この物語は真・恋姫†無双という外史に、
CRISIS CORE FINAL FANTASYⅦのジェネシス・ラプソードスが来たいう設定です。
作者である私、黒山羊が原作を何度もやりなおし、(CCFF7:現在4周目のジュノン前)
登場人物を原作通りにしたつもりです。
ですが、解釈が幾らでも可能であるように、登場人物が皆様のご期待にそえるかどうかはわかりません。
また、作者は関西人なので、気をつけているつもりですが、
セリフが関西弁臭くなってしまうかもしれません。
あらかじめご了承ください。
読者の皆様が楽しめたら幸いです
視点:華雄
私は今張遼と3万の軍勢を率いて汜水関に居る。
反董卓連合とかいう烏合の衆から、敬愛する董卓様を護るためである。私は反董卓連合の防衛の最前線である汜水関の防衛を志願した。
張遼は猪突猛進な私の手綱を握る役目でここに来ているという。私はそんな猪突猛進だろうか?
董卓様はある事情で洛陽から離れられない。それさえ解決すれば、何処かに身を潜め命は助かる。
あんなことになるまでは洛陽は董卓様の手によって良き都へと変貌しようとしていたのに…董卓様……
目の前に居るは雑魚の群れ。数は斥候の話によれば、
袁紹軍が10万
袁術軍が7万
曹操軍が5万
馬騰軍が3万
公…何とか軍が3万
劉備軍が7千
そして、今は亡きあの憎き孫堅の娘、孫策軍が1万
ここで、孫策を討ち取り、孫堅の元に送ってくれるわ。
待っていろ!孫策!
「フハハハハハハハハハ!」
「どないしたんや?華雄?いきなり笑って気持ち悪いで。」
「おお、張遼。すまない。昔私を倒した孫堅の娘が来ていると聞いてな。すこし、楽しくなってきたのだ。」
「もしかして、打って出るつもりちゃうやろうな」
「当然だ。あんなもの烏合の衆だ。我が金剛爆斧で叩き斬ってくれる。」
「アホか!幾らあんたとウチが居るゆうても、向こうには関羽、趙雲、張飛、夏候惇、夏候淵、孫策みたいな名立たる将や、張譲が恐れて何回も刺客を送って殺そうとしとる天の御遣いが2人もおんねん。
それに、ウチらは3万で向こうは約24万。正面からぶつかって倒せるはずないやろ。
ちっとは、考え!」
「では、籠城戦と行くのか?」
「せや。」
「確かに幾ら屈強なる我が精鋭が居ても、24万相手では無事では済まんな。
分かった。ここは籠城戦で行こう。」
「あんたにしては聞きわけがええやん。どないしたん?」
「董卓様を…月様を救うと我らは誓ったのだ。生きて帰らねばなるまい。」
「へえ、アンタにしては冷静やん。」
「当たり前だ。」
私はそう答える。張遼は私を馬鹿にしているのか?
私と霞が軍の方針を決めている間に、反董卓連合は汜水関に迫ってきた。
先鋒は『孫』と『劉』と『十』の牙門旗。
「うう、孫策め!1対1なら相手をしてやるものを!」
私が唸ると横の張遼は私の肩に手を置き、声かける。
「出ていきなや。」
「分かっている。」
私と張遼は我が軍の指揮を執る。
方針は籠城戦。盾と弓、弩の準備をさせる。念のため、一部の兵には野戦の準備をさせておく。
反董卓連合が汜水関の城壁からの射程範囲内に入るまでに準備は整った。
しかし、反董卓連合は射程から届くか届かないかの所で軍を止める。
そして、2刻程こう着状態となった。
イライライライラ
「ちょい、華雄ジッとしとり!」
「ああ、籠城戦とは過酷なモノだ。」
「アンタが短気なだけや。お茶でも飲むぐらいの気持ちでおり。アンタがずっと緊張しとったら兵まで疲れてくるわ。」
「うむ……。」
私はそう答えると茶を飲んだ。うむ。心が落ち着く。
昔、董卓様に茶を入れてもらったことがある。あの方の入れた茶はたとえ荒波のように心が荒れていても明鏡止水となる。
あの茶には遠く届かないが、この茶も美味い。私は茶を入れてくれた部下に礼を言った。
私は茶碗を片手に反董卓連合を見る。
すると孫策が単独で出てくる。
「汜水関の守将・華雄に告げる。孫呉の先代である我が母、孫堅に無様に敗れた貴様が此処で我らと対峙しようとは片腹痛し。
その首、赤子の手をひねるように貰い受ける!」
ううーーーー!
