翌朝、雨が降っていた。
徐福は家の中で一刀が来るのを待っていた。
徐福には母親がいるのだが、街にいるので家には徐福一人しかいなかった。
「まだかなぁ・・・・・。」
徐福は未だに昨夜の一刀の姿が脳裏に焼きついていた。
目を閉じると、すぐに思い出す。
ちょっといい加減っぽい態度。
変な格好だったけど、オトナっぽいあの姿。
そして、あの微笑み。
横顔でしか見なかったが、一刀の微笑みにはとても暖かいものがあった。
「(・・・・・・でも)」
徐福は一つ、気になっている所があった。
「(なんで、あんなに『黒い』瞳をしてるんだろう・・・・・。)」
ただ瞳が黒いのではない。まるで『闇』が宿ったような感じだ。
すると、コツ、コツ。という足音が聞こえた。
「(来た!)」
徐福は急いで玄関に向かい、扉を開けた。
「北郷さ・・・・・あれ??」
しかし、外には誰もいない。
「気のせいだった、かな?」
徐福は「はぁ。」とため息をつき、扉を閉めようとした。
だが、次の瞬間。
徐福の背後から何かが忍び寄り
「んぐぅ!!!」
徐福を拉致した。
「ふぁ~あ・・・・・腹減った。」
一刀は速めに歩きながら徐福の家を目指していた。
一刀の服と頭に被っているキャップは雨で濡れ、ついには髪まで濡れ始めている。
早く家に行き、濡れた髪を拭いて服を乾かしたいのだ。
一刀は歩きながら、ふと肩に掛けてあるライフルを見た。
「それにしても、このペイロードライフル・・・・あの筋肉ダルマ一体どっから仕入れたんだよ。」
このライフルは最大射程2400メートル、車両やヘリ、建築物に対しても有効な攻撃力を誇る、超強力な銃。
これが一刀の主兵装だ。残りの2つは補助兵装となる。
「ったく、どれも日本じゃ使われてねぇっての。」
一刀はキャップを脱ぎ、雨で濡れた頭をガシガシと掻き毟る。
すると、徐福の家が見えた。
「や~っと着いた・・・・・・ってあれ??」
徐福の家の様子がおかしい。
扉は開けっ放しで、無用心この上ない。
一刀は徐福の家の前まで走る。
「んだこりゃ・・・・。」
雨で濡れた地面に、無数の足跡が残っていた。
一刀はしゃがんで足跡をよく見る。
「(足跡の大きさがバラバラだ。しかも、その内一つはやけに小さい。まるで女・・・・・女!?)」
一刀は家に駆け込む。
「徐福!!いるか!!」
一刀の声に、返事はない。
台所には、数種類の料理が『二人分』用意されていた。
「(まだ湯気が・・・・・。ってことは、ついさっきここで何かが起こったってことか。)」
これ以外に手がかり見つからなかったので、一刀は外に出た。
そして、もう一度足跡を見る。
すると、足跡はある方向に向かって延びていた。
その方向を見ると、数キロほど先に小さな丘陵がそびえ立っている。
一刀は、無言で歩き出した。
一方
「んんーっ!!!」
徐福は囚われの身となっていた。
犯人は昨夜の盗賊達。
ここはおそらく彼らの拠点だろうか、洞窟内のようで、辺りには数十人以上の男が武器を持ってうろついている。
徐福は手足を縛られ、口には布が巻かれて喋ることができない状態だった。
「んんーっ!!!」
「うっせーなぁ!!!」
盗賊の一人が徐福を殴る。
「・・・・っ!!」
「おい、やめとけ。」
「お頭・・・・・はい。すんません。」
山賊たちから『頭』と呼ばれる男(以後、頭と呼ぶ)が、徐福に近寄る。
「ん~・・・・たしかにイイ女だなァ。」
頭が舐め回すように徐福を眺める。
「こりゃマワして殺すにぁもったいねェ・・・・・。高値で売るか、俺のモンにしてやるか。」
徐福は必死に頭を睨み付ける。
「へッ、強気だねェ。だが、あの兄ちゃんは助けに来ねェぞォ??」
あの兄ちゃんというのは、一刀のことだ。
