No.206262

真・恋姫†無双 武と知の2人の御遣い伝 第16話

黒山羊さん

どうも、黒山羊です。
ホワイトデー当日編より早くかけたので、こちらをうpしました。
とうとう、第1話の閲覧ユーザー数が1000を超えました。
嬉しいです。
いつも、読んでくださってありがとうございます。

続きを表示

2011-03-13 21:07:43 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:3019   閲覧ユーザー数:2602

この物語は真・恋姫†無双という外史に、

CRISIS CORE FINAL FANTASYⅦのジェネシス・ラプソードスが来たいう設定です。

作者である私、黒山羊が原作を何度もやりなおし、(CCFF7:現在4周目のジュノン前)

登場人物を原作通りにしたつもりです。

ですが、解釈が幾らでも可能であるように、登場人物が皆様のご期待にそえるかどうかはわかりません。

また、作者は関西人なので、気をつけているつもりですが、

セリフが関西弁臭くなってしまうかもしれません。

あらかじめご了承ください。

読者の皆様が楽しめたら幸いです

 

 

 

 

視点:雛里

 

私は今、ジェネシスさんと2人で華雄さんが寝かされている天幕に居ます。

 

私は華雄さんの右足の包帯を変えています。

 

ジェネシスさんは天幕の中にある長椅子に座り、右足を上にして足を組み、左腕をひじおきに乗せながら『らぶれす』を読んでいます。

 

「う…うう……。」

 

華雄さんは突然唸りだします。華雄さんの顔に力が入ります。瞼と眉間にはしわが出来、口元は歪む。

これだけ傷を負ったのです。痛そう…。

痛みにうなされているのか、数度首を横に振ります。

 

「私は生きてるか?」

 

華雄さんは突然目を開けて言います。

そして、華雄さんは右腕で体を起こそうとしますが、苦痛で顔を更にゆがめ、寝台に倒れます。

 

グア!

 

そう叫び。倒れた衝撃で傷口が開いたのか、右肩の白い包帯が赤色に染まっていきます。

痛いのか、息が速いです。

 

 

 

「お…前は……誰…だ………。」

 

 

 

枕元に立っていた私の方を睨み、華雄さんは言います。

私ですか?

 

「私は…劉備軍の軍師、ほ…鳳統でしゅ……。」

 

 

 

「りゅう……び…」

 

 

華雄さんの睨みが怖かった私は舌を噛んでしまいました。

ジェネシスさんは華雄さんの声を聞いて、椅子から立ち上がります。

何故か、ジェネシスさんは汚れた包帯の塊を左手に持っている。

どうして?

 

「孫策は!孫策はどうした!死んだのか!」

 

華雄さんは左腕で勢いをつけて起き上がると、私の胸倉を左手で掴み、寝台に倒れ、私を引き寄せます。

 

「孫策は生きてます。」

 

「そうか…。」

 

華雄さんは左手を離すと、糸の切れた操り人形のように力が抜けまた、寝台に倒れます。

華雄さんは無表情で私に呟くように聞いてきます。

 

「私の軍は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全滅です…。」

 

 

 

 

 

「フフフ…。」

 

 

「ハハ…ハハハハハ…アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 

華雄さんは発狂したように笑い叫びます。

でも、笑い止むと目を左腕で隠し、次は泣き始めました。

 

 

「くそ…あの女を殺せなかった…。董卓様を侮辱したあの女を……。」

 

 

華雄さんにとって、董卓さんは良き君主だったのでしょう。

涙は流れ続けます。

華雄さんは落ち着きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも次の瞬間、信じられない光景がありました。

 

「ジェネシスさん!何をしてるんですか!」

 

私は驚きました。私より後ろで、華雄さんから見えない位置にいたはずのジェネシスさんが気がついたら、私の横に立っていて、華雄さんの口に包帯を突っ込んでいたのです。

理解できませんでした。

何故、ジェネシスさんは華雄さんの口に包帯を入れて、自分の手で包帯が口から出ないように押さえつけているのですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コイツ、舌を噛んで死のうとした…。」

 

 

「!!!」

 

 

ジェネシスさんの言葉に私は驚きます。

 

華雄さんはジェネシスさんに抵抗して暴れますが、右肩と右足が負傷しているので、容易には振り解けずにいました。

ジェネシスさんは華雄さんをさらに抑え込むために、華雄さんに馬乗りになります。

 