我慢我慢だ。華雄!
心を明鏡止水にしろ!荒波を立てるな!
パリン
私は手に力が入りすぎて、茶の入った茶碗が割れ、熱い茶が手にかかる。だが、怒りで私は茶の熱さをあまり感じなかった。
孫策はまだ、続ける。
「これで出て来れぬとは、我ら孫呉を見て臆病風に吹かれて怯えていると見える。
無様!武様よ!華雄!貴様のような者が武人を名乗ろうとは真の武人として、私は貴様が哀れで仕方が無い。
貴様は野山で狩りでもしていろ!そちらの方が貴様の性分に合うだろう。」
「うああーー!!」
私は怒号する。私は金剛爆斧を手に取り、汜水関の城壁を降りようとするが、張遼に後ろから体当たりされ、地面に押さえつけられて止められる。
私は暴れて、張遼から逃げようとするが、張遼の部下が来て縄で縛られる。
「この縄を解け!張遼!あれほど、虚仮にされて、黙っていられん。」
「わかってる。アンタや恋と切磋琢磨して磨き上げた武をこんなに罵られてウチかて平気なはずないやろ!
でもな、ここで、汜水関出て、突出したら、相手の思う壺や!
すこし、そうやって、大人しゅうしとり。」
「貴様は許せるのか!奴らは私たちの武を愚弄した奴らを!」
「許せるはずないやろ!でもな、此処出たら終いやねん!
だから我慢せなあかんねん。」
「しかし!」
「しかしもかかしもあるか!賈駆っちとねねが籠城戦にして長期戦に持ち込んだら、向こうの兵糧は尽きる。そうなれば、うちらの勝ちやって言うてたやろ!
今出ても勝てる保証なんてないやろ!」
そう言った張遼の握り拳から血が出ているのを私は見えた。それを見て私は張遼も同じ気持ちなどと察した。
私は縄で縛られて城壁で横になっている状態で張遼に言う。
「すまない。張遼。お前も私と同じ気持ちなのだな。」
「せや、アンタだけが怒ってる思うたら大間違いやで。」
「うむ。」
私は冷静になった。
しかし……
「愚かな暴君董卓にしか仕えることが出来ぬとは、貴様も董卓も愚かだな。」
孫策はそう言った。
暴君?誰が?董卓様のことを言ったのか?この女は?
私は怒りで何も言えなくなり、何も考えられなくなった。
百歩譲って、我が武を愚弄することを許したとしよう。だが、私の心優しき主君である董卓様を、この女は愚かな暴君と言ったのだ。
百歩いや、一万歩…一億歩譲っても私は孫策を許せなかった。
「うおおおおおおおーーーーー!!!!!!」
私は縄で縛られている状態のまま立ち上がり、縄を城壁の石に擦りつける。数度擦ったら、縄は切れた。
張遼は私の雄たけびに驚いたのか、こちらを見る。
「ちょい待ち!華雄!」
「止めるな!張遼!
我らの武を愚弄したことは許せても、董卓様を暴君と愚かと罵ったあの女を私は許すことができない!
例え、何らかの策があろうとも、無数の罠があろうとも、絶望的な戦力差があろうとも、我が身が朽ちようとも、あの女が跪き、許しを請い、命乞いをする姿を見ないと私は気が済まない!」
私を静止しようとする張遼を振り切り、我が精鋭に告げる。
「聞いたか!我が精鋭よ!
敵軍の孫策は我が主の董卓様を愚弄した!
董卓様は長安では善政を行い、暴君には程遠いお方であった!
長安の領主だった頃から、ここに居る者は知っているであろう!
厳しい重税から救われた者も多いだろう!
賊を追い払い安全に暮らす事のできた者もいるだろう!
