No.206309

三分の計

鮮烈なデビューから一年。

ゼニガメはTINAMIに欠かせない存在となった。

ゼニガメの代名詞ともいえるビューティー&シリアスな作品たち。

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2011-03-14 06:11:52 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:10064   閲覧ユーザー数:8062

 

「紫苑か……、いや、桔梗か……」

 

 

北郷一刀は大いに悩んでいた。

 

 

「あ、あの、ご主人様?」

 

 

それは、愛紗の呼びかけにも気付かないほど深く。

 

 

「やはり紫苑か、でもそれだと璃々ちゃんが……」

 

 

彼がこのように悩むことは余りないので珍しいと言えば珍しい。

 

 

「な、なぜ私の胸を揉んでいるのですか?」

 

 

無意識のうちに愛紗の胸を揉んでしまうほど彼の悩みは深かった。

 

 

「はわわ、昼間から盛んです」

 

 

それを見ていた朱里はいつもの口調ではあるのだが、その視線は愛紗の胸を仇のように睨みつけていた。

 

 

「ご主人様!」

 

 

さすがにこの羞恥プレイに耐えきれなかったのか、愛紗は大声を出す。

 

 

「はっ! 俺は一体何を?」

 

 

正気に戻りながらも愛紗の胸を揉む手を休めることはない一刀。

 

 

むしろわざとやっているとしか思えない。

 

 

「い、いつまでそうしているのですか!?」

「出来ることならいつまでも」

 

 

間髪入れずに答える彼は変態なのかもしれない。

 

 

「それとも愛紗は俺なんかに胸を揉まれたくないの?」

「そ、それは……。い、嫌かどうかと申されるのなら、い、嫌ではありませんが……」

「じゃあいいよね?」

 

 

どんどん顔を赤らめる愛紗。

どんどん揉む手を強める一刀。

どんどん空気と化す朱里。

 

 

「出来れば、んっ、人目に付かないところで触っていただきたいというか……」

「ちっちゃいことは気にすんな」

「し、しかし、朱里もっ、見ていますし」

 

 

朱里の射殺すような視線が気になる愛紗。

 

 

「じゃあやめとくわ」

「えっ?」

 

 

あっさりと手を放す一刀だった。

 

 

 

 

拍子抜けした愛紗はどこか物足りなさげな表情で一刀を見る。

 

 

「ん? どうしたんだ、俺を見つめて? 仕事しなさい、仕事を」

「ご、ご主人様のせいではありませんか!」

「だって朱里の視線が気になるんだろ?」

「はわわ、私は気にしてませんよ愛紗さん」

 

 

ペッタンコの胸部を触りながら笑顔で答える朱里。

 

 

「それは、その、そうですけど……。……私としてはこのまま…………い、いえ。なんでもありません」

 

 

言いかけて恥ずかしくなったのか愛紗は途中で諦める。

 

 

「分かってるよ愛紗。今晩はたっぷり可愛がってやるから安心しろ」

 

 

愛紗を抱き寄せて耳もとで囁く一刀。

 

 

「は、はい! お待ちしております!」

 

 

そう言って愛紗は意気揚々と部屋を出て行った。

 

 

「ははっ。可愛い奴だな愛紗は。なあ朱里?」

「胸ですね! ご主人様は胸の大きな方が以外は撲滅しろとおっしゃるのですね!」

 

 

朱里は声高に叫ぶ。

 

 

「馬鹿だなあ朱里、大きい胸には大きいなりの、小さい胸には小さいなりの良さがあるんじゃないか」

「そ、それなら! 私に小さな胸の良さを教えてくださいッ!」

「朱里も大胆になったな」

 

朱里は一刀の手を掴むと自分の平原に持ってくる。

 

 

「失礼しましゅ。先程愛紗さんが嬉しそうに廊下を歩いていたのですが――」

「ひ、雛里ちゃん!? こ、これはね――」

「ひ、雛里! 助けてくれ! 朱里が俺の手を使って自分の胸を揉ませようとするんだ!」

 

 

朱里の言葉を遮って一刀が雛里に訴えかけた。

 

 

「ご主人様!?」

 

 

突然の寝返りに驚きを隠せない朱里。

 

 

「朱里ちゃん……。ううん。たとえ朱里ちゃんにそんな性癖があっても私達友達だよ」

「う、嬉しいけど違います!」

「大丈夫だよ」

「ひ、雛里ちゃ~ん」

 

 

笑顔で朱里のことを受け入れてくれる雛里はとても良い子だと一刀は思った。

 

 

結局誤解は解かれることは無かった。

 

 

 

 

「っで、さっきから何を悩んでいたのですか?」

 

 

やさぐれた様子の朱里。

 

 

