「一刀様・・・・・・これは・・・・」
声を震わせる周泰。
一刀は、現状を把握しようとする努力で精一杯で、周泰の声が聞こえていない。
「ちぃっ・・・!!」
一刀の舌打ちが、周泰に『彼も混乱している。』ということを悟らせる。
だが、ここで一刀の『軍人の精神』がフル稼働。彼に冷静さを取り戻させる。
「(火災は・・・・・大規模。ここは風下だから、そのうちここまで来るだろーな。)」
吹き付ける風の強さから考えると、火がまわるまで時間はあまり掛からないだろう。
そして次に、下の大通りをのぞく。
大通りでは、武装した兵の集団がウロウロ歩いている。
「(黄色い布・・・・・コイツら何してんだ??何かを探してるのか??)」
「あ、あの・・・・かず―――」
「周泰。」
「は、はいっ!」
「この街から脱出するぞ。敵は『黄色い布を身に着けた武装者』。生存者はなるべく拾ってく。いいな?」
『目標』、『敵』、『副次任務』を周泰に伝え、同意を求める一刀。
「わかりましたっ!!」
周泰が返事をしたその時。
「こんな所にもいたか。」
「周泰っ!!」
《ガキィィィィィン!!!》
炎は、街の大半を包み込んでいた。
街のいたる場所で、得体の知れない音や、叫び声が聞こえる。
街は、『崩壊』の一途を辿る。
そんな中、街の一角で歓声が上がった。
「褚貢を討ちとったぞぉ!!!!」
歓声の中心にいるのは、薙刀を携えた一人の女性。
「さて、これで『お仕事』は終わりねぇ。」
「曼成様、部隊の指示をお願いします。」
『曼成』と呼ばれるその女性は、懐から取り出した黄色い布をリボンのように使って髪型をポニーテールへと変える。
「はぁい♪みんなぁ、これから南門に向かうわよぉ。道中で出逢った人は、みんな狩っちゃってねぇ☆」
「「「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」
雄たけびを上げる部下達を見て、曼成は嬉しそうに微笑む。
「うんうん、みんな元気ねぇww」
「そうですね。士気が高いということですね。」
「晋ちゃんと螺羅ちゃんはしっかり『任務』をこなしてるのかなぁ???」
「はっ、そろそろ『門』に向かう頃だと思われます。『南』の方は火災で近づけなくなっているので、『南担当』の趙弘様は漢忠様と合流するかと。」
「そっかぁ。」
「お~い、螺羅ぁ~!!」
「晋!」
殺戮劇の中、晋と螺羅は合流を果たしていた。
晋は、周りにいる部下を気遣うことなく、服が血で真っ赤になっている螺羅に抱きつく。
「っ・・・・!!」
「ん~・・・・螺羅と血の匂い♪」
《ガンッ!》
「いたっ!!」
螺羅は顔を真っ赤にさせ、自身の胸に顔をうずめている晋を頭突きする。
「このバカっ!!時と場所をわきまえろっ!!」
殴られた箇所を擦りながら、晋はケラケラと笑う。
「ゴメンゴメンww」
「・・・・・・ふん。」
その時、晋は『ある事』に気づいた。
「羅螺、剣は??」
羅螺は自前の双剣を持っていなかったのだ。
と同時に、晋は羅螺の身体の何箇所かに存在する『包帯』に気づいた。
「あれ、包帯してるの??」
「気づくのが遅いわ。」
「羅螺、なんかあったの!?」
「・・・・・・。」
羅螺は、自身の傷を見つめながら語り始めた。
行動を起こして少し経った頃、一軒の宿屋で妙な音を聞いた。
《タタタタタタ・・・・・・!!!》
気になった私は、宿の二階に向かった。
すると、そこには仲間の死体がたくさんあった。
死体は、『二種類』あった。
一つは、膝から下が切断された死体。
壁がちょうどそれと同じくらいの高さで裂けていたから、きっと壁越しに斬られたのだろう。
もう一つは、身体のいたる所に穴が開いた死体。
それが、とある部屋の出入り口で折り重なるように倒れていた。
刃物にしては傷口がが小さすぎる。かといって、弓矢の類ではない。その時は、何なのか全くわからなかった。
すると、上から声が聞こえた。
「~~~~。」
聞き取れなかったが、それは明らかに人の声。
私は、窓から屋根に上った。
上った瞬間、男と女が見えた。
距離的に近かったのは女のほうだったから、そいつに斬りかかった。
「周泰っ!」
女は長刀で私の攻撃を防いだ。あれは速かったな。
だから、私はもう片方の剣で、その女を突き刺しにかかった。
その時だ。
《タタタァン!!!》
妙な音が炸裂したと同時に、激痛が走った。
そのせいで、剣を手放してしまった。
自身の身体を見ると、肩と二の腕から血を出していた。
「はぁっ!!」
そして、女に蹴飛ばされた私は、屋根から落ちた。
背中を打ち付けられ、身動きが取れなくなった時、男が屋根からこちらを見た。
冷酷な目で、無表情に、私を見ていた。
《タァン!!タァン!!タァン!!》
妙な音が再び―――とその瞬間、地面に何かが当たり、その次に、腰とわき腹に激痛が走った。
見ると、そこから血が出ていた。
「その後、近くの兵士に助けられた。とまぁ、こんな感じだ・・・・・。」
「・・・・その男の得物、『飛び道具』の類かな?」