詳しい事は言えないが、今はある事情で洛陽で善政を行えていない。
だが、心優しき董卓様は善政を行えない事を悔しく思っていらっしゃるはずだ。
そんな心優しき董卓様を愚弄した孫策を私は許す事が出来ない!
きさまらはどうだ!
孫策を許すことができないなら、私に命を預けてくれ!
あの女の首、私が討ち取って見せる!」
私は泣きながら叫ぶ。
涙はボタボタと地へ落ち、水たまりとなっていた。
悔しかった。董卓様の事を知らない奴が、董卓様に会った事のない奴が、董卓様を愚弄したことが。
「「「「うおおおおおおおお!!!!」」」」
兵たちも私の気持ちに応えてくれる。
ある者は私と同じように怒声し、ある者は涙を流す。私は嬉しかった。私と共に董卓様への忠義がある者がこんなに居てくれたことが、嬉しかった。
私は更に涙を流す。
今度は嬉し涙だった。
嬉し涙もまた地へと落ち、水たまりを大きくしていく。
私は馬に乗ると、汜水関の門の前に立ち、門を開けさせる。
門は大きく開けるのに手間がかかる。門が開くまでの間、私は城壁の上を見た。そこには張遼が居た。張遼も城壁の上からこっち見てくる。
「華雄!もう止めへん!
孫策の首取ったら汜水関に戻ってき!ウチは汜水関で籠城する!
華雄! 死になや!」
張遼はそう言った。そして、私は張遼に向かって縦に首を振る。
そして、門は開いた。
「全軍!孫策に突撃!!」
私と私と気持ちを同じくした我が精鋭1万は悔し涙と嬉し涙を流しながら、敵軍へと、死地へと走った。
ああ、我が魂散るには良い日だ…。
視点:一刀
敵軍の、華雄軍の士気は高かった。華雄軍は皆涙を流し、怒声している。
これまで、俺たちの軍は賊を相手にしかしてこなかった。賊は欲望によって士気が高められていた。
重税から逃れるために賊になった者。賊という生き方しか知らなかった者。様々だ。
しかし、共通する事は生きることに渇望することによって士気は高められていたことだ。
しかし、華雄軍は違った。
明らかに捨て身の人間の戦い方だった。
先頭は華雄が馬に乗って突撃する。そして、兵たちはそれに続いた。兵たちは致命傷を受けても気力で武器を持ち戦い、武器を持つ腕を斬られた者は敵に体当たりし、味方の盾となる。
まるで、死ぬことが前提のような戦い方だった。
そんな華雄軍は雪蓮の居る反董卓連合の左陣へと突撃していく。
反董卓連合の右陣を任されている俺達の軍は鈴々の右陣を動かし、汜水関の攻城を開始。愛紗の率いる中央と星の率いる左陣は華雄軍の背後へと回った。
こうすることで、華雄軍の背後を取った愛紗と星の背後を叩きたくても、鈴々の軍が汜水関を攻城しているので、張遼軍は叩く事が出来ない。
結果、華雄軍の包囲は完了した。華雄軍を背後から攻める。
俺と桃香、朱里と雛里とジェネシスさんは華雄軍が俺達に突撃した時の為に迎撃態勢を取りつつ、待機している。
ジェネシスさんを華雄軍に当てなかったのは、俺たちの護衛の代わりをする者が他に居ないからだ。
愛紗も鈴々も星も兵を率いている。だが、ジェネシスさんは兵を持たない。いつも単独だ。
故に、愛紗や鈴々、星を護衛にまわしては攻城する兵と華雄軍の背後を叩く軍が少なくなってしまう。よって、愛紗、鈴々、星が俺たちの護衛をするのは却下。
ジェネシスさんが俺たちの護衛をしている。
涙を流しながら戦う華雄軍の士気の高さに恐怖した我が軍は華雄軍を攻めきれずにいた。
このままだと雪蓮は討ち取られる可能性が出てきた。
俺は朱里に聞く。
「朱里、このままじゃ拙い。何か策は無いか?」
「残念ながら、あの勢いは死兵そのものです。死兵は策で止まるものではありません。」
朱里はそう答える。
朱里がこう言うってことは策では止まらない。
考えろ! 北郷一刀!
