少女はおそるおそるその青年に近づく。
すると、あることに気づいた。
「え?光ってる・・・・!」
その青年の全身は、うっすらと光を帯びていたのだ。
まるで、天使のように。
「あ、あの!。」
「(ん?・・・・何か聞こえる。誰かいるのか?)」
「大丈夫ですか!?起きてください!」
青年がゆっくりと瞼を開けると同時に、光が消えた。
「・・・・・ん。あれ?」
青年は上体を起こす。
「よかった、大丈夫ですか?」
「あ?あぁ・・・。」
青年は落ち着いて状況を整理する。
「あー・・・・あ、そうか。ここが『外史』か。なるほどなるほど。」
ブツブツと呟く青年に、少女は警戒しながら尋ねた。
「あの、えっと・・・・」
「ん?ああ、俺は『北郷 一刀』。」
「えっと、姓が『北』、名が『郷』―――。」
「いんや、姓が『北郷』で名が『一刀』だ。」
「字は?」
「んなもんねぇよ。」
一刀は立ち上がり、あたりをキョロキョロと見回す。
「(目の前には女。見たところ武器は持ってない、か。)」
もしこの少女が襲って来たら、というケースに備えて対策を考える。
「(なんか隠し持ってたとすれば、肩を撃って無力化、それでも暴れるようなら膝を・・・・・)」
一方、少女は一刀の格好について気になっていた。
「(・・・・変な格好。)」
一刀はいつでも即応できるようにしつつ、少女に話しかける。
「なぁ、腹減ってんだけど、何か持ってる?」
「ふぇ?いえ・・・・。」
「そっか。んじゃ我慢すっか。」
少女は一刀への質問を続ける。
「あの、あなたは何処から来たのですか?」
「質問ばっかだな。ん~、何処からって言われても・・・・・ま、『天の彼方』からやって来たってのが一番正解に近いか。」
一刀は冗談のつもりで言った。
だが、少女はそれを鵜呑みにした。
「『天』から・・・・」
口元に手を添え、考える少女。
「(なるほど、だから体が光っていたのね。)」
「で?アンタは??」
今度は一刀が少女に質問した。
「私ですか?我が名は『徐福』。字は――。」
徐福。という名前に、一刀は疑問を抱いた。
「(徐福??たしか三国志でそんなのがいたような・・・・。)」
『徐福』。晩年に『徐庶』と改名した三国志時代の武将・政治家である。
だが、一刀はそこまでわからなかった。
「どうかなさいました?」
「いや、別に。で、徐福はここで何を?」
「ちょっと眠れなくて、星を眺めてました。」
「ふぅん。ま、夜更かしは大概にな。」
そう言うと、一刀は川に沿って歩き始めた。
徐福はあわてて一刀に声をかける。
「あ、あの、どちらへ??」
「さあな。」
一刀は再び歩き始める。
「お待ちください!」
すると、一刀は立ち止まった。
そして、肩に掛けてた『ある物』を手にする。
「徐福。こっちに来い。」
「え?」
徐福は言われるがままに一刀の元へ向かう。
すると、一刀は徐福を自分の左側へ引き寄せた。
そして、一刀の目の前には誰かが立っていた。
「徐福。俺達の後ろに誰かいるか?」
「い、いえ。」
「よし。」
徐福は一刀の前に立つ人物を凝視した。
すると、あることに気づいた。
暗くてよくわからないが、他に何人もいること。
そして、その者達は、手に何か鈍く光るものを持っていることを。
「盗賊・・・!」
徐福は声を震わせながら呟いた。
「なんだお前ら??そんな物騒なもん持ちやがって。」
一刀は物怖じ一つすることなく盗賊に話しかける。
「へへへ、お前こそこんな夜更けにそこのイイ女と何してたんだぁ??」
「お前らが期待するようなことはしてねぇよ。おら、さっさとその武器を捨てて消えろ。」
「だったら、その女をよこすんだな!ふへへへ・・・・」
「イヤに決まってんだろ。バーカ。お前はどっかでブタとヤッてろ。」
「んだとぉ!?」
