「頼むからまって!服をそんなに引っ張ったら一張羅が」
「うるさい奴じゃのぅ、なんじゃ一体」
「ふぅ・・・・七乃さんを探すのはわかったから、これからどこへ行くの?」
「お主は何を言うておる。七乃のところにきまっておるじゃろ」
「七乃さんはどこにいるの?」
「その七乃を探すのがお主の仕事であろ」
「うん、なら君は今どこへ行こうと・・・」
「じゃーかーらー!七乃のところと言うておるではないか!何度も同じことを言わすでない!」
あれ、だんだん俺が間違えてる気がしてきた
「ええーい!七乃さんがいなくなったことに気づいたのはどこ?」
「いなくなったことに?・・・むぅ~~~~~~確かあっちじゃ」
聞いてよかった逆方向じゃないか
「よし、まずはそこへ行こう」
彼女主導で動いたら見つかりそうも無い
ここは俺が主導で動かないと
「こ、これ!勝手に手を握るでない・・・ゴニョゴニョ」
俺達二人は七乃さんとはぐれたと思われる場所へやってきた
そこは市場のメインストリート
人の数が一番多く、一番広い道
「人が多いな。ねえ、君達は何を買いに市場に来たの?」
「ほぇ?ま、真名はまだ早いのではないかの・・・」
「ん?ああ、名前をまだ言ってなかったな。俺は・・・・」
と、危ない、北郷一刀を名乗っちゃまずいか
「俺は・・・・助左衛門、助さんと呼んでくれ」
「助さん?変わった名じゃのう。わらわは袁術、真名は美羽じゃ、頼りにしておるぞ助さん」
「・・・・ちょっとまった、袁術だって?それに真名も?」
「わらわを知っておるのかの助さん。ふふーん、いかにもわらわが袁術じゃ」
この子が袁術だったのか
確か、反董卓連合の時にいたけど、う~ん、この子もいろいろと成長してるな
「そんな簡単に真名を預けちゃっていいの?」
「うむ、わらわは助さんを信用するのじゃ、特別じゃぞ?」
う、心が痛い・・・・
「・・・・ごめん美羽、俺嘘つきました」
「嘘?わらわに嘘をついたのかえ?」
「うん、俺の本当の名前は北郷一刀、真名はない。真名を預けてくれる相手に偽名を使うなんて、自分が情けないよ」
「助さんではなかったのかや?ふむ、きっと理由があって偽名を使ったのであろう?許すのじゃ」
「ありがとう、やさしいんだね」
「ふ、ふん!部下に優しくするのは当たり前なのじゃ。さっさと七乃を探すのじゃ、一刀」
と、言われても手がかりが何もない
まずはそこの魚屋さんに聞き込みしてみよっかな
「あのー」 「らっしゃーい」
「すいません、ここら辺で迷子の女の子を捜してる人見ませんでしたか?」
「迷子を?おーい、迷子の女の子を捜してる人みなかったっかって」 「迷子?見てないねぇ」
夫婦で営業してるみたいで、奥さんにも聞いてくれた
「七乃はとってもやさしくてとってもいい匂いがするのじゃ、見なかったかや?」
「悪いけどみてないな」
「フミュゥ・・・・あ、おぬしは、一刀離れるのじゃ!!」
「え?くっ!!」
魚屋に警戒を見せた美羽
俺は咄嗟に美羽を背後に回すと、魚屋にいつでも反撃できる態勢を取った
「おぬし、魚屋ではないな!?」
「なんだって!?」
まさか、七乃さんはこいつらに捕まったとでも言うのか
「お主、一体何者じゃ!」
「魚屋ですよ」
「ふむ、魚屋らしいのじゃ、一刀次いくぞ~」
盛大にずっこけた俺を放置して、美羽はさっさと行ってしまった
それからも七乃さんにぶつかる情報は何もなく、むなしく時間がすぎて行った
「ひぃ、ふぃ、一刀~もう歩けないのじゃ~~」
「そうだな、もうすぐ日が落ちるしそろそろ戻らないと・・・・ってあああああああああああああああ」
「なんじゃ突然大きな声だして」
「春蘭達のこと忘れてた・・・・」
まずい、これはまずい、どうする俺、どうすんの俺
「一刀、一刀、かーずーとー!」
「あ、ごめん、何かな?」
「七乃とはぐれてしまって、帰るとこがないのじゃ・・・・一刀のところへ行ってもいいかのう?」
それだけはだめだ!
これで美羽を連れて春蘭と秋蘭の元へ帰ったら・・・・それだけはだめだ!!
「殺される・・・・」
「だめかのぅ?」
そんな上目遣いで頼まれたら・・・・
「おう、どんとこい」
俺は覚悟を決めた
さて、こうして俺は美羽を連れて宿の近くまで来たわけだけど
「とてつもない殺気を感じるんだが・・・・」
「お、鬼がおる・・・・鬼がおるぞ。ガクガクブルブルガクガクブルブル」
宿の前で仁王立ちする春蘭、そしてその後方から殺気を放つ秋蘭
くそ、俺だけならいいけど、美羽まで巻き込むことはできない
「どうしたらいいんだ」
「困りましたねぇ~。お嬢様に怪我をさせるわけには行きませんからぁ」
「ガクガクブルブルガクガクブルブル・・・ほぇ?」
そこにはいつぞや見た女の人がいて、やっぱこの人が七乃さんだったか
「七乃~~~」 「お嬢様~~~」
涙の再会だった
そんな美羽と七乃さんを見ていると、俺の恐怖心も薄らぐ気がした
「俺は北郷一刀といいます。あなたのことを探していました」
「ふふ、お嬢様がお世話になったみたいで。私は張勲、真名は七乃と言います」
「うむ、一刀はよく働いてくれたのじゃ」
「そんな簡単に真名を・・・いいんですか?」
「いいんですよ~、と~ってもかわいいお嬢様をたくさん見せてくれましたから」
「は?」
「実は、お二人を近くから見てたんですよ。もぉ~お嬢様がかわいすぎて声がかけられなくてぇ」
「・・・・」
「一刀さん、お嬢様のこと本当にありがとうございました。これ以上ご迷惑はおかけできませんのでこの辺で~」
「ちょっと待つのじゃ七乃、あ、一刀~~~」
「それでは~」
行っちゃった
なんだったんだよ本当に
「ま、いっか」
もう疲れた
休もう
「ふぅ・・・・あ」
「ほんごうぉ~、今まで、どこを、ほっつき歩いていたのかな?」
「北郷、私達を置いて何をしていたのか、聞かせてもらおうか」
不幸だ
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迷子の元王女様