敵兵が止まらないのなら、効率的に敵を排除する方法を考えなければならない。
敵を効率的に排除する方法は幾つかあるが、現在の状況で使える方法は…
敵将の排除!
つまり、華雄を討ち取る事だ。
幾ら士気が高くても、将が討ち取られれば、軍は機能しなくなる可能性が高い。
しかし、どうやって討ち取る?華雄は華雄軍の先頭に居る。つまり、俺らから最も離れた位置だ。
雪蓮に任せ、背後からの攻撃に専念し、華雄軍を混乱させるか?それも一手だが、決定打では無い。
相手は死兵で、今の孫策軍の後退を見ているといささか不安だ。
だが、どうする?
俺らは数が少ないため、華雄軍とは背後しか接点が無い。
雪蓮の助太刀をするなら、華雄軍を突っ切る、若しくは、少し遠回りになるが、孫呉の軍の中を突っ切るかの2択だ。
後者は却下だ。ただでさえ、孫呉の軍は華雄軍の士気の高さに混乱している。そんな中を俺たちの軍が打ち合わせも無しに突っ切ってみろ。孫呉の軍は更に混乱し、陣形を保てなくなる。故に、却下だ。
だが、前者は実現可能性が見られない。数が減ったとはいえ、まだ華雄軍は五千は居るだろう。
愛紗も星も華雄軍と対峙し押してはいるが、華雄軍を突っ切ることは不可能だ。
どうする?どうする??
出来る!前者を成功させる可能性のある人が一人だけいる。
ジェネシスさん!
「ジェネシスさん!」
返事が無い。
「ジェネシスさんなら、私達本陣の先頭に立っています。」
朱里はそう答える。
「朱里!ジェネシスさんを呼んでくれ!あの人なら華雄軍を突っ切って、雪蓮の助太刀をして、華雄を倒せる可能性が高い。
華雄が倒れれば、士気が落ちた華雄軍の前線を崩れる。そうなれば、華雄軍を倒せる!」
「はわわ!分かりました。
ですが、ご主人様。
ジェネシスさんは華雄軍を手加減して突っ切ることは可能でしょうか?
あれを広げて戦っては、こちらの陣営にそういった者が居る事が露呈して、他の諸侯から叩かれるかも知れません。」
確かに、あの人が翼を広げて戦っては不味い。朱里の言う通り、他の諸侯にばれると不味い。
そのため、俺たちが黄巾党に拉致されジェネシスさんに救出された次の日の軍議で、ジェネシスさんの翼は他の諸侯にばれないようにするという方針になっていた。
そして、ジェネシスさんの話によると今のところばれていないという。
今ここで、俺と朱里が言いあっても、実行するジェネシスさんが居ないと話にならない。
「朱里。ジェネシスさんに聞こう。案内してくれ。」
俺は朱里にそう言う。
桃香と雛里は此処で待機。俺と朱里はジェンシスさんの所へ向かった。
視点:雪蓮
華雄の強さは私の予想をはるかに超えていた。
母様と戦っていた時の華雄は今の私でも十分勝てるぐらいの強さだった。
あれから、幾ら鍛錬しても、今の強さにはならなかっただろう。
だから、私は焦りつつも、1人の武人として楽しくて仕方がなった。
私が驚いたのは、他にもある。
華雄は所々に切り傷を負い、右肩と右足には矢が刺さっていた。普通なら、武器を振るうことは出来ないぐらいの重症だ。
それにもかかわらず、瞳孔全開でこちらを睨み、涙を流しながら、切り掛かってくる。
だが、一番驚いたのは、
「ソーーーンーーーサーーークーーーーー!