「まァ、足跡を辿ってここまで来れたとしてもよォ、洞窟にャウチのモンが五十人もいるからなァ、見つけ次第なぶり殺しだぜェ!!」
徐福の『睨み』が弱まる。
すると、頭は徐福の口を覆う布を引き裂いた。
「ッ!!」
「へへ・・・・お前、俺の女になれよ。なァ??可愛がってやるぜェ??」
徐福はただ震えていた。
頭はニヤリと笑う。
「カワイイねェ・・・・・興奮しちまうじャねェかァ!!!」
「イ・・・・イヤ、ヤメテ!!助けて!!助けてぇ!!!」
《タァン!!!!》
頭が徐福の服を掴んだその時、聞いたこともない音が響き渡った。
「あァ!?なんだ今のは・・・・・。」
《タァン!タタタタタタタ・・・・・!!!!》
少しずつ、こちらに向かって近づいてくる。
《ドシュウ!》、《ビチャッ!》、《ブシッ!!》
何か生々しい音まで聞こえ始めた。
頭は徐福から手を離し、武器を手に取る。
やがて、暗闇から誰かが姿を現した。
「お、お頭ぁ!!助けてくれぇ!!!!」
盗賊の一人が、泣きながらこっちへ向かってくる。
「何があったァ!?」
「それが、変なモンを使って仲間を次々―――《タァン!》―――ガッ!!」
突然、盗賊の後頭部から血を噴き出し、彼はそのまま倒れた。
すると、その背後には一人の男がいた。
「変なモンじゃねぇ。コイツは『MP7』ってんだ。」
「北郷様・・・・・。」
徐福はうっすらと涙を浮かべ、一刀の登場に安堵した。
一刀は徐福の方を見る。
彼女の服は少しはだけており、その姿は頭が徐福に何をしようとしていたかを物語っていた。
「おい!お前ェが昨晩の男かァ!?」
「だったらどーした。」
「あん時ャ、ウチのモンが世話になったからなァ・・・・・。その『礼』をさせてもらうぜェ!!」
頭が一刀に斬りかかる。
「だったら・・・・。」
《タァン!!》
「グオッ、オオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
「コイツは徐福が世話になった『礼』だ。」
一刀は頭の大腿部を撃ち抜いた。頭は転倒し、武器を落とす。
一刀は徐福の元へ向かい、彼女を解放する。
「無事か?」
「は、はい・・・・。」
「長居は無用だ。帰るぞ。」
一刀と徐福が歩き出す。
「てんめェ等ァ!!!!待ちやがれェ!!!ぶっ殺してやるゥ!!!!・・・・・ハァ・・・・・ハァ・・・・」
頭の怒鳴り声に、一刀が立ち止まって振り向く。
「・・・・・あとどれくらいだろうな?」
「あァ!?何がだ!!」
「テメェの寿命。」
「はァ!?何言って――。」
「その太ももの出血な、止まらねぇぜ??」
一刀の一言に、頭は動揺した。
「・・・・んだと??」
「血を全部出しちまう間、懺悔でもしてるんだな。」
「お、おい!!待ってくれェ!!助けてくれよ!!金ならやる!!おい!!おい!!」
懇願する頭を見て、一刀は無表情である提案をする。
「そーさな。徐福が「いい。」って言ったら助けてやってもいいぜ。なぁ徐福、どうする??」
すると、徐福はキッ!と頭を睨む。
「・・・・・・あんなことされかけて・・・・・許せるわけありません。」
「そーいうこった。」
そう言うと、二人は再び歩き始めた。
「おいィ!!助けてくれェ!!」
頭の叫び声に再び一刀が反応する。
だが、立ち止まりはしない。振り返りもしない。
ただ、手を振り、一言呟いただけ。
「あばよ。」
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とりあえず定番のザコ戦。
まずはこっから。
あ、なんか√希望とかあったらコメントでもメールでもいいんで言ってください。
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