No.203732

婚活†無双 ~理想の旦那が見つからない~ その7

 ヘ(゚д゚)ヘ
    |∧    荒ぶるゼニガメのポーズ!
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「とっくんⅡ」

2011-02-25 23:27:14 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:10566   閲覧ユーザー数:7952

 

「み……っちゃ……んは……その、ほうまん……な……にくたいを、さら……け……だし……、きゃん……あはん、うふふふ。はぁ~、難しくて全然読めないや」

「一刀さぁ~ん」

 

 

あずまやで読めもしない本を必死に読もうと頑張っている一刀を見つけた穏は自身の大きな胸に震度7弱の縦揺れを与えながら話しかける。

 

 

男としてそれを見逃すわけにはいくまいと一刀はその光景を脳内HDDに録画する。

 

 

「ふぃ~、録画完了」

「なにがですかぁ?」

「大丈夫だ。問題ない」

 

 

首を傾げる穏に一刀は爽やかに笑いかけた。

 

 

「それで陸遜は何か用なのか?」

「あ、そうでしたぁ。一刀さん、今日はお暇ですかぁ?」

 

 

何か期待するような眼差しを一刀に向ける穏。

 

 

一方の一刀はもちろん暇である。

 

 

「今日"は"暇だな」

「今日"も"暇なんですねぇ~」

 

 

見栄を張ってみる一刀だが全く意味を為さなかった。

 

 

「でっ、なんのようだよ」

 

 

ジト目で穏を睨む一刀。

 

 

穏はそんな視線を涼しい顔で受け流す。

 

 

「実はですねぇ、わたしは今日非番なんですよぉ」

「ふむふむ。それで?」

「それで一刀に天の国のことについて教えて欲しいのですぅ~」

「へ?」

 

 

 

 

「天の国の何が知りたいんだ?」

 

 

天の国についてと言ってもこの世界と違うことなんて無数にある。

 

 

なにかに絞って質問しないと収拾がつかなくなってしまう。

 

 

「そうですねぇ……」

 

 

穏は何を質問するか考える。

 

 

案外早く決まったらしく早速質問する。

 

 

「一刀さんはどんなところに住んでいたんですかぁ?」

「そうだなー、俺が住んでいたところはね、この大陸から海を渡ったところにある島国だよ。そこの……そうだね……呉でいう建業に住んでたね」

 

 

日本の首都である東京で育った一刀。

 

 

「なんと! 海渡った向こうに国があるのですかぁ!?」

「そ、そうだよ。他にもたくさんの国があるし、この漢王朝だって世界のほんの一部でしかないんだよ」

「な、ななななんということでしょう! 我々の生きる国が世界のほんの一部でしかないなんて……」

 

 

盛り上がったり盛り下がったり忙しい穏。

 

 

それほどまでにこの事は穏に大きな衝撃を与えたのである。

 

 

「まっ、この時代の人からすると凄いんだろうな」

 

 

そんなことを当たり前のように知っている一刀からすると、どうしてここまで驚くのか不思議である。

 

 

結局は住む世界が違うんだと結論付けるのだった。

 

 

 

 

「移動手段は近くに行く時なんかは自転車っていう乗り物を利用したりするし、他には馬よりも速く走る車やバイク、もっと速い電車や空を飛ぶ飛行機っていうのもあるんだ」

「それで!? それで!?」

「あ、あの陸遜さん?」

 

 

次々に天の国について話してきた一刀だが途中から穏の様子がおかしい事に気付いた。

 

 

例えて言うならばフシギソウへの進化を拒むフシギダネのようである。

 

 

「どうされたのですかぁ? うふふ」

「す、少し距離が近いんじゃありませんか?」

 

 

最初は普通に正面に座っていた穏だが、話が進むにつれて腰に手を当て、お尻ふりふりみんなおいでよワンダーランド状態でテーブルに身を乗り出して刺激的な格好で一刀に近づいて来たのである。

 

 