訂正シローーー! 董卓様ヲ侮辱シタ事ヲ訂正シローーー!」
華雄はそう叫ぶ。
私は汜水関を出て、打って出たのは、自分の武を虚仮にされたからだと思っていた。
しかし、華雄は董卓を侮辱した事に憤怒していた。
そして、華雄の軍も同じだった。
彼らもまた、涙を流しながら、こちらに向かってくる。
捨て身覚悟で、玉砕覚悟でこちらに突っ込んでくる。
あれは死兵だった。
死ぬことが前提で策もなく、ただがむしゃらに突撃する兵。
私や大半の将たちは平気だったが、涙を流し、こちらへと突撃する華雄軍を見て、孫呉の兵たちは畏怖し、士気が下がってしまった。
一刀と打ち合わせした通り、私たちは退却をしている。
だが、打ち合わせと違う。予定より早く、そして、策による退却では無かった。
左陣を指揮する祭と明命、右陣を指揮する蓮華と思春、本陣の冥琳と穏、私が指揮し、背後を劉備軍がつく事で包囲には成功したが、ただ包囲に成功しただけで華雄軍の士気は落ちないし、乱戦を演じて華雄と兵たちとの切り離しもできていない。
そのため、私は兵と共に前線で華雄相手に戦っている。
私が華雄を抑えているから、保ってはいるが、総合的に言えば、今の華雄と私は互角。
いつ、やられるか分からない。このままではいつ包囲網も破れてもおかしくは無かった。
「ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!ソンサク!」
華雄は私の名を連呼しながら金剛爆斧で何度も攻撃してくる。
私は南海覇王で防ぐが、華雄の斬撃は速く、重たかった。
私も攻撃するが、華雄は捨て身で、致命傷である頭、胸、間接以外は無視して防御せずに攻撃してくる。
息切れを待ってみたが、それを待っている内に包囲網が破られる恐れがある。そのため、華雄を早く仕留めなければならなかった。
攻撃の規則性は分かってきた。
華雄は上から斬り下ろす大振りの縦の斬撃をした後、次に体を捻り、左からの斬撃を繰り出してくる。
その次は体の柔らかさに任して、無理やり斬り下ろしか右からの斬撃、もしくは一周してもう一度左からの攻撃をしてくる。
この一連の攻撃を1呼吸でこなす。つまり、1呼吸に2度攻撃してくる。
速い。速すぎる。そのため、私は防戦となっている。
だが、隙は左からの攻撃の後、金剛爆斧が1周する時が一番大きい。このときは1呼吸に1度しか攻撃してこないので、その時に私は攻撃する。
だが、致命傷を負わせられない。なぜなら、華雄は捨て身。致命傷を負わせても、華雄は倒れずに、次の攻撃が私を襲うだろう。そうなれば、私は死を覚悟しなければならない。
どうする?
どうやって?華雄を討ち取る?
速くしないと…。
「!!」
華雄の攻撃の規則性が突如変わる。
金剛爆斧が1周したので、左からの斬撃が来ると思いきや、左斜め下からの斬り上げが来た。
私は咄嗟に攻撃体勢から後ろに退くが、南海覇王は金剛爆斧によって弾かれ、後ろへと飛んでいく。
私は体勢を崩し、後ろにこける。
カランカラン
南海覇王は地面へと落ちた。
「貰ッッッッターーーーーー!」
華雄はそう叫ぶと、こけて無防備な私に斬り下ろした。
ギィーーン
私の目の前で金剛爆斧は赤い細い剣に止められた。赤い剣は華雄の金剛爆斧を弾く。華雄は弾かれた衝撃で後ろへと後退する。
赤い剣の持ち主の赤い服を着た男は前へと出る。
「邪魔だ。」
その男はそう言った。
私はその時初めて知った。いつの間に華雄軍はほぼ全滅していた。
だから、祭、明命、蓮華、思春が囲むように華雄と対峙する。
そして、華雄もそのことに気づいたようだ。
「クッソーーー!だが、死んでも、孫策だけは討ち取ってやる!
