No.189027

真・恋姫†無双~江東の白虎~第弐章 13,5節~奇跡ノ救命&新たな火種?~

タンデムさん

ちわっす!
タンデムです!
今回は、サイトには載ってないある種の分岐点となります。
まぁ、皆さん予想されているとおりでございますよwww

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2010-12-11 00:25:00 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:17986   閲覧ユーザー数:11877

この小説は、北郷一刀、呉の主要キャラほぼ全てと華佗に

 

いろいろな設定を作っていますので、キャラ崩壊必死です。

 

更に、オリキャラが出ます。

 

今回は、華琳は特にキャラ崩壊必死です。

 

その点を踏まえて、お読みください。

あぁ――――っ!!

 

「……やはりか。 俺が戻るまではもてよ」

 

凱は、後ろから聞こえてきた友の悲鳴を聞いて、哀れみを込めたため息をついた。

 

「あら、その反応だと、慣れているみたいね?」

 

華琳は、凱の反応をみて少し怪訝な表情をする。

 

華琳の言葉に、凱は首を竦めながら答えた。

 

「ああ、あいつと居ると退屈より、苦労させられる事が多いのでな。

 

だからまぁ、たまには仕返しも兼ねて、引っ掻き回したりもしているがな」

 

「まぁ……ふふ」

 

凱のその答えに、華琳は可笑しそうに笑った。

 

だが、すぐに表情を真剣なものにし、凱に向き直る。

 

「華佗、一刀は貴方なら必ず我が母の病を治すと断言したわ。

 

二言を吐くのは好きでは無いけど、貴方に一刀の信に応える事が出る?」

 

華琳の瞳に、その出で立ちから立ち上る覇気に、凱は少し体を硬直させた。

 

「(一刀の覇気に慣れて居なかったら、喋る事も出来ないかも知れないな)

 

俺は、自分の友が俺に"信"を置いたのなら、俺はその"信"に応える、ただそれだけだ」

 

だが、凱も負けずに己が信念を貫かんために、真っ向から受け止める。

 

「!……そう。 無粋な事を聞いてすまなかったわね。(へぇ、面白いわね)」

 

凱の覇気に華琳は少し驚き、内心笑みを浮かべた。

 

自分の覇気を受けても、表情一つ変えなかったのは一刀ぐらいのもの。

 

彼も、伊達に一刀の部下をやって居ないということだろうか。

 

面白いものが見れたと、華琳は気を良くして陣に戻った。

陣に戻ると、華琳達は早々に凱旋の準備を始めた。

 

そのさなか、やはり男である華佗を同行させる事に、

 

難色を示すものもいたが、華琳と華南の名を出すと、それは鳴りをひそめた。

 

だが、やはり何故か釈然としない表情をしている者達もいた。

 

夏候姉妹達と、許緒、典韋達の武官達だ。

 

「……お主、本当に医者か?」

 

「うんうん」

 

「? どういう意味だ?」

 

行き成り、夏候惇こと春蘭が凱に意味深な言葉を放ち、許緒がそれに同意していた。

 

凱は、その言葉の真意がわからず、首をかしげる。

 

「姉者は、そなたの普通の医師ならざる闘氣に疑問を抱いておるのだよ」

 

「勿論それは、秋蘭様も私も同じです」

 

「ああ、成程そういう事か」

 

言葉足らずな彼女のセリフを、妹の夏候淵こと秋蘭と典韋が補足して彼女も疑問に思う旨を伝える。

 

「あぁ……皆さん、それは」

 

「あ~、そら仕方ないですわ」

 

「なの~」

 

二人の疑問に、凪、真桜、沙和が苦笑を浮かべて四人に、答えた。

 

「二人は華佗殿の、この不可思議な闘気を知っているのか?」

 

「ええ、まぁ」

 

そう言って、三人は己の体験談を話しだした。

凪曰く――。

 

「はあぁっ!」

 

ぐるるぁっ!

 

ガァァァッ!!

