっと用が有ったんだけど見当たらないんだよ…。おまけに愛紗達まで居ないんだ。」
………あぁ、なるほど。
…しかし、白蓮って…なんか…苦労人っぽいな。
「ああ、それなら。まだオレの部屋に皆いるんじゃないかな。昨日歓迎会(?)みたいなカンジで皆、大分飲んでたからさ…。おかげでオレ食堂で寝る羽目になっちゃったけどさ。」
「…えっ?私聞いてないぞ。………またなのか。…はぁ。」
ぬぉっ。何か白蓮の周りの空気が淀んでいるぞ!?
なんか哀愁漂う感じだな…。
「い、いや。予定してたとかじゃなくて皆が何故か集まってきたんだよ。偶然だって。」
「…そっか。私ってな~んか影薄いんだよな。会話に参加できないままいつの間にか話が進んでたりしてさぁ。何をやっても普通って言われるしさ。馬術くらいしか取り柄ないし……。」
「え?それって凄いことなんじゃないの?」
「何が凄いんだよ。はぁ~。」
「いやいや、逆に言えば苦手がなくてどんな所でもこなせるってことだろ?それってやっぱり凄いし貴重な才能だよ。しかも馬術まで得意なら絶対重宝するって。」
実際、心から凄いと思う。
「―言われてみればそうかもな。……うん!なんか元気出てきた。ありがとな、一刀。」
「いいって。白蓮はもっと自分に自信持てよ。また何かあったら遠慮なく来てくれよ。」
「ああ………………あのさ、一刀って今日は「おや、一刀殿ではございませんか?」」
白蓮と話していると、廊下の向こうから星がやって来た。
…何か白蓮が言いかけてた気がするけど…気のせいか…。
「お、星。おはよう。大丈夫なのか?」
「おはようございます。あの程度、どうということございませんよ。」
「ははっ。まあ、星ならそうだろうね。皆は?」
「さて、私はそうそうに部屋に戻りましたゆえ分かりませぬ。一刀殿こそ昨晩は部屋に居られなかったようですが…。」
「さすがにあの状況じゃ寝られないって…。食堂で一晩明かしたよ。」
「ははは。それは災難でしたな。」
「……お~い…。」
「あ、悪い、白蓮。なんだっけ?」
「……いや、なんでもないんだ。気にしないでくれ。……はぁ。」
「おや、白蓮殿。居られたのですか。」
ぐさっ。
あ。何かささった。
かいしん の いちげき
ぱいれん に 200 の ダメージ
何か文字まで見えるし…。
「えぇ~と、そうだ。白蓮。桃香に用があるんじゃなかったか?そろそろ起きてると思うぞ。」
「…ああ。そうだな。じゃあ、私は行くよ…。」
「あ、あぁ…。が、頑張れよ。」
とぼとぼと歩いて行く姿が痛々しい。
これが涙?
泣いているのはオレ?
「星。ちょっとやりすぎじゃないか?」
「なに、いつものことですよ。それより一刀殿はこれからどうなされるおつもりで?」
…いつもなのか。
うん。からかう星に、落ち込む白蓮……目に浮かぶな。
ま、史実でも公孫瓚と超雲って結構縁が有ったはずだし…仲はいいんだろう。…多分。
「オレはちょっと朝飯でも食べに行こうかと思ってた所だよ。星もよければどうだい?」
「左様ですか。生憎と私はこれから野暮用がございましてな。すみませぬ。」
食堂の方から歩いて来たんだし、そうだろうな…。
「わかった。じゃあまたな。」
「ええ。それでは。」
オレは星にも別れを言って食堂へと向かった。
…その後食堂で桃香が「う~。あたまいた~い。」と言って入って来たのを見たときは本当に白蓮に同情したぜ。
あれは絶対に入れ違いになったな。
………………がんばれ、白蓮。
ちなみにオレは、愛紗や桃香達に昨日のことを思いっきり謝られた。
食堂で寝てたのもばれたのでなおさらだった。
…気にしてないのに逆に悪いな。
でも、夜に訪ねて来るのは控えてもらうように頼んだ。
このままじゃ絶対に身体が持たない自信がある。
……ものすごくがっかりして、しゅんとしてたように見えたな。
そんなに昨日のこと気にしてたのか。
しかし、その後の何か閃いたような顔がどうも気にかかる。
…なんか、このお願い意味ない気がするな。根拠ないけど。
その後二人は仕事とのことで、オレは今日も一人街へと向かった。
―桃香はついて来ようとしたけど愛紗に引きずられて行った。
しばらく歩いているうちに、気付けば日はすっかり高くなっていた。
さて、今日の街ではなにが待っているのだろうか…。
あとがき
少ないですが、出来た所まで。
あまり進んでません(汗)。
すいません。ちょっとリアルがゴタゴタしてまして。
ただでさえダメ作品なのにこの出来です。
蜀・出会い編もいよいよ終盤で、そろそろあと少しで魏の面々と合流させれるかな~というとこまでやっと辿り着きました。
次回も暇を見つけて書いていきたいと思っていますが、時間はかかるかもしれません。
ではここまで付き合ってくれた勇者のみなさん。
支援、コメント、メッセージをくれる神のみなさんにおおきな感謝を!!!
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地震のせいで色々狂いまくりです。
しばらく忙しくなりそうorz
ちょこちょこ書いてはいきますけど…
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