―――蜀、城内大食堂
「うむ、やはりここのメシはレベルが高いな。
刑務所のバターロールパンと比べたら、竹槍とB29の差はあるぞ」
俺は豪快にみそバターコーンラーメンを啜りながら、
対面に座る馬超こと翠に洗練された育ちの良さを見せつける。
「そう思ってんなら、そのメンマも残さず食えよ」
しかし、翠はそんな俺の英姿には構いもせず、
俺が小皿に放り投げたメンマを指差しながら、スプーンでカレーをすくう。
「・・・あのなぁ、俺がここへ来てもう一月経つが、
もういい加減ウンザリなんだよ。
なんで、なんで全メニューにメンマが載ってくるんだよ!
――――と言う訳で、これは翠にやる、食ってくれ」
「いっ、いやあたしもいらないし。
ほら、見ろよ、このカレーにもまだメンマ残ってるだろ!」
そんな必死にアピールせんでもいいだろうに。
しかし周りを見渡す限りでも、兵士連中の大半が皿の端っこにメンマを弾いていたり、
仕方のない事故に見せかけてメンマを次々と床に落下させたりしているな。
「・・・まあいいか。
ほら翠、口を開けろ、あーーーん!」
小皿ごと翠の口へ突っ込む。
「ちょッ、ぐっぐううううう!!」ドサッ!
翠はイスから転落するも、横幅いっぱいに口を開拓する。
「ふむ、メシが格別美味いだけに、不自然な付属品であるメンマの違和感が際立つな。
・・・なにやら茶色い陰謀の臭いがするぜ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
大食堂の入り口から、やり取りの一部始終を見ていた者が一人。
次の日
―――蜀、城内大食堂
「北郷殿、少しお時間よろしいか。」
天窓から降り注ぐ日の光を浴びるなか、
俺はふりかけご飯をかきこみながら本を読んでいると、
白い着物を着たいかにもメンマの似合いそうな若い女に声を掛けられた。
「・・・確か趙雲だったな。
俺は見ての通り食事中だが、それでも構わないのならいいぞ」
今日は早朝から翠の部隊が予定通り郊外で軍事演習を行っており、
そのため俺は一人でメシを食うはめになっていた。
そこをこの趙雲はつけ狙ってきたのだろう。
「それでは言わせて貰うが・・・私はここ最近お主の食事風景を見ていた。
人の身である以上、好き嫌いというのは誰にでもあるものだ。私も決して強要はしない。
だからラーメンのメンマを仕方なく残すことはまだ許容できる。
――――――だが!」
勢いよく拳でテーブルを叩き、俺の器と小皿を指差す。
「メンマ丼から全てのメンマを弾いた挙句、
残ったご飯をふりかけご飯にした諸行は、もう意味が分からん。
だったら最初から注文するな!
それはもはやメンマとこの私に対する侮辱だ!」
うぅ、至近距離で怒鳴るなよ、鼓膜が痛む。
それに周りの連中の視線もなんか痛い。
「つか、なんでそこまでメンマに固執するのか甚だ疑問だが。
別にメンマより美味い食いもなんていくらでもあるだろ」
「ほう、それは聞き捨てられないな。メンマは至高にして究極の食べ物、それを超越するものなどこの天下に存在するはずが無い!」
俺は無言でさっき売店で購入したカッ○エビセンをテーブルに差し出す。
「きっ、きさまああああああああ!!!」
カッ○エビセンに私怨を抱いているのか、
はたまた俺の答えが気に食わなかったのか、
激昂した趙雲は抜く手も見せず槍を俺へと放つ―――しかし!!
「ふんもっふ!」させるか!
俺は瞬時に趙雲の高速突きを袋で受け止め、
そして袋の裂け目から溢れ出てきたカッ○エビセンを片手いっぱいに掴み、
――――趙雲の口の中に無理やり押し込んだ。「ンッ!?」
そして続けさまに、そのボディーに仙人直伝の剛拳を叩き込む。
「うがっはッッ!」
趙雲の口からエビセンが盛大に吐き出される。
その光景になぜかダム決壊時の場面がフラッシュバックする。
「うぼぼぼぼぼぼぼぼぬ~」
ってあれ、なんか長くね?どこか詰まっ――――――「ぎゃああああああ!!」
「うぼぼぼぼぼぼぼぼぼぬ~」
コイツ吐いてる!マジで吐いてる!
色が似ているからまったく気付かなかったぞ!
「うぼぼぼぼぼぼぼぼぼぬ~」
テーブルに手を付きながら破竹の勢いで汚染面積を拡大していく趙雲。
「・・・・・・・・・」
俺は黙ってお茶を啜るしかなかった。
その時
俺の言い知れぬ心情を代弁するかのように
ゲロの洗礼を受けたメンマが大音声を上げる。
「うぅえ、ちょ、そこはッ、らめええええええええええええええええええええええ!!!!」
あとがき
いかがでしたでしょうか?
次回、魏の登場によりついに物語が動き始めます。
あ~それと、作中でメンマが悲惨な体験をしましたが、
私自身メンマは白菜の次に好物です。
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第6話です。
きょえええええええええええええええええ!!!
うきいっきいいいいいいいいいいいいいい!!!