No.198672

真・恋姫無双 魏が滅亡した日 Part2 一刀の帰還

見習いAさん

小説を書くのは楽しいです

2011-01-30 10:45:30 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:8597   閲覧ユーザー数:7589

それは突然、誰も予期していない

 

予期しようもない

 

本当に突然だった

 

私は驚きを必死に抑えつつ言葉を発した

 

「一刀・・・・どうしてここに」

 

「よくわからないんだ、なんとなく呼ばれた気がしたかな」

 

確かに私は戻って欲しいと願った

でもまさか本当に戻ってくるなんて

 

その時あることに気づく

 

「・・・・満月」

 

そう、一刀が消えたあの日、あの日も見事な満月だった

 

「とにかく、状況がよくわからないけど俺は本物の北郷一刀だよ」

 

そう言うとなんでもないことのように笑っていた

懐かしい笑顔

 

私が求めていたのはこの笑顔だったのかもしれない

 

「・・・・ふふ」

 

自然と笑みがこぼれた

 

自分の笑顔がいつ以来だろうと思うと、さらに笑えた  

一刀は改めて3人に向き合った

 

「ほんごう?本当にホンゴウか?本当に北郷なのだな!?絶対に北郷一刀なのだな??」

 

春蘭はまだ整理がついていないようだ

疑いの目でこっちを見ているのがよく分かった

 

「春蘭、最初に会った時、北郷一刀以外の名前は無いって言ったろ?俺は北郷一刀だ」

 

目を丸くし続ける春蘭は突然立ち上がると

 

「わあああああああああああ」

 

顔を真っ赤にしながら森の中へ一直線

 

「春蘭危ない!って遅かった」

 

大木に正面衝突した春蘭は沈黙した

 

「こんなに混乱してる春蘭初めて見るかも」

 

お菓子騒動以上だ

 

あの時は秋蘭も錯乱してたけどね

 

「それだけ、北郷が私達を待たせたと言うことだよ」

 

「そんなに・・・・ところで季衣、少し背が伸びたんじゃないか?」

 

春蘭の影でぽかーんと佇んでいた季衣

 

「え、あれ、兄ちゃん、なんで、え?」

 

こちらも混乱しているようだ

 

(ん、なんだこの違和感)

 

何かおかしいぞ、この子本当に季衣か?

 

「胸がある・・・・」

 

思わず視線が一点に集中してしまった

 

「え?・・・・・兄ちゃんの馬鹿ぁ!」

 

「ぐはぁ!」

 

次の瞬間、沈黙したのは俺だった  

目を覚ました俺は状況を整理することから始めた

 

妙によそよそしい春蘭、大人になりつつある季衣、唯一冷静な秋蘭

 

まずは自分のことを説明する

 

「華琳と別れた後の記憶がないんだ。気づいたらここで寝ていたとしか言えない」

 

華琳との別れ、あの時、自分の存在が消えることを覚悟していた

 

歴史を改変した俺はこの世界から消されてしまう

 

そう思っていた

 

「今考えるとさ、消えた理由は歴史改変じゃないと思うんだ。俺達の歴史とこの世界は違いすぎる。どう考えても繋がらないんだ」

 

秋蘭には心当たりがあった

 

「北郷が消えた日、満月だった、数年に一度見れるかどうかの、そして昨晩もまた見事な満月だった」

 

春蘭もなんとなく言いたいことがわかった

 

「満月になると消え、また満月に戻ってくるのか?」

 

一刀は少し考えながら

 

「う~ん、単順に、満月が影響しているだけなら体調を崩していた説明がつかない」

 

定軍山で秋蘭を救おうとしたとき、俺は2日も意識を失った

あれはなんだったのか

 

季衣も疑問があるようだ

 

「それに、兄ちゃんが来てから満月は何度かあったと思うよ」

 

「・・・・そうか!秋蘭、俺が始めてこの世界に来た前日の夜、月がどんな形だったか覚えてる?」

 

「・・・・うむ、確か満月だったな」

 

「そして体調を崩すとき、それは歴史を動かす大きな影響を与える時・・・・」

 

不思議だった

最後の蜀との決戦で、俺は体調不良を訴えなかった

秋蘭の命を救おうとして2日意識がなかったのに、歴史が変わるまさにその時

体調不良どころか健康そのものだった

 

「つまりさ、月の周期に合わせて、歴史に影響を与える行動数、もしくは影響力の大きさが決まっていたとしたら」

 