「そんなことぉ~、ありませんよぉ」

 

 

そしてしまいにはテーブルを横に倒してしまい、穏は一刀にダイブした。

 

 

「なっ?」

「あれぇ~? なんですかこの硬いモノはぁ?」

 

 

穏がダイブした先には一刀の股間があった。

 

 

先程の穏の刺激的な格好によって元気になってしまったのである。

 

 

思春期であるので仕方の無い事であるが、それを女性に見られるのは恥ずかしさ満点である。

 

 

「お、落ち着くんだ陸遜」

「あらぁ、わたしは落ち着いてますよぉ」

 

 

穏の右手が一刀の股間に触れそうになると、一刀は反射的に椅子ごと身を引いてしまった。

 

 

「ぎゃん!」

「た、助かった」

 

 

支えを失った穏は地面に倒れるのだった。

 

 

 

 

「えへへ~。ごめんなさい一刀さん」

 

 

本当に反省しているのか分からないような謝り方だが、一刀は対して怒っていない――むしろちょっと嬉しかった――ので特に謝られる必要は無かった。

 

 

「別にいいんだけどさ、何だったんだ今のは?」

 

 

すっかり正気に戻った穏に先程の痴態について聞いてみる一刀。

 

 

穏から事情を聞いた一刀は驚きと呆れを隠せなかった。

 

 

「いつもは本なのになんで今日は俺の話で発情したんだ?」

 

 

一刀が言ったように穏は、普段は本に対して欲情していたのだが今回は一刀の話に対して欲情してしまったのである。

 

 

「それはおそらく天の国があまりに未知のことだらけだったので興奮してしまったみたいですねぇ~」

 

 

くねくねしながら答える穏。

 

 

「あー、確かにここと全然違うもんなー。俺も最初はびっくりしたもん。まあ想像以上に現代的な物もあったんだけどね」

 

 

特に服装について驚いた一刀。

 

 

街で女性用下着の店を見つけた時は思わず注視したほどだ。

 

 

「それじゃあ本とか読めないんじゃないか?」

「興奮しない本なら大丈夫ですけどぉ、孫子なんかはもう何年も読んでませんねぇ。ああん! 想像したら興奮してきましたぁ~」

 

 

息遣いが荒くなりビーストモードになりそうになる。

 

 

それを見た一刀は決意する。

 

 

「よし! 陸遜の変態体質を改善しよう!」

 

 

実に失礼な男である。

 

 

 

 

「はい。それでは陸遜更生化計画を遂行します」

「そんな人を社会不適合者みたいに言わないでくださいよぉ」

 

 

穏の痴態を人目に曝すのは可哀想だと思い、穏の部屋に移動した二人。

 

 

「準備する物は、孫氏の兵法と縄だけです」

「何か嫌な予感がしてきましたよ~」

 

 

それからの一刀の行動は素早かった。

 

 

穏を椅子に座らせ、素早く縄で縛っていく一刀。

 

 

その行動の早さはプロの縄師顔負けである。

 

 

そのような職業があるかは不明だが。

 

 

「な、何をするんですかぁ!?」

「ふっふっふ。君はおとなしくしてればよい」

 

 

悪役のような面構えになる一刀。

 

 

女性に対してだと妙に板に付いている。

 

 

「さあ、始めようか!」

「きゃーーーーーーーー!」

 

 

穏の悲鳴が響き渡るのだった。

 

 

 

 

「はぁ~。婚活なんてもやりたくないわー」

 

 

本日の婿探しを終えた雪蓮は廊下をぐったりと歩いていた。

 

 

自分の理想が高いのかなかなか妥協出来る相手が見つからないのである。

 

 

「まともな男がいないんだから困っちゃうわね」

 

 

ぶつぶつとグチをこぼしながら自分の部屋に向かう雪蓮だが、ある部屋の前でつい足が止まってしまった。

 

 

「ああん! 一刀さん、酷いですぅ!」

「ほら、ここがええんか? それともこっちか?」

 