 

「……うそだ」

 

虎と熊二匹を素手で相手取って居り、勝利するのを見た。

 

真桜曰く――。

 

「ぬうぅ……負けんっ!!」

 

ガァーッ!

 

「で、でたらめやん……」

 

鰐と水中で争って、見事勝利を収めるのを見た。

 

沙和曰く――。

 

「とぉあぁっ!!」

 

キィーー!!

 

「……絶対人間じゃないの~」

 

大怪鳥と空中で舞いながら戦い、辛くも勝利した。

 

『はぁ……?』

 

4人は、三人の話を聞いてあいた口がふさがらなかった。

 

「仕方ないだろう。 そいつ等の材料が無ければ薬が作れ無かったんだから」

 

『はぁっ!?』

 

しかも普通に返す凱に、彼女達はますます

 

「ですが薬の材料のためとは言え、まさか自分で狩りまでされるとは思いませんでした」

 

「あんときは吃驚したなぁ……まさか、鰐と水ん中で戦って勝つとか、どんだけやねん思ったわ」

 

「先生以外で、初めて人外技を見たの。 でもそれより驚いたのがあのときなの」

 

そしてさらに、三人曰く――。

 

「ちょりゃぁーーっ!!」

 

ズガァンッ!!

 

「ぬ! はぁっ!」

 

ゴゴォンッ!

 

『……化け物大戦(や/なの)』

 

何でもアリアリの本気の組み手を一刀としているのを見た、しかも双方互角だった。

 

『はぁっ!?』

 

4人は、目玉と顎が外れる位驚いた。

 

先ほどの戦場で、一刀の強さは目の当たりにしてきたばかりで、

 

更にその人物と互角に戦うものが今隣に居る等、到底思えなかった。

 

「うんうん、あれは中々に刺激的だった」

 

凱も三人の話から、その時の事を思い出すように、目をつぶってうんうんと頷いた。

 

だが、凱の言葉に、三人は一斉に首を振った。

 

「あれは、刺激的とかではありません! 一歩間違えれば、街に被害が出るところだったんですよっ!?」

 

「せやで!

 

しかも、うちらのとこまでセンセの気弾とか、

 

凱はんの投げたモンが飛んで来て、危うくうちら死にかけたんやで!」

 

「そうなの! 沙和でも、気弾とか石ならまだわかるけど、

 

沙和、岩盤とか木の幹が飛んで来たなんて、あのとき以外無いのっ!」

 

『……』

 

4人はそれを聞いて、もはや何も言えなかった。

~side華南~

 

 

「……みず」

 

華南は、喉の渇きを癒すため寝台から上半身だけ起き上がり、そばの台に置いてある水差しに手をやろうとした。

 

「! ごほっ! ごほっ! ごほぉぇっ!」

 

だが、不意に咳が出ると分かった華南は、伸ばしたその手を口元にもっていき、抑えた。

 

咳をすると同時に、口の中に不快な鉄の味が広がり、口にあてた手にぬるりとした感触が伝わってきた。

 

その手を診ると、やはり紅い液体が付いていた。

 

「……まだ。 まだ……耐えてよ、私」

 

服に血が付くのも厭わず、痛む胸を押さえて、華南は蹲った。

 

胸から全身に奔る痛みに、意識が飛びそうになる。

 

[もういいじゃない]

 

「嫌よ、うる……さいわ……ね」

 

自分の脳裏に響く自身と同じ声に、華南は悪態を付いた。

 

[我慢しなくて、楽になれば良いじゃない]

 

「ふざけ……んじゃ、ないわよ。 私……は、約束を、破るのが……大、嫌い……なのよ」

 

確かに、この声の導きのままに楽になりたいと思った時が何回かあった。

 

だが、そんな時に決まって、あの日森であった少年との約束を思い出すのだ。

 

 

『私達は許昌に居るわ。 また会いましょう。 一刀君』

 

『ばいばい、一刀』

 

『……はい!』

 

 

「……かず、と……くん」

 

華琳と二人で会った少年。

 