「どうして分かったのですか?」

 

「あの時のアンジールの目をしていた。」

 

「『あんじーる』って、ジェネシスさんの親友の?」

 

「そうだ。」

 

『あんじーる』さんの話は聞いたことがあった。

自分と同じ『じぇのば細胞』を胎児の時に埋め込まれた境遇で、同郷の幼馴染の親友。

ジェネシスさんと同じように体が劣化したという。

 

「アンジールは自分の正体を知った時、絶望し、夢も誇りも失い、死のうとした。

さっきのコイツの目はアイツの目と同じだった。

 

『明日をのぞみて散る魂

 

誇りも潰え

飛びたとうにも 翼は折れた』」

 

 

確か、『らぶれす』第2章。

捕虜の男が『女神の贈り物』を求め脱走しましたが、脱走の時に敵軍に襲われて重傷を負います。そして、その傷で動けず地面に倒れ込み、捕虜だった男は死を覚悟した場面だったと思う。

私も翻訳版『らぶれす』を第1章から第3章まで発売日に買って読んだから知っています。

 

華雄さんも明日を望み、誇りを持っていた。そして、孫策さんに汚されて激情した。

だから、涙を流しながら戦っていたと思う。切り傷を受け、矢を受けても、この人は戦っていた。

あんな風に戦う人を私は初めて見た。

 

華雄さんはどんな明日を望んでいたのだろう…。

 

華雄さんはどんな誇りを持っていたのだろう…。

 

 

 

そして、華雄さんにとって董卓さんはどんな良き君主だったのか…。

 

 

 

 

私は気になりました。私は華雄さんに聞きます。

 

「華雄さん、答えなくていいから、私の話を聞いてください。

死ぬのはそれからでも遅くないです。」

 

華雄さんは観念したのか、暴れるのを止め、体を大の字にします。

抵抗を止めた華雄さんを見て、ジェネシスさんは手を退かします。華雄さんは包帯を吐きだし、数度咳きこみますが、しばらくすれば、落ち着きました。

私は落ち着いた華雄さんに言います。

 

「私は董卓さんを討伐しに来たのではありません。

洛陽の暴君を討伐しにきたのです。」

 

「どういうことだ?」

 

華雄さんは私に聞いてきました。

 

「董卓さんが暴君と言われていますが、董卓さんが洛陽の暴君であるという証拠が無い。しかし、洛陽では暴政が行われている。

だから、私たちは真実を知り、洛陽の暴君を討伐したいのです。

私たちに協力してくれませんか?」

 

「……。」

 

華雄さんは黙ってしまいます。

私は続けます。

 

「私たちの君主である桃香様は乱世で苦しむ人を助けるために、立ち上がりました。

そして、私は桃香様の志に感銘して、桃香様に仕えています。

だから、乱世で苦しんでいるなら農民でも、暴君と言われている董卓さんでも助けたいんです。お願いします。」

 

私は頭を下げてお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………董卓様のようだな、お前の君主は。」

 

 

 

 

「へ?」

 

 

 

「分かった。我らの今の状況を話そう。」

 

「ありがとうございましゅ!」

 

あう、嬉しさのあまり、舌を噛んでしまいました。

 

私は朱里ちゃんに華雄さんが起きた事を伝えました。

朱里ちゃんは桃香様、ご主人様、愛紗さん、鈴々ちゃん、星さんを呼んで来てくれるそうです。

私は華雄さんの包帯を代えます。

ジェネシスさんは

 

「ちょっと待っていろ。」

 

と言うと、何処かに行ってしまいました。

 

 

 

 

視点:華雄

 

鳳統と名乗った女の言葉、必死であり、真っ直ぐだった。

だから、嘘ではない。

私は鳳統を信じてみようと思った。

だから、鳳統の申し出を断らなかった。

 

天幕には、女が数人と男が1人入って来た。

先ほどの男とは違うようだ。

 

この男が劉備か?

男は喋る。

 

「はじめまして、華雄さん。俺、北郷一刀って言います。

あと1人来るので、少し待っていてください。」

 

北郷一刀?