一刀の言葉で盗賊達に怒りの炎が灯る。
「おい、これが最後だぁ!女を置いて消えろ!!!さもないと・・・・」
「どうすんだ??」
「斬り刻んでブタの餌にしてやる!!!!!」
盗賊は怒鳴るが、一刀はまったく動じない。
「徐福、俺が「いい。」って言うまで耳塞いで目ェ瞑ってろ。」
「は、はい??」
「早くしろ。」
徐福は不安だった。
目を瞑った瞬間、盗賊達に引き渡すのではないか。
そう思っていると、目線は盗賊に向けながら、一刀は少し微笑んだ。
「大丈夫。絶対、お前を護るから。」
「あ・・・・/////。」
目線は盗賊に向いていたが、その微笑みは明らかに徐福に対する微笑み。
うっすらとだったが、とても柔らかく、暖かい表情。
徐福はこの微笑みと、彼の言葉を信じることにした。
「わ、わかりましたっ!」
徐福はキュッ、と目を瞑り、スッ、と耳を塞ぐ。
「さて・・・・」
一刀はニヤリと笑い、盗賊達に話しかけた。
「さて、問題です。俺が持っているのは『XM109ペイロードライフル』。使用弾は25mm弾。」
一刀の言っている事がわからない盗賊達は、首を傾げる。
「何言ってんだぁ??頭イカれちまったのか??」
一刀は構わず喋り続ける。
「コイツを人間に当てたらどうなるでしょうか??」
「めんどくせぇ!!答えならお前が死んでから考えてやるよ!!!」
盗賊の一人が正面から斬りかかって来た。
「正解は・・・・・・。」
《ドッッコォォォォン!!!》
轟音と共に、盗賊達は赤い『何か』を浴びた。
「ヒッ!!」
「ウッ、ゲェッ!!」
「うあああぁぁぁあぁぁあぁぁぁ!!!!!!!」
硬直する者、叫ぶ者、吐き出す者、逃げる者。形はどうあれ、皆はさっき起こった事に恐怖した。
そして、一刀は無表情で話し続ける。
「正解は、『消し飛ぶ』。でした。」
そう、さっき一刀に襲い掛かった盗賊は文字通り『消し飛んだ』のだ。
彼が最後に居た場所には、何も残ってなかった。
全てが破片となって、飛び散ったのだ。
一刀は自分から一番近い位置に居る盗賊に銃口を向ける。
「これが最後だ。武器を置いてとっとと消えろ。」
盗賊達は叫び声を挙げながら、姿を消した。
一刀はライフルを肩に掛け直すと、徐福の頭をワシャワシャと掻き毟る。
急に頭を掻き毟られて、徐福は驚いた。
「ふわぅ!!」
「おい、もういいぞ。」
徐福は目を開け、周りを見渡した。
「あの・・・・・盗賊は??」
「逃げたよ。さ、お前も帰るんだ。家まで送ってやるから。」
「は、はい!」
一刀は、約束どおり徐福を護った。
少し歩くと、小さな家が見えた。
ここが、徐福の家だった。
「じゃあな。」
一刀は徐福の家の前まで来ると、後ろに振り返り歩き出した。
「あの!」
「ん?」
「北郷様は、その、行く宛て・・・・無いんですよね??」
「ああ。それがどうした??」
「よ、よろしければ・・・・・その、えっと・・・・今夜だけでも・・・・・泊まって行きませんか////??」
「・・・・ありがてぇが、断らせてもらうわ。」
一刀はフッ、と笑い、立ち去ろうとする。
「で、でも!!何かお礼をさせてくれないと、私の気が・・・・」
「じゃあ・・・・明日の朝、メシ作っててくれ。」
と、一刀は歩きながら呟いた。
「は、はい!!」
徐福は笑顔に満ちていた。
「絶対に、来てくださいね!!」
一刀は「おう。」とだけ言い残し、その場を去っていった。
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まさか、あんなにたくさんの人が読んでくれるとは思わなかった。
読んでくださった方々、本当にありがとうございます。
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