 

それは穏の部屋である。

 

 

穏の部屋から聞こえる男女の声。

 

 

女の声はもちろん穏である。

 

 

「もうひとりは一刀よね。穏もそう言ってたし。でも今の声は何……?」

 

 

息を飲む雪蓮。

 

 

まさかこの短期間でそこまでの関係になってしまったのかと。

 

 

なぜだか胸が痛んだ。

 

 

 

 

「ああもう! やめてくださいぃー!」

「悪いがそれは出来ないね。ほらほらー」

 

 

しかし、会話を聞いているとどうやらそのような甘い雰囲気でもなさそうである。

 

 

ホッと胸をなでおろす雪蓮。

 

 

「ってなんで私が安心してるのよ」

 

 

なぜそんな気持ちになったか分からない雪蓮。

 

 

「それよりもこれは止めた方が良さそうよね。そう、穏のためよ」

 

 

穏のためだと自分に言い聞かせる雪蓮。

 

 

「一刀、無理矢理するのは許さないわよ!」

「ほれほれー……って孫策!」

「ああ~ん! もっと! もっと近づいて読ませてくださいー!」

「……何これ?」

 

 

雪蓮が部屋に突入して目に入ったのは、椅子に縛られている穏に孫子を見せびらかしている一刀の姿だった。

 

 

「何って、陸遜更生化計画だけど?」

「ああー」

 

 

それだけで何かを悟る雪蓮。

 

 

「成果は出たの?」

「……見ての通りです」

 

 

視線の先にはなんとか縄から逃れようと必死にもがいている穏がいた。

 

 

「せ、千里の道もまず一歩からだ」

「ほどほどにしときなさいよ?」

「フヒーヒ」

 

 

 

 

その後も時間を見つけては特訓をした一刀と穏。

 

 

一刀は一刀で艶めかしい姿で欲情する穏を前に理性を鍛えていた。

 

 

特訓のおかげか、穏は欲情することなく孫子を読むことが出来るようになった。

 

 

「これも一刀さんおかげです~」

「いや、これは陸遜が頑張った結果だよ」

 

 

孫子を読みながら普通に一刀と会話をする穏。

 

 

「これからは穏とお呼びくださいね」

「分かった。宜しくね穏」

「はいですぅ」

 

 

そして一刀はある本を渡す。

 

 

「はい。穏が前に読みたいって言ってた『孟徳新書』だよ」

「なななななんと! あの曹孟徳が孫子に注釈を加えたものじゃないですか!」

「市でたまたま見かけたからね。更生祝いに良いと思ってね」

「ありがとうございますぅ」

 

 

喜んで受け取る穏に送って良かったと良い気分になる一刀。

 

 

「では早速…………あっ、こ、これはぁん、凄い、ですぅ」

 

 

おや? 穏の様子が。

 

 

「あの……穏さん?」

「ふふふふ~。あらぁ、どうされたのですか一刀さぁん?」

「元に戻っとるがな!」

 

 

どうやら特訓の教材であった孫子にしか効果がないようだった。

 

 

「このイケナイ子にはお仕置きが必要ですねぇ~」

「アッーーーーーーーーーーーー!」

 

 

一刀の悲鳴が木霊するのだった。

 

 

 

 

<おまけ>

 

 

白蓮千里行

 

 

一つ目。

 

 

「貴様、手形は持っているのか?」

「持っていないが通して欲しい」

「荷物検査を終えたら構わんぞ」

 

 

二つ目。

 

 

「旅の者か?」

「そ、そうだ」

「なら通っていい」

 

 

三つ目。

 

 

「長旅御苦労さま。通っていいぞ」

「あ、ああ」

 

 

四つ目。

 

 

「どうぞ」

「…………」

 

 

五つ目。

 

 

「…………」

「なんか言えよ!」

 

 

 

白蓮は無事に劉備の下に帰ることが出来たのだった。

 

 

 

 

完。


 
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