確か、張譲が恐れている天の御遣いの一人がそういう名だったのを思い出す。

性は北郷、名は一刀。字と真名は無いことから、初めて聞く感じの名前だったのが印象的で覚えていた。

確かに、見た事のない服を着ている。

だが、私は知らないだけでこのような服が別の国ではあるのかもしれない。だから、北郷一刀と名乗った男に聞いてみた。

 

「貴様、知の御遣いか?」

 

「一応、そう言われている。」

 

北郷は私を見て、少し照れながら言う。

この男は嘘を言っていない。そんな気がした。

 

 

天幕が開き、先ほど出て行った男が入って来た。

北郷は天幕に入って来た男に質問した。

 

「ジェネシスさん、何処に行ってたんですか?」

 

「他の諸侯の間諜を軽く脅して、追い払ってきた。

関羽の隊で顔を知っている奴を見張りとして立たせておいたぞ。」

 

そう答えると、赤い服を着た男は長椅子に座ると、本を開け読み始める。

 

 

 

 

 

思いだした!

こいつは私が孫策を殺そうとした時、振り下ろした金剛爆斧を赤い細い剣で受け止め、邪魔した男だ!

 

「貴様!よくも、孫策を殺す邪魔をしてくれたな!」

 

私は男に向かって吼える。

私は寝台から降りて赤い服の男に掴みかかろうとしたが、右足を負傷している私は地面に倒れる。地を這って赤い服の男の方に向かう。

しかし、北郷が

 

「愛紗、星。華雄さんを止めてくれ。」

 

黒髪を後ろで括っている女と青髪で白い服を着た女に止められ、寝台に戻される。

 

「すまない。華雄さん。

華雄さんから孫策さんを護るようにあの人に頼んだのは俺なんだ。」

 

私は両手で北郷の胸倉を掴む。

先ほど私を止めた2人がこちらに敵意を向けるが、北郷が止める。

私は叫ぶ。

 

 

「貴様!よくも邪魔してくれたな!」

 

 

「華雄さんの気持ちは分からないでもない。

俺だって、ここにいる皆が侮辱されたら、華雄さんにみたいに怒ると思う。

 

でも、孫策さんが今此処で死ぬと孫呉が乱れて、更なる混乱に成ってしまう。

だから、孫策さんには死んでほしくなかった。

 

そして、華雄さんは董卓さんが侮辱されてあれだけ怒った。

だから、俺は董卓さんには何らかの事情があると推測したんだ。

董卓さんの事を知って、暴君じゃなかったら助けたいと思う。

だから、董卓さんの事を知っている華雄さんにも死んでほしくなかった。

 

俺を幾ら憎んでも良い。

だけど、董卓さんの真実を教えてくれ。

頼む。」

 

 

私は考えたが、他に董卓様を救う方法が無かった。

 

「分かった。教えてやる。」

 

「ほんと!?」

 

「だが!」

 

私は北郷の指さす。

 

「董卓様に害なすと見なした時は道連れに死んでやる。」

 

「分かった。」

 

 

 

 

 

 

「その前に2つ聞いていいか?」

 

「何?」

 

「1つ目は私を倒した男の名を聞きたい。」

 

私は赤い服の男を指さし、そう言う。

北郷たちは一斉に赤い男の方を見る。

男は本を閉じ、こちらを見ると、椅子から立ち上がる。

 

「ジェネシス・ラプソードスだ。」

 

「ぜ…ぜねしす?性は?名は?字は?」

 

私は聞いたことが無い感じの名前を聞いた。本当に名前なのか?

だから、私は聞いた。

 

「名はジェネシス。性はラプソードス。字も真名もない。」

 

聞いたことが無い名前だった。

性より先に名があるとは…

 

「変わった名だな。」

 

「俺はこの世界の人間じゃないのでな…。」

 

男はそう答える。

この世界の人間じゃない!?

もしや、

 

「貴様、武の御遣いか?」

 

「そう言われているな。」

 

私は男の返事を聞いて驚いた。

武の御遣い。噂では聞いたことがある。

何でも2万の黄巾党を1人で無傷で倒した武人。

張譲の使者が知の御遣いと共に詳細を私たちに教え、抹殺させようとしたが、

陳宮が

 

「恋殿こそが、武の御遣いなのです!そんな噂は嘘なのです。」

 

と叫んだので、私も納得してしまい、武の御遣いの詳細を聞いていなかった。

後で、賈駆や張遼がこの使者の相手をしたそうだ。

そうか、この男が…

 

