翔平。
空高く飛翔し、泰平を見つめる者。
長嶋翔平はその眼(まなこ)に照覧するこの国の明日の彫像を夢想する。
うち果たすべき巨悪。単純にただ2人の人間。
社会が絶対的支配に疲弊する前に斃さねばこの地は荒野と化す。そう危惧していた。
長嶋翔平は言った。
「巨悪とはこの列島を両断せしめる二大軍閥である!それは数という力に於いて個を蹂躙するものである!それは杉山と呼称される2人の独裁者である!」
某国sugiyamaに三度目の冬が来た時。長嶋はその一人と相対していた。
雹が降っていた。
長嶋翔平が生を受けた時、この国は日本国という名だった。
程なくして、nagasimaという大手のパソコン生産工場で発見される。
その後、五歳で路頭に迷う。
S県某所
「やれやれお兄ちゃんたち、この長嶋に何か所用カネ?」
長嶋翔平はその浅ましく肥えた肉体を燻らせてそう呟いたが、まわりの人間は聞き取ることが出来ないでいた。
「大人しく投降しろ長嶋!貴様の犯した罪、少しは軽くできるかもしれん」
自衛隊一個大隊が区画を封鎖し、取り囲んでいた。
「私の開発した生物兵器segawa800で無辜の人間を虐殺した罪か?私からすれば彼らは咎人だがね。さて、ヒトがヒトを裁くのが罪なのか、はたまた生物兵器を密造したのが罪なのか」
誰も長嶋の声を聞き取れないでいた。口元は開閉しているが、聞こえるのは「ん」や、「ま」といった断片のみ。
長嶋翔平は下卑た笑みを浮かべた。道端で少女にレイプされた時に屁をこいて少女を殺した事を思い出していた。
数秒後には長嶋はやってのけた。ゴムが擦れたような音がすると大隊は消滅した。
これが長嶋が体内に仕込んだ神経ガス「Segawa800」その力である。
「腹痛ェー」
またしても誰も聞き取ることが出来なかった、その声なき声を。
都市部での大量殺戮は人々に長嶋翔平の名を知らしめるキッカケとなった。
しかし長くは続かなかった。
巨魁、杉山雄紀が沖縄を制圧の報が巷を賑わした。
杉山雄紀は2045年にアジアのドラッグ経済を独占し自らの右腕たる軍隊を組織。兵士は潤沢な資金で最新の重火器を携行しているのは勿論、各国の戦地を傭兵として生き延びた強者揃い。
沖縄の陥落は免れなかった。
それ程までの太い男がなぜ沖縄に拘ったのか。
北海道に拠点を置く、もう一人の杉山の存在である。
一つ断っておくが彼らは肉親ではない。
2023年の杉山大粛清の2人の生き残りである。
政府に嫌気がさした雄紀は14才ですでに国取りを画策していた、しかしその時すでにもう一人の杉山は北海道を制圧してしまう。
雄紀は数年遅れて沖縄をその手中に収めた。
その後長嶋翔平は急ぎ沖縄に向かった。
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世を変えれずに狂った男は、自らの肉体を生体兵器に改造した。