今では、江東の白虎と言う二つ名をもつ英傑となっている。

 

華南は、この約束の光景が愛娘達と同じで、今の自分を支える一つとなっている。

 

それは何故かわからない、だけど華南は嫌とは思わなかった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

そして、決まって痛みが段々と薄れてゆくのである。

 

この現象自体に、華南は不思議なモノを感じているが、偶然だろうと思っている。

 

ガチャ

 

と、屈んでいた体を起こすと、愛娘が赤い髪の一人の男を連れて部屋の外に立っていた。

 

華琳は、口元から血を垂らしている母の姿を見て、驚きに染まった。

 

「!? 母様!? 血が!」

 

「し、心配……無いわ……。 もう、治まったから。 それより、貴方は?」

 

駆け寄ろうとする娘を手で制して、彼女は隣の男に素性を明かす様に促した。

 

「初めまして、曹嵩殿。 俺は、孫王虎の推挙で参った華佗と言う者だ」

 

「孫、王虎……! 一刀君の、推挙……?!」

 

凱の素性を聞いて、華南はある種の運命的なモノを感じた。

 

「ああ、すまないが詳細な挨拶は省かせてもらう。

 

見たところ、深刻な状況のようなのでな。 曹操殿早速治療に入りたい、外に出てくれないか?

 

此処に居ると、曹嵩殿の治療に専念できない故、曹嵩殿の完治を約束出来かねる。 頼めるか?」

 

「……分かったわ。 母様を頼んだわよ」

 

凱の言に、華琳は華南を心配そうに一目見た後、

 

彼女は懐から一刀から預かった酒を机の上に置いて、後ろ髪をひかれる思いをしながら外に出た。

~side華南~

 

 

華琳が出ていくと、華佗は私にこう言った。

 

「すまないが、前を肌蹴て貰えないだろうか?

 

診察するにしても、服を着ていられては正確に出来ない」

 

「……わかったわ」

 

すこし、私は渋ったが本当にこの者が生きる希望となるのなら、背に腹は代えられないと、前を肌蹴た。

 

「では、始めるぞ。 むっ――はっ!!」

 

私が前を肌蹴ると、華佗は眼を瞑って眼に氣を集中させ、カッと力強くその眼が開かられた。

 

「こ、これはっ!?」

 

その瞬間、彼の表情は驚きに染まっていた。

 

後で聞いた話だが華佗の眼には、私の体だけでなく、

 

私の息から、この部屋中に広まっている病魔の影を捉えていたらしいのだ。

 

そして彼は、間髪いれずに、己の体の何箇所かを鍼で突いて、両拳を合わせ、目を瞑って集中していた。

 

「はぁぁっ! 賦相成賦癒慈勇(ファイナル・フュージョン)っ!」

 

「……!」

 

すると、その華佗から、薄い膜の様なものが部屋中に広まり、先ほどより息がし易くなった様な気がした。

 

 

この技は、現代で言う無菌室を作り出す技なのだ。

 

しかも、彼女が息をして吐き出すウィルスも、次から次に倒す為ほぼ完ぺきな無菌状態となるのだ。

 

だが、それゆえ氣の使用が半端なく多く、疲労も溜まりやすい。

 

だから、凱は直ぐに自身の秘孔を突いて、一時的に氣が多くなるようにした。

 

 

そして、彼は金の籠手を装備した。

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

「なっ!?」

 

すると、華南の眼には金色に輝く氣の針が見えた。

 

衰弱した今の自分の眼にも見えると言う事は、凄く密度が濃い証だろうと、華南は思った。

 

華佗は氣鍼を出したまま華南の伏せる寝台に近づいた。

 

「少しチクッとするが、我慢してくれ」

 

そう言って、彼が鍼を振り下ろした後、私は意識を失った。

「……ん」

 

窓から差し込む日の光に、華南は再び意識を浮上させた。

 

「! お母様!」

 

『華南様!』

 

眼をあけると、眼の前には愛娘と姪達の姿があった。

 