うあああーーーー!!」
華雄は男に向かって跳び、斬りかかる。
男は華雄の初撃を避けると、じゃがみ華雄の懐に入り込み、柄を華雄の鳩尾に入れる。
「ゴフッ!」
ガランガラン
げろげろげろげろ
びちゃびちゃびちゃ
華雄の金剛爆斧は地面へと落ち、華雄は胃液を吐くと気を失ったのか、男の左肩の上に倒れ込む。
男は右手で金剛爆斧を持ち、左肩に倒れ込んだ華雄を乗せたまま、立ち上がると
「コイツは貰うぞ。」
と言い残し、右陣の方へと歩いていく。
華雄を一撃で倒した男に畏怖したのか、孫呉の兵たちは男に道を開ける。
男が見えなくなると、蓮華が私に近寄り、声をかける
「姉様!御無事ですか?」
「大丈夫よ。蓮華。」
「良かった。」
蓮華は安心したのか深く息を吐き、そう言った。
「策殿。今の男は?」
祭が私に聞いてくる。
「わからない。わからないけど、武の御遣いじゃないかしら?」
私は答える。
確かな根拠は無い。しかし、私の勘がそう言う。
「あれが『赤き天災』、武の御遣いか…。」
祭はそう言う。私も武の御遣いがそう言われているのは知っている。
武の御使いがこう呼ばれているのは圧倒的に強いことから民が尊敬ではなく、畏怖してしまったことから来ているという。
「祭。どう見る?」
「あれが本気なら、儂と策殿、明命と思春で相打ちかと…。」
「そう…」
確かにそれぐらいだろう。あれが本気なら。
そう、あれが本気なら……。
「呂布とどっちが強いと思う?」
「儂は呂布を見たことがないから、知らん。」
祭は偉そうに言う。
確かにそうだ。見てもない相手の強さを測ることなどできはしない。
「ねえ、祭。あの男と1度戦ってみたくない?」
「何を言いますか、姉様は!」
蓮華は私の耳元で叫ぶ。
蓮華の声が耳に響き、きーんとなる。
「蓮華。五月蠅い。」
「姉様が無茶苦茶な事を言うからです。」
「でも、武人として、あの男にどこまで通用するかやってみたくなるものよ。
ねえ、祭。」
「そうですな。策殿。」
「ちょっと、祭!貴方も何を言ってるの!」
「しかし、武人は戦ってみたくなるものです。蓮華様。」
「「はあ…。」」
蓮華と冥琳はため息をつく。 って、冥琳貴方も?
「ブーブー!戦ってみたい!戦ってみたい!」
私は駄々をこねる。
「そんな駄々をこねる雪蓮には今日の酒宴に出なくて良いな。」
「うそうそ!冗談よ、冥琳。」
「はあ、そう言うことにしておこう。」
「わあーい、冥琳愛してる。」
私は後ろから冥琳に抱きつく。
私から離れようとジタバタしているが、満更でもないみたい。
冥琳は照れているのか、顔を赤い。
こうして、汜水関の守将の1人華雄を倒した。
残る守将は神速の張遼と張遼が率いる2万の軍勢。
視点:張遼
ウチは今劉備軍の張飛の相手をしとる。
華雄が危なくなってきよったから、援軍を送ろう思うたけど、汜水関を攻めてきた張飛が邪魔でできへん。
先頭開始から、1刻であんだけ、士気の高かった華雄がやられてまいよった。
予想外やった。張飛軍の相手をしながら、遠目で見たけど、華雄が赤い奴に1撃でやられよった。
もしかして、あれが武の御遣いとちゃうんか?
くぁーーー!
ごっつ戦ってみたいわ!
恋は黄巾党3万を、武の御遣いは黄巾党2万を倒しとる。恋とどっちが強いんやろう?
楽しみやわ。
でも、今は無理やねん。
汜水関は後、20日分の兵糧がある。それが無くなったら、虎牢関に退却。
で、虎牢関でまた籠城。虎牢関には兵糧がようさんある。多分、2ヶ月は持つんとちゃうかな?
兵糧が尽きたら、反董卓連合に一当てして、退却や。
戦えるとしたら、そこやな。
だから、待っとれよ!武の御遣い!
華雄の仇討たしてもらうで!
華雄を討ち取ったことが、張飛にも伝わったのか、張飛軍は退却を始めよった。
打って出たら、さっきの華雄と同じことになってまいよる。だから、このまま弓や弩で攻撃するしかできへん。
ああ!歯がゆい!
馬に乗って突っ込みたいわ!