秋蘭は気づいたようだ

 

「はっ!!そういうことか」

 

「最後の決戦の時、俺の力は残っていなかった。決戦に勝利したのは華琳達の力さ」

 

症状が悪化していたのも力を消費していたと考えれば納得できる

 

「力が尽きていた俺は、体調不良の症状もなくそのまま消えたんだ。満月に吸い寄せられるようにね」

 

春蘭はさっぱり意味がわからない

 

「なぁ、季衣?季衣は理解できたか?」

 

「う~んなんとなくですけど、もしかしたら兄ちゃんは月からの使者なのかもしれないね」

 

季衣は外見だけでなく中身もしっかり成長していた

少しだけ大人になった笑顔を向けられると、ちょっと頬が紅潮してしまう

そんな成長した妹を見るようで、俺はうれしさのあまり季衣を頭から抱きしめてしまった

 

「偉いぞ季衣!勉強もがんばってるみたいだね」

 

「ちょ、兄ちゃん!やめてよー」

 

そんな風に季衣とじゃれあっていると

 

「わあああああああああああああああ」

 

春蘭がまたどこかへ走っていった

 

「あ、またぶつかった」   

確証は何もないけどなんとなく俺のことはわかった

 

次は秋蘭達の話を聞かなければ

 

「・・・・・と言うわけだ。今は華琳様の安否の確認のため、姉者には潜入捜査を、季衣と私は情報収集をしている」

 

華琳はじめ皆行方不明、そして魏が倒れた

俺は驚いたと思う、でもここで冷静さを失うわけにはいかない

 

「ならやることは一つさ、華琳や皆を助けよう」

 

そう言い放った俺を3人は不思議な物でも見るように凝視している

 

「な、なに?変なこと言った?」

 

秋蘭は特に驚いた様子だった

 

「いや、多少取り乱す物と思っていたのだが」

 

「冷静さを失うな。狂気に溺れるな。感情に流されるな。それが軍師と言うものだろ?」

 

「軍師?風と稟にでも教わったのか、そのような指示が出ていたとは聞いていないが」

 

「ああ、冥琳が・・・・あれ、冥琳とはいつ会ったんだっけ・・・」

 

言っている意味がまったくわからないと言った表情の3人

 

はっと気づいた秋蘭が俺に詰め寄る

 

「北郷・・・・・冥琳と言えば呉の周瑜の真名ではないか・・・・貴公もしや・・・・」

 

その瞬間場の空気が変わった

 

(凄い殺気なんですが・・・・)

 

「ちょ、落ち着けって、そういうことじゃないんだって!」

 

春蘭の殺気が懐かしい・・・・なんて場合じゃない

 

「北郷ぉぉぉぉ、貴様消えたなどと言って本当は呉に行ってたんじゃなかろうな!」

 

「そんなわけ無いだろ!落ち着け!説明する!」

 

とは言ったものの

 

(どうして周瑜の真名を俺が使ってんだ?)

 

「いいか、よく聞け!俺は呉に行ってたわけじゃない!本当に記憶がないんだ!」

 

「問答無用ーーーー!」

 

春蘭のパンチが迫ってくる

 

(ああ、神様、いきなりですがあなたのところへ戻ることになりそうです)

春蘭のパンチが顔面を直撃すると思われたその時

 

サイドステップを踏んだ俺はかわすことに成功した

 

「何っ!」

 

大きく空振りした春蘭が驚きの表情でこちらを見る

 

あの北郷が春蘭の突きをかわした

そんなことは今まで一度もなかった

安堵した俺はポツリとつぶやいた

 

「祭さんに鍛えられて助かったよ・・・・」

 

ここでまた3人は大きく反応した

特に秋蘭の動揺は大きかった

 

「北郷・・・・祭とはまさか・・・・・黄蓋のことか?黄蓋は生きているのか?」

 

妹の変化を感じ取った春蘭も辛そうにしている

 

「秋蘭・・・・」

 

「答えてくれ北郷、黄蓋は生きているのか?」

 

「・・・・ごめん、赤壁で亡くなったと思う」

 

「・・・・・そうか」

 

そうだ、黄蓋は赤壁の戦いで秋蘭の弓を受けて亡くなった

その黄蓋の真名をどうして俺が

 

「あ、あれ・・・・」

 

(俺、なんで泣いてんだろ)


 
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