「なるほど、だとすれば、私が敗れたのも当然と言うものか…。」

 

「いや、当然では無い、必然だ。」

 

そこまで言われると落ち込む。

生きて帰れたら、今以上に鍛錬をしようと心に決めた私だった。

 

もう1つ聞きたい事を聞く。

 

「2つ目は、呂布や陳宮、張遼も助けてやってくれないか?」

 

そう、私は志を同じくしたアイツらを救いたかった。

だから、北郷に頼んだ。

 

「すまない。それは約束できない。」

 

「なぜだ。」

 

「俺たちの勢力が弱小であること。そして、もう俺と呂布たちは敵同士として戦場に立っている。

だから、呂布たちの命の保証はできない。

だけど、俺たちは救える人は救いたい。」

 

「わかった。

そう言うことならば、仕方が無い。」

 

私は納得し、今洛陽で起こっている事を話し始めた。

 

 

 

 

― 回 想 -

 

董卓様が洛陽の領主になって数カ月が経った。

その間に董卓様を洛陽の領主にするよう皇帝陛下に推薦した何進は誰かに暗殺された。

その後、董卓様は洛陽のありさまを見て深く心を痛めておられた。

 

「このままでは駄目。」

 

そう言って、董卓様は洛陽の治安向上や税の緩和に努めた。

私腹を肥やし、民に重税を課した十常侍の粛清も半分は終わった。

手法としては、賈駆と陳宮が1人1人、今の洛陽の法に逆らっていないか調べたのだ。

法を犯した十常侍は民の前で処刑にした。

十常侍を見せしめに殺すことによって、他の宦官に対して牽制となる。

見せしめによって、他の宦官や有力者の暴政は減っていった。

 

また、民の救済措置として、国庫やとり潰した宦官から取り上げた財で炊き出しも行った。

そのため、洛陽は活気を取り戻しつつあった。

 

 

私は洛陽の城の中庭で自らの武を高めるために、鍛錬をしている。

鍛錬と言っても仮想敵と対峙して実在しない相手を倒すというものだ。

 

私が仮想敵に選んだのは孫堅。私を昔負かした女だ。

 

孫堅の武器は南海覇王。細くて丈夫な剣だ。

あのような武器をあの時まで見たことが無かった。それは形状的な意味ではなく。性能的な意味である。

不思議だった。木の枝のように細いあの剣がまるで鉞のように丈夫だったのだ。

 

南海覇王を持った孫堅は岩のように重く、風のように速い攻撃をしてくる。

 

実在しない孫堅は私に攻撃してくる。

始めの方は防ぎきれていたが、攻撃は出来ていなかった。

そして、孫堅の重さと速さは変わらない。

次第に、私は体力が切れてきて……

 

実在しない孫堅は私の首を斬った。

 

 

「ああ、くそっ!

まただ!また、体力切れか…」

 

 

私は後ろ向きに地面に倒れ、大の字になり、肩で息をしながら言う。

そうだ。ここ最近はこの鍛錬ばかりしているが、結果は同じ。

いつも、体力切れで、致命傷を負い、終わり。

 

「華雄! 見つけたのです!」

 

そう叫んで、私に近寄って来たのは、呂布の軍師の陳宮。

見た目はちっこい呂布の金魚のフンだが、呂布の軍師と言うだけあって、私より遥かに頭が良い。

そんな陳宮が私に声をかけてくるのは珍しい。

私は

 

「どうした?陳宮?」

 

「詠が玉座の間に皆来るように言ってるのです。

早く来るのですよ。」

 

「ああ、分かった。」

 

なるほど。賈駆がお呼びか。

しかし、何故皆で玉座の間に行かなければならないのだろう?

董卓様が呼んでいるのなら分かるが…。

とりあえず、私は立ち上がり。手拭いで汗をふく。

 

「わかった。先に行ってくれ。こんな汚れた服で玉座の間に行きたくない。」

 

「わかったのです。先に行ってるのですよ。」

 

私は自室に向かい、着替えを済ませ、玉座の間に行った。

玉座の間には私以外の将は皆集まっていた。

賈駆、呂布、陳宮、張遼

 

だが、主の董卓様は居られなかった。

賈駆の表情はなぜか暗い。

私は聞いてみた。

 

 

「賈駆。どうした?