「華琳……春蘭、秋蘭」

 

今回の治療も失敗したのかと、落胆の気持ちを持っていたが娘たちに見せるまいと、体を起こした。

 

だが、同時に、自身の体の変化に気が付いた。

 

「(体が……軽い?)」

 

意識を失う前に、自身が感じていた熱っぽさや倦怠感が無く、

 

全く感じなかった空腹も、今では何か食べたくて堪らないほどにお腹が空いていた。

 

く~~……。

 

そして、それを現す様に、華南のお腹が可愛く鳴った。

 

「え~と~……華琳ちゃん、お母さんお腹空いちゃったから何か作って~?」

 

「くす、わかったわお母様。 秋蘭手伝って、春蘭はお母様の付き添いをお願い」

 

『御意』

 

華琳は母のそんな言葉を聞いて、小さく笑みをこぼし、秋蘭を連れて厨房に向かった。

~厨房~

 

「んぐんぐ! 典韋君、すまんが白飯をもう1杯貰えるか?」

 

「は、はい。 朝からよく食べますね?」

 

「仕方がないでしょう。 あれだけの氣を使ったのです。」

 

「せや、のうなった分は補せなならんしな。 あんだけ氣つこうとったら、腹も減るっちゅうもんや」

 

華琳達が厨房にやってくると、そこには凱が既にいて朝餉を取っていた。

 

丼に是でもかと言った感じで盛られた白飯と、これまた大盛りの青椒肉絲をおかずにモリモリ食べていた。

 

「朝からよく食べるわね?」

 

「ん? おお、曹操殿、おはよう! 先に頂いて悪いな」

 

「構わないわ。 食事を続けなさい」

 

そんな凱を華琳は気にも留めず、前掛け(エプロン)を付け秋蘭と共に厨房に立った。

 

ただ、彼の青たん赤たん塗れの顔を見て、秋蘭は凄く申し訳なくなった。

 

理由は簡単、姉の春蘭が凱の治療の際の大声を聞いて、何事だと部屋に突撃。

 

しかし、そこは凪、真桜、沙和が押さえたおかげで、治療中の部屋に入る事は無かった。

 

だが、春蘭は治療が終わったばかりの裸の華南を見て、

 

『華南様の肌を(視線で)犯すとは何事だぁっ! その首刎ねてくれる!』と言って、凱をボコボコにした。

 

幸い、すぐに誤解が解け、彼の首が宙を舞う事は無かったが。

 

 

閑話休題

 

 

厨房に立って、ふと華琳は思い至った事を凱に問うた。

 

「華陀、母様は病み上がりだから、やはり軽めの物がいいのかしら?」

 

「いや、昨日彼女の胃や腸を見る限り、弱っているわけでもなかった。

 

だから、普段と同じものを食したとてかまわんだろう。

 

ただ、あまり多くの量を食しては胃が驚くだろうから、量は少し少なめの方がいいがな」

 

カッコよく医学の知識を述べているのだが、如何せん青たん赤たんのせいでなんだか間抜けである。

 

「そう、分かったわ。 はぁ、ウチの大食漢がまた増えたわ」

 

「華南様は、よく食されますからね」

 

そう呟いて、華琳と秋蘭は調理に取り掛かったのだった。

『……』

 

四半刻後、華琳と秋蘭は、

 

華南用に凱が食した物と同量の青椒肉絲と干焼蝦仁(エビチリ)、丼ご飯を用意していた。

 

流石にこの量には、そこに居た者達は驚くしかなかった。

 

それはそうだ。

 

華南が大食漢だと知っている物は、華琳、春蘭秋蘭ぐらいの者だからだ。

 

しかも、昨日まで病のせいで食事をする光景を見る事等皆無に等しいから尚更である。

 

ただ、それよりも驚くモノが目の前にあった。

 

「いっただっきまーっす! はぐはぐはぐ……! んー! おいしー! はぐはぐはぐはぐ……」

 

「……一刀、すまん。 無力な俺を許してくれ……」

 