「目にもとまらぬ・・・・いや、目にも映らぬ速さで、『何か』を飛ばす。どちらかというと『妖術』だな・・・。」
妖術という言葉に、どこか不満そうな晋。
「僕は妖術とかは胡散臭くてなんか好きになれないなぁ。」
「・・・・・とにかく、私はしばらく戦えん。応急処置はしたが、腕が上がらん。それに傷の中に『何かが入ってる』気がしてムズムズする。」
「そっか、わかった。羅螺はゆっくり休んでてよ。僕達の大事な『頭脳』でもあるんだからさ。これから先は僕達に任せといて。」
「・・・・・む、そうだ。」
「ん?」
「あの男、たしか―――・・・」
その頃、周泰と一刀は街の『出入り口』にいた。
東西南北に4つの門として存在する内、二人がいるのは『東門』だ。
ちなみに、西門付近一帯は火災で立ち入りができない状態になっている。
大勢の市民が門に集まり、我先にと言わんばかりに街を出ようとして混雑している。
「混んでるな・・・・。」
髪をガシガシと掻き、周泰の方を見る。
「・・・・・どうかなさいましたか??」
周泰の肩には、『突然襲ってきた女』によって刺された傷が存在し、布を巻いたが血は止まらずの状態だった。
「応急処置するぞ。」
「え・・・?」
一刀はタクティカルベストから小さな袋を取り出し、それをビリッ。と破って開ける。
「一個しかねぇから、大事にしたかったんだが・・・・(ボソッ)」
「そ、それは・・・・?」
「『止血剤』。まぁ、『天』の薬の一つだな。ちょっと沁みるから、ガマンしろよ?」
そう言い、一刀は袋の中に入った粉を、周泰の傷にかける。
「~~~~っ!!!!」
「次は・・・」
一刀は次に、自分のランニングシャツの一部を千切り、それを傷口に巻く。
「・・・・ん。できた。よく頑張ったな。」
「ご・・・・めんなさい・・・・大事な薬を・・・・・私なんかに・・・・」
痛みを堪えながら、周泰が謝ろうとする。
一刀は周泰の頭をガシガシと撫で、うっすらと笑みを浮かべる。
「仲間の救うためだ。惜しかねぇよ。」
一刀の言葉を聞き、周泰もニコッと微笑む。
「ありがとう・・・・ございますっ・・・・!!」
「気にすんな。」
「さてと。」と言いながら、一刀は立ち上がった。
「周泰。お前は城に帰ってこの事を蓮華に伝えるんだ。」
『お前は』ということは、一刀とは別行動をする。という意味につながる。
それを素早く察知した周泰は、不安げに問いかけた。
「一刀様は、どうなさるのですかっ??」
その瞬間。
「てっ・・・・・敵だあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
誰かの叫びが、東門付近の全ての人間の動きを止めた。
《ゾシュゥ!!!》
生々しい音と共に、再び声が聞こえる。
「我々は、革命軍であるっ!!!」
「漢王朝を打ち倒し、新たな国を作り上げるっ!!君達には、その礎として――――・・・・・」
「死んでもらうっ!!!!!!!!」
「行けぇ!!」という声と共に、黄色い布の兵がこっちに向かって走ってくる。
「俺はここに残る。市民を逃がし切らねぇと。」
「そっ、そんなっ!!無茶ですっ!!」
「無茶かどうか、それは俺が決める事だ。」
「・・・でも、私は一刀様を置き去りにすることはできませんっ!!」
一刀はハァ。とため息をつき、向き直ってから周泰の頭を優しく撫でる。
「あぅっ!?」
「安心しろ、俺は『天から来た戦士』だ。死線なら何度もくぐり抜けてきてる。そう簡単にゃくたばらねぇよ。」
遠くで燃えている炎が、一刀の笑顔を明るく映し出す。
「あ・・・・・////えと・・・・」
「さ、行け。」
一刀は周泰に背を向け、走り出す。
「一刀様。」
「ん?」
「どうかご無事で・・・・・・!!」
「おうっ。」
周泰も立ち上がり、一刀に背を向ける。
そして二人は同時に、逆方向に走り出した。
一刀は走りながら、ペイロードを構える。
そして、逃げ惑う市民の群れを突き抜け、突撃してくる兵士の前に立つ。
その距離、約70メートル。
「おい、止まれぇぇぇ!!!」
兵士達は、一刀の警告を無視して、突撃を続ける。
「止まれってんだろバカヤロー・・・・・!!!!」
《ドッゴォォォォォン!!》
その数秒後
轟音が、突撃を止めた。
放たれた砲弾は、突撃してきた兵士を何人かまとめて吹き飛ばした。
完全に動きが止まった突撃兵達の中から一人の男が姿を現し、ニッコリと笑いながら近づいてくる。
その姿を見た一刀は、ニッ。と笑う。
「やあ。生きていたんだね。」「よぉ。生きてたんだな。」
「北郷。」「漢忠。」
「残念だけど君を」「どかねぇのなら」
「「殺す。」」
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よく3つ目の武器についてコメントしてくださる方がいます。
IMI社製(=デザートイーグルのことかな?)とか、ロケットランチャーとか、核兵器とか、いろいろ予想立ててくれる人もいます。
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