十常侍の誰かを捕まえることが出来たのか?」

 

「それなら、どれだけ嬉しいか…。」

 

「どういうことだ?」

 

 

 

 

「それは…」

 

 

 

 

バアン

 

 

突然、玉座の間の奥の扉が開いた。そして、張譲が入って来た。

張譲。十常侍の1人で、十常侍の中でも最も力を持っている奴だ。

白髪で部分的に紫色の髪がある少年だ。年齢的に言えば、おそらく董卓様と同年代だろう。

 

しかし、何故?

あの張譲が? 此処に居る?

張譲は玉座に座った。

その玉座は董卓様のモノ。董卓様以外に座れるとしたら、それは皇帝陛下のみ私は玉座に座った張譲に向かって吼える。

 

「貴様!そこは董卓様のための玉座だ。今すぐ退け!」

 

しかし、賈駆によって私は止められた。

 

「待って、華雄!今からそれについて話すから。

恋も霞も音々音も落ち着いて聞いて…。」

 

私や呂布、張遼、音々音は黙って、賈駆を見る。

賈駆は数度深呼吸をし、気持ちを落ち着かせようとするが、震えている。

そして震えた声で賈駆は言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日から、僕たちの君主は張譲になった。」

 

 

 

意味が分からない。

今日から君主がこの張譲?

何故?こいつが?

 

張譲は不機嫌そうな顔をし、頬杖をつきながら言う。

 

「賈駆。」

 

「はい。」

 

賈駆は振り向き、張譲を見て返事をする。

 

「張譲は君たちの君主だよね?」

 

「はい。」

 

「だったら、呼び方は張譲『様』だよね。」

 

「申し訳ありません。張譲様……。」

 

賈駆は頭を下げ、謝罪する。

それを見た張譲はニヤついている。

 

「どういうことだ、賈駆!  我らの君主は董卓様ただ一人だ!」

 

「せや、はよ説明してくれ。賈駆っち。」

 

私と張遼は賈駆に迫る。

賈駆は説明し始める。

 

 

 

「董卓は洛陽で皇帝に対し謀反を起こそうとした。

 

張譲様は董卓を捕え、皇帝陛下の前に連れていかれましたが、張譲様は董卓とその臣下の命を救いたいと皇帝陛下に進言された。

 

だけど、反乱の疑いがある以上罰は無くてはならない。

そんため、董卓の地位をそのままにされ、張譲様が保護観察。

臣下である僕達は一時的に張譲様の臣下になることで、この反乱を済ませされた。

 

だから、僕達は張譲様が董卓の保護観察を止められるまで、張譲様の臣下になる。」

 

 

 

賈駆は董卓様のことを「月」と言わず、「董卓」と余所余所しく言う。

 

「董卓様が皇帝陛下に反乱を起こそうとしただと、嘘だ!」

 

私は張譲に向かって叫ぶ。

 

「賈駆。」

 

「はい。」

 

 

 

「董卓は臣下の教育がなっていないようだね。

董卓は僕の手の中にいるんだよ?いいのかな?董卓がどうなっても?

 

最近面白い毒を手に入れたんだ。

体が動かなくなる毒。

飲んだ者は口は開けっぱなし、涎も垂れるし、瞳孔も開きっぱなし、手足は動かないし、言葉は話せなくなるそんな毒なんだけど、僕の気分を損ねたら、董卓に飲ませても良いんだよ?

あの毒。」

 

 

 

「待って下さい。張譲様。

董卓は保護観察の身です。どうかそれだけは…。」

 

「ふうーーーん。賈駆がそこまで考えるなら、今回は許してあげよう。」

 

張譲は私たちを笑いながら、脅す。

そうか、董卓様は保護観察と言う名の人質になった訳か。

 

「貴様を今此処で殺せば、董卓様は助かる!」

 

私は張譲に向かって金剛爆斧を振り上げる。

だが、呂布は私の前に出て、方天画戟で張譲を庇う。

 

 

「呂布、どけ!」

 

「あいつ……影武者。」

 

「何、偽物だと!」

 

私は張譲を見る。

 

 

 

「よくわかったね。呂布。

さすがは、天下の飛将軍。

 

たしかに、僕は張譲様そっくりの影武者。

そして、今も僕を監視している張譲様の間諜が何処かにおられる。

だから、僕を殺しても、張譲様は死んだ事にならないし、董卓は毒を飲むことになるよ。

それでも良いのなら、僕を殺してみれば?」

 

 

 

張譲の影武者は玉座から立ち、私の前に出ると、そう言う。

そして、私の頬を数度叩くと、顔に唾を飛ばす。

私は殺意を持ったが、董卓様の為に我慢した。

握り拳に力が入る。

 

張譲の影武者は玉座に座ると、私たちに命令する。

 

 

「まず、張譲様の屋敷には近づかない事。

洛陽の民に変装した張譲様の部下が居るから、近づくとすぐばれるよ。

近づいたら、どうなるか分かるよね?