春蘭と共に厨房に入ってきた華南は、朝餉を見てすぐ、そう言って朝餉を食し始めた。

 

それはなんら驚く事では無い。

 

問題は、彼女自身である。

 

「……姉者。 華南様に何をしたのだ?」

 

「ち、違う! わ、私は何もしてない!」

 

「春蘭、私は嘘が嫌いよ? でなければ、何故母様があんなに若返ってるのよ!?」

 

「ほ、本当なのです華琳様! 本当に、私は何もしていないのです!」

 

そう、何故か華南は若返っていた。

 

今回は事前に、凱が華琳達に何かあるかわからないから、1週間は絶対酒を飲ますなと言っていたのだ。

 

にもかかわらず、今回は流石の春蘭でも覚えていたし、華琳や秋蘭に厳しく言われいた。

 

では、何故か。

 

「あ、華琳。 お母さんの部屋にあったお酒物凄くおいしかったわよ~。

 

お母さんまた飲みたいな~。 はぐはぐはぐ……」

 

「……!! そ、そう言えば!」

 

答えは簡単、華琳が去り際に置いて行った一刀作の酒だ。

 

春蘭がちょっと厠に行っている隙に、華南は目聡くその酒を見つけてしまったのだ。

 

栓を抜くと、よい香りのする酒が入っていた。

 

自分の部屋にこんな良い酒があったかなと華南は思ったが、お腹の空いている華南には関係なかった。

 

そのまま酒をラッパ飲み。

 

春蘭が戻ってきた時には時すでに遅し、華南は蹲って若返り始めていたのだった。

 

「はぁ。 まぁ、過ぎた事は良いとしましょう。 お母様、とりあえず暫くお酒は絶ってもらうわ」

 

「はぐはぐんぐんぐ……ごくんっ。 え~。 お母さん、お酒大好きなのに~。

 

しゅんらーん、華琳ちゃんがいぢわるする~んぐんぐんぐ……」

 

「えぇ!? わ、私に振られましても……」

 

「意地悪じゃないでしょう!

 

はぁ、全く、限られた時はあんなに凛々しいのに、普段はなんでこうなのよ……」

 

傍若無人に振舞う母を見て、華琳はこめかみを指で押さえてため息を吐いた。

 

実は一刀と初めてあったときは、

 

外面スイッチが発動していただけに過ぎず、緩々なのが彼女の本性である。

 

そして、次の瞬間驚きの言葉が彼女の口から飛び出した。

 

「んぐんぐんぐんぐ……ごくん。

 

あ、そうだ華琳ちゃん、お母さん明日からちょっと江都に行って来るねぇ~。 はぐはぐんぐんぐ……」

 

「何をすっとボケた事を言っているの!? 許すわけ無いの分かるでしょ!?」

 

ちょっと遊びに行ってくる的なノリでそうの宣った。

 

流石の華琳も、傍若無人な性格な母であれ、

 

そんな阿呆な事を言い出すとは思わず、大きな声で叫び散らした。

 

「はぐはぐ……ごくん。

 

え~……いいじゃな~い、ちょっと遊びに行って来るだけだから~。 はぐはぐ」

 

「良い訳があるかっ! こんな大変な時期に、目的も無いのに遊びに行かす訳が無いでしょう!!!」

 

尚も、自分勝手にそんな事を言う華南に華琳は、

 

頭の血管が切れるのではないか、と言うほど顔を真っ赤にして怒り、華南に向かって怒鳴った。

 

「はぐはぐんぐんぐ……ごくん! ぐびぐびぐび……ごくん! 目的ならあるわよ? はぐはぐ……」

 

「ほぉ……この私を、納得させる事が出来るほどの、内容なんでしょうねぇ?」

 

そう言って、華琳は少し冷静になるためと喉が痛くなってきたので、杯に次いだ水を口に含んだ。

 

「はぐはぐんぐんぐ……んくっ。 うん、新しいお父さん連れて来てあげる~。 はぐはぐ」

 

「!? ブゥフゥゥっ!!! ケホケホッ……!」

 

「ああ!? か、華琳様っ!?」

 

だがそれがいけなかった。

 

華琳は、華南の放った言葉に驚きの余り、口に含んだ水を全て吹き出してしまった。

 

水が鼻の方にも上がってきて苦しいのか、悶絶していた。

 

「んぐんぐ……ごくん。 華琳ちゃん、きったな~い。 はぐはぐ……」

 

「……!……! はぁはぁ……! ケホッ! き、汚いじゃないわよ!!