「雛里~、朱里が怖いよ~」

「あわわ、大丈夫でしゅ。朱里ちゃんはきっと性癖がばれたのが恥ずかしかっただけですから」

「……もうそれでいいです」

 

 

朱里は言い返す気力もなかった。

 

 

「それより、話は戻しますけどどうして愛紗さんはあんなに嬉しそうだったのですか?」

「そんな話してないよ!?」

 

 

雛里によっていつの間にか話がすり替わったことに突っ込む朱里。

 

 

「そんなに嬉しそうだったのか?」

「はい。長江の水を一人で飲みほしてしまうくらいの勢いでした」

「そ、それは凄いな」

「はい」

 

 

雛里の眼は決して嘘を言っていなかった。

 

 

さすがの一刀も少し引いた。

 

 

「それで! ご主人様は何故悩んでらしたのですか!」

 

 

話が進まないと見た朱里は強い口調で一刀に尋ねた。

 

 

「おいおい、あまり怒るなよ朱里。怒ると美容に……分かりました。答えさせていただきます」

 

 

さすがにブチ切れ寸前の朱里を前に一刀は真面目にならざるを得なかった。

 

 

「えっとだな、この前三国会談があっただろ?」

 

 

三国同盟を組んでから割と頻繁に行われる体の良い飲み会。

 

 

「その時にだな俺はある策を思いついたんだ」

 

 

策と聞いて二人の軍師の眼の色が変わった。

 

 

「その策とはな……」

『その策とは?』

 

 

二人の声が重なる。

 

 

部屋の中にゴクリ、と息を飲む音も木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「熟女三分の計だ」

 

 

 

 

『じゅ、熟女三分の計!?』

 

 

二人の眼の色は、軍師のそれではなく、艶本愛好家としてのそれだった。

 

 

「ああ。うちには紫苑と桔梗と言う熟女もといババアがいる。そして呉にも祭さんというババアがいる。天下三分の計によって勢力は対等になったかもしれない。しかしこと将の平均年齢に於いては我が蜀は他の二国を圧倒する」

『おお!』

「そのことから平均年齢の均一化を図りたいと思い、この策に辿り着いたのだ」

 

 

具体的には紫苑か桔梗を魏に送り込むという話である。

 

 

「なるほど、それは確かに私も考えていた事です」

「その事については二人で何度も議論してきました」

「うむ。やはりこれは軍師の視点から見ても深刻な問題だということだな」

『はい』

 

 

同時に頷く二人を見て、一刀は事の重大さを再認識する。

 

 

「このままいくと数年先は我が国は高齢化社会を迎えてしまいます」

「あわわ、その点魏国は若い力が国を支えていますのでその点は問題ないでしょう。何より魏王である華琳さんが若いですからね」

「呉は一人だけだからまだしもうちは二人か……。厳しい戦いになりそうだな」

 

 

どこかぶっ飛んだ議論を重ねる三人。

 

 

「紫苑と桔梗を魏に渡して季衣と流琉をもらうってのはどうだ?」

「はわわ、す、すごいです!」

「老害の駆逐とともに人事の一新。凄いでしゅ!」

 

 

もはや人を人とも思わぬ彼らである。

 

 

しかし、軍師としては残忍さも必要なのかもしれない。

 

 

「いえ、平均年齢的には風さんもいただいた方が良いでしょう」

「そうですね。雛里ちゃんの言うとおりこちらが二人、あちらが三人で釣り合うかと思います」

「それもそうだな。流石は俺の軍師たちだ」

 

 

一刀に褒められて顔を赤らめる二人。

 

 

言っていることは外道に他ならぬのだが。

 

 

「他には呉からシャオを得るって手もあるな」

「他にも明命さんとかもいけますね」

「亜莎さんも大丈夫かと」

 

 

ますます白熱する三人。

 

 

しかし、得てしてこのような謀は外部に漏れるものである。

 

 

執務室の扉が開き、矢が次々に飛んでくる。

 

 

為すすべなく何人は座っていた椅子にはりつけられる。

 

 

何事かと思い三人は矢の飛んできた方向を見つめた。

 

 

そこには先程まで散々莫迦にしてきた蜀の熟女二人が居た。

 

 

「なにやら楽しそうに議論しておりましたなぁ」

「あらあら、三人ともどうかしましたか? 顔が真っ青ですわよ」

 

 

笑顔を絶やさない二人。

 

 

そのことがさらに三人の恐怖を駆り立てる。

 

 

「どうして儂らを見てそのようになるのか"ババア"にはわかりませんな」

「ええ。"老害"のわたくしたちにも分かるように教えていただきたいですわ」

 

 

彼らの命運が尽きた瞬間であった。

 

 

『アッーーーーーーーーーーーーーー!』

 

 

BAD END


 
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