 

2つ目、洛陽と長安の税の設定は張譲様が全てする。

だから、君たちはその設定された税を徴収しろ。

君たちが出来る予算の中で好きなようにするが良い。

 

3つ目、平原に最近噂の天の御遣いが2人居る。

知の御使いと武の御遣いだ。

特徴は書簡に書いてある。2人共刺客を送って殺せ。

漢には皇帝がおられる以上、この世を混乱させる天の御遣いなんぞ必要ない。

 

今のところはそんな所、また命令するときは張譲様から伝令を伝って僕に届くから、

 

じゃあ、頑張ってね。張譲様の臣下の皆さん」

 

 

張譲の影武者は書簡を賈駆に向かって投げる。

賈駆はとっさに書簡を受け止めようとするが、段差で躓き、尻もちをつく。

それを見た張譲の影武者はゲラゲラ笑いながら玉座から立つと、玉座の間から出て行った。

 

「ごめん。皆…。

僕が月にもっと護衛をつけていたら、こんなことには……。」

 

賈駆はこけたままの体勢で泣きながら私たちに謝った。

 

「賈駆っち………。」

 

張遼は賈駆を幼子のように抱きしめる。

 

呂布は玉座の間から出て行こうとする。

陳宮は呂布についていこうとする。

 

「恋、ちょっと暴れてくる……。」

 

陳宮は呂布の怒気に当てられたのか、何も言えなくなる。

 

私も暴れたかった。この怒りをどこかにぶつけたかった。

 

「うおおおおおおおおおおおお!!!」

 

だから、私は泣き叫んだ。

私が敬愛する民の為に立ちあがった董卓様が私腹を肥やすことに必死な張譲に捕まり、私は董卓様の為に何もできないと、無力であると痛感した。

 

それからというもの洛陽はひどい有様だった。

それからの民の生活は地獄のようだった。

生かさず殺さずで、殺さずぎりぎりの生活水準だった。

公共財も最低水準だった。

それでも、私たちは自分の財を売ってでも、董卓様の夢を叶えようとしたが、私の財産も底を尽きようとした時に、最悪の知らせが来た。

 

それが……

 

反董卓連合。

 

十常侍の張譲は袁紹を唆し、力が無くなり税収の無くなってきた長安に代わり、張譲は袁紹の土地を手に入れようとしたのだ。

張譲は操り人形を董卓様から袁紹に代えようとしている。

 

つまり、私たちは使い捨てされたのだ。

 

私も

 

賈駆も

 

張遼も

 

呂布も

 

陳宮も

 

そして、

 

 

 

 

董卓様も…。

 

 

― 回 想 終 了 ―

 

 

 

 

視点:一刀

 

華雄さんの話は論理的に破綻しておらず、張譲の行動は私利私欲の為であるということが一貫しており単純であった。

そして、董卓さんの話をしている華雄さんはとてもつらそうだった。

 

「皆、俺は董卓さんを救いたい。賛成してくれるか?」

 

「「「「はい。」」」」

 

皆は快く返事をしてくれた。

 

 

 

だが、考えろ! 北郷一刀!

 

どうやって!董卓を救う?最も、良い方法は連合軍が洛陽に着く前に洛陽に行き、董卓を保護すること。

だが、どうやって?

汜水関、虎牢関を連合より早く攻め落とし、洛陽に行く?

これは戦力的に不可能だ。

 

他の方法は無いのか?