 

お母様こそ何を考えてそんな素っ頓狂な事言っているの!? 病気の間に頭の中がわいたの!?」

 

母親に対して、あんまりな発言だが、華琳がそう言いたいのも分かる話である。

 

だが、華南はそんな事意にも返さず、マイペースに言葉をつなげた。

 

「ひっど~い。 いいじゃなぁ~いせっかく若くなったんだもん。

 

それに結構前に真名許したから大丈夫だもん♪」

 

「はぁ、何を訳の分からない……真名を……許した?」

 

そして、それにもう頭を抱えるしかない華琳だが、華南の言に引っかかりを感じた。

 

「うん、華琳ちゃんもよく知ってるわよ~。 それに今じゃ、英雄さんなんでしょ~? はぐはぐ……」

 

「私が、よく知っている? …………ッ!? まさかっ!?」

 

そして、その次に出た言葉ですべてのピースがそろい、

 

母が狙っている獲物の人物像が完全に特定出来てしまった。

「そんな事許すわけ無いでしょう!? 第一、お母様の本性を知ったら、いくら彼でも……」

 

「アグアグ……ごくん、はぁー……ごちそうさまでした。

 

ふふーん、大丈夫だも―ん、お母さんには『華琳には無い大きなこれ』があるも―ん」

 

そう言って、華琳は真桜にも匹敵するであろう【おもち】を下から掬い上げるように持ち上げた。

 

しかも、わざわざ『華琳には無い大きなこれ』の部分を強調して自慢するように言った。

 

ブチ!

 

『!』

 

瞬間、何か太い縄がブチ切れる音がして、部屋の温度が真冬並みの温度に下がった様な気がした。

 

その光景を見ていた流琉は恐怖に身を縮め、凱は長年一刀の側で培った経験でその空気を読み取った。

 

それからの皆の行動は早く、凱はいち早く、厨房の出口を確保し、

 

春蘭、秋蘭は夫々、真桜、凪、流琉を抱え上げ、一目散に逃げ出した。

 

周りがそんな風に大慌てで暴れていた間ずっと、

 

固まっていた華琳が、ようやく動き出し、さげすむように腕を組んでこう言った。

 

「ふ、ふふ……でも大変よねお母様、私より『年』だから、すぐに『垂れるわね』」

 

ブチ!

 

『!』

 

「ひぃ!」

 

瞬間、外に居るはずの凱達にも、感じられるほどの冷気が厨房の中より漂ってきた。

 

そのあまりの恐怖に、流琉などはもう泣きだしそうだった。

 

中がどうなっているのか、恐る恐る凱は覗き見た。

 

『……』

 

ゴゴゴゴゴゴゴ……!!

 

何というか、呉で雪蓮と紗那が喧嘩する一歩手前の状況に近かった。

 

お互いに、相手を視線から外す事無く睨み合っていた。

 

その様子を見て、凱は溜息をついた。

 

「……なんで、こっちに来てまでこんな思いをしなければならないんだ」

 

「? 向こうでも似たような事があるのか?」

 

溜息をついて、うなだれている凱を見て、秋蘭は意外そうな顔をした。

 

その言葉に反す様に、凱はどこか遠いところを見る様な表情で言った。

 

「凪君や真桜君は知っているよな? 雪蓮殿と紗那君の喧嘩を……」

 

「ああ……はい……」

 

「うちらも何回か巻き込まれましたわ……」

 

そして、話を振られた凪や真桜も凱と同じように、どこか遠いところを見るような表情をした。

 

ガタタッ!