でも、アカン!これは賈駆っちとねねの策や。
孫策軍と劉備軍が引いたのを見て、ウチは部下に見張りだけ立たして、他は明日まで休むように言う。
ウチも疲れた。今日はもう寝るか。
視点:一刀
俺は愛紗、星、鈴々と合流した。
「おにいちゃん!ただいまなのだ!」
「おかえり、鈴々。」
鈴々は俺の胸に飛び込む。
俺は鈴々を抱きしめる。
「ご主人様も無事で何よりです。」
「ああ、愛紗も無事でよかった。」
愛紗も俺に近寄ってくる。
そして、俺は鈴々の背中にまわした腕を解き、愛紗の手を握る。
「おやおや、主。また私を除け者ですか?恨みますぞ?」
「そんなことないよ。星。おかえり。」
星は後ろから首に腕を回し、抱きついてくる。
「ううーーー、ご主人様。私には声をかけてくれないの?」
桃香が頬を膨らませ言ってくる。ってか、桃香さん?さっきまで一緒にいたでしょ?
「ふん、ご主人様なんて、愛紗さんに抱き殺されてしまえばいいんです。」
抱き殺されるって何?
それって蛇が獲物を絞め殺すのと同じってこと?
昨日、俺は愛紗に腕を握り潰され、パンチでろっ骨が折れた事を思い出す。
可愛い愛紗が嫉妬心からやったことだったから、すぐ治ったけど、もう痛いのは勘弁してもらいたい。
雛里はキョロキョロしている。
「どうしたの?雛里?」
「ジェネシスさんがまだ帰ってこないでしゅ…はう……」
あ、雛里舌噛んだ。痛そう。
雛里は帽子のつばを持って顔を隠す。
そういえば、ジェネシスさんがまだだな。
愛紗たちとの再開から数分後、ジェネシスが帰って来た。ジェネシスさんの肩には華雄が乗っている。
俺はジェネシスさんに華雄の生け捕りを頼んでいた。
華雄を生け捕りにする事が出来たら、董卓の事を知ることが出来るかもしれないと思ったからだ。
朱里もそれに賛成してくれた。
「ジェネシスさん、お疲れ様です。華雄は生きてますか?」
「ああ、だが、見ての通り重症で気を失っている。尋問するなら、今は治療が必要だ。」
確かに重症だった。無数の切り傷と矢が刺さった場所から血が垂れる。
この状態でよく戦えたな。
たぶん、華雄はランナーズハイ状態だったのだろう。
ランナーズハイとは確か、気持ちが高ぶることによって、脳内でエンドルフィンという麻薬が生成されるこという。その麻薬はモルヒネと同じ作用を持つらしい。
だから、走り終わった走者と同じように終われば、疲れがどっと出る。
俺は軍医を呼び、華雄の治療に当たらせた。
切り傷には消毒、縫合、包帯を巻き、
矢は致命的なところを外していたので、無理やり引き抜く。血が出たが、消毒した布を当て、出血を抑える。
治療は終わった。
華雄の治療が終わったころには日が沈んでいた。
そして、俺たちの汜水関攻め1回目は終わりを告げる。
翌日袁紹が
「やっぱり、私が汜水関を攻めますわ!」
と言って、汜水関を攻め始めた。
弱小勢力の俺達としては、休みが貰えるからよいのだが、袁紹軍は弱い。
あの黄巾党より錬度が低いのだ。そう簡単に汜水関を攻略できるはずもなく。ただただ、時間が過ぎていく。
袁紹が汜水関を攻撃し始めて、5日経った今日の昼に朱里が俺の天幕に来た。
「華雄さんが目を覚ましました。」
俺は華雄が居る天幕へと朱里と向かった。
どうも、黒山羊です。
華雄が出てきましたね。
俺的にあの猪突猛進的なところが好きです。
BeaseSonさん、お願いします。
次回、華雄が出る事があったら……いや、出して下さい。
そして、真名を与えてください。お願いします。
では、また明日も入学前ゼミを受けに大学行くので、今日はこの辺で…。
Tweet |
|
|
16
|
1
|
追加するフォルダを選択
文体を前のに戻してくれという要望がないので、14話と同じ感じで行きます。
第1話
http://www.tinami.com/view/201495