 

あることはある。

 

間諜を洛陽に送り、本物の張譲を暗殺し、連合が来る前に董卓を救う。

これが董卓を救う唯一の方法だ。連合に交じって洛陽に着いてから、董卓を探すのは困難だろう。

 

今の華雄さんの話からおそらく張譲の屋敷に董卓が隔離されているのだろうが、兵を率いてゾロゾロと行けば、明らか不自然だ。

なぜなら、今回の董卓と反董卓連合の間に、表向きは張譲が絡んでいない事になっているからだ。

だから、少数で、張譲の屋敷を襲撃し、董卓さんを助け出す方法がよい。

 

故に、張譲の屋敷を襲撃するのは判断力があり、武力という実行力が無ければならない。

頭が切れ、武のある者と言えば、星だが、星が行けば星の軍の指揮をとる者が居なくなってしまう。

 

では、誰が適任だ?

 

軍を率いるという理由から愛紗、鈴々も削除。

軍全体を指揮するためには桃香と俺は必要。

華雄さんは負傷しているため動けない。

 

となると、朱里若しくは雛里をジェネシスさんと組ませて行く必要がある。

ジェネシスさんは雛里と仲が良いから、2人に頼むか。

 

方針は決定した。

 

 

「ジェネシスさん、雛里。洛陽に向かってくれ。

そして、洛陽の現状を把握し、華雄さんの話と一致するようであれば、董卓さんを救出。張譲を捕縛若しくは討ち取ってくれ。」

 

「いいだろう。」

 

「はい。ご主人様。」

 

ジェネシスさんと雛里は良い返事をしてくれた。

 

「すまない。北郷…。」

 

華雄さんは寝台に横になった状態で俺の袖を掴み、お礼を言ってくる。

 

「いいよ。華雄さん。俺たちは乱世で苦しむ民を救うために立ち上がったんだ。

困っている人を救うのは当然だよ。」

 

「そうだよ。華雄さん。」

 

俺と桃香は華雄に言う。華雄は泣きながら言う。

 

「それでも、ありがとう。北郷。」

 

 

 

 

視点:孫策

 

私はこの前の戦いを思いかえしながら、どのように剣を振るえば、華雄を倒せるか考えていた。

 

あの時の華雄の動きは機敏で重たかった。

南海覇王で金剛爆斧の勢いを逃がすようにしても、華雄の攻撃の衝撃は幾らか腕を伝わって私の体力を奪う。

華雄も金剛爆斧を振っているので、体力を消耗するはずだが、速さと重さはいつまでたっても衰えなかった。

 

だから、今の私の武ではあの時の華雄には勝てない事が分かってしまった。

 

 

 

 

「はあ…。」

 

「どうした?雪蓮?」

 

 

隣で酒を飲んでいる冥琳が私に聞いてくる。

 

 

「うん。あの時の華雄が強かったなと思って。」

 

「王である貴方が弱気でどうする?」

 

「そうね。もっと鍛えなくちゃね。」

 

 

 

すると突然、思春は私たちの天幕に入ってきた。

 

 

「雪蓮様!劉備軍に動きがありました。

武の御遣いは軍師を連れて陣より離れ、南に向かいました。」

 

「何!?」

 

 

冥琳はそう言って立ち上がる。

 

何故?武の御遣いが南に向かうのか論理的に考えたら、理解できない行動だろう。

でも、私の勘は言っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武の御遣いは洛陽に向かうと…。

 

 

「思春!明命を連れて武の御遣いを監視なさい!おそらく、洛陽に向かうはずよ!」

 

「は!」

 

そう言うと思春は天幕から出て行った。

冥琳が私に聞いてくる。

 

 

「勘か?」

 

「うん。勘!」

 

「はあ、軍師としてはそんな不確定要素を当てにしたくないのだがな…。」

 

 

そう言って、冥琳はため息をつく。

冥琳が私の勘を信じてくれるのは今まで外れたことが無いから。

 

さあ、武の御遣い、貴方は何をしてくれるのかしら?

華雄を一撃倒すだけじゃないでしょ。

 

一刀より面白い事してくれるのかしら?

 

フフフ…楽しみね。

 

 

 

 

どうも、黒山羊です。

 

主人公が2人居る為に発生する。別のイベント同時進行です。

一刀は汜水関、虎牢関を通って、洛陽に向かいます。

ジェネシスは劉備の陣から南に下りその後、西にある洛陽に向かいます。

さて、ジェネシスは一刀達連合が洛陽に着く前に董卓を救いだすことが出来るのでしょうか?

 

やば、明日の予習してない。

では、今回はこの辺で……

 

ごきげんよう。

 


 
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