 

と、話し込んでいると、不意に厨房に座っていた二人が勢いよく立ちあがった。

 

ギランッ!

 

『ひぃ!?』

 

そして、二人同時に、厨房の入り口に居る自分達もっと言うと、春蘭秋蘭をにらみつけてこう言った。

 

「春蘭……絶を……」

「秋蘭ちゃん……滅を…」

 

『庭に持って行きなさい……!』

 

『ぎょ、御意っ!!』

 

二人は、あまりの恐怖に返事と同時に、体が動き二人の武器を取りに行っていた。

 

「……凪君、真桜君、どちらかが典韋君を担いでくれ!

 

担ぐと同時に逃げるぞ! 駄目だったら典韋君だけでも逃がしてくれ!」

 

「は、はい! 流琉様、失礼します!」

 

「え? ええ?」

 

「すまへんな! せやけどしばらく我慢してえや!」

 

凱は、此処に居てはまずいと勘が告げたため、

 

凪、真桜につげ、凪は流琉を担ぎあげて3人とも一目散に逃げだした!

 

「あれ~? 何処に~行くのかなぁ~?」

 

「あら、観客が逃げてはつまらないじゃない?」

 

『うわぁぁっ!?』

 

しかし、凱たちは二人の魔王に回り込まれて逃げられなかった!

 

魔王達は、拘束連行の呪文を使った!

 

凱達は、強制的に連れ去られてしまった!

 

「……すまん、三人とも……」

 

凱は、本当に申し訳なさそうに三人に謝った。

 

「いえ、凱殿のせいではありません……」

 

「うん。 ウチもどうせこないなるんやろうなと思ったんやわ……」

 

凪と真桜はもう諦めた様な表情をして、華琳と華南に付き添っている。

 

「あ、あの? 今から何が始まるんですか?」

 

『……すまないな(すいません/ゴメン)、逃がせなくて……』

 

「ちょ、な、なんなんですか? 今から何があるんですか!?」

 

これから始まる胃がきりきり痛む、邪気と邪気がぶつかり合う死合の事等、

 

露ほどにも分からない典韋。

 

三人はただ謝るしかできなかった。

 

ただ、今日1日が終わるころ。

 

「あははははは……」

 

「流琉!? 流琉!? 大丈夫!? ねえぇ!?」

 

壊れたように笑う流琉がいたとか無いとか……。

華南が一刀を婿に迎える的な発言をしたころ……。

 

「(ゾクゾクッ)!? な、なんだ今の寒気は!?」

 

突然走った寒気に一刀は、自身の体を抱いて腕をさすった。

 

しかも、自身の身に物凄く危険な事が増えた様な気がした。

 

ガチャ!

 

「一刀、いるな」

 

「あ! よかった、探す手間が省けたわ」

 

と、突然、雪蓮と冥琳が自身の部屋に入ってきた。

 

しかも何故か、ご立腹のようなご様子である。

 

「あ、あの~、どのようなご用件でございましょう?」

 

「ああ、簡単。 一刀をつまみに来たの」

 

獲物を見る眼で一刀を見つめて、何でも無いような感じでそう言う雪蓮。

 

「はぁっ!? ちょ、俺まだ仕事が!?」

 

「問題無い、私と雪蓮は今日の分は終わらしてある」

 

だが、仕事の話を振るも何故か冥琳も聞かない、聞く耳を持たない。

 

しかも、その目は、雪蓮と同じく、獲物を狙う眼。

 

たとえるなら、雪蓮が腹を空かした虎の眼なら、

 

冥琳は天高くより獲物に狙いを付けている鷹、と言った感じだ。

 

なんで、彼女達が此処に居るかと言うと、

 

なんとなく、一刀をお仕置きしなければならない、と思ったらしいから。

 

「……お、俺何か悪いことでもしましたか?」

 

『問答無用』

 

アァ――――!!

 

 

ちゃんちゃん♪


 
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